03 古民家・空き家活用方法 category

古民家や空き家を宿・カフェ・観光拠点として活かすための「壊すのではなく活かす」をテーマに、古民家と空き家活用の実務を解説します。

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12.観光事業としての古民家活用を考える

~利用者にとって「また来たい場所」になるために~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「地域に愛される古民家活用とは」として、古民家を地域の中でどう残していくかについて考えました。 今回は、少し視点を変えます。古民家宿。古民家カフェ。体験施設。交流スペース。利用する人は、その建物に何を期待して訪れるのでしょうか。今回考えたいのは、👉 古民家を「何に使うか」ではなく、「そこでどんな時間を過ごしてもらうか」という視点です。 古民家だから選ばれるとは限らない 古い梁。土壁。縁側。昔ながらの建具。長い年月を重ねた木の質感。こうしたものは、古民家ならではの魅力です。ただし、「古民家です」というだけで、利用者に選ばれ続けるとは限りません。利用者が感じるのは、落ち着けたか。居心地がよかったか。大切な人とよい時間を過ごせたか。その場所ならではの記憶が残ったか。ということです。👉 建物の古さは魅力の入口であって、利用者が持ち帰る価値そのものではありません。 「昔ながら」と「使いにくい」は同じではない 古民家らしさを残そうとすると、できるだけ手を加えたくないという気持ちも出てきます。しかし、古いこと。不便なこと。使いにくいこと。は同じではありません。例えば、冬に極端に寒い。館内が暗すぎる。段差が分かりにくい。トイレが使いづらい。案内が分からない。こうしたことまで、「古民家だから仕方がない」としてしまうと、利用者にとっては魅力ではなく負担になります。残したいものは残す。安心して過ごすために必要な部分は整える。👉 古民家らしさを守ることと、利用者に我慢を求めることは別です。 記憶に残るのは「そこで過ごした時間」 利用者が後から思い出すのは、建物の築年数だけではありません。縁側で朝を過ごした。静かな部屋で家族と話した。古い梁を眺めながら食事をした。庭を見ながらお茶を飲んだ。建物の由来を聞いた。そうした時間が、「また行きたい」という気持ちにつながります。だからこそ、設備や内装だけではなく、利用者がどのようにその場所で時間を過ごすかを考えることが大切です。 写真だけでは伝わらない魅力もある 古民家は写真との相性がよい建物です。一方で、木の香り……

地域に愛される古民家活用とは|第11話

~建物を残すだけでなく、地域に必要とされる場所へ~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「古民家活用で見落としやすい消防と建築の壁」として、古民家の魅力を残して活用するためにも、契約や本格改修の前に消防・建築を確認することの大切さをお伝えしました。では、消防。建築。許認可。こうした条件をクリアできれば、古民家活用は成功なのでしょうか。もちろん、それだけではありません。古民家宿。古民家カフェ。地域交流施設。体験型観光施設。どのような形であっても、その建物は地域の中にあります。今回考えたいのは、👉 古民家を「建物として残す」だけでなく、「地域に必要とされる場所」として残すには何が大切なのかということです。 地域にある建物だから、地域との関係が欠かせない 古民家を事業として活用すると、それまでとは建物の使われ方が変わります。例えば宿になれば、旅行者が訪れる。車の出入りが増える。夜間にも人が滞在する。カフェになれば、来店客が増える。駐車や自転車の問題が生じる。営業時間によって周辺環境も変わる。可能性があります。事業者にとっては魅力的な活用でも、近隣の方にとっては、「これから何が始まるのだろう」と不安を感じることもあります。だからこそ、許可が取れるかどうかだけでなく、地域の中でどう運営していくかまで考えておく必要があります。 「地域のために」だけでは続かない 古民家活用では、「地域を活性化したい」「人が集まる場所をつくりたい」という言葉がよく使われます。その思いは大切です。しかし、👉地域のためになると思っていることと、地域の人が本当に求めていることは同じとは限りません。例えば、観光客をたくさん呼ぶこと。イベントを頻繁に開催すること。夜まで営業すること。が、必ず地域に歓迎されるとは限りません。一方で、地元のお店を宿泊客に紹介する。地域の商品を販売する。地域の食材を使う。地元の人も利用できる場所にする。地域の歴史や文化を来訪者へ伝える。などといった形なら、古民家を中心に地域へ価値が広がっていきます。👉 「地域のために何をするか」より、「地域と一緒に何ができるか」と考えることが大切です。 古民家の中だけで事業を完結させない 例えば古民家宿……

