02 旅館業 開業後の落とし穴 category

旅館・ホテル経営を地域に残る資産へ変えるために|第19話

~許可を取ることから、宿を次の世代へつなぐことまで~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「旅館業の事業承継と出口戦略|旅館業許可は引き継げるのか」について考えました。旅館業許可は、建物や屋号と一緒に自動的に移るものではありません。親族への承継。第三者への事業譲渡。相続。法人の合併や分割。廃業。どの方法を選ぶかによって、必要な手続は異なります。また、次の営業者へ引き継ぐものは、旅館業許可だけではありません。従業員。予約。取引先。運営記録。設備の情報。近隣や地域との関係。これらも、宿を支えてきた大切な財産です。 今回で、「旅館・ホテル開業後の実務と経営」について考えてきた「旅館業 開業後の落とし穴編」シリーズは最終話となります。最終話では、👉旅館・ホテルを一時的な営業施設ではなく、地域に残る資産へ変えるには何が必要かについて、これまでの記事を振り返りながら考えてみます。 旅館業許可の取得はゴールではありません 旅館・ホテルの開業を考えたとき、最初に大きな課題となるのが旅館業許可です。保健所へ相談する。消防署へ相談する。建物や設備を確認する。必要な書類をそろえる。申請を行う。検査を受ける。こうした手続を経て、ようやく営業を始めることができます。そのため、許可証を受け取ると、これで準備が終わった。ようやく安心できる。と感じるかもしれません。しかし、実際には、許可を取得した日から宿の運営が始まります。宿泊者を受け入れる。従業員を雇う。予約を管理する。料金を決める。宿泊者名簿を整える。消防・衛生の状態を維持する。営業内容が変われば必要な届出を行う。旅館業許可は、宿を経営するための入口です。👉許可を取ることではなく、許可を守りながら営業を続けることが本当の課題です。 宿を続けるには利益を残す必要があります 旅館・ホテルは、多くの人や設備によって支えられています。従業員。清掃。リネン。食材。光熱費。建物や設備の修繕。予約システム。OTAへの手数料。広告や情報発信。法令対応。宿泊者に喜んでもらうためのサービスだけでなく、安全な施設を維持するためにも費用が必要です。そのため、宿泊者に喜んでもらえればよい。稼働率が高ければよい。売上が増えればよい。というだけでは、……

旅館業の事業承継と出口戦略|旅館業許可は引き継げるのか|第18話

~売却・相続・事業譲渡の契約前に確認したいこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「地域と共に生きる宿だけが長く続く理由」について考えました。宿泊によって生まれる利益を宿の中だけにとどめず、地域の飲食店や商店へ宿泊者をつなぐ。地元の商品やサービスを利用する。地域の魅力とルールを宿泊者へ伝える。地域住民や行政と対話する。という積み重ねが、地域から応援される宿につながります。しかし、宿を長く残すためには、現在の営業だけでなく、その先も考えなければなりません。親族へ引き継ぐ。従業員へ引き継ぐ。第三者へ売却する。法人化する。建物を貸す。廃業する。経営者には、いつか何らかの選択が必要になります。今回は、👉旅館・ホテルを売却・譲渡・相続する場合に、旅館業許可をどのように扱うのかについて考えます。 旅館業許可は建物についてくるものではありません 旅館・ホテルの建物を購入すれば、買主がそのまま営業できると思われることがあります。しかし、旅館業許可は、建物そのものに付いている権利ではありません。許可を受けた営業者が、許可を受けた施設で旅館業を営むためのものです。そのため、建物を売買した。営業設備を引き渡した。宿の名称を引き継いだ。予約サイトの掲載ページを引き継いだ。という事実だけで、買主が旅館業の営業者になるわけではありません。大切なのは、誰が現在の許可を受けているのか。誰が次の営業者になるのか。どの方法で事業を引き継ぐのか。を確認することです。 事業譲渡では事前の承認が必要です 以前は、旅館業を事業譲渡する場合、譲受人が原則として新たに許可を取得する必要がありました。現在は、👉旅館業法上の承継承認を受けることで、譲受人が営業者の地位を承継できる制度が設けられています。ただし、事業を譲渡した後に届け出ればよいわけではありません。譲渡人と譲受人は、事業譲渡の効力が発生する前に、都道府県知事等の承認を受ける必要があります。例えば横浜市も、承認前に譲渡の効力が発生した場合は承継制度を利用できず、新規許可が必要になると案内しています。したがって、事業譲渡契約を結ぶ。代金を支払う。施設を引き渡す。買主が営業を始める。という日程を決める前に、管轄する行政窓口へ相談する必要があ……

