03 古民家・空き家活用方法 category

古民家や空き家を宿・カフェ・観光拠点として活かすための「壊すのではなく活かす」をテーマに、古民家と空き家活用の実務を解説します。

壊すのではなく活かす|古民家と空き家が地域の未来になる|第17話

~旅行業37年の行政書士が考える観光まちづくり~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日に少し肩の力を抜いて読んでいただきたい、「古民家宿・空き家活用方法」も、今回で最終話となりました。第1話からここまで、空き家を壊す前に考えたいこと。古民家宿古民家カフェ消防・建築近隣との関係観光事業地域との連携資金契約許認可と、さまざまな角度から古民家・空き家活用を考えてきました。最後まで読んでくださった方。途中の記事からこのシリーズを見つけてくださった方。検索から一つの記事だけ読んでくださった方。本当にありがとうございます。最終話でお伝えしたいのは、新しい制度でも、新しい許認可でもありません。このシリーズを通して私が一番お伝えしたかった、「壊すのではなく、活かす」ということについて、改めて考えてみたいと思います。 1.空き家を見たとき、「古い建物」で終わらせない 使われなくなった家。古くなった建物。管理が難しくなった実家。相続したものの使い道が決まらない住宅。空き家には、それぞれ事情があります。もちろん、すべての空き家を残すべきだとは思いません。建物の状態。安全性。費用。地域環境。所有者の事情。によっては、解体という選択が適切なこともあります。ただ、「古いから壊す」と決める前に、一度だけ、「この建物に、もう一度役割を持たせることはできないだろうか」と考えてみる。それが、このシリーズの出発点でした。 2.古民家の価値は、建物だけにあるのではない 古い梁柱土間庭縁側昔ながらの建具こうしたものには、新築では作れない魅力があります。でも、古民家の価値は、それだけではないと思っています。そこに、旅行者が泊まる。地域の人がコーヒーを飲む。子どもたちが集まる。地域の商品が並ぶ。その土地の食事を味わう。歴史や文化を知る。人と人が出会う。そんな使われ方が生まれたとき、建物は単に保存されるだけではなく、もう一度、地域の中で役割を持ち始めます。👉 古民家を残すことと、古民家を活かすことは同じではありません。人が関わって初めて、「活用」になるのだと思います。 3.旅行業界37年で感じてきた「旅の価値」 私は行政書士になる前、旅行業界で37年間仕事をしてきました。その中で、有名な観光地大型ホテル……

行政書士から見た空き家活用の落とし穴|第16話

~許認可・契約・運営を後回しにしない~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「補助金だけで空き家活用は成功しない」として、補助金が使えるかだけではなく、「この物件、この事業、この進め方で本当に大丈夫?」という段階で、一度専門家と事業全体を整理することの大切さをお話ししました。では今回は、もう少し具体的な場面を考えてみます。「所有者から、自由に使っていいと言われている」「改修費はこちらで負担する予定」「実際の運営は別の人にお願いしようと思っている」「宿にするか、カフェにするかは改修しながら考えたい」ここまで聞いて、少し気になるところはありませんか。実は空き家活用では、建物そのものより、「誰が、何を、どんな条件でやるのか」が曖昧なことが、後になって大きな問題につながることがあります。今回の結論を先にお伝えします。👉 空き家活用で怖いのは、許可が取れないことだけではありません。所有者・事業者・運営者・契約・許認可・お金の関係がつながっていないまま、計画だけが先へ進んでしまうこと。これが、行政書士から見て気になる大きな落とし穴です。 1.「使っていいよ」だけで改修を始めていませんか? 知人や親族が所有する空き家を、「自由に使っていいよ」と言ってくれた。それをきっかけに、宿カフェ地域交流拠点体験施設などを考えるケースがあります。でも、ここで確認したいのは、「使っていい」の中身です。無償で借りるのか。賃料を払うのか。何年間使えるのか。改修してよいのか。改修費は誰が負担するのか。設備を取り付けたら誰のものになるのか。途中で所有者から返してほしいと言われたらどうするのか。👉 「使っていい」という一言を、事業として使える条件まで具体化する必要があります。空き家活用は、ここが曖昧なまま改修費だけ先に出ていくと、後から戻しにくくなります。 2.所有者と「事業をする人」は同じですか? 次に確認したいのは、誰が事業者になるのかです。建物の所有者お金を出す人実際に店や宿を運営する人許認可を申請する人売上を受け取る人これらがすべて同じ人とは限りません。たとえば、親が所有する古民家を子どもが活用する。所有者から会社(法人)が借りる。建物を借りた人が別の運営会社へ任せる。地域団体が借……

