宿泊・体験・交通をセットで販売すると旅行業になる?|第2話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「観光ビジネスを始める前に整理したいこと|誰に何を提供する?」
として、
誰に。
何を。
誰が提供するのか。
誰が販売するのか。
誰がお金を受け取るのか。
という、観光ビジネスの基本的な組み立て方を考えました。
今回は、その計画を具体化したときに出てきやすい、
「これは旅行業になるの?」
という疑問を取り上げます。
たとえば、
ホテル宿泊+地域体験。
古民家宿泊+まち歩き。
観光船+食事。
バス移動+観光施設。
こうしたサービスをセットで販売すると、旅行業登録が必要になるのでしょうか。
👉 ポイントは、「観光に関係するサービスだから旅行業になる」のではなく、
誰が運送・宿泊を手配し、どのような形で販売するのかを見ることです。
今回は、観光ビジネスと旅行業法の境目を、できるだけ分かりやすく整理します。
そもそも「旅行業」とは何をする事業?
旅行業というと、
旅行会社がパッケージツアーを販売すること
をイメージするかもしれません。
もちろん、それも旅行業です。
しかし旅行業法では、もう少し広く考えます。
基本となるのは、
報酬を得て、運送や宿泊について一定の契約・手配などを事業として行うこと
です。
分かりやすい例は「宿や交通を手配する」
たとえば、
他社のホテルを予約して旅行者へ提供する。
JR券や航空券を販売する。
貸切バスを使ったツアーを販売する。
といった行為は、旅行業との関係が強くなります。
観光庁も、航空券の販売、旅館のあっせん、貸切バスを利用したツアー販売などを基本的な旅行業務の例として示しています。(国土交通省)
つまり、
👉 「旅行会社という名前を使っているか」ではなく、実際にどんな取引をしているかを見る
ことが重要です。
宿泊・体験・交通を組み合わせるとどうなる?
ここからが観光ビジネスでは特に重要です。
たとえば、
ホテル宿泊+陶芸体験
を一つの商品として販売するとします。
この場合、
「体験が入っているから旅行業」
というわけではありません。
見るべきなのは、
宿泊を誰が提供し、誰が手配し、誰が旅行者と契約するのか
です。
自社のサービスだけを提供する場合
自社で旅館やホテルを運営していて、
自社の宿泊と自社で行う体験を組み合わせる。
このような場合には、他人の宿泊サービスを手配するケースとは事情が異なります。
ただし、具体的な販売方法や他のサービスとの組み合わせによって判断が変わる可能性があります。
そのため、
「自社サービスだから絶対に旅行業ではない」
と一律に判断するのも避けたいところです。
他社の宿泊や交通を組み込む場合
一方、
地域のホテルを手配する。
他社のバスを手配する。
鉄道や船などの運送サービスを組み込む。
といった場合には、旅行業法との関係を慎重に確認する必要があります。
観光庁も、運送や宿泊を伴う観光コンテンツの販売については、原則として旅行業登録が必要と案内しています。(国土交通省)
👉 自社の商品だけなのか、他社の宿泊・交通を手配するのか。ここが大きな確認ポイントです。
「体験だけ」なら旅行業ではない?
では、
まち歩き。
陶芸体験。
農業体験。
料理体験。
文化体験。
などを単独で販売する場合はどうでしょうか。
旅行業法では、運送や宿泊が基本的な旅行業務として位置付けられています。
レストラン利用や観光施設への入場など、運送・宿泊以外のサービスについては、
運送・宿泊の旅行業務に付随して手配する場合に旅行業務となる仕組みがあります。(国土交通省)
体験単独と「宿泊+体験」では考え方が違う
そのため、
体験そのものを自社で提供・販売する場合と、
他社の宿泊を手配し、その体験と組み合わせて販売する場合では、
旅行業法上の見方が変わることがあります。
ここで大切なのは、
「観光客向けだから旅行業」
と考えないことです。
👉 何を販売するのかだけではなく、運送・宿泊の手配が入っているかを見ることが重要です。
「無料で手配すれば大丈夫」とは限らない
もう一つ注意したいのが、
報酬
です。
旅行者から手数料を取らなければ、
「無料だから旅行業ではない」
と思うかもしれません。
しかし、旅行業法上の「報酬」は、旅行者から直接受け取る手数料だけとは限りません。
たとえば、
宿泊施設から販売手数料を受け取る。
紹介によるキックバックを受け取る。
他のサービス料金と一体として収益を得る。
といった場合も、報酬性が認められることがあります。
観光庁の施行要領でも、旅行者から直接金銭を受け取らなくても、宿泊施設から割戻しを受ける場合などは
報酬となり得ると整理されています。(国土交通省)
👉 「旅行者から手数料を取っていない=旅行業ではない」と単純には判断できません。
「誰が契約するか」を整理すると見えやすい
観光商品を考えるときには、
サービスの内容だけを眺めるより、
契約関係
を書き出すと分かりやすくなります。
たとえば宿泊+体験の場合
旅行者。
自社。
宿泊施設。
体験事業者。
がいるとします。
