2026年 2nd page

宿泊施設で朝食や軽食を出したい|旅館業の許可だけで大丈夫?|第10話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、キッチンカーは観光ビジネスになる?というテーマから、何を売るのか。どこで売るのか。どんな営業許可が必要なのか。を、車を購入する前に整理することが大切だとお話ししました。今回は、その逆です。外からキッチンカーを呼ぶのではなく、宿泊施設の側が、自分たちで朝食や軽食を提供したいというケースです。たとえば、「素泊まりだけだったけれど、朝食も出したい」「宿泊者にコーヒーや軽食を提供したい」「古民家宿の一角でカフェもやってみたい」「宿泊者だけでなく、近所の人にも食事を出したい」そんなときに出てくるのが、「旅館業の許可があるなら、そのまま食事も出せるの?」という疑問です。今回の結論を先にお伝えします。👉 旅館業の営業許可と、食品を調理・提供するための手続は別に考える必要があります。大切なのは、誰に、何を、どこまで提供するのかを最初に整理することです。 1.「宿泊」と「飲食」は別の営業として考える 旅館業は、施設を設けて、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業です。横浜市でも、旅館業を始める場合には旅館業法に基づく営業許可が必要とされています。横浜市一方で、料理を作る。飲み物を提供する。食品を販売する。といった行為は、食品衛生法上の確認が必要になります。横浜市では、営業内容に応じて食品営業許可や営業届の手続が設けられています。横浜市つまり、👉 「泊める許可」と「食べてもらうための手続」は同じではありません。ここを分けて考えることが最初のポイントです。 2.まず「何を出したいのか」を決める 「朝食を出したい」と言っても、内容はさまざまです。たとえば、コーヒーだけ市販のパンや飲料簡単なモーニングその場で調理する朝食夕食まで提供するでは、必要な設備や確認内容も変わります。ですから、厨房を作ったり設備を購入したりする前に、どんな食品を、どんな方法で提供したいのかを決めておくことが大切です。👉 設備を先に作らず、まずメニューと調理方法を整理する。これはキッチンカーと同じ考え方です。 3.宿泊者だけに出すのか、外部客にも売るのか もう一つ重要なのが、誰に提供するのかです。宿泊者だけに朝食を提供する。宿泊者以外にもランチを販売す……

学校・部活動の貸切バス手配|遠征・合宿で確認したい注意点|第5話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 これまで4回にわたり、貸切バスの運賃、営業区域、安全管理など、手配に必要な基本ルールを解説してきました。今回からは第2章。旅行や観光の現場で、実際に貸切バスを利用する場面を取り上げていきます。最初のテーマは、学校行事や部活動の遠征・合宿です。「大会会場までバスを出したい」「保護者会で手配しても大丈夫?」「複数社の見積りは、金額で選べばいい?」こうした疑問は珍しくありません。しかし、貸切バスの手配では、予約が取れれば終わりではありません。大切なのは、安全に運行できる行程を組み、適切な事業者と契約することです。 1.学校と保護者会、誰が契約する? 部活動や学校行事の貸切バスは、学校、保護者会、旅行会社などが手配に関わります。ここで最初に確認したいのが、契約者です。誰がバス会社へ正式に申し込み、費用を支払い、変更やキャンセルの判断をするのでしょうか。特に保護者会による手配では、代表者が変わったり、連絡先が複数になったりすることもあります。そのため、契約者・連絡責任者・支払者を最初に整理しておくことが重要です。なお、学校や保護者会が自ら利用するために直接契約する場合と、第三者が報酬を得て旅行サービスの手配を事業として行う場合では、旅行業法上の扱いが異なります。 2.遠征で意外と難しいのは「帰りの時間」 例えば、横浜の学校から県外の大会へ向かうケースを考えてみましょう。朝の出発時刻は決まっています。ところが、帰りはどうでしょうか。試合が延長する。勝ち進んで終了が遅れる。表彰式や片付けに時間がかかる。こうしたことは十分考えられます。旅行会社の手配実務では、予定どおりに進まなかった場合も想定しておくことが大切です。確認したいのは、・帰りの出発予定時刻・遅延した場合の対応・運転者の休憩・拘束時間・延長料金や契約変更の条件です。貸切バスには、運転者の労働時間や運転時間についての基準があります。👉「試合が終わるまで待ってもらう」という約束だけでは、十分な運行計画とはいえません。 3.早朝出発や長距離移動にも注意 大会や合宿では、午前5時や6時に学校を出発することもあるでしょう。その場合、運転者の仕事は学校への到着時刻から始まるわけではありません。出庫ま……