補助金だけで空き家活用は成功しない|第15話

~お金をもらう前に事業計画を整える~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「古民家宿は地域を変えられるのか」として、古民家宿が旅行者と地域をつなぐ可能性について考えました。 今回は、👉「使えそうな補助金も見つかった。物件も気に入っている。そろそろ改修を始めても大丈夫?」という悩みを考えます。空き家活用では、補助金がある。安く物件を借りられる。古民家の雰囲気がよい。といったことが、事業を始めるきっかけになることがあります。しかし、本当に確認したいのは、「補助金が使えるか」ではありません。👉 その建物で、考えている事業を実際に始め、続けられるのか。ここを確認しないまま進めると、改修を始めてから問題が見つかることがあります。 「補助金が使える」だけで進めて大丈夫? 補助金が見つかると、「これなら改修できそう」と思います。しかし、補助金が使えることと、その事業が成立することは別です。古民家宿なら、宿泊事業として使えるのか。古民家カフェなら、飲食店として必要な設備を整えられるのか。体験施設なら、その用途で建物を利用できるのか。を見る必要があります。👉 補助金の採択可能性より先に、「この建物でこの事業ができるか」を確認しましょう。 物件を契約する前に確認したいことがある 空き家活用で怖いのは、物件を契約してから問題に気づくことです。立地がよい。家賃が安い。雰囲気が気に入った。という理由だけで契約を進め、その後に、予定していた営業が難しい。大きな改修が必要。消防設備の追加が必要。と分かれば、事業計画そのものを見直すことになります。👉「借りられる」と「事業に使える」は別住宅として使える建物でも、宿。飲食店。観光施設。として使う場合には、別の確認が必要になることがあります。👉 空き家活用では、契約前の確認が非常に重要です。 「誰が来るのか」を説明できますか? 建物の魅力だけでなく、誰が利用するのかも確認します。たとえば、古民家だから泊まりたい人なのか。地域観光を目的に訪れる人なのか。地元住民が利用するカフェなのか。外国人旅行者なのか。そして、なぜその人が、わざわざその場所まで来てくれるのか。ここが曖昧な……

古民家宿は地域を変えられるのか|第14話

~宿泊から始まる観光まちづくり~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、「古民家カフェだけでは厳しい理由」として、魅力のある場所をつくることと、その事業を長く続けることは同じではない、という視点から考えました。 今回は、古民家を「泊まる場所」として活用したとき、地域にどんな変化が生まれるのかを考えてみます。一軒の古民家を宿にしたからといって、地域全体が急に変わるわけではありません。しかし、これまで人が訪れなかった地域に新しく旅行者が滞在すると、地域の店を利用する。まちを歩く。人と出会う。地域を知る。という新しい動きが生まれる可能性があります。👉 古民家宿の価値は、建物を再生することだけではなく、「地域に滞在する人」を生み出すことにもあります。 「訪れる地域」から「泊まる地域」へ 観光地を訪れても、数時間で通り過ぎてしまうことがあります。しかし、宿泊滞在すると、夕方の町を歩く。地元で夕食を食べる。翌朝も地域で過ごす。という時間が生まれます。つまり、宿があることで、旅行者がその地域で過ごす時間が長くなるということです。古民家宿であれば、建物そのものが地域の歴史や暮らしを感じる場所にもなります。👉 「見に来る地域」から「滞在する地域」へ変わることは、古民家宿が生み出せる大きな変化の一つです。 宿泊者の消費は宿の外にも広がる 旅行者が地域に泊まれば、飲食店。商店。直売所。体験事業者。交通。などを利用する可能性も生まれます。すべてを宿の中で提供するのではなく、「夕食はこちらのお店へ」「朝はこちらを歩いてみてください」「この地域ならこんな体験があります」と地域へつなぐ方法もあります。宿泊者一人ひとりの消費は小さくても、それが積み重なれば地域の事業者にも新しい需要が生まれます。👉 古民家宿を一軒の施設で完結させず、地域全体を宿泊者の滞在場所として考えることが大切です。 「また来たい」が地域との関係をつくる 古民家宿を訪れた人が、一度泊まって帰る。それだけで終わるとは限りません。地域を気に入れば、もう一度訪れる。地域の商品を買う。イベントに参加する。友人に紹介する。という関係へつながることがあります。さらに、「こんな地域で暮らしてみたい」「も……

