横浜の古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認|第5話

~改修してから気付く前に、図面を持って事前相談する~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話
古民家カフェを開業するときに必要となる、
飲食店営業許可についてお話ししました。
古民家の落ち着いた雰囲気。
昔ながらの梁や柱。
庭を眺めながら過ごせる客席。
地域の食材を使った料理やお菓子。
こうした魅力を生かして、
古い住宅をカフェとして活用したいと考える方も増えています。
しかし、
古民家カフェの開業は、
「古い住宅に厨房設備を入れれば営業できる」
というものではありません。
飲食店として営業するためには、
保健所の施設基準を満たす必要があります。
また、
住宅として使われてきた建物へ不特定多数のお客様を迎え、
厨房で火や電気を使うことになれば、
消防上の確認も必要になります。
今回のテーマは、
「古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認」
です。
改修工事を始めてから大きな変更が必要にならないよう、
開業前に確認しておきたい実務を整理していきます。
飲食店営業許可だけを申請すればよいわけではありません
古民家カフェを開業する場合、
まず思い浮かぶのが飲食店営業許可です。
もちろん、
飲食物を調理してお客様へ提供するのであれば、
原則として飲食店営業許可の検討が必要です。
しかし、
申請書を提出すれば、
そのまま許可されるわけではありません。
営業施設が、
食品衛生法や条例に基づく施設基準へ適合している必要があります。
横浜市では、営業許可までの流れを、
1.事前相談
2.営業許可申請
3.施設検査
4.営業許可証の交付・営業開始
と案内しています。
特に重要なのが、
最初の事前相談です。
横浜市は、施設工事の着工前に店舗の平面図を用意し、営業施設を管轄する区の福祉保健センター生活衛生課へ相談するよう案内しています。取扱食品や調理量などによっても、必要な営業許可や設備の判断が変わります。
👉工事が終わってから保健所に相談するのでは遅いことがあります。
まず図面の段階で相談する。
これが、
古民家カフェ開業の重要な第一歩です。
住宅用の台所をそのまま使えるとは限りません
古民家には、
昔ながらの台所が残っていることがあります。
立派な流し台がある。
水道も通っている。
家庭で長年料理をしてきた。
そのため、
「少し手を加えれば、そのまま厨房として使えるのではないか」
と考えることもあるでしょう。
しかし、
家庭用の台所と営業用の厨房では、
求められる役割が異なります。
営業用の施設では、
例えば次のような点を確認します。
・手洗い設備
・洗浄設備
・給水設備
・排水設備
・床、壁、天井の構造
・食品や器具の保管設備
・冷蔵、冷凍設備
・換気設備
・防虫、防そ設備
・便所と厨房の位置関係
どの設備が必要になるかは、
提供するメニューや調理工程によっても変わります。
コーヒーと包装された菓子を提供する場合。
店内でランチを調理する場合。
菓子を製造して持ち帰り販売する場合。
それぞれ、
確認すべき許可や設備が同じとは限りません。
古民家の台所が使えるかどうかを、
建物の見た目だけで判断することはできません。
メニューを決めないと厨房も決められません
保健所へ相談するときは、
平面図だけでなく、
予定している営業内容も整理しておく必要があります。
例えば、
・飲み物だけを提供するのか
・軽食を調理するのか
・ランチを提供するのか
・菓子を店内で製造するのか
・テイクアウトを行うのか
・仕込みをどこで行うのか
・一日に何食程度を提供するのか
といった内容です。
同じ「古民家カフェ」でも、
行う営業によって必要な設備が変わります。
メニューが曖昧なまま厨房を設計すると、
後から設備を増やしたり、
動線を変更したりすることになりかねません。
先に厨房を作り、
後からメニューを考えるのではなく、
👉提供するものを整理してから厨房を考える
という順番が大切です。
横浜市も、事前相談では図面だけでなく、具体的な取扱食品や取扱量など、営業内容の詳細が分かる人が相談するよう案内しています。
古民家の雰囲気と衛生管理をどう両立するか
古民家カフェでは、
古い建物の趣をできる限り残したいものです。
