横浜の行政書士が教える!【緊急解説】旅行業法違反になるバス運賃の「下限」ルール【第2話】

横浜の行政書士が教える!【緊急解説】旅行業法違反になるバス運賃の「下限」ルール【第2話】

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。


私は旅行業界で37年間、団体旅行や貸切バスの手配にも携わってきました。
第1話では、「貸切バス」と「レンタカー+運転者」の境界について確認しました。
第2話では、旅行会社にとってさらに実務的な「貸切バスの運賃」を取り上げます。
旅行会社の現場では、
「もう少し安くならないか」
「予算内に収めたい」
「他社より安く手配したい」
という場面は珍しくありません。
しかし、貸切バスには一般の商品とは違い、「いくらでも値下げしてよい」という考え方はありません。
特に注意したいのが、
・公示された運賃・料金の下限
・旅行会社などへ支払われる手数料
・手数料を差し引いた後の実質的な下限割れ
です。
これはバス会社だけの問題ではありません。
旅行会社が不適切な取引に関与すれば、旅行業法上の行政処分につながる可能性があります。
今回は、旅行会社で実際に貸切バスを手配してきた経験も踏まえながら、B2B実務として知っておきたい「下限運賃」の考え方を整理します。


貸切バスの運賃は「自由に値下げできる価格」ではありません


貸切バスの運賃・料金には、国が公示する基準があります。
現在の制度では、貸切バス事業者が収受する運賃について、変更命令の検討を必要としない基準額が示されています。
貸切バス事業者は、その制度に基づいて運賃・料金を設定し、適正な額を収受する必要があります。
なぜそこまで価格にルールがあるのでしょうか。
理由の一つが、安全に必要なコストを確保するためです。
貸切バスの運行には、
・運転者の人件費
・車両の整備
・点検
・運行管理
・保険
・安全教育
など、多くの費用がかかります。
過度な値下げ競争によって、こうした安全に必要な費用まで圧縮されることを防ぐため、運賃制度が設けられています。
つまり旅行会社が確認すべきなのは、
「どこまで値引きできるか」
ではなく、
「この見積りは制度上適正なのか」
という視点です。


旅行会社が知っておきたい「時間」と「距離」の考え方


貸切バスの運賃は、単純に
「1台○万円」
と決まっているわけではありません。
基本となるのは、
・時間
・走行距離
です。
たとえば、
横浜から観光地へ行き、現地を周遊して戻る場合、
実際にお客様が乗っている時間だけでなく、バス会社の営業所から配車場所までの回送なども運賃計算に関係します。
また、
・深夜早朝
・交替運転者が必要な運行
・特殊な車両
などでは、別途料金が関係する場合があります。
旅行会社の担当者が見積書を確認するときには、
「総額が安いか高いか」
だけを見るのではなく、
「この行程なら、どの時間と距離が計算対象になっているのか」
を見ることが重要です。


下限割れは「バス会社だけの違反」ではありません


ここが旅行会社にとって非常に重要です。
貸切バス事業者が不適正な運賃で運行した場合、道路運送法上の問題となり得ます。
しかし、旅行会社が下限割れとなる運賃でバス会社と契約したり、その取引に関与した場合には、旅行会社側も旅行業法上の責任を問われる可能性があります。
実際、国は過去に旅行会社への立入検査を行い、下限割れ運賃への関与について調査し、行政処分の対象としてきました。
ですから、
「バス会社がこの金額で大丈夫と言ったから」
だけでは十分ではありません。
旅行会社にも、
「適正な条件で手配しているか」
を確認する責任があります。
これは、第3話で取り上げる「営業区域」とよく似ています。
営業区域も、
「バス会社が大丈夫と言った」
だけで終わらせてはいけません。
下限運賃も同じです。
取引先任せにせず、自社でも確認する仕組みが必要です。

特に注意したい「手数料」の扱い

旅行会社と貸切バス事業者との取引では、手数料が発生することがあります。
手数料そのものが直ちに問題になるわけではありません。
重要なのは、手数料を含めた取引全体です。