地域と共に生きる宿だけが長く続く理由|第17話

~地域住民・地元事業者・行政と価値を分かち合う~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「近隣トラブルで苦しむ宿の特徴とクレーム対応」について考えました。旅館・ホテルを営業していれば、宿泊者の話し声。深夜の出入り。路上駐車。喫煙。ごみ出し。送迎車両。などについて、近隣から意見や苦情を受けることがあります。大切なのは、苦情を受けたときに事実を確認する。現在起きている問題を止める。対応内容を記録する。スタッフへ共有する。同じ問題を繰り返さないために運営を見直す。という流れを整えることです。しかし、迷惑をかけない。苦情を起こさない。というだけでは、地域から応援される宿にはなりません。宿泊客が増えることで、地域には、人や車の出入りが増える。生活道路が混雑する。夜間も知らない人が歩く。ごみや騒音への不安が生じる。といった負担がかかることがあります。その一方で、地域の飲食店や商店を利用する。地元の商品や食材を購入する。地域で働く人を雇用する。空き家や使われていない建物を再生する。地域の魅力を宿泊者へ伝える。という価値を生み出すこともできます。 今回は、👉旅館・ホテルが地域へ負担だけを残さず、地域住民・地元事業者・行政と価値を分かち合うには何が必要かについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えます。 地域は宿泊事業の「背景」ではありません 旅館・ホテルの魅力を考えるとき、客室。食事。温泉。館内設備。接客。立地。など、施設の中にあるものへ目が向きやすくなります。しかし、宿泊者が感じる旅の魅力は、宿の中だけで作られるものではありません。地域の風景。駅から宿までの道。近くの飲食店。地域で暮らす人との会話。地元の食材や商品。祭りや季節の行事。こうしたものも、宿泊体験の一部になります。宿は地域と切り離された建物ではありません。地域の魅力があるから宿泊者が訪れ、宿があることで地域を訪れる人が増えます。👉宿と地域は、お互いの価値を高める関係にあります。 宿泊客が増えれば地域も喜ぶとは限りません 宿泊者が増えることは、宿にとっては売上の増加につながります。しかし、地域住民にとっては、必ずしも利益だけではありません。例えば、住宅地に大きな車両が入る。駐車場へ入れな……

近隣トラブルで苦しむ宿の特徴とクレーム対応|第16話

~苦情が入ったときの初動と再発防止を整える~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、「旅館・ホテルの変更届|客室・定員・設備を変える前に確認したいこと」について考えました。旅館・ホテルの営業内容を変える場合は、変更してから届け出るのではなく、工事を始める前。設備を購入する前。予約サイトで販売する前。営業者を変更する契約を結ぶ前。に、必要な手続を確認することが大切です。今回は、「近隣トラブルで苦しむ宿の特徴とクレーム対応」について考えます。旅館・ホテルを営業していると、宿泊者の話し声。深夜の出入り。路上駐車。喫煙。ごみ出し。送迎車両。などについて、近隣から意見や苦情が寄せられることがあります。開業前に十分な対策を行っていても、すべてのトラブルを防げるとは限りません。大切なのは、👉苦情が入ったときに、誰が何を確認し、どう対応するかを決めておくことです。 近隣トラブルで苦しむ宿には共通点があります 近隣トラブルが繰り返される宿では、問題そのものよりも、苦情を受けた後の対応に課題があることがあります。例えば、誰が苦情を受けるのか決まっていない。担当者によって説明が違う。宿泊者の行動だから仕方がないと考える。謝罪だけで終わり、記録を残さない。スタッフへ共有されない。予約サイトや館内案内を直さない。同じ問題が繰り返されても原因を確認しない。という状態です。一度の苦情であれば、相手も事情を理解してくれることがあります。しかし、同じ問題が何度も続くと、話を聞いてくれない宿。改善する気がない宿。地域の生活を軽く考えている宿。という印象につながります。👉近隣トラブルを大きくするのは、問題の発生だけでなく、その後の対応です。 最初に行うのは反論ではなく事実確認です 苦情を受けたとき、施設側にも言い分があるかもしれません。宿泊者がしたことなので分からない。うちの駐車場ではない。営業時間内の出来事である。一度だけのことだと思う。しかし、最初から反論すると、近隣の方は、話を聞いてもらえない。責任を避けている。と感じる可能性があります。まず確認したいのは、いつ起きたのか。どこで起きたのか。何が問題だったのか。どのくらい続いたのか。宿泊者や車両を特定できるか。現在も続いているのか。という事実……