古民家カフェだけでは厳しい理由|第13話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 古民家を活用したいと考えたとき、「カフェにしたい」というアイデアは、とても自然です。昔ながらの梁や柱。庭。縁側。落ち着いた空間。現代的な店舗にはない雰囲気そのものが、古民家の大きな魅力になります。実際、「古民家カフェなら行ってみたい」と思う方も少なくないでしょう。しかし、👉魅力のある場所をつくることと、その事業を長く続けることは同じではありません。改修費。維持費。人件費。光熱費。食材費。そして、カフェの客単価。これらを考えると、カフェの売上だけで古民家を維持することが難しい場合もあります。👉 今回は、「古民家カフェをやめた方がよい」という話ではなく、利用者に選ばれる場所を、どう持続できる事業にしていくのかを考えます。 古民家には「行ってみたくなる力」がある 古民家カフェの強みは、単にコーヒーや食事を提供することではありません。建物そのものが、来店する理由になります。写真を撮りたい。昔の建物を見てみたい。静かな場所で過ごしたい。地域らしい雰囲気を楽しみたい。こうした目的で訪れる方もいます。一般的なカフェとは違い、空間そのものが商品になるのが古民家の魅力です。一方で、ここには難しさもあります。 「一度行きたい」と「また行きたい」は違う 観光的な魅力だけでは、「一度行けば満足」になってしまうことがあります。事業を続けるためには、初めて訪れる人だけでなく、もう一度利用したいと思う理由も必要です。👉 古民家という建物が最初の来店理由になり、サービスや居心地が再来店の理由になる。この二つを分けて考えることが大切です。 カフェは客単価と営業時間に限界がある カフェ事業では、1人のお客様が利用する金額にはある程度の幅があります。また、席数。営業時間。回転数。によって、一日に受け入れられる人数にも限りがあります。古民家の場合、建物の広さがあっても、すべてを客席として使えるとは限りません。さらに、古い建物だからこその修繕。庭の管理。空調。清掃。などが必要になることもあります。👉 売上だけでなく、「その建物を維持するためにいくら必要か」から考えることも重要です。 「満席だから成功」とは限らない ……

観光事業としての古民家活用を考える|第12話

~利用者にとって「また来たい場所」になるために~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「地域に愛される古民家活用とは」として、古民家を地域の中でどう残していくかについて考えました。 今回は、少し視点を変えます。古民家宿。古民家カフェ。体験施設。交流スペース。利用する人は、その建物に何を期待して訪れるのでしょうか。今回考えたいのは、👉 古民家を「何に使うか」ではなく、「そこでどんな時間を過ごしてもらうか」という視点です。 古民家だから選ばれるとは限らない 古い梁。土壁。縁側。昔ながらの建具。長い年月を重ねた木の質感。こうしたものは、古民家ならではの魅力です。ただし、「古民家です」というだけで、利用者に選ばれ続けるとは限りません。利用者が感じるのは、落ち着けたか。居心地がよかったか。大切な人とよい時間を過ごせたか。その場所ならではの記憶が残ったか。ということです。👉 建物の古さは魅力の入口であって、利用者が持ち帰る価値そのものではありません。 「昔ながら」と「使いにくい」は同じではない 古民家らしさを残そうとすると、できるだけ手を加えたくないという気持ちも出てきます。しかし、古いこと。不便なこと。使いにくいこと。は同じではありません。例えば、冬に極端に寒い。館内が暗すぎる。段差が分かりにくい。トイレが使いづらい。案内が分からない。こうしたことまで、「古民家だから仕方がない」としてしまうと、利用者にとっては魅力ではなく負担になります。残したいものは残す。安心して過ごすために必要な部分は整える。👉 古民家らしさを守ることと、利用者に我慢を求めることは別です。 記憶に残るのは「そこで過ごした時間」 利用者が後から思い出すのは、建物の築年数だけではありません。縁側で朝を過ごした。静かな部屋で家族と話した。古い梁を眺めながら食事をした。庭を見ながらお茶を飲んだ。建物の由来を聞いた。そうした時間が、「また行きたい」という気持ちにつながります。だからこそ、設備や内装だけではなく、利用者がどのようにその場所で時間を過ごすかを考えることが大切です。 写真だけでは伝わらない魅力もある 古民家は写真との相性がよい建物です。一方で、木の香り……

