日本版DBSとは何か~子どもと関わる事業者が知っておきたい新制度~|第2話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「日本版DBS対応は何から始める?事業者が今準備したいこと|第1話」
として、2026年12月25日の施行に向け、事業者が最初に確認したいことを整理しました。
今回は、もう一歩手前に戻ります。
そもそも、
「日本版DBSって何をする制度なの?」
というお話です。
ニュースなどでは、
「子どもと関わる仕事に就く人の性犯罪歴を確認する制度」
と紹介されることがあります。
間違いではありません。
しかし、それだけでは制度の一部分しか見えていません。
日本版DBSの本当のポイントは、
「犯罪事実を確認すること」
と
「子どもへの性暴力を防ぐ仕組みを事業者の中につくること」
を組み合わせた制度であることです。
第2話では、その全体像だけをできるだけ分かりやすく見ていきます。
- 1. 日本版DBSとは何か
- 2. 「性犯罪歴をチェックする制度」だけではありません
- 3. では「犯罪事実確認」とは何を確認するのか
- 4. 採用時だけ確認すれば終わりではありません
- 5. 日本版DBSで求められるのは「防ぐ・気づく・対応する」
- 6. 子どもだけでなく、職員を守る仕組みにもなる
- 7. 義務となる事業者と、認定を選べる事業者があります
- 8. なぜ今、この制度が必要なのか
- 9. 今日の実務ワンポイント
- 10. まとめ|日本版DBSは「確認+仕組みづくり」
- 11. 今日のチェックポイント
- 12. 行政書士田中穂積の視点
- 13. Q&A|日本版DBSの基本
- 14. 次回予告
- 15. \ 日本版DBSへの対応をこれから始める事業者の皆さまへ /
- 16. 障害福祉サービス事業者の皆さまへ
- 17. クイズ!日本版DBSの基礎知識
日本版DBSとは何か
日本版DBSは、正式には
👉「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」
に基づく仕組みです。
とても長い名称ですね。
一般には「こども性暴力防止法」、そして制度の特徴から「日本版DBS」と呼ばれています。
目的は明確です。
子どもと接する仕事の中で、児童対象性暴力等が起きることを防ぐこと。
そして、子どもが安心して教育・保育などを受けられる環境をつくることです。
そのために事業者へ、
・犯罪事実の確認
・性暴力を防ぐための取組
・早期に気づくための体制
・問題が起きた場合の対応
・職員への研修
・相談しやすい環境づくり
などを求める仕組みになっています。
「性犯罪歴をチェックする制度」だけではありません
ここが最初に知っていただきたいポイントです。
日本版DBSという言葉から、
「採用するときに犯罪歴を調べる制度」
という印象を持つ方も多いと思います。
しかし、犯罪事実確認だけで子どもへの性暴力を防ぐことはできません。
過去に確認対象となる犯罪事実がない人であっても、将来の行為まで保証されるわけではないからです。
そのため制度では、
「犯罪事実確認」
だけではなく、
日常の環境づくりや研修、相談・報告体制などを組み合わせて、性暴力の防止を図ります。
つまり、
「DBSで確認したから安全」
ではありません。
事業所全体で子どもを守る仕組みをつくる。
その中の一つが犯罪事実確認です。
では「犯罪事実確認」とは何を確認するのか
制度では、対象となる従事者について、
「特定性犯罪事実該当者」に当たるかどうかを確認する仕組みが設けられます。
ここで重要なのは、
事業者が自分で警察や裁判所へ問い合わせて犯罪歴を調べる制度ではない
ということです。
法律に基づく仕組みを通じて犯罪事実確認を行います。
そして、そこで扱われる情報は非常にセンシティブです。
誰でも見てよい情報ではありません。
誰が取り扱うのか。
どのように管理するのか。
どこまで記録するのか。
適切な管理体制が求められます。
だからこそ、日本版DBSでは「確認すること」と同じくらい、「確認した情報をどう扱うか」が重要になります。
採用時だけ確認すれば終わりではありません
もう一つ誤解されやすいのが、
👉「新しく採用する人だけ確認すればいいの?」
という点です。
制度は、新規採用者だけを見て終わるものではありません。
施行時点ですでに勤務している従事者についても、法律やガイドラインに沿った対応が必要になります。
また、新しく採用するときには、
「どの仕事が確認対象になるのか」
