異業種から旅行業へ参入するには|新規事業として考えるポイント|第6話

異業種から旅行業へ参入するには|新規事業として考えるポイント|第6話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、「宿泊施設が飲食・体験・物販を始めるときの許認可」として、
宿泊事業を広げる際に確認したい許認可を見てきました。

今回は、さらに一歩進んで、
これまで旅行会社ではなかった事業者が、旅行業へ参入する場合
を考えます。
たとえば、
宿泊事業者。
交通事業者。
不動産会社。
地域商社。
イベント会社。
体験事業者。
観光施設。
などです。
こうした事業者が、自社のサービスに旅行商品を組み合わせたいと考えることがあります。
しかし、
「旅行業登録を取れば、新しい事業が始められる」
と考えるだけでは足りません。
👉 大切なのは、登録を取ることではなく、「自社の強みを旅行商品としてどう売るのか」を先に考えることです。
今回は、異業種から旅行業へ参入するときの基本を整理します。

なぜ異業種から旅行業へ参入するのか

旅行業へ参入する理由は、会社によって違います。
宿泊施設なら、
宿泊だけでなく地域体験も販売したい。
交通事業者なら、
移動だけでなく観光コースとして販売したい。
地域商社なら、
地元の食・体験・宿泊を一つの商品にしたい。
イベント会社なら、
イベント参加と宿泊・交通を組み合わせたい。
ということがあります。
つまり、
すでに持っているサービスや顧客との接点を、旅行商品へ広げる
ことが目的です。
👉 旅行業への参入は、「新しい業種を一から始める」というより、
既存事業の強みを広げる方法として考えると分かりやすくなります。

最初に考えたいのは「何を売るか」

旅行業登録を調べる前に、まず整理したいのは、
どんな旅行商品を売りたいのか
です。
たとえば、
宿泊+体験。
交通+観光。
イベント+宿泊。
地域ツアー。
訪日外国人向け商品。
法人・団体向け旅行。
などがあります。

・「何でも売る」は強みになりにくい

新規参入だからといって、
国内旅行も。
海外旅行も。
団体も。
個人も。
すべて扱う必要はありません。
むしろ、
自社がすでに持っている顧客・地域・商品とのつながり
から考える方が現実的です。
👉 「旅行業をやりたい」ではなく、「誰に、どんな旅行を売りたいか」まで具体化することが第一歩です。

旅行業登録が必要になる場面を確認する

商品を考えたら、
次に旅行業法との関係を確認します。
他社の宿泊を手配する。
交通を手配する。
宿泊と交通を組み合わせて販売する。
といった場合には、旅行業登録が必要になることがあります。
一方で、
自社サービスだけを提供する場合や、
単なる情報提供・紹介にとどまる場合など、
すべての観光事業が旅行業になるわけではありません。
👉 「観光に関係するから旅行業」ではなく、実際に何を契約・手配・販売するのかから判断します。

登録要件は「申請の話」だけではない

旅行業登録には、
営業所。
旅行業務取扱管理者。
財産的基礎。
営業保証金や弁済業務保証金分担金。
など、一定の要件があります。
ここで重要なのは、
これらを単なる「申請要件」として見ないことです。
たとえば、
営業所をどこに置くのか。
誰を管理者にするのか。
事業開始時にどのくらい資金が必要なのか。
という問題は、そのまま経営計画に関係します。
👉 旅行業登録の要件は、申請書を作る段階ではなく、新規事業の計画段階から確認しておくことが大切です。

既存事業との相性を考える

異業種から参入する場合の強みは、
すでに本業があること
です。
宿泊施設なら宿泊客。
交通事業者なら移動手段。
体験事業者ならコンテンツ。
地域商社なら地域事業者とのネットワーク。
といった資産があります。
👉「旅行業を足すことで何が変わるか」
ここを考えてみます。
宿泊だけだった事業者が、
地域の体験も販売できるようになる。
交通だけだった会社が、
観光コースとして提案できるようになる。
地域商品を扱う会社が、
旅行者を地域へ呼び込む商品を作れるようになる。
このように、
旅行業が既存事業を強くするか
を見ることが重要です。
👉 登録取得そのものではなく、「既存事業との相乗効果」があるかを考えましょう。

人の準備は早めに考える

旅行業では、
旅行業務取扱管理者
が重要な役割を持ちます。
そのため、
「事業を始めることが決まってから探す」
では遅れることがあります。
社内に有資格者がいるのか。
新たに採用するのか。
資格取得を目指すのか。
などを早い段階で確認しておく必要があります。
👉 旅行業への参入では、「商品」だけでなく「誰が運営するか」も同時に考えることが大切です。

資金も新規事業として考える

旅行業を始めるには、
登録関係の費用だけではなく、
営業所。
システム。
広告。
人件費。
商品造成。
仕入れ。
などの費用も考えます。
また、
商品を売り始めても、
すぐに安定した売上になるとは限りません。
そのため、
登録費用だけを見て事業資金を考えない
ここが重要です。
👉 旅行業登録は開業費用の一部。実際には「旅行事業を軌道に乗せるまでの資金」を考える必要があります。