サビ管が突然退職したらどうする?|第1話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 今回から、新シリーズ「障害福祉事業所のお困りごと解決実務」を始めます。これまでの「開業準備編」「運営実務編」と違い、今回からは、現場で突然起きる「困った」からスタートします。「サビ管が辞めると言ってきた」「変更届を忘れていた」「加算の要件を満たしているか分からない」そんなとき、まず何を確認し、どの順番で動けばよいのか。一つずつ実務目線で整理していきます。第1話は、サビ管が突然退職したらどうする?です。 「後任を探さなきゃ!」その前に サービス管理責任者から、「今月末で退職したい」と言われた。真っ先に、求人を出さなければ。紹介会社へ連絡しなければ。と思うでしょう。もちろん後任探しは必要です。しかし、その前に確認したいことがあります。 まず「いつ欠けるのか」を確認する 退職日。最終勤務日。有給休暇の開始日。を確認します。そして、実際にいつからサビ管業務ができなくなるのかを明確にします。次に、事業所内に要件を満たす職員や、みなし配置の候補となる職員がいないかを確認します。👉 「職員が辞める」ことと「サビ管が欠如する」ことを分けて考える。ここが最初です。 最初に確認したい4つ 突然の退職なら、まず次の4点です。 1.退職日と最終勤務日 誰がいつまでサビ管業務を担当できるのか確認します。 2.事業所内の候補者 実務経験。基礎研修。実践研修。など、候補者の経歴・研修歴を確認します。 3.個別支援計画の状況 更新が近い利用者。モニタリング中の利用者。新規利用予定者。など、現在進行中の業務を洗い出します。 4.指定権者への相談 横浜市でも、やむを得ない事由によるサビ管欠如については、速やかな相談が重要です。👉 後任探しと行政確認を同時に進める。「後任が決まってから連絡」ではありません。 「みなしサビ管」が使えることもあります 突然の退職など、事業者の責任によらないやむを得ない事情でサビ管が欠け、すぐに後任を配置できない場合には、一定の要件を満たす職員をサビ管とみなして配置できる特例があります。原則は欠如から1年間。さらに一定の条件を満たせば、実践研修修了まで最長2年間となる……

キッチンカーは観光ビジネスになる?|営業許可と出店前に確認したいこと|第9話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、海外の旅行サイトに横浜の体験を載せたいというケースから、海外OTAを利用するときにも、誰が販売するのか。誰が予約を受けるのか。キャンセルや返金は誰が対応するのか。を整理することが大切だとお話ししました。今回は、オンラインで「売る」話から少し離れて、観光地で実際にサービスを提供する側へ視点を移します。たとえば、「イベントにキッチンカーを出したい」「観光や宿泊施設の敷地で週末だけ飲食を提供したい」「地域のお祭りや観光イベントへ出店したい」「観光スポットを訪れる人に地域の食を届けたい」そんなときに活用しやすいのが、キッチンカーです。そこで出てくるのが、「キッチンカーって、車を用意して営業許可を取れば始められるの?」という疑問です。今回の結論を先にお伝えします。👉 営業許可だけ確認して終わりではありません。何を売るのか、どこで売るのか、誰の場所を使うのか。この3つを、車を作り込む前に整理することが大切です。 1.キッチンカーは「移動できる飲食店」 キッチンカーの魅力は、固定店舗を持たず、イベント宿泊施設観光施設古民家地域のお祭りなど、人が集まる場所へ出向けることです。その意味では、観光との相性がとてもよい事業です。ただし、「車だから普通の飲食店とは別」というわけではありません。車内で食品を調理・提供する場合には、営業内容に応じて食品衛生法上の営業許可が必要になります。横浜市では、自動車による飲食店営業等について、車両の図面や業務計画書などを準備して事前相談するよう案内しています。横浜市👉 まず「キッチンカーをやりたい」ではなく、「車内で何を作り、どう提供したいか」を決めます。 2.売るメニューによって車の設備も変わる ここは、車を購入・改造する前に確認したいところです。横浜市では、扱う食品品目数調理工程使用する水の量などによって、必要となる給排水設備や営業できる内容が変わります。自動車営業では、営業内容に応じて40L・80L・200Lの貯水設備の考え方があります。ですから、「中古のキッチンカーを買ってからメニューを決める」より、メニュー → 必要設備 → 車両の順で考えた方が安全です。👉 車を先に買わない。まず、……

