旅館・ホテルの口コミ評価が下がる宿の共通点とは|第2話

~お客様の不満は、開業後の運営体制に表れる~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
旅館業許可取得後に本当に始まる宿経営についてお話ししました。
旅館業は、
許可を取得すれば終わりではありません。
お客様を迎え始めてから、
本当の宿経営が始まります。
今回のテーマは、
「口コミ評価」
です。
ただし今回は、
「良い口コミを増やしましょう」
「悪い口コミには丁寧に返信しましょう」
という話で終わらせるつもりはありません。
それだけでは、
実際の宿の改善にはつながりにくいからです。
今回お伝えしたいのは、
口コミを、宿の運営改善に使う方法
です。
旅館・ホテルの口コミ評価が下がるとき、
そこには必ず理由があります。
清掃が悪い。
接客が悪い。
設備が古い。
このように一言で片付けてしまうこともできます。
しかし実務では、
もう少し細かく見る必要があります。
お客様は、
何に不満を感じたのか。
それは、
一度だけのミスなのか。
何度も繰り返されている問題なのか。
現場の誰が対応すべき問題なのか。
すぐ直せるのか。
時間や費用がかかるのか。
ここまで分けて考えないと、
口コミは改善に使えません。
そこで今回は、
口コミを単なる評価として読むのではなく、
👉「口コミ分解シート」を作るイメージで、
宿の運営改善につなげる方法を考えてみたいと思います。
口コミは点数よりも「中身」を見る
予約サイトやGoogleマップの口コミを見ると、
つい点数に目が行きます。
4.5なのか。
4.0なのか。
3点台に落ちていないか。
もちろん点数は大切です。
しかし、
宿の改善で本当に見るべきなのは、
点数そのものではありません。
大切なのは、
👉何について不満が書かれているのか
です。
例えば、
同じ3点の口コミでも、
内容はまったく違います。
「部屋は良かったが、チェックイン案内が分かりにくかった」
という口コミと、
「清掃が不十分で、もう泊まりたくない」
という口コミでは、
改善すべき内容が違います。
また、
「スタッフの対応が冷たかった」
という口コミと、
「駐車場の場所が分からなかった」
という口コミでも、
対応すべき担当者や改善策は変わります。
口コミを読むときは、
良い悪いで一喜一憂するのではなく、
👉どの業務に関する指摘なのかを分けて見ることが大切です。
まず口コミを5つに分類する
宿の口コミを改善に使うためには、
まず分類することから始めます。
私は、
最初は次の5つに分けることをおすすめします。
・清掃
・案内
・接客
・設備
・予約対応
この5つです。
例えば、
「部屋に髪の毛が落ちていた」
「水回りの汚れが気になった」
これは清掃です。
「入口が分かりにくかった」
「駐車場の案内が不十分だった」
「チェックイン方法が分かりづらかった」
これは案内です。
「スタッフの説明が冷たかった」
「問い合わせへの返信が遅かった」
これは接客または予約対応です。
「エアコンの効きが悪かった」
「コンセントが少なかった」
「写真より古く感じた」
これは設備です。
このように分けていくと、
口コミはただの感想ではなく、
運営上の改善項目になります。
口コミ分解シートを作る
実務では、
口コミを読んだら、
その場で表にしてしまうのが効果的です。
難しい表である必要はありません。
次の項目があれば十分です。
【口コミ分解シートの項目例】
・投稿日
・掲載サイト
・評価点
・指摘内容
・分類
・原因
・すぐできる対応
・時間がかかる対応
・担当者
・対応期限
・再発防止策
例えば、
指摘内容:「チェックイン方法が分かりにくかった」
分類:案内
原因:事前メールの説明が長く、重要部分が埋もれていた
すぐできる対応:チェックイン方法の説明を短くする
時間がかかる対応:写真付き案内ページを作る
担当者:予約管理担当
対応期限:今月中
再発防止策:予約確定メールと前日メールの内容を見直す
このように分解すると、
👉口コミが改善作業に変わります。
ここまで整理して初めて、
口コミは宿経営に役立ちます。
「感情」ではなく「業務」に置き換える
悪い口コミを見ると、
どうしても落ち込みます。
時には、
納得できない口コミもあるでしょう。
「そんな言い方をしなくてもいいのに」
「事情を分かってほしい」
「こちらにも理由がある」
そう感じることもあると思います。
しかし、
宿の運営では、
👉口コミを感情で受け止めすぎると改善が止まります。
大切なのは、
口コミを業務に置き換えることです。
例えば、
「スタッフの対応が悪かった」
と書かれていた場合、
そこで終わらせてはいけません。
どの場面の対応だったのか。
チェックイン時なのか。
電話対応なのか。
問い合わせ返信なのか。
クレーム対応なのか。
これを確認します。
さらに、
対応ルールはあったのか。
スタッフによって説明が違っていなかったか。