一見すると下限以上でも安心とは限らない

例えば、バス会社が下限に近い運賃を収受し、その後、その一部を旅行会社へ手数料として支払ったとします。
形式上は下限以上の運賃で契約していても、
手数料等を差し引いた結果、バス会社に実質的に残る金額が下限を割るような取引になっていないか
を確認する必要があります。
国も、旅行会社とバス会社との間で支払われる手数料等について、名目にかかわらず実質的な下限割れにならないよう求めています。
つまり、
「運賃」と「手数料」を別々に見るのではなく、
取引全体で見る必要があります。


「昔からこのやり方」は確認理由になりません

旅行業界では長年の取引関係もあります。
「いつもこの条件」
「付き合いが長いから」
「特別料金にしてもらった」
ということもあるでしょう。
しかし、慣行があることと、現在の法令や運賃制度に適合していることは別です。
長年取引しているバス会社だからこそ、
・見積書
・運送引受書
・運賃・料金
・手数料
をきちんと確認することが、双方を守ることにつながります。


運送引受書は重要なチェック資料です

旅行会社が貸切バスを手配するとき、重要な書類の一つが「運送引受書」です。
ここには運送内容だけでなく、運賃・料金など、取引を確認するための情報が記載されます。
また、旅行会社と貸切バス事業者との取引では、手数料等についても確認・記録しておくことが重要です。
旅行会社側では、
・見積内容
・運送引受書
・実際に支払った金額
・手数料等
が整合しているかを確認できる状態にしておきましょう。
行政監査を考えたときにも、
「適正だったと思います」
ではなく、
「この書類で適正な取引だったことを確認できます」
と言えることが重要です。


観光商品をつくる段階から運賃を考える

ここは、現在連載している「観光ビジネスを形にする実務」とも直結するところです。
例えば、
・地域周遊ツアー
・団体旅行
・学校旅行
・企業視察
・インバウンドツアー
・宿泊施設と観光地を結ぶ周遊商品
などを企画するとき、貸切バスを組み込むことがあります。
このとき、
「1人あたり販売価格を先に決め、その価格に合わせてバス代を削る」
という順番は危険です。
先に、
・適正なバス運賃
・宿泊費
・入場料
・ガイド費
・添乗費
・旅行会社として必要な利益
を積み上げ、そのうえで旅行商品の販売価格を考える必要があります。
観光ビジネスでは、
「売れる価格」
だけではなく、
「法令を守りながら継続できる価格」
をつくることが重要です。
貸切バスの下限運賃は、その典型的な例です。


旅行会社内で決めておきたい確認ルール

例えば、社内で次のような確認項目を決めておく方法があります。
・貸切バス事業者名
・営業区域
・見積運賃・料金
・運送引受書
・手数料等の有無
・実質的な下限割れになっていないか
・行程変更時の再確認
特に繁忙期は注意が必要です。
「いつものバス会社が取れない」
「出発日が迫っている」
「予算が足りない」
という状況になると、通常ならしない判断をしてしまうことがあります。
だからこそ、忙しいときでも確認できる仕組みを先に作っておくことが重要です。


今日の実務ワンポイント

貸切バスの見積書を受け取ったら、
まず「総額」だけを見るのをやめてみましょう。
確認したいのは、
・どの時間が運賃計算に入っているか
・どの距離が計算対象か
・必要な料金が含まれているか
・手数料等を含めても適正な取引か
です。
「安かったから採用する」
ではなく、
「なぜこの金額になるのか説明できる」
ことが、B2Bの旅行実務では重要です。

まとめ|安く仕入れることより「適正に手配する」

旅行会社にとって、仕入価格を抑えることは経営上重要です。
しかし、貸切バスだけは一般的な仕入れと同じ感覚では扱えません。
そこには、
・運転者
・車両
・整備
・運行管理
・安全管理
という、人の命を運ぶための仕組みがあります。
そのために設けられているのが運賃・料金制度です。
旅行会社にとって重要なのは、
「できるだけ安く仕入れること」
ではなく、
「適正な運賃で、安全な運送を手配すること」
です。
そして、下限割れへの関与はバス会社だけの問題ではありません。
旅行会社側にも行政処分リスクが及びます。
私は旅行会社で長年、貸切バスを手配してきました。
価格交渉そのものが悪いわけではありません。
しかし、越えてはいけない線があります。
その線を理解しながら、お客様の予算と安全の両方を成立させることが、旅行会社の実務だと考えています。