土壁。
木の柱。
使い込まれた建具。
昔ながらの床や天井。
こうした部分は、
古民家ならではの魅力です。
一方で、
食品を取り扱う場所には、
清掃しやすさや衛生管理のしやすさが求められます。
厨房の床や壁をどのように仕上げるのか。
客席と厨房をどのように区切るのか。
食材や食器をどこに保管するのか。
生活空間と営業区域をどう分けるのか。
古民家全体を新しい建物のようにする必要はありません。
大切なのは、
👉残したい部分と、営業施設として整える部分を分けること
です。
古民家らしさを守りながら施設基準を満たすには、
設計者や施工業者だけで判断せず、
計画段階から保健所へ相談することが重要です。
消防署への相談も改修前に行う
古民家カフェでは、
保健所と併せて消防署への相談も必要です。
古民家は、
長い年月を経た木造建物であることが多く、
厨房ではガスコンロ、オーブン、給湯器などを使用することがあります。
また、
住宅として使われていたときとは異なり、
営業を始めれば不特定多数のお客様が建物内へ入ります。
消防署では、建物の規模、構造、用途、収容人員、使用する厨房機器などを基に、必要となる消防用設備や届出を確認します。
横浜市も、飲食店などの事業を開始する場合は、建物を管轄する消防署へ事前相談するよう案内しています。増築、改築、テナント変更などによって、新たな消防用設備が必要になることもあります。
保健所と同様に、
👉工事が終わってからではなく、図面を作る段階で相談する
ことが重要です。
小さなカフェでも消防設備の確認は必要です
「客席数が少ないから、消防設備は必要ないのではないか」
と思うかもしれません。
しかし、
店舗が小さいことだけを理由に、
消防上の確認が不要になるとは限りません。
飲食店は、
消防法上、不特定多数の人が利用する用途として扱われます。
厨房で火を使う場合は、
建物の面積や設備の状況に応じて、
消火器具などが必要になることがあります。
消防法令の改正により、2019年10月1日から、原則として火を使用する設備または器具を設けた延べ面積150平方メートル未満の飲食店にも、消火器具の設置が求められるようになりました。
ただし、
必要な設備は消火器だけとは限りません。
建物の構造や規模、
利用する階、
避難経路、
収容人員などによって確認内容が変わります。
👉自己判断せず、管轄消防署へ確認することが大切です。
防火対象物使用開始届を忘れない
住宅として使われていた古民家を飲食店として使用する場合、
消防署への届出が必要になることがあります。
たとえば、横浜市火災予防条例では、対象となる防火対象物を使用しようとする場合、原則として使用開始日の7日前までに「防火対象物使用開始届」を消防署長へ提出することとされています。
横浜市の届出書の記載例では、
飲食店の場合の添付書類として、
・付近見取図
・配置図
・仕上表
・面積表
・平面図
・断面図
・厨房機器図
・厨房機器の熱量が分かる資料
・ダクト図
などが例示されています。
また、
一定の基準を超える厨房設備などを設置する場合には、
火を使用する設備等の設置届が必要になることもあります。
どの届出が必要になるかは、
建物と設備によって異なります。
設備を購入してから確認するのではなく、
使用する機器の種類や熱量が分かる資料を用意して、
事前に相談するとよいでしょう。
古民家だからこそ避難経路を確認する
古民家には、
現代の店舗とは異なる特徴があります。
廊下が狭い。
段差がある。
出入口が限られている。
部屋が細かく分かれている。
増改築を繰り返している。
建物の奥に客席を設けることもある。
普段は趣のある空間でも、
火災や地震が起きたときには、
安全に避難できるかを考える必要があります。
特に、
・客席から屋外までの経路
・出入口の位置と幅
・廊下や階段の状況
・避難経路上の段差や障害物
・夜間営業時の照明
・高齢者や子どもの利用
などは、
開業前に確認しておきたい点です。
古い建物の魅力を残すことと、
安全に利用できること。
その両方を実現するために、
改修計画の初期段階から消防署や建築の専門家と相談する必要があります。
保健所と消防署には同じ図面を持参する
保健所と消防署では、
確認する目的が異なります。
保健所は、
食品を衛生的に取り扱える施設になっているかを確認します。
消防署は、
火災を防ぎ、利用者が安全に避難できる建物になっているかを確認します。