新人スタッフだけで対応していなかったか。
管理者へ引き継ぐ基準は決まっていたか。
ここまで分解すると、
改善すべき業務が見えてきます。
口コミを読む目的は、
誰かを責めることではありません。
👉業務のどこにズレがあったのかを見つけることです。
すぐ直せるものと、時間がかかるものを分ける
口コミ改善で大切なのは、
すぐ直せるものと、
時間がかかるものを分けることです。
すべてを一度に直そうとすると、
現場が疲れてしまいます。
例えば、
すぐ直せるものには、
次のようなものがあります。
・チェックイン案内の文章を短くする
・駐車場案内を目立つ場所に書く
・清掃チェック項目を一つ追加する
・問い合わせ返信の担当者を決める
・よくある質問を事前案内に入れる
一方で、
時間がかかるものもあります。
・設備の改修
・客室のリニューアル
・スタッフ教育の見直し
・多言語案内の整備
・予約管理システムの変更
これらを同じように扱うと、
優先順位が分からなくなります。
まずは、
👉すぐ直せるものから手をつける。
時間がかかるものは、
予算やスケジュールを含めて計画に入れる。
この整理が大切です。
口コミ返信より先に確認したいこと
口コミ対応というと、
すぐに返信文を考えたくなります。
しかし私は、
返信文を考える前に、
まず確認してほしいことがあります。
それは、
👉同じ指摘が過去にも出ていないか
ということです。
例えば、
一度だけ
「部屋が暑かった」
と書かれた場合と、
何度も
「エアコンが効きにくい」
「布団が暑苦しい」
と書かれている場合では、
意味が違います。
一度だけなら、
その日の天候や体感差かもしれません。
しかし、
同じ内容が繰り返されているなら、
宿として対応すべき問題です。
口コミ返信は大切です。
しかし、
返信だけで終わらせてはいけません。
返信よりも先に、
同じ指摘が繰り返されていないかを確認する。
そして、
必要があれば改善策を決める。
これが実務です。
良い口コミも分解する
口コミ改善というと、
悪い口コミばかりに目が行きます。
しかし、
良い口コミも大切な資料です。
例えば、
「スタッフが親切だった」
「朝食が良かった」
「駅から近くて便利だった」
「静かでゆっくりできた」
「古い建物だが清潔感があった」
こうした良い口コミには、
👉宿の強みが表れています。
この強みを把握しておくと、
今後の集客や案内文にも活かせます。
例えば、
古い建物でも、
清潔感を評価されているなら、
清掃品質は宿の強みです。
駅近を評価されているなら、
アクセス案内をもっと分かりやすくする価値があります。
スタッフ対応を評価されているなら、
その接客を標準化することが大切です。
👉良い口コミは、宿の魅力を確認する資料です。
👉悪い口コミは、改善すべき点を教えてくれる資料です。
両方を分解することで、
宿の現在地が見えてきます。
口コミから作る改善優先リスト
口コミ分解シートを作ったら、
次に改善優先リストを作ります。
優先順位は、
次の3つで考えると整理しやすくなります。
1つ目は、
お客様の安全に関わること。
2つ目は、
宿泊体験の第一印象に関わること。
3つ目は、
繰り返し指摘されていること。
例えば、
段差の案内不足、
鍵の受け渡しミス、
夜間連絡先の不備などは、
安全や安心に関わります。
これは優先度が高いです。
また、
清掃、
チェックイン案内、
スタッフの第一対応などは、
宿泊体験の第一印象に関わります。
ここも優先度が高いです。
さらに、
同じ内容が複数回口コミに出ている場合は、
放置しない方がよいでしょう。
改善優先リストを作ることで、
何から手をつけるべきかが明確になります。
開業後30日で確認したい口コミ実務
開業直後の宿は、
特に口コミ管理が重要です。
最初の口コミは、
その後の予約に大きく影響することがあります。
そこで、
開業後30日以内に、
次のような確認をしておくことをおすすめします。
・口コミを毎週確認する
・指摘内容を分類する
・同じ指摘がないか確認する
・すぐ直せるものは即対応する
・時間がかかるものは改善リストに入れる
・良い口コミから宿の強みを確認する
・改善した内容をスタッフ間で共有する
開業直後は忙しく、
つい目の前の業務に追われます。
しかし、
この時期に口コミを実務として扱えるかどうかで、
その後の宿の評価は変わっていきます。
今日の実務ワンポイント
口コミを読むときは、
点数だけを見ないことです。
大切なのは、
口コミを業務別に分けること。
清掃なのか。
案内なのか。
接客なのか。
設備なのか。
予約対応なのか。
まずは分類するだけで十分です。
分類できれば、
担当者を決められます。
担当者が決まれば、
改善期限を決められます。
改善期限が決まれば、
口コミはただの感想ではなく、
👉宿を良くするための実務資料になります。
今日のチェックポイント
□ 直近の口コミを5件から10件読み返した
□ 口コミを清掃・案内・接客・設備・予約対応に分類した
