旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由|第7話

~生活支援と職場づくりが定着率を左右する~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「外国人雇用で失敗する宿の共通点」
についてお話ししました。
外国人スタッフを採用した後、
本当に大切になるのは定着です。
採用したのに長く続かない。
現場とのコミュニケーションがうまくいかない。
教育担当者が決まっていない。
生活面の相談先がない。
在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。
こうした状態では、
せっかく採用しても、
本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。
今回のテーマは、
「旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由」
です。
外国人スタッフを採用しても、
すぐに辞めてしまう。
仕事はまじめにしているのに、
どこか不安そうに見える。
日本人スタッフとの関係がうまくいかない。
生活面の悩みを誰にも相談できていない。
こうした状態が続くと、
本人も宿側も疲れてしまいます。
今回は、
外国人スタッフが長く働ける宿と、
定着しにくい宿の違いについて、
生活支援、
職場づくり、
相談体制、
将来の在留資格や永住への視点も含めて、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
外国人スタッフが辞める理由は「仕事」だけではない
外国人スタッフが定着しないと聞くと、
宿側はまず仕事の問題を考えます。
仕事が合わなかったのか。
接客が難しかったのか。
日本語が足りなかったのか。
勤務時間が合わなかったのか。
もちろん、
仕事の内容や勤務条件は大切です。
しかし、
外国人スタッフが辞める理由は、
仕事だけとは限りません。
住む場所に困っている。
病院の行き方が分からない。
役所の手続きが不安。
日本語でうまく相談できない。
職場では笑顔でも、
生活面で孤立している。
家族のことや将来の在留資格に不安がある。
このような悩みを抱えていることがあります。
宿側から見ると、
「仕事は問題なくできている」
ように見えても、
本人の中では不安が積み重なっている場合があります。
定着を考えるときは、
仕事だけでなく、
生活と将来の不安も見ることが大切です。
定着しにくい宿の共通点
外国人スタッフが定着しにくい宿には、
いくつかの共通点があります。
一つ目は、
相談できる人が決まっていないことです。
仕事で困ったとき、
誰に聞けばよいのか。
生活で困ったとき、
どこまで相談してよいのか。
在留資格や更新のことで不安があるとき、
誰に話せばよいのか。
ここが曖昧だと、
外国人スタッフは一人で悩みを抱えやすくなります。
二つ目は、
説明が日本人スタッフ向けのままになっていることです。
「いつもどおり」
「臨機応変に」
「空気を読んで」
「忙しそうなら手伝って」
こうした言葉は、
日本人同士でも分かりにくい場合があります。
外国人スタッフにとっては、
さらに不安になりやすい表現です。
三つ目は、
生活面を完全に本人任せにしていることです。
住居、
通勤、
病院、
銀行、
携帯電話、
役所の手続き、
地域での生活ルール。
宿側がすべてを代わりに行う必要はありません。
しかし、
「困ったときの相談先を示しておくだけでも、
本人の安心感は大きく変わります。」
長く働ける宿は「最初の3か月」を大切にしている
外国人スタッフの定着を考えるうえで、
最初の3か月はとても大切です。
採用直後は、
本人も緊張しています。
仕事を覚えなければならない。
日本語で対応しなければならない。
お客様に失礼がないようにしなければならない。
職場の人間関係にも慣れなければならない。
生活環境にも慣れなければならない。
この時期に、
「分からないことを聞きやすい職場」
になっているかどうかで、
その後の定着率は変わります。
例えば、
次のような対応が考えられます。
初日に相談担当者を伝える。
1週間後に短い面談をする。
1か月後に業務の不安を聞く。
3か月後に生活面も含めて確認する。
在留期限や更新時期を一緒に確認する。
このように、
最初から面談のタイミングを決めておくと、
本人も相談しやすくなります。
「困ったら言ってください」
だけでは足りません。
👉困ったときに言いやすい仕組みを作ることが大切です。
生活支援は特別扱いではない
外国人スタッフへの生活支援というと、
宿側が大きな負担を背負うように感じるかもしれません。
しかし、
生活支援は特別扱いではありません。
安心して働ける環境を整えるための、
雇用管理の一部です。
例えば、
次のようなことです。
住まいの相談先を決めておく。
病院に行きたいときの相談先を伝える。
緊急時の連絡方法を共有する。
役所の手続きで困ったときの窓口を案内する。
地域の生活ルールを最初に説明する。
これだけでも、
本人の不安はかなり減ります。
特に旅館・ホテルでは、
地域外から働きに来る外国人スタッフもいます。
