地域体験・着地型観光を商品にするには|企画から販売までの実務|第3話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「宿泊・体験・交通をセットで販売すると旅行業になる?」
として、
誰が手配するのか。
誰が契約するのか。
誰が代金を受け取るのか。
という視点から、観光ビジネスと旅行業法の関係を整理しました。
今回は、
地域体験・着地型観光
を取り上げます。
地域には、
まち歩き。
食。
文化。
農業。
自然。
産業。
歴史。
など、さまざまな観光資源があります。
しかし、
「面白い場所がある」
「地域ならではの体験がある」
だけでは、そのまま旅行者が購入できる商品にはなりません。
👉 観光素材を商品にするには、「誰に・何を・いくらで・どう販売するか」まで形にする必要があります。
今回は、地域にある魅力を、実際に予約・販売できる観光商品へ変える流れを整理します。
地域にあるものを「商品」に変える
着地型観光とは、旅行者が訪れる地域側で、その地域ならではの観光資源を活用してつくられる旅行や体験などを指す言葉として使われます。
たとえば、
港町を歩くガイドツアー。
地元の料理を学ぶ体験。
農業や漁業の体験。
伝統文化に触れるプログラム。
工場やものづくりの見学。
などです。
・「地域にある」だけでは商品にならない
たとえば、
「歴史ある街並みがあります」
というだけでは、旅行者は何を申し込めばよいのか分かりません。
そこで、
何時に集合するのか。
どこを歩くのか。
誰が案内するのか。
何分・何時間かかるのか。
何人まで参加できるのか。
料金はいくらか。
雨天時はどうするのか。
まで決めます。
👉 観光資源を「参加できる形」にすることが、商品造成の第一歩です。
最初に「誰に売るか」を決める
観光商品を考えるとき、
つい、
「何を体験させるか」
から考えたくなります。
しかし、その前に、
誰に参加してもらいたいのか
を考えることが重要です。
・同じ体験でも対象によって変わる
たとえば、
横浜のまち歩きでも、
シニア向け。
家族向け。
外国人旅行者向け。
歴史好き向け。
修学旅行向け。
では、内容も所要時間も説明方法も変わります。
家族向けなら、
短時間。
安全性。
子どもが楽しめる内容。
が重要かもしれません。
外国人旅行者向けなら、
言語対応。
予約・決済方法。
文化的な説明。
なども考えます。
👉 「誰に売るのか」が決まると、体験内容・価格・販売方法も決めやすくなります。
体験内容は「旅行者の時間」で組み立てる
商品を作る側は、
「あれも見せたい」
「これも体験してほしい」
と内容を増やしがちです。
しかし、
旅行者には限られた時間があります。
一日の旅行の中に入れられるか
たとえば、
集合に30分。
体験に3時間。
終了場所から駅まで40分。
となると、
旅行者にとっては半日近い商品になります。
一方、
90分程度のまち歩きなら、
宿泊前後や他の観光と組み合わせやすいかもしれません。
つまり、
内容の充実だけでなく、
旅行者の旅程に組み込みやすいか
も重要です。
👉 観光商品は、「何を体験してもらうか」だけでなく、「旅行者の一日の中にどう入るか」まで考えてつくります。
価格は「なんとなく」で決めない
次に考えたいのが、
価格です。
地域体験では、
「地域振興だから安く」
「最初だからとりあえず1,000円」
と価格を決めてしまうことがあります。
しかし、事業として続けるなら、
必要な費用を把握する必要があります。
体験には見えないコストもある
たとえば、
ガイドの人件費。
材料費。
会場費。
保険。
予約管理。
決済手数料。
販売手数料。
移動費。
準備・片付け時間。
などです。
参加者から受け取る料金だけで、
これらを無理なく賄えるのか。
を確認します。
👉 地域の魅力を長く提供するためにも、「安ければよい」ではなく、続けられる価格を考えることが大切です。
「どう売るか」まで決めて商品になる
体験内容と価格を決めても、
旅行者が予約できなければ商品として動きません。
そこで、
どこで販売するのか
を考えます。
・販売方法はいくつもある
たとえば、
自社ホームページ。
宿泊施設。
旅行会社。
観光協会。
OTAや体験予約サイト。
地域の観光案内所。
などが考えられます。
ここで重要なのは、
単に「掲載してもらう」だけではなく、
