横浜の行政書士が教える!【緊急解説】貸切バス手配で守るべき安全管理【第4話】

“安全を語れる会社”だけが、これからも選ばれていく
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
私は旅行業界で37年間、団体旅行や貸切バスの手配にも携わってきました。
ここまで、
第1話では「貸切バスとレンタカーの境界線」
第2話では「貸切バス運賃の下限ルール」
第3話では「貸切バスの営業区域」
について見てきました。
そして第4話のテーマは、これまでの中でも
最も重要だと言わざるを得ない「安全管理」
です。
貸切バス会社には、運行管理、車両整備、点呼、運転者の健康管理など、安全な運行を支える仕組みがあります。
では、バスを手配する旅行会社は、
「安全はバス会社の仕事だから、お任せでよい」
のでしょうか。
私はそうではないと考えています。
旅行会社はバスを運転するわけではありません。
しかし、
どんな行程を作るのか。
どのバス会社へ依頼するのか。
何時に出発させるのか。
どれだけ長い行程を組むのか。
という部分には深く関わります。
今回は、旅行会社で実際に貸切バスを手配してきた経験から、
「旅行会社ができる安全管理」
を観光事業関係者と一般の方にも手配の裏側を分かりやすく整理します。
- 1. 安全管理はバス会社だけの仕事ではありません
- 2. 旅行会社の「無理な行程」が安全に影響する
- 3. 「お客様の希望だから」だけでは決められない
- 4. 旅行会社はバス会社の何を見ればいい?
- 5. 安全なバス会社ほど「できない」と言うことがあります
- 6. 安い会社より「説明できる会社」を選ぶ
- 7. 旅行会社も「確認した記録」を残す
- 8. 観光ビジネスをつくる段階から「安全」を入れる
- 9. 今日の実務ワンポイント
- 10. まとめ|旅行会社は「安全に運行できる旅行」をつくる
- 11. 今日のチェックポイント
- 12. 行政書士田中穂積の視点
- 13. Q&A|貸切バスの安全管理
- 14. このシリーズは第5話以降も続きます
- 15. \ 旅行業・貸切バス事業を始めたい方へ /
- 16. クイズ!貸切バス手配で守るべき安全管理
安全管理はバス会社だけの仕事ではありません
貸切バスの運行そのものに責任を負うのは、貸切バス事業者です。
バス会社では、
・運行管理
・乗務前後の点呼
・運転者の健康状態の確認
・車両の点検・整備
・運転者への指導教育
などを行います。
一方、旅行会社は旅行の行程を組み、その行程に合わせてバスを手配します。
つまり、
バス会社が「安全に運行する側」なら、
旅行会社は「安全に運行できる行程を作る側」
でもあります。
ここを分けて考えることが大切です。
旅行会社の「無理な行程」が安全に影響する
例えば、
朝5時に横浜を出発。
午前中から観光。
夕食後も観光。
ホテル到着は夜10時。
翌朝は6時出発。
利用者から見れば、
「たくさん観光できて充実した旅行」
に見えるかもしれません。
しかし、運転者側から見るとどうでしょうか。
バス運転者には、拘束時間、運転時間、連続運転時間、勤務終了後の休息期間などについて
基準があります。
現在の改善基準告示では、1日の休息期間は継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないこと、
連続運転時間は原則4時間以内とされています。
高速道路を走る貸切バスの実車運行区間では、おおむね2時間までとすることも努力義務とされています。
旅行会社が運転者の労務管理を行うわけではありません。
しかし、最初から無理な行程を作れば、バス会社は安全に運行できるよう変更を求めざるを得ません。
「お客様の希望だから」だけでは決められない
旅行会社では、
「朝をもっと早くしたい」
「帰りをもう少し遅くしたい」
「もう1か所寄りたい」
という要望を受けることがあります。
できるだけ希望をかなえたい。
これは旅行会社として当然です。
しかし、
「お客様が希望しているから」
という理由だけで行程を伸ばすことはできません。
場合によっては、
・観光地を一つ減らす
・出発時刻を遅らせる
・宿泊場所を変更する
・交替運転者を検討する
といった調整が必要になります。
よい旅行商品を作るということは、
「たくさん詰め込むこと」
ではありません。
安全に実施できる旅行へ整えることも、重要な旅行実務です。
旅行会社はバス会社の何を見ればいい?
