「この物件NGです」になる前に|横浜の宿、民泊の用途地域と条例の落とし穴|第3話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
第1話では「民泊と簡易宿所の違い」、第2話では「民泊・簡易宿所の物件選び」について見てきました。
今回は、物件そのものではなく、
「その場所で宿泊事業ができるのか」
というエリアの問題を考えます。
気に入った物件を見つけても、用途地域や横浜市の条例、マンションの管理規約などによって、予定していた宿泊事業が難しくなる場合があります。
だからこそ大切なのは、契約してから調べるのではなく、候補物件の段階で確認することです。
👉今回は、横浜市で民泊・簡易宿所を始める前に知っておきたい「用途地域」と「横浜市の民泊ルール」を実務目線で整理します。
用途地域は宿泊事業の最初の確認ポイント
用途地域とは、街の環境を守るために「その地域にどのような建物を建て、どのような用途で使えるのか」を定めたルールです。
住宅地、商業地、工業地など、地域によって建築できる建物の用途が異なります。
宿泊事業でも、この用途地域の確認が重要です。
簡易宿所では「ホテル・旅館」として確認する
旅館業法に基づく簡易宿所は、建築基準法上「ホテル又は旅館」として扱われます。
そのため、住宅として利用できる場所だからといって、必ず簡易宿所として利用できるわけではありません。
まず、
・その用途地域でホテル・旅館用途が可能か
・現在の建物用途は何か
・用途変更など建築上の確認が必要か
を見ていきます。
用途地域だけで判断できない場合もあるため、候補物件が決まった段階で行政への確認を進めることが大切です。
民泊は考え方が少し違う
住宅宿泊事業法による民泊は、「住宅」を活用する制度です。
そのため、簡易宿所とは用途地域の考え方が異なります。
ただし、
「住宅ならどこでも年間180日営業できる」
というわけではありません。
横浜市には、住宅宿泊事業を行える期間を制限する独自の条例があります。
横浜市の民泊では「条例」に注意
横浜市で住宅宿泊事業を行う場合、特に確認したいのが第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域です。
この2つの用途地域では、原則として月曜日の正午から金曜日の正午まで住宅宿泊事業を行うことができません。
つまり、平日の一部に営業できない期間があります。
祝日等については例外もあるため、実際の営業日を考える際には横浜市の最新ルールを確認する必要があります。
「180日以内だから180日自由に営業できる」と考えて収支計画を作ると、想定とずれる可能性があります。
用途地域はi-マッピーで確認できる
横浜市では、行政地図情報提供システム「i-マッピー」で用途地域を確認できます。
候補物件が見つかったら、まず所在地を確認して用途地域を調べてみましょう。
ただし、地図上で用途地域を確認しただけで「この物件なら大丈夫」と判断するのは早計です。
地区計画など、用途地域とは別の制限が関係する場合もあります。
そのため、
「地図で確認する」
↓
「具体的な計画を行政窓口へ相談する」
という二段階で考えると安心です。
マンションでは管理規約も忘れずに
マンションで民泊を考える場合には、用途地域だけでなく管理規約も重要です。
住宅宿泊事業法上は可能な地域でも、マンションの管理規約で民泊を禁止している場合があります。
そのため、
「法律上できる」
ことと、
「そのマンションでできる」
ことは別です。
購入や賃貸契約をする前に、管理規約や管理組合の方針を確認しておきましょう。
簡易宿所に変えれば解決するとは限らない
「民泊の営業日が制限されるなら、簡易宿所にすればよいのでは?」
と考えることもできます。
確かに簡易宿所には、住宅宿泊事業法の年間180日という上限はありません。
しかし、簡易宿所には別のハードルがあります。
用途地域。
建築基準法。
消防法令。
旅館業許可。
建物の構造設備。
つまり、民泊と簡易宿所は「どちらが簡単か」で選ぶものではありません。
どの場所で、どのような宿を、どのくらい営業したいのか。
事業計画から逆算して制度を選ぶことが大切です。
契約前に確認したい3つのこと
候補物件が見つかったら、少なくとも次の3点を確認しましょう。
用途地域を確認する
まず、その物件がどの用途地域にあるのかを確認します。
住宅宿泊事業であれば横浜市条例による期間制限、簡易宿所であればホテル・旅館用途が可能かという視点につながります。
マンションなら管理規約を確認する
分譲マンションだけでなく、賃貸物件でもオーナーや管理会社との契約内容を確認します。
「民泊利用が認められているか」を契約前に確認することが重要です。
行政へ事前相談する
用途地域を調べたら、具体的な営業形態や図面をもとに行政窓口へ相談します。
民泊か簡易宿所かによって確認先は異なりますが、必要に応じて保健所、建築、消防などを確認していきます。
地図だけで自己判断せず、実際の計画を行政へ確認するところまでが物件調査です。
今日の実務ワンポイント
民泊・簡易宿所の候補物件が見つかったら、
「この場所は良さそう」
だけで契約しないことが大切です。
まず確認したいのは、
・用途地域
・横浜市条例
・管理規約
の3つです。
そのうえで建築・消防・保健所へ確認を進めます。