誰が予約を受けるのか。
誰が代金を受け取るのか。
キャンセル時は誰が対応するのか。
を決めることです。
👉 商品造成は、体験内容をつくるところではなく、「予約・販売できる状態」まで整えて完成します。
地域連携では役割分担を明確にする
地域体験では、
一つの事業者だけで完結しないことも多くあります。
たとえば、
農家。
飲食店。
宿泊施設。
ガイド。
交通事業者。
観光協会。
などが一つの商品に関わることがあります。
「みんなでやる」を具体化する
誰が企画するのか。
誰が予約を受けるのか。
誰が旅行者へ説明するのか。
誰が代金を受け取るのか。
各事業者への支払いはどうするのか。
事故やキャンセル時は誰が対応するのか。
こうした役割を整理します。
地域連携では、
仲間を集めることより、
責任とお金の流れを決めること
が実務上は重要です。
商品化すると旅行業との関係も出てくる
第2話で見たように、
体験を商品にしたからといって、直ちに旅行業になるわけではありません。
しかし、
宿泊。
交通。
などを組み合わせたり、
他社の宿泊・運送を手配したりする場合には、
旅行業法との関係を確認する必要があります。
体験単独か、旅行として売るのか
たとえば、
自社のまち歩き体験だけを販売する。
のと、
ホテル宿泊+まち歩きを一つの商品として販売する。
のでは、事業の仕組みが違います。
👉 商品を作る段階で、「何をセットにするのか」「誰が手配するのか」を確認しておくと、販売直前になって計画をやり直すリスクを減らせます。
今日の実務ワンポイント
地域に観光素材がある方は、
まず次の6つを書き出してみてください。
①誰に売るのか
②何を体験してもらうのか
③何分・何時間の商品にするのか
④料金はいくらにするのか
⑤誰が販売・予約を受けるのか
⑥誰が代金を受け取るのか
これだけでも、
「地域の魅力」
から、
「販売できる商品」
へ一歩近づきます。
👉 観光商品づくりでは、まず「旅行者が実際に申し込める形」まで具体化してみましょう。
まとめ
地域には、
歴史。
食。
自然。
文化。
人。
産業。
など、さまざまな観光資源があります。
しかし、
魅力があることと、
商品として販売できることは別です。
誰に提供するのか。
どんな内容にするのか。
何時間かかるのか。
いくらで売るのか。
誰が予約を受けるのか。
誰がお金を受け取るのか。
まで決めることで、
観光素材が商品へ変わります。
👉 着地型観光の商品づくりで大切なのは、「地域に何があるか」だけでなく、「旅行者がどう参加し、どう購入するか」まで設計することです。
地域の魅力を、
一度きりのイベントではなく、
継続して販売できる観光商品にしていきましょう。
今日のチェックポイント
□誰を主な顧客にするか考えている
□地域で活用できる観光資源を整理している
□体験内容を具体的に決めている
□所要時間・定員を考えている
□継続できる価格を考えている
□予約方法を決めている
□誰が販売するのか整理している
□誰が代金を受け取るのか整理している
□地域事業者との役割分担を考えている
□旅行業など必要な許認可を確認している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「誰に・何を・いくらで・どう売るか」
の4つから整理してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
旅行業界で37年間仕事をしてきて、
地域には、
「旅行者に知ってもらえれば面白い」
と思うものがたくさんあると感じてきました。
しかし、
魅力的な素材があることと、
実際に売れる旅行商品になることは別です。
時間。
料金。
予約。
販売。
役割分担。
安全面。
そして必要な許認可。
まで整って、
初めて旅行者が安心して購入できる商品になります。
行政書士として観光事業に関わる場合にも、
「この許可が必要です」
と答えるだけではなく、
そもそも誰が何を提供し、誰が販売する事業なのか
を整理することが重要だと考えています。
観光の現場で培ってきた感覚と、
行政書士としての許認可・法務の視点。
その両方から、
地域のアイデアを、実際に動く観光ビジネスへ変えていく支援
につなげていきたいと思います。
Q&A|地域体験・着地型観光の商品づくり
Q1.地域に面白い体験があれば、すぐ販売できますか?
