16.日本版DBSと社内規程整備

~事業所のルールとして継続運用するために~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に、子ども関連事業者や障害福祉サービス事業者の運営を支援している、行政書士の田中穂積です。
前回は、日本版DBSの個人情報管理はどう変わるのかについてお伝えしました。
しかし、個人情報管理ルールを作っただけでは、事業所全体の運用は完成しません。
日本版DBSへの対応を一時的な作業で終わらせず、採用や人事異動、退職などの場面でも継続して運用するためには、社内規程やチェックリストへの落とし込みが必要です。
今回は、日本版DBS対応を事業所のルールとして定着させる方法を考えます。
日本版DBS対応は「担当者の記憶」に頼らない
日本版DBS対応には、さまざまな手続が関係します。
・対象者の確認
・職員への説明
・同意の取得
・必要な確認手続
・個人情報の保管
・採用時の確認
・配置転換時の確認
・退職後の情報管理
これらを担当者個人の記憶や経験だけに任せてしまうと、担当者の交代や職員の入退職によって、確認漏れが起こりやすくなります。
大切なのは、
「誰が担当しても、同じ手順で対応できる状態」
を作ることです。
そのために必要になるのが、社内規程と運用チェックリストです。
規程に盛り込みたい主な項目
日本版DBSに関する規程には、少なくとも次の内容を整理しておきます。
1.対象となる職員や業務
正職員だけでなく、パート、アルバイト、派遣職員、業務委託者、ボランティアなどを含め、誰を確認対象として管理するのかを明確にします。
「雇用形態」だけではなく、実際に子どもと接する業務に従事するかという視点で整理することが重要です。
2.担当者と責任者
誰が対象者を確認し、誰が手続を行い、誰が最終確認をするのかを決めます。
小規模な事業所でも、情報を取り扱う人を必要以上に増やさないことが大切です。
3.確認する時期
採用時だけでなく、配置転換、業務内容の変更、一定期間経過後など、どの時点で確認するのかを整理します。
4.職員への説明と同意
何のために確認するのか、どのような情報を取得するのか、誰が管理するのかを説明したうえで、必要な同意取得へ進みます。
説明をせずに同意書だけを渡す運用は避ける必要があります。
5.情報の保管と廃棄
閲覧できる人、保管場所、保存期間、持ち出しの禁止、退職後の取扱い、廃棄方法などを定めます。
こども家庭庁も、犯罪事実確認記録等を取り扱う事業者向けに、情報管理規程のひな型を公表しています。実際の体制に合わせて内容を調整することが必要です。
6.問題が生じた場合の報告ルート
確認手続の漏れ、情報の紛失、誤送信、不適切な閲覧などが起きた場合に、誰へ報告し、どのように対応するかを決めておきます。
新しい規程を増やせばよいとは限りません
放課後等デイサービスや児童発達支援事業所には、すでに多くの運営ルールがあります。
・運営規程
・虐待防止に関する指針
・身体拘束等の適正化に関する指針
・安全計画
・感染症対策
・BCP
・個人情報保護規程
・職員研修計画
そのため、日本版DBSについても、すべてを一つの規程に詰め込む必要はありません。
たとえば、
・基本方針や責任体制は社内規程
・個人情報の取扱いは情報管理規程
・採用時の手順は採用マニュアル
・日常の確認はチェックリスト
・職員への周知は研修計画
というように、既存の規程やマニュアルへ役割を分けて組み込む方法があります。
重要なのは、書類の数を増やすことではありません。
必要な場面で、必要なルールを確認できる状態を作ることです。
なお、こども家庭庁は、認定対象事業者について「児童対象性暴力等対処規程」のひな型も公表しています。認定申請を行う事業者では添付資料となるため、自社がどの区分に当たるかを確認しながら整備する必要があります。
規程とチェックリストはセットで考える
規程は、事業所の基本的なルールを示すものです。
しかし、規程だけでは、採用や退職の際に何を確認したのかが分かりにくくなります。
そこで、実際の運用ではチェックリストを併用します。
採用時のチェック例
□ 日本版DBSの対象業務に該当するか
□ 制度と個人情報の取扱いを説明したか
□ 必要な同意を取得したか
□ 確認手続を行ったか
□ 結果を所定の方法で管理したか
□ 担当者と責任者が確認したか
退職時のチェック例
□ 保管している情報を確認したか
□ 保存期間を確認したか
□ 不要な写しやデータを廃棄したか
□ アクセス権限を削除したか
□ 管理台帳を更新したか
チェックリストを使えば、実施した内容と実施日、担当者を記録できます。
規程が「事業所としての約束」、チェックリストが「実際に行った証拠」という関係になります。
規程を作った後に必要なこと
社内規程は、作成してファイルに保存すれば終わりではありません。
少なくとも、次の場面では見直しが必要です。
・制度やガイドラインが変更されたとき
・担当者が交代したとき
・新しい職種や雇用形態が加わったとき
・事業所を新設したとき
・情報管理上の問題が起きたとき
・実際の運用と規程にずれが生じたとき
また、職員が規程の存在を知らなければ、現場では使われません。
日本版DBSの対象事業者には、子どもと接する業務の従事者に対する研修も求められています。規程の整備と職員研修を別々に考えず、研修の中で事業所の手順や報告ルートまで確認することが重要です。
よくあるご質問
Q1.日本版DBS専用の規程を新しく作る必要がありますか?