□ 同じ指摘が複数回出ていないか確認した
□ すぐ直せる改善と時間がかかる改善を分けた
□ 改善担当者と対応期限を決めた
行政書士田中穂積の視点
旅行業界で37年間、
多くの宿泊施設と旅行者の声を見てきました。
その中で感じるのは、
口コミ評価が高い宿は、
必ずしも新しい宿や高級な宿ばかりではないということです。
建物が古くても、
丁寧に清掃されている宿。
設備がシンプルでも、
案内が分かりやすい宿。
小規模でも、
スタッフの対応が安定している宿。
こうした宿は、
お客様から信頼されます。
反対に、
設備が立派でも、
運営の小さなズレが積み重なると、
口コミ評価は下がっていきます。
行政書士として私が大切にしたいのは、
旅館業許可を取得することだけではありません。
許可取得後も、
法令を守りながら、
地域に必要とされる宿として運営を続けることです。
口コミは、
その宿が今どのように運営されているかを映す鏡です。
お客様の声を現場改善につなげること。
それが、
長く続く宿づくりの大切な一歩だと考えています。
Q&A|口コミ評価を実務に活かすには
Q1. 悪い口コミは削除してもらえますか?
A 事実と異なる内容や不適切な表現がある場合、掲載サイトのルールに従って申請できることがあります。ただし、まずは内容を確認し、宿側で改善できる点がないか整理することが大切です。
Q2. 悪い口コミにはすぐ返信した方がよいですか?
A すぐ感情的に返信するのは避けた方がよいでしょう。まず事実確認を行い、必要に応じて改善策を整理したうえで、冷静に返信することが大切です。
Q3. 口コミ返信で気を付けることはありますか?
A 相手を責める表現や、長すぎる反論は避けましょう。事実確認、謝意、改善姿勢を簡潔に伝えることが望ましいです。
Q4. 良い口コミも管理した方がよいですか?
A はい。良い口コミには宿の強みが表れています。清掃、接客、立地、食事、雰囲気など、何が評価されているのかを整理すると、今後の集客にも活かせます。
Q5. 行政書士に口コミ対応を相談できますか?
A 口コミそのものの返信代行というよりも、口コミに表れた運営上の課題、案内文の整備、近隣対応、宿泊者対応、コンプライアンス体制の見直しについてご相談いただけます。
まとめ
旅館・ホテルの口コミ評価が下がる宿には、
共通点があります。
それは、
悪い口コミが入ることそのものではありません。
口コミを読んでも、
運営改善につなげていないことです。
口コミは、
宿の運営体制が表に出る場所です。
清掃、
案内、
接客、
設備、
予約対応。
お客様の声を分解していくと、
宿のどこに改善点があるのかが見えてきます。
口コミ評価を守るために必要なのは、
きれいな返信文だけではありません。
口コミを分類し、
原因を整理し、
担当者を決め、
期限を決め、
再発防止につなげることです。
その積み重ねが、
長く選ばれる宿づくりにつながります。
落とし穴を知ることは、
長く続く宿づくりへの第一歩です。
次回予告
次回は、
「旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊の実態」
について考えてみたいと思います。
宿泊業界では、
人手不足が年々深刻になっています。
しかし実務では、
人が足りないこと以上に、
業務の流れが整理されていないことが、
宿の運営を苦しくしているケースがあります。
清掃、
チェックイン、
予約管理、
問い合わせ対応、
スタッフ間の引き継ぎ。
こうした流れが崩れると、
お客様の不満は口コミに表れ、
スタッフの負担も大きくなります。
次回は、
人手不足の前に確認したい
宿のオペレーション
について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
\ 旅館・ホテルの開業や運営でお困りの方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅館業を始めたいが何から手を付ければよいか分からない
・この物件で旅館業営業ができるのか知りたい
・保健所や消防署との協議に不安がある
・旅館業許可申請をサポートしてほしい
・開業後の運営やコンプライアンスについて相談したい
といったお悩みに対し、
ここ横浜市泉区(中田駅)より、
旅行業37年の現場経験と行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅館業は、許可を取得して終わる事業ではありません。
👉「地域に人を呼び、地域を活性化する観光事業」として育てていくことが何より大切です。
開業準備から旅館業許可申請、
そして開業後の運営・コンプライアンスまで、
実務ベースで伴走いたします。
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次回からも、「開業後だからこそ知っておきたい実務」を、旅行業37年の経験と行政書士の視点から一緒に考えていきます。