旅館・ホテルの変更届|客室・定員・設備を変える前に確認したいこと|第15話

~「少し変えるだけ」と自己判断しないために~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「旅館・ホテルの宿泊者名簿と本人確認の実務」について考えました。宿泊者名簿は、必要事項を記載するだけでなく、本人確認。外国人宿泊者への案内。パスポート情報の取扱い。保存と廃棄。照会を受けた場合の対応。までを一つの流れとして整えることが大切です。一方、旅館・ホテルを営業していると、客室を増やしたい。宿泊定員を変更したい。間仕切りや設備を変えたい。食事の提供を始めたい。法人名や代表者が変わった。ということがあります。しかし、一口に変更といっても、変更届で対応できるもの。事前に保健所や消防署へ相談すべきもの。別の許可や承継手続が関係するもの。があります。 今回は、👉旅館・ホテルの営業内容を変える前に、何をどこへ確認すべきかについて考えます。 変更届は「変更した後に出せばよい」とは限りません 横浜市では、旅館業の許可申請をした内容に変更が生じた場合に使用する「旅館業営業事項変更届出書」が用意されています。届出先は、施設所在地を所管する区福祉保健センター生活衛生課です。ただし、変更届の様式がある。ということと、工事や運用変更を先に進めてよい。ということは別です。特に、客室、間取り、設備、定員などを変える場合は、旅館業の基準だけでなく、消防。建築。食品衛生。などの確認が必要になることがあります。👉まず変更内容を相談し、必要な手続を確認してから進める。これが基本です。 まず「何を変えるのか」を整理します 変更を考えたときは、次の三つに分けてみましょう。 1.営業者や申請事項に関する変更 例えば、施設名。営業者の住所。法人名。法人の代表者。管理体制。などです。このような変更は、旅館業の変更届の対象になる可能性があります。ただし、法人の代表者が変わる。法人そのものが別法人になる。個人営業から法人営業へ変える。事業を他者へ譲渡する。というケースは、同じ扱いではありません。誰が営業者になるのかが変わる場合は、単なる名称変更ではなく、承継承認や新たな許可が関係する可能性があります。 2.客室・定員・設備に関する変更 例えば、客室を増減する。物置を客室として使う。客室の間仕……

旅館・ホテルの宿泊者名簿と本人確認の実務|第14話

~外国人宿泊者への対応と個人情報管理で迷わないために~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、「旅館業許可取得後も続く消防・保健所対応の実務」について考えました。旅館業許可を取得した後も、消防設備の点検や衛生管理、客室・定員・設備を変更する際の相談や届出は続きます。そして、日々の営業の中で欠かせないものの一つが、宿泊者名簿です。宿泊者名簿は、宿泊者の氏名を書いてもらうだけの書類ではありません。必要な事項を正確に記載する。宿泊者本人であることを確認する。外国人宿泊者について必要な対応を行う。個人情報として適切に保存する。警察などから照会を受けた場合に対応する。という、フロント業務と法令対応の両方に関係します。今回は、👉旅館・ホテルの現場で見落としやすい、宿泊者名簿と本人確認の実務について考えます。 宿泊者名簿はすべての宿泊者について作成します 旅館業を営む営業者は、宿泊者名簿を備えなければなりません。現在、旅館業法上の基本的な記載事項は、・氏名・住所・連絡先です。2023年12月13日の旅館業法改正により、従来の「職業」が削除され、新たに「連絡先」が追加されました。さらに横浜市では、・到着日時・出発日時・年齢・国籍・旅券番号を記載できる様式とすることが定められています。ただし、国籍と旅券番号の記載が必要となるのは、原則として日本国内に住所を有しない外国人宿泊者です。大切なのは、👉予約代表者だけでなく、実際に宿泊する人を把握することです。家族やグループで宿泊する場合も、誰が宿泊しているのかを確認できる状態にしておく必要があります。 予約情報だけで済ませず、チェックイン時に確認する OTAや自社サイトから予約を受けると、氏名。住所。電話番号。メールアドレス。などが、すでに登録されていることがあります。しかし、予約された情報をそのまま宿泊者名簿に転記するだけでは、実際に宿泊する人と一致しているか分かりません。厚生労働省は、宿泊者名簿の正確な記載を確保するため、チェックイン時に本人確認を行う必要があるとしています。確認したいのは、予約者と宿泊者が同じか。同行者を含めた宿泊人数が合っているか。記載された住所や連絡先に不足がないか。という点です。👉予約情報を集めるこ……

