横浜の行政書士が教える!【緊急解説】貸切バスの営業区域外手配と行政処分のリスク【第3話】

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
私は旅行業界で37年間、団体旅行や貸切バスの手配にも携わってきました。
第1話では「貸切バスとレンタカーの境界線」、
第2話では「貸切バス運賃の下限ルール」を取り上げました。
第3話のテーマは、
「貸切バスの営業区域」
です。
少し専門的な言葉ですが、考え方はそれほど難しくありません。
例えば、
👉「神奈川県のバス会社が東京でお客様を乗せたら違反なの?」
こんな疑問から考えてみましょう。
答えは、
「東京で乗せたから直ちに違反、ではありません。」
ポイントになるのは、
「どこで最初に乗せ、どこで最後に降ろすのか」
です。
旅行会社にとっては、下限運賃と並んで見落としたくない貸切バス手配の基本ルールです。
一方、一般の利用者にとっても、
「観光バスはどこの会社でも自由に全国を走って仕事ができるわけではない」
と知ると、少し意外ではないでしょうか。
今回は、旅行会社で実際に貸切バスを手配してきた経験も踏まえながら、できるだけ一般の方にも分かりやすく整理します。
- 1. 貸切バスには「営業区域」があります
- 2. 神奈川県のバスが東京へ行くのは違反?
- 3. 「せっかく近くにいるから」が落とし穴になる
- 4. 旅行会社も「バス会社が大丈夫と言った」で終われません
- 5. 宿泊旅行ではどう考える?
- 6. なぜ営業区域というルールがあるのか
- 7. 旅行会社は「行程」を売っています
- 8. 営業区域だけでなく「無理のない行程」も確認する
- 9. 今日の実務ワンポイント
- 10. まとめ|「どこを走るか」より「どこで乗り、どこで降りるか」
- 11. 今日のチェックポイント
- 12. 行政書士田中穂積の視点
- 13. Q&A|貸切バスの営業区域
- 14. 次回予告
- 15. \ 旅行業・貸切バス事業を始めたい方へ /
- 16. クイズ!貸切バスの営業区域をどう確認する?
貸切バスには「営業区域」があります
貸切バス会社には、それぞれ営業区域があります。
簡単にいえば、
「この地域を営業の拠点として旅客を運送します」
と認められた区域です。
貸切バス会社だからといって、日本全国どこでも自由にお客様を乗せて、どこへでも運べるわけではありません。
道路運送法では、原則として、
発地と着地の両方が営業区域外となる旅客運送
を行うことはできません。
ここで重要なのが、
「発地」と「着地」
です。
発地とは、旅客が最初に乗車する場所。
着地とは、旅客が最後に降車する場所。
この基本を押さえると、営業区域の考え方がかなり分かりやすくなります。
神奈川県のバスが東京へ行くのは違反?
例えば、神奈川県を営業区域とする貸切バス会社を考えてみましょう。
横浜→東京
横浜でお客様を乗せ、東京駅で降ろす。
これは発地が営業区域内です。
したがって、「東京まで走るから営業区域外」ということではありません。
東京→横浜
東京駅でお客様を乗せ、横浜で降ろす。
これも着地が営業区域内です。
東京で乗車しているから直ちに違反、ということではありません。
東京→都内観光→東京
では、神奈川県を営業区域とするバス会社が、
東京でお客様を乗せ、
東京都内を観光し、
東京で全員を降ろす
という運行ならどうでしょう。
発地も着地も営業区域外です。
このような運送は、原則として営業区域外旅客運送の問題が生じます。
つまり、
「バスがどの県を走ったか」
を見るのではありません。
「どこで最初に乗せ、どこで最後に降ろすのか」
を見るのが基本です。
「せっかく近くにいるから」が落とし穴になる
旅行の現場では、効率を考えることは当然です。
例えば、
「横浜のお客様を東京まで送るバスがある」
「その後、ちょうど東京で別の団体がバスを探している」
「せっかく東京にいるのだから、そのバスを使えば効率がいい」
こんな発想が出ることがあります。
車両はそこにあります。
回送距離も減らせそうです。
利用者にとっても安くなるかもしれません。
一見すると、とても合理的です。
しかし、後から乗せる別団体の運送が、
発地も着地も営業区域外
となれば話は別です。
「バスがそこにいるから」
「空車だから」
という理由だけで、新しい仕事を受けられるわけではありません。
ここが、貸切バス手配の面白さでもあり、難しさでもあります。
旅行会社も「バス会社が大丈夫と言った」で終われません
ここからはB2Bとして特に重要な部分を少しお話しします。
営業区域違反は、バス会社だけの問題とは限りません。
旅行会社が営業区域外運送となる貸切バスを手配し、法令に違反するサービスの提供を受けることをあっせんした場合、
旅行業法上の問題となることがあります。
実際に、営業区域外の貸切バスを手配したことを理由に、旅行会社が行政処分を受けた事例もあります。
だから旅行会社としては、
「バス会社からOKと言われたので手配しました」
だけではなく、自社でも基本的な確認が必要です。
旅行会社が確認したいこと
少なくとも、
・バス会社の営業区域
・お客様の最初の乗車地
・最後の降車地
・行程全体
・途中で別の団体を乗せないか
を確認します。
大切なのは、バス会社へ「○月○日、バス1台お願いします」とだけ依頼しないことです。
具体的な行程を伝えて、
「この運行で営業区域上問題ありませんか」
と確認できる状態にしておくことです。
宿泊旅行ではどう考える?