古民家活用で見落としやすい消防と建築の壁|第10話

~契約・本格改修の前に確認したいこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「空き家活用で失敗する人の共通点」として、物件を先に決める。補助金を見てから事業を考える。開業してから資金繰りを考える。といった、判断の順番が逆になることの危険性についてお伝えしました。 今回は、その中でも古民家や空き家の活用で特に見落としやすい、消防と建築について考えます。古民家宿。古民家カフェ。飲食店。地域交流施設。体験施設。古い建物には、新しい建物にはない魅力があります。しかし、「今まで住宅として使えていたから、そのまま宿や店にできる」とは限りません。今回のポイントは、👉 古民家の魅力を残すためにも、契約や本格改修の前に消防・建築の確認をするということです。 住宅として使える建物と、事業に使える建物は同じではない 空き家や古民家の多くは、もともと住宅として建てられています。それを、宿泊施設。飲食店。店舗。などに使うと、建物の「用途」が変わります。用途が変われば、避難。防火。構造。設備。など、確認すべき基準も変わる可能性があります。国土交通省は、200㎡以下の特殊建築物では用途変更時の建築確認手続が不要となる場合がある一方で、建築確認が不要でも、建築基準法や消防法に適合しなくてよいわけではないと注意を促しています。ここは特に誤解しやすいところです。👉 「確認申請がいらない」と「確認する必要がない」は別です。 古民家では消防設備が後から増えることがある 古民家を宿泊施設や飲食店として活用する場合、用途や規模、建物の状況によって、消火器。自動火災報知設備。誘導灯・誘導標識。非常警報設備。などの消防用設備が必要になることがあります。消防庁も、古民家を宿泊施設・飲食店・物販店として活用する事業者向けに、消防用設備等についての案内を公開しています。問題は、改修工事がほぼ終わってから消防署へ相談するというケースです。設備の追加だけならまだしも、配線。壁や天井。避難経路。出入口。などに関係すると、工事のやり直しにつながることもあります。だからこそ、👉 図面を作る段階で消防署へ相談することが重要です。 建築では「昔からある建物」だからこその確認が必要 古……

空き家活用で失敗する人の共通点|第9話

~契約・購入・改修の前に確認したいこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点」として、宿泊と飲食を別々に考えるのではなく、建物全体の使い方や動線、許認可を早い段階から一体で考えることの大切さをお伝えしました。では、そもそも空き家や古民家を活用するとき、どの段階で判断を誤りやすいのでしょうか。古民家宿。古民家カフェ。地域交流施設。体験型観光施設。空き家には、さまざまな活用方法があります。一方で、「建物の雰囲気が気に入った」「安く購入できた」「補助金が使えそうだ」「地域のためになりそうだ」という思いだけで進めると、後から想定外の問題が見つかることがあります。今回のポイントは、👉 空き家活用で失敗しやすいのは、手続を知らないことよりも、「何をしたいか」を決める前に物件や改修を先に進めてしまうことです。 物件を先に決めてしまう 気に入った古民家を見つけると、「ここで宿をやりたい」「カフェにしたい」と思うかもしれません。しかし、その建物で希望する事業ができるかどうかは別の問題です。宿泊。飲食。地域交流。体験施設。用途が変われば、必要な確認も変わります。そのため、何をしたいのか。誰に利用してもらいたいのか。その事業に必要な条件は何か。を整理してから物件を見る方が安全です。👉 「この物件で何をするか」ではなく、「やりたい事業にこの物件が合うか」で考えます。 「安い」「補助金がある」だけで判断しない 空き家は、取得価格だけを見ると魅力的に見えることがあります。しかし実際には、改修。設備。消防対応。許認可対応。開業準備。などに費用がかかることがあります。また、「補助金が使えるならやってみよう」という考え方にも注意が必要です。補助金は事業を成立させるものではありません。採択されないこともあります。自己負担もあります。対象外となる経費もあります。大切なのは、補助金がなくても、その事業をやりたいのか。開業後も続けられる見通しがあるのか。を先に考えることです。👉 補助金や安さは「始める理由」ではなく、事業を実現するための条件の一つです。 開業できるかだけでなく、続けられるかを見る 空き家活用では、物件……

宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点|第8話

~旅館業許可と飲食店営業許可を一体で考える~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「古民家カフェを地域に愛される観光拠点にするには」について考えました。地域の飲食店や商店を紹介する。地元の商品や食材を活用する。周辺を歩いてもらう仕組みをつくる。地域住民の声を店づくりに生かす。こうした取組によって、古民家カフェは飲食を提供する場所だけでなく、地域の魅力を伝える観光拠点にもなります。 今回は、「宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点」について考えます。いつもの日曜日の朝はリラックスしてお付き合いください。古民家を活用する方法は、宿泊施設か。カフェか。どちらか一つとは限りません。古民家宿で朝食を提供する。宿泊者以外にもカフェを開放する。昼はカフェ、夜は宿として使用する。地域イベントの際に食事を提供する。といった組合せも考えられます。しかし、旅館業許可があれば自由に食事を提供できる。飲食店営業許可があれば宿泊者を受け入れられる。というわけではありません。👉宿泊と飲食を組み合わせる場合は、二つの営業を一つの建物全体で考える必要があります。 旅館業許可と飲食店営業許可は別の手続です 宿泊料を受けて人を宿泊させる営業には、原則として旅館業法に基づく許可が必要です。旅館業の許可では、客室、換気、採光、衛生設備など、宿泊施設としての構造設備が確認されます。一方、食品を調理して客に提供する営業は、食品衛生法上の飲食店営業に該当し、営業内容に応じた許可が必要です。飲食店営業には、一般のレストランやカフェだけでなく、ホテル・旅館の厨房も含まれます。つまり、👉宿泊を行うための許可。👉食事を提供するための許可。は別々に確認しなければなりません。同じ建物で営業する場合でも、どの場所で何を行うのかを明確にする必要があります。 最初に営業の形を具体的にする 「古民家で宿とカフェをやりたい」というだけでは、必要な設備や許可を判断できません。まず、実際の営業方法を書き出します。 ・宿泊者にだけ食事を提供する 例えば、朝食だけを提供する。夕食付きの宿泊プランを販売する。宿泊者へ軽食や飲物を提供する。という形です。宿泊者だけを対象とする場合でも、厨房で……

古民家カフェを地域に愛される観光拠点にするには|第7話

~地域の人にも観光客にも選ばれる店づくり~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、「古民家カフェ開業で近隣トラブルを防ぐには」について考えました。古民家カフェを安心して営業するためには、駐車や駐輪。話し声や音。排気やにおい。ごみの保管。営業時間。など、周辺で暮らす人への配慮が欠かせません。しかし、苦情を起こさない。迷惑をかけない。というだけでは、地域から応援される店にはなりません。地域の人も利用しやすい店にする。地元の食材や商品を紹介する。地域の行事や観光資源とつながる。来店した人を周辺の店や場所へ案内する。こうした積み重ねによって、古民家カフェは、飲食を提供するだけの店から、地域の魅力を伝える観光拠点へ育っていきます。今回は、地域に嫌われない店ではなく👉地域から応援される古民家カフェをつくるには何が必要かについて考えます。 観光客だけの店にしない 古民家カフェという言葉から、遠方から訪れる観光客。写真を撮ってSNSへ投稿する人。休日にドライブで立ち寄る人。を思い浮かべるかもしれません。もちろん、観光客に来てもらうことは大切です。しかし、観光客だけを対象にした店では、平日や閑散期の利用が安定しにくくなります。また、地域の人から、観光客のためだけの店。混雑や車だけが増える店。自分たちは入りにくい店。と思われてしまうこともあります。地域に長く根づくためには、近所の人が日常的に利用できる。一人でも入りやすい。子どもや高齢者も利用しやすい。地域の人が知人を連れて来られる。という店づくりが必要です。例えば、平日に利用しやすいメニューを用意する。地域の人向けの案内を店頭へ出す。常連客の声をメニューや営業時間へ反映する。地域の集まりに使える時間帯を設ける。といった工夫が考えられます。👉観光客を呼ぶ前に、地域の人が「自分たちの店」と感じられるかを考える。ことが、地域に愛される古民家カフェの出発点です。 地元の食材や商品を「物語」として伝える 地域とのつながりを作る方法として、地元の食材や商品を使うことが挙げられます。地元で採れた野菜。地域の果物。近隣のパンや菓子。地元の工芸品。地域で作られた調味料や加工品。こうしたものをメニューや店内販売へ取り入れることで、古民家カフェが地域……