旅館業許可取得後も続く消防・保健所対応の実務|第13話

~営業開始後に見落としやすい点検・変更届・記録~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「宿泊料金はどう決める?安売りを防ぐ価格設定」について考えました。旅館やホテルを長く続けていくためには、お客様に選ばれる料金を考えるだけでなく、必要な利益を確保し、安定した運営につなげることが大切です。一方で、適切な料金を設定し、予約を受けられるようになっても、営業を続けるための管理が終わるわけではありません。旅館業許可を取得した後も、消防設備の点検。設備や客室の変更。宿泊定員の変更。衛生管理と記録。必要な届出。への対応は続きます。開業時には許可内容と合っていた施設でも、営業を続ける中で客室の使い方や設備、サービスの内容が少しずつ変わることがあります。その変化を確認しないまま営業を続けると、現在の施設や運営方法が、許可を取得した当時の内容と合わなくなる可能性があります。 今回は、👉旅館業許可を取得した後に確認したい、消防・保健所対応の実務について考えます。 許可を取得したときの状態を維持する 旅館業許可は、申請書、図面、設備、現地調査などをもとに判断されます。そのため、営業開始後に、客室の使い方を変えた。客室数や宿泊定員を変更した。浴室や洗面設備を改修した。フロントや管理体制を変更した。飲食の提供方法を変えた。という場合には、許可取得時の内容と現在の営業に違いが生じます。変更内容によっては、保健所への届出や事前相談が必要です。横浜市で旅館業を営む場合は、施設を所管する区福祉保健センター生活衛生課が主な相談窓口です。構造設備や営業内容を変えるときは、工事や運用変更を始める前に確認することが大切です。👉変更してから届け出るのではなく、変更を計画した段階で相談する。これが、手戻りを防ぐ基本です。 消防設備は設置後も点検が続きます 消火器。自動火災報知設備。誘導灯。避難器具。非常警報設備。こうした消防用設備は、設置して終わりではありません。横浜市では、建物の所有者、管理者、占有者に対し、建物の規模にかかわらず、 消防用設備等を定期的に点検し、 その結果を報告する義務があると案内しています。 機器点検は原則として6か月ごとに行います。建物の用途や規模によっては、消防設備士や消防……

宿泊料金はどう決める?安売りを防ぐ価格設定|第12話

~周辺相場だけに合わせず、宿に必要な利益を残すために~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし」について考えました。口コミ評価が高く、再訪してくれるお客様が増えても、宿泊料金そのものが適切でなければ、十分な利益は残りません。予約は入っている。客室も埋まっている。それでも、👉「忙しいのに利益が残らない」という宿があります。 今回は、👉宿泊料金は何を基準に決めればよいのかについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えます。 周辺の宿より安ければよいのでしょうか 宿泊料金を決めるとき、周辺施設の料金を調べることは大切です。同じ地域。同じくらいの客室数。食事や設備の違い。口コミ評価。こうした比較は、料金を考える参考になります。しかし、「周辺の宿が1万円だから、うちも1万円」と決めるだけでは十分ではありません。宿ごとに、・家賃や借入金・人件費・光熱費・清掃費・食材費・設備の維持費・OTAなどの販売費用が異なるからです。周辺相場に合わせた結果、予約は入っても利益が残らないことがあります。👉相場は参考にしても、料金の根拠にはしすぎないことが大切です。 一室を販売するための費用を確認する 料金を決める前に、一室を販売すると、いくら費用がかかるのかを確認します。例えば、・客室清掃・シーツやタオルの洗濯・アメニティー・水道光熱費・食事の材料・人件費・決済や販売の手数料などです。さらに、家賃。固定資産税。保険料。システム利用料。設備の修繕や保守費。借入金の返済。といった費用は、客室が空いていても発生します。そのため、「一室を準備する費用」だけでなく、「宿を維持するための費用」も料金に反映する必要があります。 満室でも利益が残らないことがあります 安い料金を設定すれば、予約は入りやすくなるかもしれません。しかし、宿泊者が増えれば、清掃。食事。アメニティー。スタッフの勤務時間。設備の使用。も増えます。その結果、売上は増えても、利益がほとんど増えていないことがあります。注意したいのは、👉満室にすること自体が目的になることです。何室売れたかだけでなく、一室販売した結果、👉……

