補助金・融資・事業計画を一体で考える category

観光・宿泊・古民家再生の開業に必要な補助金・融資・事業計画・許認可・資金計画を実務目線でわかりやすく解説します。

補助金・融資・許認可を一体で考える|続く宿・古民家事業のつくり方|第8話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 このシリーズでは、「観光・宿泊・古民家再生の資金調達実務」として、補助金。事業計画。融資。自己資金。資金繰り。事業承継。まで順番に考えてきました。 前回は、「宿を続けるための資金繰り」として、設備更新や大規模修繕、売上減少、固定費上昇、事業承継など、開業後に必要となるお金を整理しました。 シリーズ最終回となる今回は、これまで別々に見てきたものを、一つの事業計画としてつなげます。👉 補助金が採択されること。融資を受けること。許可を取得すること。どれか一つだけでは、続く宿泊事業にはなりません。大切なのは、実際に開業でき、資金が回り、その後も続けられる事業になっているかです。 補助金・融資・許認可を別々に考えない 宿や古民家活用を考えるきっかけは、「この古民家を宿にしたい」「補助金を使いたい」「融資を受けたい」「旅館業許可を取りたい」など、人によって違います。しかし実際の開業では、物件。改修。資金。補助金。融資。許認可。消防・建築。開業時期。開業後の運営。が互いに関係しています。物件と許認可魅力的な物件でも、予定している宿泊事業ができるとは限りません。旅館業許可。消防。建築。必要な改修。などを確認します。 資金と工事 改修内容が変われば、必要資金も変わります。追加工事が必要になれば、自己資金。融資額。運転資金。開業時期。にも影響します。 補助金と資金繰り 補助金が利用できても、入金は工事代金の支払いより後になることがあります。そのため、「補助金はいくらもらえるか」だけでなく、いつ支払い、いつ資金が入るのかまで見る必要があります。👉 事業・資金・許認可は、一つの計画として考えることが大切です。 事業計画書は「申請のための作文」ではない 補助金申請でも融資申込でも、事業計画書を作ることがあります。しかし、補助金用。融資用。開業後の経営用。で、まったく違う計画になってしまっては困ります。本来は一つの事業です。一つのストーリーになっているかたとえば、どんな事業をするのか↓誰を顧客にするのか↓どんな宿・サービスをつくるのか↓何に投資するのか↓いくら必要なのか↓どう資金を準備するのか↓必要な許認可を取得できるの……

宿を続けるための資金繰り|設備更新・売上減少・事業承継に備える|第7話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「補助金と融資は併用できる?宿泊事業の資金計画で注意したいこと」として、補助金。自己資金。融資。つなぎ資金。を、実際のお金が動く時系列から整理しました。ここまでは、これから宿泊施設や古民家事業を始める場合を中心に考えてきました。しかし、資金の問題は開業したら終わりではありません。宿を続けていけば、設備の老朽化。大規模修繕。売上減少。光熱費や人件費の上昇。災害。そして事業承継。など、新たな資金需要が生まれます。👉 宿泊事業の資金繰りで大切なのは、「今月払えるか」だけでなく、「この先どんな支出が来るか」を早めに見ておくことです。 今回は、「開業するためのお金」から「宿を続けるためのお金」へ視点を移して考えます。 宿泊事業は開業後もまとまった資金が必要になる 旅館やホテルは、建物。客室。空調。給湯。厨房。消防設備。家具・備品。など、多くの設備を使って営業します。当然、年月が経てば更新や修繕が必要になります。たとえば、客室のエアコンを交換する。給湯設備を更新する。外壁や屋根を修繕する。水回りを改修する。消防設備を更新する。といった支出です。こうした費用は、毎月少しずつ発生するとは限りません。ある年にまとまって数百万円、数千万円必要になることもあります。だからこそ、「壊れてから考える」では遅い場合があります。 設備更新は「いつ・いくら」を見えるようにする まずおすすめしたいのが、設備更新予定表を作ることです。何を更新するかたとえば、・空調設備・給湯設備・厨房設備・エレベーター・消防設備・客室設備・外壁、屋根・予約・管理システムなどを書き出します。いつ頃必要になるか次に、今年。3年後。5年後。10年後。というように、おおよその更新時期を整理します。正確な故障時期を予測する必要はありません。重要なのは、👉 「いつか必要になる大きな支出」を、突然の支出にしないことです。 繁忙期だけでなく閑散期を見る 宿泊事業には、季節による売上変動があります。年末年始。ゴールデンウィーク。夏休み。紅葉シーズン。イベント開催時期。などは宿泊客が増えても、その反対に閑散期があります。ここで注意したいのは、年間では黒字でも、月単位では資金が……