では、貸切バス会社を選ぶとき、旅行会社は何を見るのでしょうか。
価格だけでは判断できません。
一つの参考になるのが、公益社団法人日本バス協会の
「貸切バス事業者安全性評価認定制度」
です。
いわゆる「SAFETY BUS」です。
この制度では、安全に対する取組状況などを評価し、認定事業者を公表しています。
2025年度からは新たな基準による審査が行われています。
もちろん、認定を受けていれば事故が絶対に起きないという制度ではありません。
しかし、
「どのバス会社へ依頼するか」
を考える際の一つの客観的な材料になります。
「いつもの会社だから大丈夫」で終わらせない
旅行業界では、長年付き合いのあるバス会社へ集中して依頼することも多いでしょう。
私自身、旅行会社時代には、信頼できるバス会社との関係をとても大切にしていました。
しかし、
「昔からお願いしている」
ことと、
「現在の安全管理状況を確認している」
ことは別です。
例えば、
・営業区域
・運賃
・安全性に関する情報
・行程上の運行可否
・その会社の社風や考え方
を必要に応じて確認する。
長年の取引先であっても、この基本は私は変えません。
安全なバス会社ほど「できない」と言うことがあります
旅行会社でバスを手配していると、
「この行程では難しいです」
「この時間では対応できません」
「運転者を2名にする必要があります」
と言われることがあります。
利用者や旅行会社から見ると、
「融通が利かない」
と感じることがあるかもしれません。
しかし、実は逆の場合があります。
安全管理をきちんとしているからこそ、
「できないものはできない」
と言っている可能性があります。
私は旅行会社時代、
こうした回答を受けたときは、単純に別会社を探すのではなく、
「なぜ難しいのか」
を聞いて確認し納得することが大切だと考えていました。
その理由が、
運転時間。
休息時間。
運行距離。
乗務員配置。
などであれば、行程そのものを見直す必要があります。
安い会社より「説明できる会社」を選ぶ
貸切バスを比較するとき、どうしても料金に目が向きます。
もちろん予算は重要です。
しかし、
「なぜこの運賃になるのか」
「この行程で問題なく運行できるのか」
「運転者は何名必要なのか」
「変更したらどうなるのか」
といった質問にきちんと答えてくれるバス会社かどうかも大切です。
第2話で取り上げた下限運賃もそうでした。
安さだけではなく、
適正な運賃で、
適正な運行を行い、
その理由を説明できる。
旅行会社としては、そうした事業者との関係を作ることが、
結果として自社を守ることひいてはお客様を守ることにもつながります。
旅行会社も「確認した記録」を残す
安全管理というと、大がかりな仕組みを想像するかもしれません。
しかし旅行会社側でまずできることは、
「確認したことを残す」
ことです。
例えば、
・バス会社の見積書
・運送申込書、引受書
・最終行程表
・営業区域の確認
・変更した行程
・バス会社との確認メール
・運賃や料金に関する資料
などです。
重要なのは、
事故が起きたときだけのためではありません。
担当者が変わったとき。
同じような旅行を翌年実施するとき。
行政監査で確認されたとき。
「なぜこの手配をしたのか」
を後から説明できるようにしておくことです。
記録は、旅行会社の実務を引き継ぐための財産でもあります。
観光ビジネスをつくる段階から「安全」を入れる
この考え方は、現在取り上げている「観光ビジネスを形にする実務」にも直結します。
例えば、
地域周遊ツアー。
インバウンドツアー。
学校・部活動の遠征。
企業視察。
宿泊施設と観光地を結ぶツアー。
こうした商品に貸切バスを組み込む場合、
「魅力的なコースができた」
だけでは商品は完成しません。
その行程を、
適正な運賃で、
営業区域を守り、
運転者が無理なく運行できるのか。
そこまで確認して、初めて実際に販売できる旅行商品になります。
観光ビジネスでは、
企画と安全を別々に考えないことが重要です。
今日の実務ワンポイント
貸切バスを手配するとき、
バス会社から
「この行程では難しいです」
と言われたら、すぐに別の会社を探す前に、
「なぜ難しいのでしょうか?」
と聞いてみましょう。
その答えが、
運転時間。
休息時間。
運行距離。
乗務員配置。
などであれば、
見直すべきなのはバス会社ではなく、旅行会社が作った行程かもしれません。
「できない理由」を確認することも、安全な貸切バス手配の一部です。
まとめ|旅行会社は「安全に運行できる旅行」をつくる
貸切バスの安全管理そのものを行うのは、バス会社です。
しかし、旅行会社も安全と無関係ではありません。
どの会社へ頼むのか。
どんな行程を作るのか。
何時に出発するのか。
どのくらい走るのか。
どこで休憩するのか。
旅行会社の判断が、実際の運行に影響します。
私は旅行会社で貸切バスを手配してきた中で、
「安全なバスを探すこと」
だけでは不十分だと感じてきました。
大切なのは、
👉安全なバス会社が、安全に運行できる旅行をつくること。
それは、貸切バスを手配する旅行会社の役割です。
今日のチェックポイント
□ 貸切バスの安全管理はバス会社だけの問題ではないと理解している
□ 無理のない行程になっているか確認している
□ 運転者の休息や連続運転時間を意識している
□ バス会社から行程変更を求められた理由を確認している
□ 価格だけでバス会社を選んでいない
□ 安全性に関する公開情報も確認している
□ 見積書・運送引受書・行程表を保存している
□ 行程変更のやり取りを記録している
行政書士田中穂積の視点
旅行会社で37年間仕事をしてきた中で、貸切バスの手配は数多く経験してきました。
旅行会社の仕事は、
「お客様が行きたい場所を並べること」
ではありません。
希望を聞きながら、
時間。
距離。
道路。
駐車場。
バス。
運転者。
宿泊。
料金。
を組み合わせ、一つの旅行として成立させます。
そして、その土台にあるのが安全です。
現在、行政書士として道路運送法や旅行業法を見ると、
旅行会社時代に行っていた一つひとつの確認が、法令と安全の両方につながっていたことを改めて感じます。
安全管理とは、
「事故を起こさないよう気をつけましょう」
という精神論ではありません。
確認する。
記録する。
無理なら行程を変える。
できないことは、できないと伝える。
こうした日常の実務の積み重ねです。
Q&A|貸切バスの安全管理
Q1.安全な貸切バス会社は、どう選べばよいですか?