口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし|第11話

~「また利用したい」を次の予約につなげるために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「OTA依存は危険?旅館・ホテルの利益率低下を防ぐ方法」について考えました。OTAは、宿と新しいお客様をつなぐ大切な販売経路です。しかし、OTAを通じて多くのお客様に泊まってもらっても、毎回新しいお客様を集め続けなければならない状態だけでは、安定した経営にはつながりません。口コミには、「接客が丁寧だった」「食事がおいしかった」「また利用したい」と書かれている。評価も悪くない。それでも、実際には再訪はされていない。今回は、👉口コミ評価は良いのに、なぜ次の予約につながらないのかについて考えます。 「満足した」と「もう一度選ぶ」は同じではありません お客様が満足して帰ったからといって、必ず再訪してくれるとは限りません。旅行からしばらくたてば、宿の名前や予約方法を忘れてしまうことがあります。ほかにも魅力的な宿は、次々と目に入ってきます。つまり、「良い宿だった」という記憶だけでは、次の予約につながらないことがあります。もう一度選んでもらうには、・宿のことを思い出すきっかけ・再び訪れる理由・迷わず予約できる方法が必要です。 口コミは「結果」であって、再訪の仕組みではありません 良い口コミが増えることは、新しいお客様に宿を知ってもらううえで大切です。しかし、口コミを書いてもらっただけで、そのお客様との関係が続くわけではありません。口コミへの返信も、「ご宿泊ありがとうございました」「またのお越しをお待ちしております」だけで終わっていないでしょうか。例えば、「秋には周辺の紅葉が見頃になります」「次回は連泊で、別の地域も巡っていただけます」「春には今回とは違う食材を使った料理をご用意します」と伝えれば、お客様に次の季節を想像してもらえます。大切なのは、単に「また来てください」と伝えることではありません。👉次に訪れる理由を具体的に示すことです。 同じ宿へ再訪する理由を用意する 一度泊まった宿へ、もう一度泊まる理由は何でしょうか。宿が気に入った。スタッフに会いたい。季節の料理をもう一度味わいたい。前回行けなかった場所を訪れたい。家族や友人にも体験してもらいたい。理由は人によって……

OTA依存は危険?旅館・ホテルの利益率低下を防ぐ方法|第10話

~予約件数ではなく、宿に残る利益で販売経路を考える~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 ここ数回は、外国人スタッフの雇用や在留資格、定着、更新、永住についてお話ししてきました。宿を長く続けるためには、人材だけでなく、収益構造を整えることも大切です。予約は入っている。客室も埋まっている。現場も忙しい。それでも、「思ったほど利益が残らない」ということがあります。その原因の一つが、OTAへの依存です。今回は、OTAを使うか使わないかではなく、👉OTAと自社予約をどう使い分け、宿に利益を残すかについて考えます。 OTAは必要な販売経路です OTAとは、宿泊施設を検索・比較し、そのまま予約できるオンライン予約サイトです。OTAには、・多くの旅行者へ宿を知ってもらえる・開業直後でも予約を獲得しやすい・海外や遠方の旅行者へ販売できる・空室を販売しやすいという大きな利点があります。 なお、宿泊施設の販売方法を考えるうえでは、OTAだけでなく、旅行会社との契約や旅行業登録の仕組みを理解しておくことも大切です。旅行業登録の種類や区分については、以前の記事でも整理しています。▶ 旅行業登録の種類と区分の選び方 特に、新しく開業した宿。知名度の低い宿。外国人旅行者を受け入れたい宿。こうした施設にとって、OTAは重要な集客手段です。問題はOTAを使うことではありません。👉予約の大部分をOTAに頼り、自社で販売方法を選べなくなることです。 予約が増えても、利益が増えるとは限りませんOTA経由の予約には、手数料や販売費用がかかります。さらに、・割引プラン・会員向け価格・ポイント負担・キャンペーン参加・広告掲載などによって、宿に残る金額が少なくなることがあります。同じ1泊2万円の予約でも、自社サイト。電話。国内OTA。海外OTA。旅行会社。どこから予約が入ったかによって、最終的に宿へ残る金額は異なります。そのため、予約件数や売上だけでなく、👉販売経路ごとの手取り額を確認することが大切です。 OTA依存は予約比率だけでは判断できません OTA予約が多くても、閑散期の空室を効率よく販売できている。海外から新しいお客様を呼び込めている。OTAで知ったお客……