障害福祉事業所を長く続けるために|第16話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「横浜の障害福祉サービス運営指導|何を確認される?」として、運営指導の通知が来てから慌てるのではなく、普段から、指定人員加算支援計画記録研修・委員会などを、現在の運営と一致させておくことが大切だとお伝えしました。今回で、「障害福祉サービス 運営実務編」は最終回です。ここまでさまざまなテーマを取り上げてきました。しかし最後にお伝えしたいのは、書類を増やすことでも、制度をすべて暗記することでもありません。👉 事業所の変化に合わせて、指定・人員・加算・記録を一緒に動かしていくこと。これが、障害福祉事業所を長く続けるための基本だと考えています。 開業したときの状態は、ずっと続きません 指定を受けた直後は、書類もそろっている。人員配置も確認している。運営規程も最新。必要な届出も済んでいる。という状態でしょう。しかし、事業所は動きます。職員が入る。職員が辞める。管理者が変わる。利用者が増える。加算を新しく取る。部屋の使い方が変わる。制度や報酬も変わる。 問題は「変わること」ではありません 問題になるのは、実際の運営は変わったのに、行政上の手続や書類が昔のままという状態です。小さなズレでも、そのまま積み重なると、人員基準加算報酬請求運営指導などへ影響する可能性があります。👉 事業所が変わったら、何かほかにも影響しないかを見る。この習慣を作ることが大切です。 1.人が変わったら、人員だけを見ない 例えば、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者が退職した。そのとき、「代わりの人を探さなければ」で終わっていないでしょうか。一つの変更から確認を広げる人が変われば、人員基準勤務形態変更届加算運営体制まで影響することがあります。つまり、👉退職という一つの出来事を、人事だけの問題にしないことです。これは管理者変更などでも同じです。 2.加算を取ったら、届出後こそ管理する 加算は、届出を出して終わりではありません。算定を始めれば、その後も要件を満たし続ける必要があります。「今も取れる?」を定期的に確認する職員が変わった。勤務時間が変わった。必要な研修が終わっていない。記録が残っていない。そうした変化によって……

海外のOTAに横浜の体験を載せたい|最初に何を確認する?|第8話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「SNSで参加者を募集して観光体験を売りたい」というケースから、InstagramLINE自社ホームページSNSのDMなどで直接販売するときに、誰が何を売るのか。いつ予約が成立するのか。誰がお金を受け取るのか。を整理することが大切だとお話ししました。今回は、販売先を海外へ広げてみます。「横浜のまち歩きを外国人旅行者にも販売したい」「海外の体験予約サイトへ掲載したい」「英語ページを作ってインバウンド客を呼びたい」そんなときに出てくるのが、「海外OTAに掲載すれば、それだけで外国人旅行者へ売れるの?」という疑問です。今回の結論を先にお伝えします。👉 海外OTAへ掲載する前に、まず「誰が販売者になるのか」を確認しましょう。サイトに掲載されることと、自分が直接お客様へ販売することは、必ずしも同じではありません。 1.海外OTAといっても仕組みは同じではありません 海外の旅行サイトや体験予約サイトといっても、その仕組みはさまざまです。例えば、自分の商品を掲載するだけ。予約をサイトが受け付ける。代金までサイトが回収する。予約後に自分へ入金される。キャンセルや返金をサイトが処理する。などがあります。観光庁も、海外OTAを含むオンライン旅行取引では、サイトごとに取引形態や旅行業登録の有無が異なるため、利用者にとって契約当事者が分かりにくい場合があるとしています。つまり、「有名な海外サイトだから全部任せておけば大丈夫」ではありません。👉 サイト名ではなく、そのサイトが何をしているのかを見る。ここから始めます。 2.最初に確認したいのは「誰がお客様へ売っているのか」 例えば、横浜のまち歩き体験を海外OTAへ掲載したとします。お客様がサイトから申し込む。では、体験を販売しているのは誰でしょう。あなたでしょうか。OTAでしょうか。OTAは単に予約の場を提供しているだけでしょうか。ここを確認します。さらに、予約確認を誰が出すのか。領収書は誰が発行するのか。代金は誰が受け取るのか。キャンセル時に誰が返金するのか。まで見ていきます。👉 「サイトに載っている」ではなく、「誰と誰が契約しているのか」を確認する。これは第7話までと同じ考え方……