を事前に整理しておくことも重要です。
つまり日本版DBSは、
採用担当者だけが知っていればよい制度
ではありません。
経営者。
管理者。
人事担当者。
現場責任者。
情報を扱う担当者。
それぞれが自分の役割を理解する必要があります。
日本版DBSで求められるのは「防ぐ・気づく・対応する」
制度全体を難しく感じたら、私は3つに分けて考えると分かりやすいと思います。
1.防ぐ
まずは、児童対象性暴力等が起きにくい環境をつくります。
職員への研修。
服務規律。
子どもと職員が関わる場面の見直し。
犯罪事実確認。
こうした取組が「防ぐ」にあたります。
2.気づく
次に大切なのが、問題の兆候に早く気づくことです。
子どもが相談できる。
保護者が相談できる。
職員が気づいたことを報告できる。
「何かおかしい」と感じたときに声を上げられる環境が必要です。
3.対応する
そして、疑いが生じた場合に、
誰が確認するのか。
どこへ報告するのか。
子どもの安全をどう確保するのか。
どのように記録するのか。
を決めておきます。
問題が起きてから初めて役割分担を考えるのではなく、あらかじめ対応ルールを持っておくことが重要です。
子どもだけでなく、職員を守る仕組みにもなる
日本版DBSは、
「職員を疑う制度」
と受け取られてしまうことがあります。
しかし、そのような理解だけでは制度を適切に運用できません。
ルールが曖昧な職場では、
どこまでが適切な関わり方なのか。
何をしたら問題になるのか。
困ったとき誰へ相談するのか。
職員自身も迷ってしまいます。
施設内のルールを明確にする。
研修を行う。
相談先を決める。
対応手順を共有する。
こうした仕組みは、子どもだけでなく、適切に働いている職員を守ることにもつながります。
制度を「監視」として考えるのではなく、
子どもと職員の双方が安心できる環境づくり
として考えることが大切です。
義務となる事業者と、認定を選べる事業者があります
日本版DBSでは、すべての事業者がまったく同じ扱いになるわけではありません。
法律上、対応が義務となる事業者があります。
一方、学習塾やスポーツクラブなど一定の民間事業者については、要件を満たして認定を受ける仕組みがあります。
ここは制度を理解するうえで非常に重要です。
ただし、第2話では詳しい事業者一覧までは入りません。
「うちは義務なの?」
「認定を受ける事業者なの?」
という具体的な区分は、第4話で整理します。
なぜ今、この制度が必要なのか
子どもは、大人と比べて自分の被害を言葉にすることが難しい場合があります。
相手が先生や指導者など、自分より立場の強い大人であれば、なおさらです。
だからこそ、
「問題が起きたら対応する」
だけでは十分ではありません。
起きにくい環境をつくる。
異変に気づける仕組みをつくる。
相談できる場所をつくる。
問題が疑われれば適切に対応する。
日本版DBSは、こうした取組を事業者の責任として制度化するものです。
犯罪事実確認が注目されやすい制度ですが、
本当の中心にあるのは
「子どもを性暴力から守るための仕組みづくり」
だと理解すると、制度全体が見えやすくなります。
今日の実務ワンポイント
職員へ日本版DBSを説明するとき、
「性犯罪歴を確認する新しい制度です」
だけで終わらせないことをおすすめします。
例えば、
「子どもへの性暴力を防ぐために、犯罪事実確認だけでなく、研修、相談、報告、対応ルールなどを事業所全体で整える制度です」
と伝えてみてください。
制度の目的が伝われば、
「なぜ自分たちが準備する必要があるのか」
も理解してもらいやすくなります。
まとめ|日本版DBSは「確認+仕組みづくり」
日本版DBSについて、まず覚えていただきたいことは一つです。
「犯罪事実を確認するだけの制度ではない」
ということです。
犯罪事実確認。
研修。
環境づくり。
相談。
早期把握。
問題発生時の対応。
情報管理。
これらを組み合わせながら、子どもへの性暴力を防いでいきます。
制度の細かな手続を覚える前に、
日本版DBS=子どもを守る仕組みを事業者全体でつくる制度
と理解しておくと、この先の記事も読みやすくなると思います。
今日のチェックポイント
□ 日本版DBSが犯罪事実確認だけの制度ではないと理解した
□ 「防ぐ・気づく・対応する」の3つの視点を理解した
□ 犯罪事実確認では重要な情報を扱うことを理解した
□ 新規採用者だけの制度ではないことを確認した
□ 経営者や人事担当者だけでなく現場にも関係する制度だと理解した
□ 義務対象と認定対象があることを知った