自社ですべて抱え込まなくてもよい

旅行業に参入したからといって、
すべての旅行サービスを自社で提供する必要はありません。
宿泊。
交通。
体験。
ガイド。
飲食。
などは、地域の事業者と連携できます。
異業種参入だからこそ、
自社が得意な部分と、
他社に任せる部分
を明確にした方がよい場合もあります。
👉 旅行業は「全部自社でやる事業」ではなく、地域のサービスをつなぐ役割を持つこともできます。

今日の実務ワンポイント

旅行業への参入を考えたら、まず次の5つを書き出してみてください。
①誰に売るのか
②何を売るのか
③既存事業の強みは何か
④誰が旅行業務を担当するのか
⑤どのくらい資金が必要か
この5つが整理できると、
旅行業登録が必要か。
どのような事業にするのか。
何を準備すべきか。
が見えやすくなります。
👉 「旅行業登録を取る」からではなく、「どんな旅行事業を作るか」から始めましょう。

まとめ

異業種から旅行業へ参入する場合、
登録を取ることが目的になってはいけません。
大切なのは、
誰に売るのか。
何を売るのか。
既存事業とどうつなげるのか。
誰が運営するのか。
どのくらい資金が必要なのか。
です。
👉 旅行業への新規参入は、「許可を取る手続」ではなく、
「既存事業の強みを旅行ビジネスへ変える新規事業」として考えることが重要です。
登録要件と事業計画を別々に考えず、最初から一つの計画として整理していきましょう。

今日のチェックポイント

□旅行業へ参入する目的を整理している
□主な顧客を考えている
□販売したい旅行商品を具体化している
□既存事業との相乗効果を考えている
□旅行業登録が必要か確認している
□必要な登録区分を検討している
□旅行業務取扱管理者を確保できるか確認している
□営業所の準備を考えている
□必要な資金を整理している
□地域事業者との連携も検討している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「誰に・何を・自社のどんな強みで売るか」
から整理してみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきた中で感じるのは、
旅行会社だから旅行商品を作れるのではなく、地域や顧客を知っている事業者だからこそ作れる旅行商品もある
ということです。
宿泊。
交通。
地域体験。
イベント。
不動産。
地域商社。
それぞれが持っている強みは違います。
そこに旅行業の機能を加えることで、
これまで単独で提供していたサービスを、
一つの旅行商品として届けられる可能性があります。
一方、行政書士として見ると、
登録区分。
営業所。
旅行業務取扱管理者。
資金。
といった法的な要件も、事業計画と同時に整理しておく必要があります。
👉 「登録できるか」だけでなく、「登録したあと事業として成立するか」まで考える。
異業種からの旅行業参入では、この視点が特に重要だと考えています。

Q&A|異業種から旅行業への参入

Q1.旅行業の経験がなくても参入できますか?
旅行業への参入そのものが、旅行会社勤務経験の有無だけで決まるわけではありません。
ただし、旅行業務取扱管理者の配置など、登録要件を満たす必要があります。
また、商品造成、契約、手配、顧客対応など、実際の旅行業務を運営できる体制も考えておくことが重要です。

Q2.旅行業登録を取ってから商品を考えてもよいですか?
おすすめはしません。
登録区分や必要な体制は、どのような旅行商品を扱うかによって関係してきます。
先に「何を売るのか」を整理し、その事業に合った登録を検討する方が効率的です。

Q3.既存事業を続けながら旅行業を始めることはできますか?
可能な場合があります。
むしろ、既存事業の顧客やサービスを生かすことが、異業種参入の強みになります。
ただし、営業所、管理者、業務体制などについて旅行業法上の要件を確認する必要があります。

次回予告

異業種から旅行業へ参入するケースがある一方で、
旅行会社で長く働いてきた方が、
自分で旅行会社を始めたい
と考えることもあります。
現場経験があるからこそ、
得意な旅行。
顧客。
仕入先。
販売方法。
などをイメージしやすい反面、
会社員として旅行業務を行うことと、
自分で旅行会社を経営することは同じではありません。

次回は、
旅行会社勤務から独立開業するには|経験を事業に変える準備|第7話
として、
旅行業務取扱管理者。
営業所。
資金。
法人・個人。
顧客。
仕入先。
得意分野。
などを整理します。
👉 次回は、旅行会社で培った経験を、「自分の旅行ビジネス」に変えるために何を準備すればよいのかを考えます。

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行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、旅行業への新規参入や独立開業について、
事業内容の整理から旅行業登録まで一体で支援しています。
例えば、
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・事業内容に合った登録区分の整理
・旅行業務取扱管理者などの要件確認
・営業所要件の確認
・旅行業登録申請
・既存事業と旅行業を組み合わせた事業スキームの整理
・行政への事前相談
・開業までのスケジュール整理
など、計画段階に応じて必要な準備を整理します。
旅行業への参入では、
登録要件・人員・営業所・資金・商品・販売方法
が互いに関係しています。
そのため、
「旅行業登録を取れるか」
だけを見るのではなく、
どのような旅行事業を作り、その事業をどう続けていくのか
から一緒に考えます。
👉 既存事業の強みを、旅行ビジネスへ広げるところから整理してみませんか。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。