地域に愛される古民家活用とは|第11話

~建物を残すだけでなく、地域に必要とされる場所へ~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「古民家活用で見落としやすい消防と建築の壁」として、古民家の魅力を残して活用するためにも、契約や本格改修の前に消防・建築を確認することの大切さをお伝えしました。では、消防。建築。許認可。こうした条件をクリアできれば、古民家活用は成功なのでしょうか。もちろん、それだけではありません。古民家宿。古民家カフェ。地域交流施設。体験型観光施設。どのような形であっても、その建物は地域の中にあります。今回考えたいのは、👉 古民家を「建物として残す」だけでなく、「地域に必要とされる場所」として残すには何が大切なのかということです。 地域にある建物だから、地域との関係が欠かせない 古民家を事業として活用すると、それまでとは建物の使われ方が変わります。例えば宿になれば、旅行者が訪れる。車の出入りが増える。夜間にも人が滞在する。カフェになれば、来店客が増える。駐車や自転車の問題が生じる。営業時間によって周辺環境も変わる。可能性があります。事業者にとっては魅力的な活用でも、近隣の方にとっては、「これから何が始まるのだろう」と不安を感じることもあります。だからこそ、許可が取れるかどうかだけでなく、地域の中でどう運営していくかまで考えておく必要があります。 「地域のために」だけでは続かない 古民家活用では、「地域を活性化したい」「人が集まる場所をつくりたい」という言葉がよく使われます。その思いは大切です。しかし、👉地域のためになると思っていることと、地域の人が本当に求めていることは同じとは限りません。例えば、観光客をたくさん呼ぶこと。イベントを頻繁に開催すること。夜まで営業すること。が、必ず地域に歓迎されるとは限りません。一方で、地元のお店を宿泊客に紹介する。地域の商品を販売する。地域の食材を使う。地元の人も利用できる場所にする。地域の歴史や文化を来訪者へ伝える。などといった形なら、古民家を中心に地域へ価値が広がっていきます。👉 「地域のために何をするか」より、「地域と一緒に何ができるか」と考えることが大切です。 古民家の中だけで事業を完結させない 例えば古民家宿……

古民家活用で見落としやすい消防と建築の壁|第10話

~契約・本格改修の前に確認したいこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「空き家活用で失敗する人の共通点」として、物件を先に決める。補助金を見てから事業を考える。開業してから資金繰りを考える。といった、判断の順番が逆になることの危険性についてお伝えしました。 今回は、その中でも古民家や空き家の活用で特に見落としやすい、消防と建築について考えます。古民家宿。古民家カフェ。飲食店。地域交流施設。体験施設。古い建物には、新しい建物にはない魅力があります。しかし、「今まで住宅として使えていたから、そのまま宿や店にできる」とは限りません。今回のポイントは、👉 古民家の魅力を残すためにも、契約や本格改修の前に消防・建築の確認をするということです。 住宅として使える建物と、事業に使える建物は同じではない 空き家や古民家の多くは、もともと住宅として建てられています。それを、宿泊施設。飲食店。店舗。などに使うと、建物の「用途」が変わります。用途が変われば、避難。防火。構造。設備。など、確認すべき基準も変わる可能性があります。国土交通省は、200㎡以下の特殊建築物では用途変更時の建築確認手続が不要となる場合がある一方で、建築確認が不要でも、建築基準法や消防法に適合しなくてよいわけではないと注意を促しています。ここは特に誤解しやすいところです。👉 「確認申請がいらない」と「確認する必要がない」は別です。 古民家では消防設備が後から増えることがある 古民家を宿泊施設や飲食店として活用する場合、用途や規模、建物の状況によって、消火器。自動火災報知設備。誘導灯・誘導標識。非常警報設備。などの消防用設備が必要になることがあります。消防庁も、古民家を宿泊施設・飲食店・物販店として活用する事業者向けに、消防用設備等についての案内を公開しています。問題は、改修工事がほぼ終わってから消防署へ相談するというケースです。設備の追加だけならまだしも、配線。壁や天井。避難経路。出入口。などに関係すると、工事のやり直しにつながることもあります。だからこそ、👉 図面を作る段階で消防署へ相談することが重要です。 建築では「昔からある建物」だからこその確認が必要 古……