古民家カフェ開業で近隣トラブルを防ぐには|第6話

~許可だけでなく、周辺の暮らしへの配慮も開業準備の一つ~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、古民家カフェの開業にあたり、保健所や消防署へ相談したいことを整理しました。飲食店営業許可。厨房設備。消防設備。建物の用途や改修。こうした法令上の確認は、開業に欠かせません。しかし、許可を取得すれば、すべての準備が終わるわけではありません。古民家カフェを始めると、これまで住宅だった場所に、人。車。話し声。排気。ごみ。看板や照明。が加わります。開業する側には小さな変化でも、近隣に住む方には、毎日の生活に関わる問題になることがあります。今回は、👉古民家カフェを長く安心して続けるために、開業前に確認したい近隣対策について考えます。 許可と近隣対策は別の問題です 飲食店営業許可や消防上の確認は、法令上の基準を満たしているかを見るものです。一方、路上駐車。話し声。厨房のにおい。夜間の照明。ごみの保管。などは、周辺の暮らしとの関係から生じます。許可を取得していても、近隣への影響が大きければ、苦情やトラブルにつながります。👉法令上営業できることと、地域で安心して営業を続けられることは別です。この二つを、開業前から一緒に考える必要があります。 1. 車と人の流れ 古民家は、道幅の狭い住宅地。昔からの集落。駅から離れた地域。に建っていることがあります。そのため、お客様は何で来るのか。駐車場は何台必要か。満車時はどこへ案内するか。自転車をどこへ置くか。店の前に人が並ばないか。を確認します。特に避けたいのは、近隣住宅前への路上駐車。私有地への無断駐車。狭い道路での送迎や転回。店の前での長時間の待機。です。駐車場が少ない場合には、予約制。来店時間の分散。公共交通機関の案内。近隣駐車場の紹介。なども検討します。 2.営業時間と作業時間 近隣へ影響するのは、営業時間だけではありません。早朝の仕込み。食材の搬入。閉店後の清掃。椅子や食器の片付け。スタッフの出入り。も、音の原因になります。そこで、仕込みは何時からか。搬入は何時ごろか。片付けは何時までか。屋外で行う作業はあるか。を確認します。👉開店時間と閉店時間だけでなく、店の一日の動きを考えることが大切です。 3.……

横浜の古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認|第5話

~改修してから気付く前に、図面を持って事前相談する~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話古民家カフェを開業するときに必要となる、飲食店営業許可についてお話ししました。古民家の落ち着いた雰囲気。昔ながらの梁や柱。庭を眺めながら過ごせる客席。地域の食材を使った料理やお菓子。こうした魅力を生かして、古い住宅をカフェとして活用したいと考える方も増えています。しかし、古民家カフェの開業は、「古い住宅に厨房設備を入れれば営業できる」というものではありません。飲食店として営業するためには、保健所の施設基準を満たす必要があります。また、住宅として使われてきた建物へ不特定多数のお客様を迎え、厨房で火や電気を使うことになれば、消防上の確認も必要になります。 今回のテーマは、「古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認」です。改修工事を始めてから大きな変更が必要にならないよう、開業前に確認しておきたい実務を整理していきます。 飲食店営業許可だけを申請すればよいわけではありません 古民家カフェを開業する場合、まず思い浮かぶのが飲食店営業許可です。もちろん、飲食物を調理してお客様へ提供するのであれば、原則として飲食店営業許可の検討が必要です。しかし、申請書を提出すれば、そのまま許可されるわけではありません。営業施設が、食品衛生法や条例に基づく施設基準へ適合している必要があります。横浜市では、営業許可までの流れを、1.事前相談2.営業許可申請3.施設検査4.営業許可証の交付・営業開始と案内しています。特に重要なのが、最初の事前相談です。横浜市は、施設工事の着工前に店舗の平面図を用意し、営業施設を管轄する区の福祉保健センター生活衛生課へ相談するよう案内しています。取扱食品や調理量などによっても、必要な営業許可や設備の判断が変わります。👉工事が終わってから保健所に相談するのでは遅いことがあります。まず図面の段階で相談する。これが、古民家カフェ開業の重要な第一歩です。 住宅用の台所をそのまま使えるとは限りません 古民家には、昔ながらの台所が残っていることがあります。立派な流し台がある。水道も通っている。家庭で長年料理をしてきた。その……