営業区域の話が少し難しく感じられるのが、宿泊を伴う旅行です。
例えば、
横浜を出発
↓
長野県を観光
↓
長野県で宿泊
↓
翌日も観光
↓
横浜へ帰着
という旅行があります。
「長野県で一泊したのだから、翌日は長野県発の別運行になるの?」
と思うかもしれません。
ここでは、単に日付が変わったかだけで判断するのではなく、
👉どのような運送契約・行程なのかを確認する必要があります。
一方で、そのバスが
現地にいることを利用して、当初の団体とは別の団体を長野県内だけで運ぶ、
といった話になれば別の運送です。
だからこそ旅行会社では、
「どこを走るか」
だけでなく、
「誰を、どの契約で、どこからどこまで運ぶのか」
まで見ます。
なぜ営業区域というルールがあるのか
一般の利用者から見ると、
「空いているバスなら使わせてくれてもいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、貸切バス事業は許可事業です。
営業所、車庫、車両、運行管理、安全管理などを一定の事業基盤のもとで運営します。
営業区域も、その事業を適正に管理する仕組みの一つです。
単に都道府県の境界を守るためだけのルールではありません。
「どの営業拠点を基礎として、そのバス事業を管理するのか」
という許可制度の一部として考えると、分かりやすいでしょう。
旅行会社は「行程」を売っています
私は旅行会社で長年、貸切バスを手配してきました。
その経験から感じるのは、
貸切バス手配は「バスを1台予約する仕事」ではない
ということです。
何時に出発するのか。
どこで乗るのか。
どこで休憩するのか。
どこを観光するのか。
どこに泊まるのか。
翌日はどこから動くのか。
そして、どこで旅行を終えるのか。
👉旅行会社は、こうした「行程」全体を組み立てます。
だからこそ、
営業区域
運賃
運転者の勤務時間
駐車場
乗降場所
なども行程づくりと切り離せません。
これは、現在お伝えしている「観光ビジネスを形にする実務」ともつながります。
魅力的な観光コースを思いついても、その移動手段を適法かつ安全に手配できなければ、
旅行商品として成立しません。
営業区域だけでなく「無理のない行程」も確認する
貸切バス手配では、営業区域だけ確認すれば終わりではありません。
長時間・長距離の運行では、運転者の拘束時間、運転時間、休息期間なども考える必要があります。
現在の改善基準告示では、バス運転者について、運転時間や連続運転時間、勤務終了後の休息期間などの
基準が定められています。
旅行会社側が運転者の労務管理そのものを行うわけではありません。
しかし、
「朝早く出発して、夜遅くまで観光して、翌朝また早く出発」
という行程を作れば、バス会社側でそのまま運行できない場合があります。
旅行会社が作る行程と、バス会社の安全な運行はつながっています。
具体的な安全管理については、第4話で改めて取り上げます。
今日の実務ワンポイント
貸切バスを手配するとき、
「どこのバス会社か」
だけでなく、
「どこで最初に乗って、どこで最後に降りるのか」
を確認してみましょう。
営業区域を見る最初のポイントです。
旅行会社であれば、
①営業区域
②発地
③着地
④具体的な行程
をセットで確認する。
そして、少し特殊な行程なら自己判断せず、バス会社や必要に応じて管轄行政へ確認する。
これが安全です。
まとめ|「どこを走るか」より「どこで乗り、どこで降りるか」
貸切バスの営業区域というと、難しい制度に聞こえます。
しかし基本は、
「どこで最初に乗せるのか」
「どこで最後に降ろすのか」
です。
神奈川県のバスが東京を走ること自体が違反なのではありません。
反対に、バスがたまたま東京にいるからといって、東京発・東京着の別団体を自由に運べるわけでもありません。
そして旅行会社にとって重要なのは、
営業区域違反がバス会社だけの問題ではない
ということです。
下限運賃と同じように、
「取引先が大丈夫と言った」
だけではなく、手配する側も基本ルールを理解しておく。
これが旅行会社のコンプライアンスです。
一方、一般の利用者にとっては、
「観光バスは全国どこでも自由に営業できるわけではない」
ということを知っていただくだけでも、貸切バスを見る目が少し変わるのではないでしょうか。
今日のチェックポイント
□ 貸切バスには営業区域があることを理解した