横浜の障害福祉サービス運営指導|何を確認される?|第15話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 ここ3回は、障害福祉事業所のM&Aについて、買う側譲る側専門家の役割という視点から見てきました。今回は、通常の事業所運営へ戻ります。テーマは、運営指導です。「横浜市から運営指導の通知が来た」その瞬間、「何を出せばいい?」「書類はそろっている?」「昔の記録まで見られる?」と慌ててしまう事業所もあるかもしれません。しかし、運営指導のためだけに特別な書類を作ることが本来の目的ではありません。👉 普段の運営が、指定基準や報酬算定のルールに沿っているかを説明できる状態にしておく。まずここから考えます。 今年、運営指導・監査の動きにも変化があります 最初に、現在の動きを確認しておきましょう。厚生労働省は令和8年6月、「障害福祉分野における運営指導・監査の強化」を公表しました。あわせて、指定障害福祉サービス事業者等指導指針。集団指導・運営指導マニュアル。運営指導の確認項目・確認文書。監査指針。なども示されています。厚生労働省つまり、今後ますます、「指定を取った後、実際にどのような運営をしているか」が重要になります。一方で、令和9年4月の報酬改定についても現在検討が続いています。9月には就労系サービス、10月5日には障害児支援について、具体的な報酬・基準の議論が行われました。厚生労働省ただし、現段階で来年度の基準や運営指導項目がすべて決定したわけではありません。👉 今あるルールを適正に守りながら、令和9年度改定の正式な内容を追っていく。これが現在の立ち位置です。 横浜市の運営指導は、何を準備する? 横浜市の日中活動系サービスでは、運営指導の実施にあたり、事前提出資料は原則として実施日の2週間前までに提出するよう案内されています。また、当日確認する資料についても、すぐ確認できる状態で準備することが求められています。共同生活援助についても、運営指導を実施する月の前月までに連絡・通知があり、事前提出資料の提出や、指導後に必要に応じた改善報告が求められています。横浜市はGHについて、おおむね3年に1度を目安に運営指導を行うと案内しています。横浜市では、具体的にどこを見ておけばよいのでしょうか。 1.指定時の内容と、今の事業所は同じですか?……

SNSで観光体験を売りたい|予約サイトを通さなくても大丈夫?|第7話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、地域周遊パスを作るときの販売主体や代金の流れについて考えました。今回はもっと身近な販売方法です。InstagramLINE自社ホームページSNSのDM「予約サイトを使わず、自分で直接参加者を集めたい」そんなときに出てくるのが、「予約サイトを通さなければ、自由に売っていいの?」という疑問です。結論から言えば、👉 予約サイトを使うかどうかだけで、必要な許認可やルールが決まるわけではありません。大切なのは、誰が、何を、どんな形で売っているのかです。 1.自分の体験を自分で売るなら分かりやすい たとえば、自分が行うまち歩き写真体験ものづくり体験地域案内これを自分でSNS募集する。この形は比較的シンプルです。ただし、他社の宿泊交通他の体験まで組み合わせ始めると、確認すべきことは増えます。👉 SNSで売っているから大丈夫なのではなく、何を売っているかを見る。 2.DM予約でも条件は明確にする SNSでの予約は手軽ですが、料金予約確定の時点キャンセル雨天中止返金集合場所などが曖昧になりやすい面もあります。「言った・言わない」を防ぐためにも、予約確定後に、条件をまとめて案内する仕組みを作っておくと安心です。👉 手軽に売るほど、条件は分かりやすくが基本です。 3.自社サイト販売は「自由」ではなく「自分で設計する」 自社サイトなら、料金写真予約決済を自分で決められます。その一方で、予約条件キャンセル返金顧客対応も自分で整える必要があります。👉 予約サイトを使わない分、自分で販売ルールを作る必要があります。 4.他社の宿泊・交通を扱うなら別確認 自分の体験だけではなく、ホテルバス鉄道など他社の宿泊・交通を手配するようになると、旅行業法上の確認が必要になることがあります。つまり、InstagramLINE自社サイト予約サイトどこで売るかは本質ではありません。大切なのは、👉 誰が何を売り、誰が予約を取り、誰がお金を受け取るのか。です。 今日の実務ワンポイント SNSや自社サイトで観光体験を売るなら、まず次の5つを確認してみてください。①自分の商品だけを売る?②予約確定はい……