補助金と融資は併用できる?宿泊事業の資金計画で注意したいこと|第6話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと」として、自己資金。設備資金。運転資金。売上予測。返済計画。などを整理しました。事業に必要な金額が見えてくると、次に考えたいのが、補助金と融資をどう組み合わせるかです。たとえば、「改修費1,000万円のうち、500万円の補助金が採択された」とします。すると、「自分で準備するのは残り500万円」と思いたくなるかもしれません。しかし、実際のお金の流れはそれほど単純ではありません。👉 補助金が500万円あることと、工事代金を支払うときに500万円が手元にあることは別です。今回は、補助金・自己資金・融資を、実際のお金が動く順番から整理します。 補助金と融資は併用できる? まず、「補助金を利用すると融資は受けられないの?」という疑問があります。補助金と金融機関からの融資は、資金調達の性質が異なるため、事業全体の資金計画の中で組み合わせることは考えられます。たとえば、自己資金 300万円融資 700万円補助金 500万円といったように、それぞれを組み合わせて事業資金を考えることがあります。ただし、補助金の利用条件。金融機関の融資審査。資金使途。補助対象経費。などはそれぞれ別に確認する必要があります。また、複数の補助金を同じ経費に重複して使うことには制限がある場合があります。👉 「補助金+融資なら自動的に使える」と考えず、それぞれの制度・金融機関の条件を確認することが前提です。 一番大切なのは「いつお金が必要か」 補助金と融資を一緒に考えるとき、金額だけを並べると分かりにくくなります。そこで、時間軸で考えてみます。 補助金は原則として後払い 一般的な補助金では、申請↓採択↓交付申請・交付決定↓契約・発注・事業実施↓支払い↓実績報告↓補助金額の確定↓補助金入金という流れになります。中小企業庁も、補助金は補助事業終了後の実績報告・確認を経て支払われる「後払い(精算払い)」が原則と案内しています。つまり、工事代金などを支払うときには、まだ補助金が入金されていないことがあります。ここが資金計画で非常に重要なポイントです。 1,000万円の工事で500万円補助される場合 具……

宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと|第5話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「補助金申請の事業計画書で何を見られるのか」として、現在の課題。顧客像。市場・地域需要。投資内容。期待する効果。売上見込み。実施体制。事業の継続性。などを整理しました。事業計画を具体的にすると、次に見えてくるのが、「この事業を始めるために、実際にいくら必要なのか」という資金の問題です。特に宿泊施設や古民家再生では、物件。改修。消防設備。厨房。家具・備品。広告。そして開業後の運転資金。まで考えると、まとまった資金が必要になることがあります。そこで今回は、👉 「いくら借りられるか」から考えるのではなく、「いくら必要で、その借入を無理なく返していけるか」という視点から、融資を受ける前に確認したいことを整理します。 融資を考える前に「必要資金」を出す 融資相談をするとき担当者に「いくらまで借りられますか?」と聞きたくなるかもしれません。しかし、その前に整理したいのが、👉事業にいくら必要なのかです。日本政策金融公庫も、創業時の資金計画について、まず何にどれくらいお金が必要なのかを項目ごとに積み上げ、そのうえで自己資金や借入などの調達方法を検討する考え方を示しています。たとえば古民家宿なら、・物件取得費・敷金、保証金・建物改修費・消防設備・給排水設備・厨房設備・家具、寝具、備品・予約システム・ホームページ、広告費・許認可に必要な費用・開業後の運転資金などがあります。まずは、👉「借りられる金額」ではなく「必要な金額」を積み上げていきます。 設備資金と運転資金を分けて考える 必要資金を整理するときは、設備資金と運転資金を分けると分かりやすくなります。 設備資金 たとえば、・建物の改修・厨房設備・空調設備・消防設備・家具、備品・業務用機器など、事業を始めるための設備への投資です。 運転資金 一方、・家賃・人件費・水道光熱費・仕入れ・広告費・システム利用料・借入返済までの資金など、事業を動かし続けるために必要なお金が運転資金です。 日本政策金融公庫の創業向け融資でも、設備資金と運転資金はそれぞれ資金使途として位置付けられています。宿泊事業では、建物を完成させるお金だけを用意すればよいわけではあり……