必ずしも、すべてを独立した一つの規程にする必要はありません。
既存の個人情報保護規程、採用マニュアル、職員研修計画などに組み込む方法もあります。
ただし、認定申請に必要な規程など、事業者の区分によって作成が求められる書類が異なるため、対象区分の確認は必要です。
Q2.規程とマニュアルは何が違うのでしょうか?
規程は、事業所として守る基本ルールを定めるものです。
マニュアルは、そのルールを実行するための具体的な手順を示すものです。
さらにチェックリストを加えることで、実施漏れを防ぎ、記録を残しやすくなります。
Q3.小規模な事業所でも規程整備は必要ですか?
小規模な事業所ほど、特定の担当者に業務が集中しやすいため、手順の明文化が重要です。
長い規程を作ることよりも、担当者、確認時期、保管方法、問題発生時の連絡先を明確にすることから始めるとよいでしょう。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業に37年間携わり、さまざまな現場で、ルールを作る側と実際に運用する側の両方を経験してきました。
その経験から感じるのは、立派な規程があっても、現場で使われなければ意味がないということです。
日本版DBS対応でも重要なのは、規程の文章を増やすことではありません。
対象者一覧表、職員説明資料、同意取得フロー、個人情報管理ルール、社内規程、チェックリストが、一つの流れとしてつながっていることです。
事業所の規模や人員体制に合わせて、無理なく続けられる仕組みにする。
それが、子どもたちの安全と職員の安心の両方を守る実務対応につながると考えています。
次回予告
次回は、
「日本版DBSの運用チェックリスト」
について考えてみたいと思います。
規程を作っても、日々の業務で確認されなければ、手続の漏れを防ぐことはできません。
採用時、在職中、配置転換時、退職時など、場面ごとに何を確認するのか。
日本版DBS対応を確実に継続するためのチェックリストについて、実務の視点から整理します。
\ 子どもたちの未来を支える事業者の皆さまへ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
日本版DBSへの実務対応について、
制度説明だけではなく、
事業所で実際に運用できる仕組みづくりを伴走支援しています。
特に、
・放課後等デイサービス
・児童発達支援事業所
・認定こども園
・保育所
・学習塾
・スポーツクラブ
・各種習い事教室
など、子どもと関わる事業者の皆さまに向けて、
・対象者一覧表の作成
・職員説明資料の作成
・同意取得フローの整理
・同意取得管理表の作成
・個人情報管理体制の整備
・社内規程の見直し
・運用チェックリストの作成
など、現場に合わせた支援を行っています。
また、
「日本版DBS対応チェックシート」
を無料で進呈しております。
👉まずは自社の現状を整理するところから始めてみませんか。
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なお、放課後等デイサービス・児童発達支援事業所の指定申請、変更届、加算届、運営規程整備、運営指導対策などについては、HPの「障害福祉サービス支援業務」でもご案内しています。
▼ 障害福祉サービス支援業務
「障害福祉サービス支援業務」をご覧ください。
クイズ!日本版DBSと社内規程整備
前回 15.日本版DBSの個人情報管理はどう変わるのか
次回 17.日本版DBSの運用チェックリスト