そこで、
誰が旅行者と契約するのか。
宿泊施設とは誰が契約するのか。
体験事業者とは誰が契約するのか。
旅行者は誰に代金を払うのか。
自社はどこから収益を得るのか。
を整理します。
すると、
単なる紹介なのか。
予約を取り次いでいるのか。
自社が手配しているのか。
一つの旅行商品として販売しているのか。
が見えやすくなります。
👉 旅行業登録の要否を考えるときには、「サービス一覧」より「契約とお金の流れ」を見ることが重要です。
「セット販売」という言葉だけで判断しない
ここは特に注意したいところです。
「セットにしたら旅行業」
「別々に料金を取れば旅行業ではない」
といった単純な線引きは危険です。
旅行業法では、
実際にどのような契約を結び、
どのサービスを手配し、
どのように報酬を得ているのか
が重要になります。
そのため、名称だけ変えても、
実態として運送・宿泊の手配を報酬を得て行っていれば、旅行業との関係を確認する必要があります。
👉 名前や料金表示ではなく、実際の事業の仕組みから判断することが大切です。
旅行業登録が必要なら「どの登録か」も次の問題になる
旅行業に該当すると分かったとしても、
そこで終わりではありません。
旅行業には、
第1種。
第2種。
第3種。
地域限定旅行業。
旅行業者代理業。
など、事業内容に応じた制度があります。
どこまで旅行を取り扱うのか。
国内だけか。
海外も扱うのか。
募集型企画旅行を扱うのか。
営業区域はどうするのか。
によって検討する登録も変わります。
ただし、このシリーズでは過去の旅行業登録の記事をそのまま繰り返すことはしません。
重要なのは、
👉 まず「旅行業に該当するか」を確認し、その次に自分の事業に合う登録方法を考える
という順番です。
今日の実務ワンポイント
宿泊・体験・交通を組み合わせた観光商品を考えている方は、
まず紙に、
旅行者
自社
宿泊事業者
交通事業者
体験事業者
を書いてみてください。
そして矢印で、
「誰が誰と契約するのか」
「誰がお金を受け取るのか」
「誰が予約・手配するのか」
を結びます。
この図を作るだけでも、
旅行業法上どこを確認すべきかが見えやすくなります。
👉 旅行業登録の確認は、「何をセットにするか」ではなく、「契約・手配・お金の流れ」を見えるようにするところから始めましょう。
まとめ
宿泊。
体験。
交通。
を組み合わせる観光ビジネスでは、
旅行業法が関係する場合があります。
しかし、
「セット販売なら必ず旅行業」
と機械的に決めるものではありません。
重要なのは、
誰が宿泊や交通を提供するのか。
誰がそれを手配するのか。
誰が旅行者と契約するのか。
誰が代金や手数料を受け取るのか。
です。
👉 旅行業になるかを判断するときは、「商品名」ではなく、「実際の取引の仕組み」を見ることが大切です。
面白い観光商品を考えたら、
販売を始める前に、
契約・手配・収益の流れ
を一度整理してみましょう。
今日のチェックポイント
□誰を主な顧客にするか考えている
□何を組み合わせて販売するのか整理している
□宿泊を誰が提供するのか確認している
□交通を誰が提供するのか確認している
□体験を誰が提供するのか確認している
□誰が予約・手配するのか整理している
□旅行者が誰と契約するのか整理している
□旅行者から誰が代金を受け取るのか確認している
□販売手数料や紹介料などの収益を整理している
□旅行業登録が必要か確認している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「誰が手配するのか・誰が契約するのか・誰がお金を受け取るのか」
の3つから整理してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
旅行業界で37年間仕事をしていると、
旅行商品は、
「宿+交通+観光」
という見た目だけで成り立っているわけではないことが分かります。
その裏には、
旅行者との契約。
宿泊施設との契約。
交通事業者との契約。
料金。
手数料。
責任の所在。
があります。
そして行政書士として観光事業を見ると、
この事業の仕組みを形にする段階が非常に重要だと感じます。
たとえば、
宿泊施設が地域体験を販売したい。
交通事業者が観光商品をつくりたい。
観光協会が地域の宿や体験を組み合わせたい。
異業種の会社が旅行業へ参入したい。
こうした場合、
「旅行業登録を取ればよいですか?」
という質問から始まることがあります。
しかし、その前に確認したいのは、
何を、誰から仕入れ、誰に、どのような契約で販売するのか
です。
そこが整理できれば、
旅行業登録が必要なのか。
どのような事業スキームが考えられるのか。
必要な許認可は何なのか。
も見えやすくなります。
👉 行政書士として、完成した申請書を作るだけでなく、観光ビジネスを実際に動かせる形へ整理するところから支援する。
このシリーズでは、そこまで含めて考えていきたいと思います。
Q&A|宿泊・体験・交通と旅行業
Q1.宿泊と体験をセットで売ったら必ず旅行業登録が必要ですか?