今日のチェックポイント

□ 貸切バスには運賃・料金の基準があることを理解している
□ 総額だけでなく時間・距離の考え方を確認している
□ 下限割れがバス会社だけの問題ではないことを理解している
□ 手数料等を含めた実質的な金額を確認している
□ 運送引受書を保存・確認している
□ バス会社の説明だけに頼らず自社でも確認している
□ 行程変更時には運賃・料金も再確認している
□ 担当者任せにせず社内確認ルールを設けている

行政書士田中穂積の視点

旅行会社で貸切バスを手配していた頃、
「もう少し安くならないか」
という交渉は日常的にありました。
それ自体は旅行会社の仕事の一部です。
しかし現在、行政書士として制度を改めて見ると、貸切バスの価格には、単なる仕入価格以上の意味があることが分かります。
適正運賃。
営業区域。
運転者の労務管理。
安全管理。
これらはすべて別々の問題に見えますが、実務では一つの貸切バス手配の中でつながっています。
だからこそ旅行会社には、
「バス会社に任せているから大丈夫」
ではなく、
自社でも基本ルールを理解することが求められます。
そしてこれは、これから地域ツアーや観光商品をつくる事業者にも同じです。
観光ビジネスを形にするときには、魅力的な商品をつくるだけでなく、適正な仕入れと法令順守まで含めて事業を設計する必要があります。

Q&A|貸切バスの下限運賃

Q1.バス会社が提示した金額なら、旅行会社はそのまま契約して大丈夫ですか?
必ずしもそれだけで十分とはいえません。
旅行会社側でも、運賃・料金や運送引受書を確認し、適正な条件での手配になっているかを確認することが重要です。
バス会社任せにせず、自社側でもチェックする仕組みを持ちましょう。
Q2.旅行会社が手数料を受け取ること自体が問題なのですか?
手数料そのものが直ちに問題になるわけではありません。
重要なのは、手数料等を含めた取引全体で、実質的な下限割れとなっていないかです。
運賃と手数料を別々に考えないことがポイントです。
Q3.貸切バスの運賃は全国同じですか?
運賃・料金の基準額は地域や車種などによって異なります。
また改定されることもあります。
実際に手配するときは、運行する地域を管轄する運輸局の最新の公示・案内を確認することが大切です。

次回予告

次回は、
「貸切バスの営業区域」
について取り上げます。
貸切バスは、全国どこでも自由に仕事ができるわけではありません。
どこで乗せるのか。
どこで降ろすのか。
どの営業区域のバス会社なのか。
ここを誤ると、旅行会社が不適切な運行に関与することがあります。
下限運賃と並んで、旅行会社が特に注意したい実務上の落とし穴です。
第3話では、「発地・着地」と営業区域の関係を旅行会社の手配実務から整理します。

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行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅行業を始めたい
・旅行会社として貸切バスを適切に手配したい
・貸切バス事業への参入を検討している
・営業区域や運賃、安全管理の基本を整理したい
・旅行業登録や開業後の法令対応について確認したい
といったご相談に対し、旅行業界で37年間、貸切バスを含む旅行手配に携わってきた経験と、行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅行業や貸切バス事業では、許可・登録を取ることだけが目的ではありません。
実際の運営が、法令と安全の両面から適切に続けられる仕組みになっているかまで考えることが大切です。
旅行会社、観光事業者、貸切バス事業者、宿泊事業者など、それぞれの事業内容に応じて、開業前の確認から運営開始後の手続まで必要な事項を整理します。

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クイズ!貸切バス運賃の「下限」ルール

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▶ 第3話:【緊急解説】貸切バスの営業区域外手配と行政処分のリスク
▶ 第4話:【緊急解説】貸切バス手配で守るべき安全管理
▶ 「貸切バスの正しい手配」シリーズの記事一覧

この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。