ただし、
どちらの相談でも基本となるのは建物の図面です。
相談時には、
少なくとも次の資料を準備すると話が進みやすくなります。
【事前相談で準備したい資料】
・建物の所在地
・現況の平面図
・改修後の予定図面
・客席数
・営業予定時間
・提供するメニュー
・主な調理工程
・使用する厨房機器
・ガス、電気、給排水設備の予定
・従業員数
・建物の構造と階数
・お客様が利用する範囲
最初から完成した図面である必要はありません。
手書きの案でも、
現状と予定が分かれば、
相談の入口にはなります。
まず相談し、
指摘された点を設計や改修へ反映する。
この順番が重要です。
保健所と消防だけで判断しない
今回のテーマは保健所と消防ですが、
古民家を住宅からカフェへ変える場合は、
建築基準法や都市計画上の確認が必要になることもあります。
用途地域によっては、
飲食店として利用できる建物の規模や条件に制限があります。
また、
既存建物の用途を変更する部分が200平方メートルを超える場合は、建築基準法に基づく確認申請が必要になる可能性があります。200平方メートル以下であっても、用途地域や避難、安全に関する規定へ適合する必要がなくなるわけではありません。
そのため、
物件を購入したり、
高額な改修契約を結んだりする前に、
・保健所
・消防署
・建築担当部署
・建築士
・必要に応じて行政書士
それぞれの視点から確認することが大切です。
今日の実務ワンポイント
古民家カフェの開業で大切なのは、
👉改修工事の前に、保健所と消防署へ図面を持って相談すること
です。
営業許可の申請は、
開業準備の最後に行う手続です。
しかし、
施設基準や消防設備の確認は、
改修計画を決める前に始める必要があります。
工事を先に進めてしまうと、
厨房の位置を変える。
手洗い設備を追加する。
壁や床を作り直す。
避難経路を変更する。
消防設備を追加する。
といった見直しが必要になることがあります。
先に相談することは、
手続を増やすことではありません。
👉不要な工事や追加費用を防ぐための準備です。
まとめ
古民家カフェを開業するためには、
飲食店営業許可を受けるだけではなく、
営業施設として必要な衛生と防火の基準を満たす必要があります。
保健所では、
提供するメニュー。
調理工程。
厨房の構造。
手洗いや洗浄設備。
食品や器具の保管方法。
などを確認します。
消防署では、
建物の構造と用途。
厨房で使用する機器。
客席数や収容人員。
消防用設備。
避難経路。
必要な届出。
などを確認します。
特に古民家では、
住宅として長く使われてきた建物を、
不特定多数の人が利用する店舗へ変えることになります。
住宅用の台所があるから営業できる。
小さなカフェだから消防設備は必要ない。
古い建物だから現在の基準は関係ない。
このように自己判断してしまうと、
開業準備の途中で大きな見直しが必要になることがあります。
古民家の魅力を残しながら、
衛生的で安全な店を作る。
そのためには、
物件を決めるまでに
・営業内容を整理する
・候補物件の図面を作る
・保健所と消防署へ相談する
・確認結果を改修計画へ反映する
という順番が大切です。
今日のチェックポイント
□ 提供するメニューと調理工程を整理した
□ 住宅用台所をそのまま使えると自己判断していない
□ 改修工事前に保健所へ相談する予定を立てた
□ 使用する厨房機器の種類を整理した
□ 管轄消防署へ事前相談する予定を立てた
□ 建築や用途地域の確認も必要だと理解した
すべてにチェックが付かなくても、
すぐに計画を諦める必要はありません。
まずは、
何が決まっていて、
何を確認する必要があるのかを整理する。
そこから古民家カフェの開業準備は始まります。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業に37年間携わる中で、
多くの宿泊施設や飲食施設を見てきました。
旅行者にとって、
古い建物を生かしたカフェは、
単に飲食をする場所ではありません。
その土地の暮らしや歴史を感じ、
地域の人と出会う場所にもなります。
一方で、
雰囲気のよい店であっても、
衛生面や安全面に不安があれば、
長く愛される店にはなりません。
古民家カフェの開業では、
残したいもの。
変えなければならないもの。
新しく加えるもの。
この三つを整理する必要があります。
古い柱や建具を残す。