空き家活用で失敗する人の共通点|第9話

~契約・購入・改修の前に確認したいこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点」として、宿泊と飲食を別々に考えるのではなく、建物全体の使い方や動線、許認可を早い段階から一体で考えることの大切さをお伝えしました。では、そもそも空き家や古民家を活用するとき、どの段階で判断を誤りやすいのでしょうか。古民家宿。古民家カフェ。地域交流施設。体験型観光施設。空き家には、さまざまな活用方法があります。一方で、「建物の雰囲気が気に入った」「安く購入できた」「補助金が使えそうだ」「地域のためになりそうだ」という思いだけで進めると、後から想定外の問題が見つかることがあります。今回のポイントは、👉 空き家活用で失敗しやすいのは、手続を知らないことよりも、「何をしたいか」を決める前に物件や改修を先に進めてしまうことです。 物件を先に決めてしまう 気に入った古民家を見つけると、「ここで宿をやりたい」「カフェにしたい」と思うかもしれません。しかし、その建物で希望する事業ができるかどうかは別の問題です。宿泊。飲食。地域交流。体験施設。用途が変われば、必要な確認も変わります。そのため、何をしたいのか。誰に利用してもらいたいのか。その事業に必要な条件は何か。を整理してから物件を見る方が安全です。👉 「この物件で何をするか」ではなく、「やりたい事業にこの物件が合うか」で考えます。 「安い」「補助金がある」だけで判断しない 空き家は、取得価格だけを見ると魅力的に見えることがあります。しかし実際には、改修。設備。消防対応。許認可対応。開業準備。などに費用がかかることがあります。また、「補助金が使えるならやってみよう」という考え方にも注意が必要です。補助金は事業を成立させるものではありません。採択されないこともあります。自己負担もあります。対象外となる経費もあります。大切なのは、補助金がなくても、その事業をやりたいのか。開業後も続けられる見通しがあるのか。を先に考えることです。👉 補助金や安さは「始める理由」ではなく、事業を実現するための条件の一つです。 開業できるかだけでなく、続けられるかを見る 空き家活用では、物件……

宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点|第8話

~旅館業許可と飲食店営業許可を一体で考える~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「古民家カフェを地域に愛される観光拠点にするには」について考えました。地域の飲食店や商店を紹介する。地元の商品や食材を活用する。周辺を歩いてもらう仕組みをつくる。地域住民の声を店づくりに生かす。こうした取組によって、古民家カフェは飲食を提供する場所だけでなく、地域の魅力を伝える観光拠点にもなります。 今回は、「宿泊と古民家カフェを組み合わせるときの注意点」について考えます。いつもの日曜日の朝はリラックスしてお付き合いください。古民家を活用する方法は、宿泊施設か。カフェか。どちらか一つとは限りません。古民家宿で朝食を提供する。宿泊者以外にもカフェを開放する。昼はカフェ、夜は宿として使用する。地域イベントの際に食事を提供する。といった組合せも考えられます。しかし、旅館業許可があれば自由に食事を提供できる。飲食店営業許可があれば宿泊者を受け入れられる。というわけではありません。👉宿泊と飲食を組み合わせる場合は、二つの営業を一つの建物全体で考える必要があります。 旅館業許可と飲食店営業許可は別の手続です 宿泊料を受けて人を宿泊させる営業には、原則として旅館業法に基づく許可が必要です。旅館業の許可では、客室、換気、採光、衛生設備など、宿泊施設としての構造設備が確認されます。一方、食品を調理して客に提供する営業は、食品衛生法上の飲食店営業に該当し、営業内容に応じた許可が必要です。飲食店営業には、一般のレストランやカフェだけでなく、ホテル・旅館の厨房も含まれます。つまり、👉宿泊を行うための許可。👉食事を提供するための許可。は別々に確認しなければなりません。同じ建物で営業する場合でも、どの場所で何を行うのかを明確にする必要があります。 最初に営業の形を具体的にする 「古民家で宿とカフェをやりたい」というだけでは、必要な設備や許可を判断できません。まず、実際の営業方法を書き出します。 ・宿泊者にだけ食事を提供する 例えば、朝食だけを提供する。夕食付きの宿泊プランを販売する。宿泊者へ軽食や飲物を提供する。という形です。宿泊者だけを対象とする場合でも、厨房で……