すべてを細かく覚える必要はありません。
まずは、
「何のための制度なのか」
を事業所内で共有することから始めましょう。
行政書士田中穂積の視点
制度が新しく始まると、どうしても
「何を提出するのか」
「どんな書類が必要なのか」
に目が向きます。
しかし私は、書類より先に
「何のための制度なのか」
を理解することが重要だと考えています。
旅行業界で37年間働いてきた中でも、安全管理では同じでした。
マニュアルがあること。
チェック表があること。
それだけでは十分ではありません。
なぜ確認するのか。
何を防ぎたいのか。
問題が起きたらどう動くのか。
そこまで現場で共有されて初めて、仕組みは動きます。
日本版DBSについても、
「犯罪事実確認の手続きをする」
ことをゴールにせず、
子どもが安心して過ごせる事業所をつくるために制度をどう使うのか。
この視点を大切にしながら、行政書士として支援していきたいと考えています。
Q&A|日本版DBSの基本
Q1.日本版DBSは、性犯罪歴があるか確認するだけの制度ですか?
いいえ。
犯罪事実確認は重要な仕組みの一つですが、それだけではありません。
研修、相談体制、早期把握、問題発生時の対応、情報管理などを含めて、子どもへの性暴力を防止する仕組みを整える制度です。
Q2.日本版DBSで確認したら、その人が絶対に安全だと分かるのですか?
いいえ。
犯罪事実確認で確認できるのは、法律で定められた犯罪事実に関する情報です。
将来の行為まで保証するものではありません。
そのため、犯罪事実確認と日常の防止措置を組み合わせることが重要です。
Q3.すべての子ども向け事業者が義務対象ですか?
いいえ。
法律上対応が義務となる事業者と、一定の要件を満たして認定を受ける民間教育保育等事業者があります。
具体的にどの施設・事業がどちらに該当するのかは、第4話で整理します。
次回予告
次回は、
「日本版DBSはいつから始まる?|事業者が押さえておきたい施行スケジュール|第3話」
です。
施行日は2026年12月25日。
では、
施行日までに何をするのか。
施行後に行うことは何か。
現在働いている職員はいつ確認するのか。
GビズIDやシステム準備はどう考えるのか。
第3話では、制度の中身ではなく、
「いつ、何を進めるのか」
に絞って整理します。
\ 日本版DBSへの対応をこれから始める事業者の皆さまへ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・自分の施設が日本版DBSの対象になるのか確認したい
・施行までに何を準備すればよいか整理したい
・対象となる従事者を整理したい
・社内規程や情報管理体制を整えたい
・職員への説明や運用方法を準備したい
といったご相談に対し、行政書士としての法務視点と、37年間の実務現場で培った「制度を現場で動かす」という視点からサポートしています。
日本版DBSへの対応で大切なのは、書類を作って終わることではありません。
誰が。
いつ。
何を確認し。
問題が生じたときにどう動くのか。
実際の事業所で運用できる状態まで整理することです。
施設や事業内容によって必要な対応は異なります。
現在の状況を確認したうえで、施行までに必要な準備を一緒に整理します。
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▶ 日本版DBS対応支援
▶ 相談から正式依頼までの流れ
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障害福祉サービス事業者の皆さまへ
放課後等デイサービスや児童発達支援など、子どもと日常的に接する事業では、日本版DBSへの対応と日々の事業所運営を切り離して考えることはできません。
行政書士田中穂積事務所では、日本版DBS対応のほか、指定申請、変更届・体制届、加算届、運営規程整備、運営指導対策など、障害福祉サービス事業者の開業から運営まで支援しています。
▶ 障害福祉サービス支援業務
クイズ!日本版DBSの基礎知識
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▶ 前回:日本版DBS対応は何から始める?事業者が今準備したいこと|第1話
▶ 次回:日本版DBSはいつから始まる?|事業者が押さえておきたい施行スケジュール|第3話
▶ 「なぜ今この法律が必要なのか?」シリーズの記事一覧
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。