□ 発地は「最初の乗車地」だと理解した
□ 着地は「最後の降車地」だと理解した
□ バスが営業区域外を走ること自体が直ちに違反ではないと理解した
□ 発地・着地の両方が営業区域外となっていないか確認している
□ 別団体を追加で運ぶ場合は別の運送として考えている
□ 旅行会社として行程全体をバス会社へ提示している
□ 長距離・長時間運行では運転者の勤務条件にも配慮している
行政書士田中穂積の視点
旅行会社で貸切バスを手配していたとき、
「バスが空いているなら使えばいい」
というほど単純ではない場面を数多く経験しました。
料金。
営業区域。
運転者の勤務時間。
車両の空き。
駐車場。
乗降場所。
お客様の希望。
すべてを組み合わせて、一つの旅行を成立させます。
現在、行政書士として法令を確認すると、旅行会社時代に行っていた一つひとつの確認には、
きちんと理由があったことを改めて感じます。
貸切バス手配で重要なのは、法律を暗記することではありません。
「この行程で本当に大丈夫だろうか」
と気づけることです。
そして、分からなければ確認する。
その積み重ねが、旅行会社、お客様、バス会社のすべてを守ることにつながります。
Q&A|貸切バスの営業区域
Q1.神奈川県のバス会社は東京都内を走ってはいけないのですか?
いいえ。
営業区域外を走行すること自体が禁止されているわけではありません。
基本的には、発地と着地の両方が営業区域外となる旅客運送を行わないことがポイントです。
横浜発・東京着や東京発・横浜着などは、この基本ルールとは矛盾しません。
Q2.東京にいる神奈川県の貸切バスへ、別のお客様を乗せてもいいですか?
別のお客様をどこで乗せ、どこで降ろすのかによります。
その別の運送について発地・着地とも営業区域外となる場合は、営業区域外運送の問題が生じます。
「車両が近くにいるから」という理由だけでは判断できません。
Q3.旅行会社も営業区域を確認する必要がありますか?
はい。
旅行会社が道路運送法に違反する貸切バス運送をあっせんした場合、旅行業法上の問題となる可能性があります。
実際に営業区域外運送のあっせんを理由とした行政処分事例もあるため、
バス会社任せにせず、行程と営業区域を確認しておくことが重要です。
次回予告
次回は、
「貸切バス手配で守るべき安全管理」
を取り上げます。
営業区域が正しい。
運賃も適正。
それでも、まだ貸切バス手配の確認は終わりません。
運転者が無理なく運行できる行程か。
休憩時間は確保できているか。
旅行会社は安全なバス会社をどう見ればよいのか。
第4話では、旅行会社が貸切バスを手配するときに考えておきたい「安全」を、旅行実務の視点から整理します。
\ 旅行業・貸切バス事業を始めたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅行業を始めたい
・旅行会社として貸切バスを適切に手配したい
・貸切バス事業への参入を検討している
・営業区域や運賃、安全管理の基本を整理したい
・旅行業登録や開業後の法令対応について確認したい
といったご相談に対し、旅行業界で37年間、貸切バスを含む旅行手配に携わってきた経験と、
行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅行業や貸切バス事業では、許可・登録を取ることだけが目的ではありません。
実際の運営が、法令と安全の両面から適切に続けられる仕組みになっているかまで考えることが大切です。
旅行会社、観光事業者、貸切バス事業者、宿泊事業者など、それぞれの事業内容に応じて、
開業前の確認から運営開始後の手続まで必要な事項を整理します。
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クイズ!貸切バスの営業区域をどう確認する?
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▶ 第1話:【緊急解説】貸切バスとレンタカーの境界線
▶ 第2話:【緊急解説】旅行業法違反になるバス運賃の「下限」ルール
▶ 第4話:【緊急解説】貸切バス手配で守るべき安全管理
▶ 「貸切バスの正しい手配」シリーズの記事一覧
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。