価格だけでなく、許可、営業区域、安全への取組状況、行程に対する説明などを確認します。
日本バス協会の「貸切バス事業者安全性評価認定制度」も、一つの参考資料になります。
ただし、認定は事故が起きないことを保証するものではありません。
複数の情報を組み合わせて判断することが大切です。
Q2.旅行会社も運転者の勤務時間を計算しなければいけませんか?
実際の労務管理を行うのはバス会社です。
ただし旅行会社が無理な行程を作れば、安全な運行ができない場合があります。
行程作成時から運行時間や休息を意識し、バス会社と十分に調整することが重要です。
Q3.バス会社に「この行程では無理」と言われたら、別会社を探せばよいですか?
まず、なぜ難しいのかを確認しましょう。
運転時間や休息、乗務員配置など安全上の理由であれば、別会社へ依頼しても同じ問題が生じる可能性があります。
その場合は、行程自体を見直すことが必要です。
このシリーズは第5話以降も続きます
当初、このシリーズは全4話の緊急解説として始めました。
しかし、貸切バスは旅行・観光の現場と非常に深く関わっています。
学校・部活動の遠征。
社員旅行・団体旅行。
インバウンド。
空港送迎。
繁忙期のバス手配。
旅館・ホテルによる団体バスの手配。
旅行会社で実際に貸切バスを手配してきた経験と、現在の行政書士としての視点を組み合わせることで、まだお伝えできる実務がたくさんあります。
また、当時の記事を読み返してくださる読者の方もいらっしゃいます。
そこで、このシリーズは今後も「貸切バスの正しい手配」として不定期で続けていきます。
法律だけを解説するのではなく、
「旅行・観光の現場では、実際にどう考えるのか」
を、分かりやすさを大切にしながら少し深く掘り下げます。
次回以降は、
学校・部活動の遠征。
団体旅行。
安全なバス会社の選び方。
繁忙期の手配。
インバウンド。
など、より具体的な旅行場面も取り上げる予定です。
\ 旅行業・貸切バス事業を始めたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅行業を始めたい
・旅行会社として貸切バスを適切に手配したい
・貸切バス事業への参入を検討している
・営業区域や運賃、安全管理の基本を整理したい
・旅行業登録や開業後の法令対応について確認したい
といったご相談に対し、旅行業界で37年間、貸切バスを含む旅行手配に携わってきた経験と、行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅行業や貸切バス事業では、許可・登録を取ることだけが目的ではありません。
実際の運営が、法令と安全の両面から適切に続けられる仕組みになっているかまで考えることが大切です。
旅行会社、観光事業者、貸切バス事業者、宿泊事業者など、それぞれの事業内容に応じて、開業前の確認から運営開始後の手続まで必要な事項を整理します。
▼ ご相談はこちら
▶ 旅行業登録・開業・経営支援
▶ 相談から正式依頼までの流れ
▶ お問い合わせフォーム
クイズ!貸切バス手配で守るべき安全管理
※このシリーズを続けて読む
▶ 第1話:【緊急解説】貸切バスとレンタカーの境界線
▶ 第2話:【緊急解説】旅行業法違反になるバス運賃の「下限」ルール
▶ 第3話:【緊急解説】貸切バスの営業区域外手配と行政処分のリスク
▶ 「貸切バスの正しい手配」シリーズの記事一覧
▶ 第5話:
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。