補助金申請の事業計画書で何を見られるのか|第4話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「宿泊施設・旅館で使える補助金とは|改修・省力化など目的別に整理」として、建物・客室の改修。省力化。DX。インバウンド対応。バリアフリー。地域資源活用。観光コンテンツ。など、制度名ではなく、👉「何のためにお金を使いたいのか」から補助制度を探す考え方をお伝えしました。では、使いたい補助制度が見つかったら、次に何が必要になるのでしょうか。その一つが、事業計画書です。「設備が古いので交換したい」「古民家を改修したい」だけでは、その投資が本当に必要なのかは十分に伝わりません。 今回のポイントは、👉 「何を買うか」ではなく、「なぜ必要で、その投資によって事業がどう変わるのか」を説明することです。 事業計画書は「欲しいものを書く書類」ではない 補助金を検討すると、「この設備が補助対象になるか」に意識が向きがちです。もちろん、対象経費かどうかは重要です。しかし事業計画では、その前に、なぜ、その投資が必要なのかを説明する必要があります。たとえば、「客室の設備が古いので改修する」だけではなく、現在どのような課題があるのか。どのようなお客様を想定しているのか。改修によって何が改善するのか。売上や業務効率にどうつながるのか。まで一つの流れとして考えます。補助金の審査項目は制度ごとに異なりますが、現在の中小企業向け補助制度でも、経営状況や経営方針、補助事業の有効性などを含めて事業計画を総合的に審査する仕組みが採られています。 まず「今、何に困っているのか」を整理する 事業計画の出発点は、現在の課題です。たとえば旅館であれば、・予約業務に時間がかかっている・人手不足でフロント業務の負担が大きい・外国人旅行者への案内が十分ではない・客室設備が古く、利用者のニーズに合っていない・地域に観光資源はあるが宿泊につながっていないなどが考えられます。大切なのは、「設備が古い」で終わらせないことです。その結果、誰が困っているのか。事業にどのような影響が出ているのか。まで考えてみます。 「誰に来てもらいたいか」が見えているか 次に考えたいのが、顧客像です。宿泊事業であれば、国内の個人旅行者。家族旅行。シニア層。外国人旅行者。ワーケーション利用者……

宿泊施設・旅館で使える補助金とは|改修・省力化など目的別に整理|第3話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「補助金ありきで宿・古民家再生を始めると失敗する理由」として、補助金は必ず採択されるわけではないこと。原則として後払いであること。自己負担や補助対象外経費があること。そして、補助金より先に、事業そのものが成立するかを確認することが大切だとお伝えしました。では実際に、「宿泊施設や観光事業では、どんなことに補助金を使えるのでしょうか?」 今回は、制度名を並べるのではなく、👉 「何にお金を使いたいのか」という目的から、関係しそうな補助制度を整理する方法を考えてみます。 宿泊施設の補助金は「目的」から探す 「旅館の補助金」「ホテルの補助金」と検索すると、さまざまな制度が見つかります。しかし、宿泊施設だから使える。古民家宿だから使える。という単純なものではありません。同じ旅館でも、・客室を改修したい・人手不足を解消したい・予約業務を効率化したい・外国人旅行者を受け入れたい・バリアフリー化したい・地域の観光商品をつくりたいでは、探す制度が変わります。そのため、「宿泊施設向けの補助金を探す」より、「自分は何を改善したいのかを整理してから探す」方が効率的です。 ※補助制度は年度ごとに内容や公募期間が変更されます。本文で紹介する支援分野や事例の中には、すでに公募を終了しているものもあります。実際に利用を検討する際は、必ず実施機関の最新の公募要領・募集状況をご確認ください。 1.建物・客室を改修したい 旅館やホテル、古民家宿では、建物や客室の改修が必要になることがあります。たとえば、・客室の改装・共用部分の整備・水回りの改善・施設の高付加価値化・安全性や快適性の向上などです。ただし、「建物を改修するから補助される」とは限りません。補助制度では、その改修によって何を実現するのかが重要になります。たとえば、インバウンド受入環境を改善する。バリアフリー化する。生産性を高める。地域全体の観光価値を高める。といった目的です。2026年には観光庁では、宿泊施設等のバリアフリー化に必要な施設改修や備品導入を支援する事業が実施されています。つまり、👉 「改修したい」だけではなく、「何のための改修か」を整理することがポイントです。 2.人手……