必ずとは限りません。
自社で提供するサービスなのか。
他社の宿泊を手配するのか。
誰が旅行者と契約するのか。
どのように報酬を得るのか。
などによって判断が変わります。
「セット」という名称だけで判断せず、実際の取引内容を確認することが大切です。
Q2.旅行者から手数料を取らなければ旅行業にはなりませんか?
そうとは限りません。
旅行者から直接手数料を受け取らなくても、宿泊施設などから販売手数料や紹介による収益を得る場合など、
報酬性が認められることがあります。
お金の受け取り方だけでなく、事業全体の仕組みから確認します。
Q3.商品を販売する前の段階でも相談できますか?
はい。
むしろ、
販売価格を決める。
他社と契約する。
予約サイトを作る。
広告を始める。
といった段階より前に、
誰が何を提供し、誰が契約・手配・販売するのか
を整理しておくことが大切です。
次回予告
旅行業との境目が見えてくると、
次に考えたいのが、
地域の体験そのものを、どう観光商品にするのか
です。
地域には、
まち歩き。
食。
文化。
農業。
自然。
産業。
歴史。
など、さまざまな観光資源があります。
しかし、
「面白い体験がある」
だけでは、旅行者が購入できる商品にはなりません。
次回は、
「地域体験・着地型観光を商品にするには|企画から販売までの実務|第3話」
として、
・地域資源の見つけ方
・誰を対象にするのか
・体験内容の組み立て
・価格設定
・予約・販売方法
・地域事業者との役割分担
・旅行業との関係
などを整理します。
👉 次回は、地域にある「観光素材」を、実際に予約・販売できる「観光商品」へ変えるには何が必要なのかを考えます。
\ 観光ビジネスを形にしたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅行業、宿泊業、地域体験などの観光ビジネスについて、
事業内容・旅行業登録・必要な許認可・事業計画・開業までの手続を一体で整理する支援
を行っています。
例えば、
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・旅行商品の事業スキーム整理
・旅行業への新規参入・独立開業支援
・旅行業登録申請
・旅行業務取扱管理者や営業所要件の確認
・宿泊事業・旅館業許可
・観光体験や地域商品づくりに伴う許認可の確認
・行政への事前相談
・事業計画・資金計画の整理
・地域事業者との連携に伴う役割・契約関係の整理
など、現在の計画段階に応じて必要な支援を整理します。
観光ビジネスでは、
旅行業、宿泊、体験、交通、販売、地域連携
が互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「旅行業登録を取れるか」
だけを見るのではなく、
何を販売するのか。
誰が手配するのか。
誰が契約するのか。
誰が代金を受け取るのか。
どの許認可が必要になるのか。
から一緒に整理します。
行政書士が行うことのできる業務の範囲で支援し、税務、運送、建築、労務など他の専門分野が関係する場合には、
必要に応じて各専門家・関係機関との確認も行いながら進めます。
👉 「この観光商品は旅行業になるのだろうか」と迷った段階から、実際の取引の仕組みを整理してみませんか。
▼ 関連ページはこちら
▶ 旅行業登録・旅行業支援
▶ 旅館業許可・ホテル開業支援
▶ 相談から正式依頼までの流れ
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横浜市泉区・中田駅周辺の事業者様はもちろん、オンライン相談により全国の旅行業・宿泊業・観光事業者、
これから旅行業・観光ビジネスへの参入を検討されている方からのご相談にも対応しています。
クイズ!宿泊・体験・交通をセットで販売すると旅行業になる?
前回 観光ビジネスを始める前に整理したいこと|誰に何を提供する?|第1話
次回 地域体験・着地型観光を商品にするには|企画から販売までの実務|第3話
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。