その一方で、
厨房は衛生的に整える。
火災に備え、
お客様が安全に避難できるようにする。
古民家らしさを守ることと、
営業施設としての基準を満たすことは、
どちらか一方を選ぶ話ではありません。
計画の早い段階で関係機関へ相談し、
建物の魅力と営業上の安全を両立させる。
旅行業の現場経験と行政書士としての実務視点を生かし、
そのための手続や確認事項を整理することが、
👉行政書士としての私の役割だと考えています。
Q&A|古民家カフェと保健所・消防について
Q1.自宅で使っていた台所を、そのままカフェの厨房にできますか。
A 住宅用の台所がそのまま営業施設の基準を満たすとは限りません。
提供するメニューや調理工程によって必要な設備も異なります。改修工事を始める前に、平面図と営業内容を用意して、営業場所を管轄する福祉保健センター生活衛生課へ相談することが大切です。
Q2.小規模で火をほとんど使わないカフェでも、消防署への相談は必要ですか。
A 店舗の面積だけで消防上の確認が不要になるとは限りません。
建物の用途、構造、客席数、使用する厨房機器、避難経路などによって必要な設備や届出が変わります。火をほとんど使用しない計画であっても、事前に管轄消防署へ相談すると安心です。
Q3.保健所と消防署には、いつ相談すればよいですか。
A 改修内容を決定する前(物件を決めるまで)が適切です。
現況図、改修案、メニュー、厨房機器、客席数などを整理し、工事前に相談します。相談結果を図面へ反映してから工事を進めることで、完成後の手直しを防ぎやすくなります。
次回予告
次回は、
「古民家カフェ開業で近隣トラブルを防ぐには」
について考えてみたいと思います。
古民家カフェを開業すると、
これまで住宅だった建物に、
お客様や車の出入りが生まれます。
話し声や音楽。
厨房や排気口から出るにおい。
店の前での待ち時間。
路上駐車や自転車の置き場所。
早朝の仕込みや夜間営業。
ごみの保管と収集。
開業する側には小さなことに思えても、
近隣に住む方にとっては、
日々の生活に関わる問題になることがあります。
特に古民家は、
昔からの住宅地や道幅の狭い地域に建っていることも多く、
店舗としての営業を始めることで、
周辺環境との関係が大きく変わる可能性があります。
保健所や消防署の基準を満たし、
必要な許可を取得しても、
近隣との関係が悪化すれば、
安心して営業を続けることはできません。
近隣への説明はいつ行うのか。
駐車場や駐輪場所をどう確保するのか。
営業時間や看板、排気設備について、
どのような点に配慮すべきなのか。
苦情があった場合に、
誰がどのように対応するのか。
次回は、
古民家カフェを地域に受け入れられ、
長く続けられる店にするための近隣対策について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
\ 古民家・空き家を「壊す」のではなく「活かしたい」方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・古民家を宿として活用したい
・空き家を観光資源として活かしたい
・古民家カフェを始めたい
・旅館業許可や飲食店営業許可について相談したい
・保健所や消防署への相談に不安がある
といったお悩みに対し、横浜市泉区・中田駅を拠点に、旅行業界での37年の現場経験と、行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
古民家や空き家は、
地域に残された大切な資源です。
👉「壊す」のではなく「活かす」
その一歩を法務の面から支えることが、
行政書士としての私の役割だと考えています。
旅館業許可、民泊、飲食店営業許可、消防署・保健所との事前相談など、古民家・空き家活用に必要な手続を、計画段階から実務に合わせて伴走いたします。
物件を購入した後や、改修工事を始めた後に、
「予定していた営業ができない」
「追加工事が必要になった」
「どの窓口へ相談すればよいか分からない」
ということにならないよう、
できるだけ早い段階で必要な確認事項を整理することが大切です。
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行政書士田中穂積事務所
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