「契約→行政確認」ではなく、
「行政確認→契約判断」
という順番を意識しましょう。
まとめ|「できる物件か」を確認してから契約する
横浜市で民泊・簡易宿所を始めるとき、物件の価格や立地だけを見て決めることはできません。
その場所で予定している宿泊事業ができるのか。
用途地域はどうなっているのか。
横浜市の条例による制限はないか。
マンションなら管理規約に問題はないか。
これらを契約前に確認することが重要です。
特に民泊では、「年間180日以内」という全国共通のルールだけでなく、横浜市独自の期間制限にも注意が必要です。
一方、簡易宿所なら何でも解決するわけではありません。
簡易宿所には、用途地域、建築、消防、旅館業許可という別の確認があります。
だからこそ、
「この制度ならできそう」
から物件を選ぶのではなく、
「この場所で、どの制度なら計画を実現できるのか」
という順番で考えることが大切です。
今日のチェックポイント
□ 候補物件の用途地域を確認した
□ 横浜市の民泊条例を確認した
□ 低層住居専用地域の期間制限を確認した
□ マンションの場合は管理規約を確認した
□ 地区計画など別の制限がないか確認した
□ 民泊と簡易宿所のどちらを想定するか整理した
□ 契約前に行政への事前相談を考えている
すべてにチェックが入っていなくても問題ありません。
大切なのは、物件を契約してから問題を知るのではなく、「まだ何を確認していないのか」を契約前に把握することです。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業に37年間携わり、多くの宿泊施設と旅行者を見てきました。
旅行者から見れば、駅から近い、景色がよい、古民家の雰囲気があるといったことは大きな魅力です。
しかし、行政書士として宿づくりを見る現在は、もう一つ確認することがあります。
「その場所で、本当に宿泊事業を続けられるのか」
ということです。
よい物件を見つけることと、宿泊事業に適した物件を見つけることは同じではありません。
物件の魅力。
法令。
地域のルール。
開業後の運営。
これらを一緒に考えて初めて、長く続けられる宿につながります。
行政書士として許可や届出を行うだけではなく、その前段階となる物件選びから確認事項を整理することも、私の役割だと考えています。
Q&A|横浜民泊の用途地域と条例
Q1.住居専用地域では民泊はできませんか?
住宅宿泊事業法による民泊が一律に禁止されているわけではありません。
ただし横浜市では、第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域について、原則として月曜日正午から金曜日正午まで住宅宿泊事業を行えない期間制限があります。
所在地ごとに最新の用途地域と条例を確認しましょう。
Q2.用途地域は不動産会社に聞けば十分ですか?
不動産会社から情報を得ることは大切ですが、宿泊事業では行政資料と担当窓口でも確認することをおすすめします。
用途地域だけでなく、地区計画、建築、消防など別の確認が必要になる場合があるためです。
Q3.民泊と簡易宿所はどちらを選べばよいですか?
立地、営業日数、物件、運営方法によって変わります。
年間を通じた営業を考えているのか、住宅を一定期間活用したいのかなど、まず事業計画を整理し、その計画に合う制度を選ぶことが大切です。
次回予告
次回は、
「開業の最大の壁|消防・建築基準法をどう突破するか【横浜版】|第4話」
です。
用途地域や横浜市条例を確認して、「この場所なら可能性がある」と分かったとしても、まだ確認は終わりません。
次に待っているのが、建物そのものの問題です。
消防設備はどこまで必要なのか。
住宅を宿にすると建築上何が変わるのか。
古い建物でも開業できるのか。
次回は、民泊・簡易宿所開業で避けて通れない消防と建築について、実務目線で整理します。
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行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・この物件で民泊ができるか確認したい
・用途地域や横浜市条例が分からない
・民泊と簡易宿所のどちらが合うか整理したい
・マンションの管理規約が気になる
・契約前に保健所や消防への確認事項を整理したい
といったお悩みに対し、旅行業界での37年の現場経験と、行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
宿泊事業では、魅力的な物件を見つけることだけがスタートではありません。
「その場所でできるのか」
「その建物でできるのか」
「開業後も続けられるのか」
を一つずつ確認することが大切です。
許可や届出だけではなく、物件選びの段階から開業までの道筋を整理することが、行政書士としての私の役割だと考えています。
物件や計画によって必要な確認、手続、支援内容は異なります。
そのため、当事務所では、ご相談内容と必要な支援を確認したうえで個別にお見積りをご案内しています。
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この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。