補助金ありきで宿・古民家再生を始めると失敗する理由|第2話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「観光・宿泊事業者が補助金を探すときに確認したいこと」として、何をしたいのか。どこで事業をするのか。誰が申請するのか。何にお金を使いたいのか。いつ実施したいのか。を整理してから、自分の事業に合う補助制度を探すことが大切だとお伝えしました。では、使えそうな補助金が見つかったら、その制度を前提に事業を進めてもよいのでしょうか。ここで注意したいのが、👉 「補助金があるから、この事業を始める」という順番にしないことです。 今回は、宿泊施設の開業や古民家再生で、補助金ありきの計画がなぜ危険なのかを整理します。 補助金は「事業を始める理由」ではない たとえば、「古民家再生に使えそうな補助金がある」と分かったとします。すると、「補助金が出るなら、この古民家を買おう」「改修費の一部が補助されるなら、宿を始めよう」と考えたくなるかもしれません。しかし、本来確認したいのはその前です。その場所で宿泊事業が成り立つのか。必要な許可を取得できるのか。改修にいくらかかるのか。開業後に売上を確保できるのか。そして、補助金がなくても事業を続けられる計画になっているのか。補助金は事業を支える手段の一つです。事業そのものの採算性や実現可能性の代わりにはなりません。 申請すれば必ずもらえるわけではない まず知っておきたいのは、補助金は申請すれば必ず受けられるものではないということです。制度によって審査があり、応募が多ければ採択されないこともあります。また、採択されたとしても、申請した金額のすべてがそのまま補助されるとは限りません。中小企業庁の案内でも、補助金には審査があり、申請すれば必ず支給されるものではないことが示されています。つまり、「補助金300万円が入る予定だから、この事業は成り立つ」という資金計画は危険です。補助金が採択されなかった場合でもどうするのか。そこまで考えておく必要があります。 「採択」と「交付決定」は同じではない 補助金では、「採択された」という言葉をよく聞きます。しかし、ここにも注意点があります。一般的な流れでは、申請↓審査↓採択↓交付申請↓交付決定↓事業実施↓実績報告↓補助金の支払いという段階を踏みます。制度によって手続は異なりま……

観光・宿泊事業者が補助金を探すときに確認したいこと|第1話

~補助金・融資・事業計画を一体で考える~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 これまでのブログでは、旅館業許可や宿泊施設の開業、古民家・空き家活用、事業承継などについて取り上げてきました。今回からは、新しいシリーズ「観光・宿泊・古民家再生の資金調達実務」を始めます。宿泊施設の開業や古民家再生を考えている方から、「使える補助金はありませんか?」という話を聞くことがあります。もちろん、補助金を調べることは大切です。しかし、最初に制度名を探し始めると、たくさんの情報に振り回されてしまうことがあります。そこで第1話では、👉 補助金を探す前に、まず何を整理しておけばよいのかから考えてみます。 「使える補助金」から探し始めない インターネットで、「宿泊施設 補助金」「観光事業 補助金」「古民家再生 補助金」などと検索すると、さまざまな制度が出てきます。しかし、補助金にはそれぞれ目的や対象者、対象経費、募集時期などがあります。そのため、「補助金があるか」より先に「自分は何をしようとしているのか」を整理することが大切です。たとえば、同じ古民家を活用するとした場合の事業でも、・古民家宿を開業する・古民家カフェを始める・既存の旅館を改修する・インバウンド対応の設備を導入する・地域の観光コンテンツをつくるでは、探すべき制度が変わります。補助金の名前から事業を考えるのではなく、事業の内容から使える制度を探す。まず、この順番を意識してみましょう。 補助金を探す前に整理したい5つのこと 最低限、次の5つを整理しておくと、補助金を探しやすくなります。 1.何をしたいのか 宿泊施設の新規開業なのか。既存施設の改修なのか。古民家・空き家の活用なのか。設備導入やDX、省力化なのか。まず、事業の目的をできるだけ具体的にします。 2.どこで事業をするのか 補助制度には、国の制度だけでなく、都道府県や市区町村などが実施するものがあります。そのため、事業を行う場所は重要な確認事項です。 3.誰が事業を行うのか 個人事業主なのか。法人なのか。これから創業するのか。すでに事業を行っているのか。申請者の状況によって対象となる制度が変わることがあります。 4.何にお金を使いたいのか ……