横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話

~古民家を地域の小さな観光拠点にするために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第4話です。 前回は、「古民家を宿にするには何が必要か」についてお話ししました。古民家を宿として活用するには、旅館業許可、建築基準法、消防法、衛生管理、近隣との関係など、確認すべきことがたくさんあります。しかし、古民家の活用方法は宿だけではありません。地域の人が集まるカフェ。観光客が立ち寄る休憩場所。地元の食材を味わえる小さな飲食店。週末だけ開く古民家カフェ。イベントや展示と組み合わせた交流スペース。こうした使い方も、古民家や空き家の大切な活用方法です。 これまで宿を中心にお話ししてきましたので、今回は少しサプライズかもしれません。でも私は、古民家カフェも立派な観光まちづくりの入口になると考えています。宿泊しなくても、その地域を訪れる理由になる。地域の人と観光客が出会う場所になる。地元の食材や文化を伝える場所になる。空き家だった建物に、もう一度人の流れを生み出す場所になる。古民家カフェには、宿とはまた違った魅力があります。 ただし、カフェとして営業するためには、雰囲気や想いだけでは始められません。飲食店営業許可。厨房設備。食品衛生責任者。建物の用途。消防への確認。近隣環境。駐車場や騒音。こうした点を、開業前に確認しておく必要があります。 今回は、古民家カフェを始める前にまず確認したいことについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 古民家カフェは地域の入口になる 古民家カフェというと、まず思い浮かぶのは、落ち着いた空間、木のぬくもり、畳の部屋、庭を眺める席、地元野菜を使ったランチ、手作りのスイーツ、ゆっくり流れる時間。そんなイメージではないでしょうか。 確かに、古民家カフェには、普通の店舗にはない魅力があります。しかし私が注目したいのは、古民家カフェが単なる飲食店にとどまらないことです。観光客にとっては、その地域を歩くきっかけになります。地域の人にとっては、日常の中で集まれる場所になります。移住を考えている人にとっては、地域の空気を知る入口になります。空き家所有者にとっては、……

横浜の古民家を宿にするには何が必要か|第3話

~魅力を活かす前に確認したい許認可の第一歩~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第3話です。前回は、「なぜ今、古民家宿が選ばれるのか」についてお話ししました。新しいホテルにはない温かさ。地域の暮らしを感じられる空間。古い梁や柱、庭、畳、縁側、土間。そうした古民家ならではの魅力は、旅の目的そのものになることがあります。 しかし、古民家を宿にしたいと思ったとき、魅力だけで話を進めることはできません。「この建物を宿にしたい」「空き家を活かして地域に人を呼びたい」「古民家を壊さず、観光資源として使いたい」そう思ったときに、最初に確認すべきことがあります。それが、宿として使える建物なのかという視点です。 今回は、古民家を宿にするための第一歩として、確認しておきたい許認可や実務のポイントについてお話しします。 古民家の魅力と宿にする難しさ 古民家には、新築の建物にはない魅力があります。長い時間をかけて残ってきた建物には、その地域の暮らしや歴史が刻まれています。柱の傷。床のきしみ。古い建具。庭の木々。その一つひとつが、訪れる人にとっては特別な体験になります。都会のホテルでは味わえない時間。地域の空気を感じる滞在。それが、古民家宿の大きな魅力です。 しかし一方で、古民家を宿にするには難しさもあります。古い建物だからこそ、現在の法律や基準にそのまま合うとは限りません。建物の構造。避難経路。消防設備。水回り。衛生管理。近隣環境。用途地域。こうした点を確認しないまま進めてしまうと、後から大きな壁にぶつかることがあります。古民家を活かすためには、まず現実を知ることが大切です。 まず確認したいのは「宿として使う」ということ 古民家を活用するといっても、使い方によって必要な手続きは変わります。例えば、自分たちだけで使う別荘。地域の交流スペース。古民家カフェ。体験施設。民泊。簡易宿所。旅館・ホテル。同じ古民家でも、使い方が変われば、確認すべき許認可も変わります。特に注意したいのは、👉「人を泊めるかどうか」です。 お客様を宿泊させる場合、単に空いている部屋を貸すだけでは済みません。宿泊事業として行……