壊すのではなく活かす|古民家と空き家が地域の未来になる|第17話

~旅行業37年の行政書士が考える観光まちづくり~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日に少し肩の力を抜いて読んでいただきたい、「古民家宿・空き家活用方法」も、今回で最終話となりました。第1話からここまで、空き家を壊す前に考えたいこと。古民家宿古民家カフェ消防・建築近隣との関係観光事業地域との連携資金契約許認可と、さまざまな角度から古民家・空き家活用を考えてきました。最後まで読んでくださった方。途中の記事からこのシリーズを見つけてくださった方。検索から一つの記事だけ読んでくださった方。本当にありがとうございます。最終話でお伝えしたいのは、新しい制度でも、新しい許認可でもありません。このシリーズを通して私が一番お伝えしたかった、「壊すのではなく、活かす」ということについて、改めて考えてみたいと思います。 1.空き家を見たとき、「古い建物」で終わらせない 使われなくなった家。古くなった建物。管理が難しくなった実家。相続したものの使い道が決まらない住宅。空き家には、それぞれ事情があります。もちろん、すべての空き家を残すべきだとは思いません。建物の状態。安全性。費用。地域環境。所有者の事情。によっては、解体という選択が適切なこともあります。ただ、「古いから壊す」と決める前に、一度だけ、「この建物に、もう一度役割を持たせることはできないだろうか」と考えてみる。それが、このシリーズの出発点でした。 2.古民家の価値は、建物だけにあるのではない 古い梁柱土間庭縁側昔ながらの建具こうしたものには、新築では作れない魅力があります。でも、古民家の価値は、それだけではないと思っています。そこに、旅行者が泊まる。地域の人がコーヒーを飲む。子どもたちが集まる。地域の商品が並ぶ。その土地の食事を味わう。歴史や文化を知る。人と人が出会う。そんな使われ方が生まれたとき、建物は単に保存されるだけではなく、もう一度、地域の中で役割を持ち始めます。👉 古民家を残すことと、古民家を活かすことは同じではありません。人が関わって初めて、「活用」になるのだと思います。 3.旅行業界37年で感じてきた「旅の価値」 私は行政書士になる前、旅行業界で37年間仕事をしてきました。その中で、有名な観光地大型ホテル……

障害福祉事業所のM&A|専門家選びで失敗しないための役割整理|第14話

~専門家選びで失敗しないための役割整理~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 ここ2回は、第12話で、障害福祉事業所を買う側から、第13話では、障害福祉事業所を譲る側から、それぞれM&A・事業譲渡について考えてきました。 今回は、買い手・売り手双方に向けた内容です。障害福祉事業所のM&Aを具体的に進めようとすると、「結局、誰に相談すればいいの?」という問題が出てきます。M&A仲介会社税理士・公認会計士弁護士社会保険労務士行政書士それぞれ専門分野が違います。大切なのは、👉 誰か一人に全部任せることではなく、「この問題は誰に確認するのか」を最初に整理すること。です。 M&A仲介会社|売り手と買い手をつなぎ、全体を進める まず思い浮かぶのが、M&A仲介会社やM&Aアドバイザーです。得意なのは「取引全体を進めること」例えば、買い手・売り手候補の探索条件交渉企業価値に関する調整全体スケジュールの管理クロージングまでの進行などを担います障害福祉事業所を、「誰に・いくらで・どのように引き継ぐか」というM&A全体を進める役割です。ただし、M&A仲介会社がいるからといって、指定税務労務契約法務など、すべての専門判断を任せられるとは限りません。👉 仲介会社は全体をつなぐ存在。専門判断は、それぞれの専門家へ。この切り分けが重要です。 税理士・公認会計士|その会社の「数字」を見る 次に重要なのが、財務・税務です。 売上だけでは企業価値は判断できない 決算書借入資産・負債税務キャッシュフロー将来の収益性などを確認するのは、税理士や公認会計士の専門分野です。買い手にとっては、「本当にこの価格で買ってよいのか」売り手にとっては、「自社の価値をどう考えるか」という問題につながります。障害福祉事業所であっても、事業である以上、財務面の確認は欠かせません。 弁護士|契約と法的リスクを見る M&Aでは、契約書も非常に重要です。 「もし予定どおり進まなかったら」まで考える 例えば、表明保証損害賠償契約解除責任の分担過去の問題が後から判明した場合の取扱い。などは、契約上きちんと整理してお……