体験そのものが魅力的でも、
料金。
予約方法。
キャンセル対応。
安全管理。
必要な許認可。
などを整える必要があります。
まずは、
旅行者が申し込み、実際に参加できる流れ
を作ってみましょう。
Q2.最初は安い価格で参加者を集めた方がよいですか?
テスト販売として価格を調整する考え方はあります。
ただし、
人件費。
材料費。
販売手数料。
準備時間。
などを無視した価格では、継続できません。
地域観光を続けるためにも、必要な費用を把握したうえで価格を考えることが大切です。
Q3.宿泊施設や交通と組み合わせたい場合はどうすればよいですか?
誰が宿泊や交通を手配し、
誰が旅行者へ販売するのか
を最初に整理しましょう。
組み合わせ方によっては旅行業法との関係が生じます。
販売を始める前に、取引の仕組みと必要な登録・許認可を確認することが重要です。
次回予告
地域体験を商品にすると、
次に考えたいのが、
旅行者をどう移動させるか
です。
ホテルから体験場所まで送迎する。
駅から宿まで迎えに行く。
複数の観光スポットを車で巡る。
こうしたサービスは旅行者にとって便利ですが、
「無料なら何でもできる」
「宿泊料金に含めれば問題ない」
と単純に判断できない場合があります。
次回は、
「観光事業で送迎サービスを始める前に確認したいこと|第4話」
として、
・宿泊施設の送迎
・体験事業者の送迎
・有償と無償の考え方
・料金への組み込み
・道路運送法との関係
・旅行業との関係
・交通事業者との連携
などを整理します。
👉 次回は、「お客様を車で運ぶ」という行為をサービスの一部として考えるとき、どこを確認すればよいのかを整理します。
\ 観光ビジネスを形にしたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅行業、宿泊業、地域体験などの観光ビジネスについて、
事業内容・旅行業登録・必要な許認可・事業計画・開業までの手続を一体で整理する支援
を行っています。
例えば、
・地域体験・観光商品の事業内容の整理
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・旅行商品の事業スキーム整理
・旅行業への新規参入・独立開業支援
・旅行業登録申請
・宿泊事業・旅館業許可
・地域体験に伴う許認可の確認
・行政への事前相談
・事業計画・資金計画の整理
・地域事業者との役割・契約関係の整理
など、現在の計画段階に応じて必要な支援を整理します。
観光ビジネスでは、
旅行業、宿泊、体験、交通、販売、地域連携
が互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「面白い観光商品か」
だけを見るのではなく、
誰に提供するのか。
誰が販売するのか。
誰が予約を受けるのか。
誰が代金を受け取るのか。
どの許認可が必要になるのか。
まで一緒に整理します。
また、税務、運送、建築、労務など他の専門分野が関係する場合には、必要に応じて各専門家・関係機関との確認も行いながら進めます。
👉 地域にある観光資源を、実際に予約・販売できる商品へ形にするところから整理してみませんか。
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クイズ!地域体験・着地型観光を商品にするには
前回 宿泊・体験・交通をセットで販売すると旅行業になる?|第2話
次回 観光事業で送迎サービスを始める前に確認したいこと|第4話
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。