住み慣れない場所で働く不安。
日本語で生活する不安。
将来の在留資格に関する不安。
こうした不安を少しでも減らすことが、
長く働いてもらうための土台になります。
日本人スタッフとの橋渡しをする
外国人スタッフが定着するかどうかは、
本人だけの問題ではありません。
受け入れる職場側の準備も大切です。
日本人スタッフが、
外国人スタッフの担当業務を理解しているか。
日本語での説明方法を工夫しているか。
文化や考え方の違いを責めるのではなく、
確認しながら進めているか。
困ったときに、
誰が間に入るのか。
ここが整っていないと、
小さな誤解が積み重なります。
例えば、
外国人スタッフが質問しないから、
分かっていると思っていた。
注意したつもりが、
強く責められたと受け取られていた。
日本語の表現が曖昧で、
何をすればよいか伝わっていなかった。
こうしたことは、
現場で起こりやすい問題です。
外国人スタッフに日本の職場へ慣れてもらうことも大切ですが、
宿側も、
伝え方や教え方を見直す必要があります。
外国人雇用は、
人を採用するだけではなく、
職場を整えることでもあります。
在留資格や更新の不安も定着に関係する
外国人スタッフにとって、
在留資格はとても大切な問題です。
在留期限はいつまでなのか。
更新はいつから準備すればよいのか。
今の業務内容で問題ないのか。
転職した場合に何を確認すべきなのか。
将来、永住を考える場合、今の働き方や生活状況は大丈夫なのか。
こうした不安は、
日々の仕事にも影響します。
宿側が在留資格のすべてを判断する必要はありません。
むしろ、
安易に判断しないことが大切です。
ただし、
在留期限を一緒に確認する。
更新時期が近づいたら声をかける。
業務内容が変わるときは専門家に確認する。
本人が不安を感じている場合は相談先につなぐ。
こうした対応は、
宿側にもできることです。
外国人スタッフが安心して働ける宿は、
在留資格や更新の不安を本人任せにしません。
宿側と本人が、
必要なタイミングで確認できる関係を作っています。
外国人スタッフ定着面談シートを作る
実務では、
外国人スタッフの定着を支えるために、
簡単な面談シートを作ることをおすすめします。
難しい書類である必要はありません。
次のような項目を確認できれば十分です。
【外国人スタッフ定着面談シート】
・氏名
・在留資格
・在留期限
・主な担当業務
・教育担当者
・相談担当者
・仕事で困っていること
・生活面で困っていること
・日本語で不安な場面
・職場で相談しやすい人
・今後やってみたい業務
・更新時期の確認
・将来の希望
このシートを使う目的は、
職員を管理することではありません。
本人の不安を早めに知ることです。
小さな不安を早めに聞ければ、
退職につながる前に対応できることがあります。
本人にとっても、
「この宿は自分のことを見てくれている」
と感じやすくなります。
日本で働く外国人スタッフの方へ
日本で旅館・ホテルで働いている外国人スタッフの方、
これから宿泊業で働きたい外国人の方にも、
お伝えしたいことがあります。
仕事で不安なことがあるときは、
早めに相談してください。
分からないことを聞くことは、
悪いことではありません。
在留資格のこと。
更新時期のこと。
仕事の内容のこと。
生活のこと。
将来のこと。
一人で抱え込まないことが大切です。
特に、
在留期限や更新の準備は、
直前になってからでは慌てることがあります。
今の仕事が在留資格に合っているか。
業務内容が変わったときに確認しているか。
将来、転職や永住を考える場合に、
何を大切にすべきか。
こうしたことは、
早めに確認しておくと安心です。
安心して働ける職場を選ぶこと。
分からないことを相談できる人を持つこと。
これは、
日本で長く働くうえでとても大切です。
今日の実務ワンポイント
外国人スタッフの定着で大切なのは、
仕事・生活・在留資格の3つを分けて確認すること
です。
仕事だけを見ていると、
生活面の不安を見落とします。
生活面だけを見ていると、
業務内容と在留資格のズレを見落とすことがあります。
在留資格だけを見ていると、
現場での人間関係や教育体制を見落とします。
仕事、生活、在留資格
この3つを定期的に確認することで、
外国人スタッフが長く働きやすい環境に近づきます。
まとめ
外国人スタッフが定着しない理由は、
仕事だけとは限りません。
生活面の不安。
職場での孤立。
相談相手の不在。
日本語での説明不足。
在留資格や更新への不安。
こうしたことが重なると、
本人も宿側も疲れてしまいます。
外国人スタッフが長く働ける宿は、
採用後の関わり方を大切にしています。
最初の3か月に声をかける。
教育担当者を決める。
相談担当者を決める。
生活面の不安を聞く。
在留期限や更新時期を確認する。
こうした一つひとつの積み重ねが、
定着につながります。
👉外国人スタッフは、単なる人手不足対策ではありません。
宿を支え、
海外からのお客様との橋渡しになり、
地域と世界をつなぐ存在にもなります。
その力を活かすためには、
安心して働ける職場づくりが必要です。
今日のチェックポイント
□ 外国人スタッフの教育担当者を決めた
□ 仕事の相談先と生活面の相談先を整理した
□ 最初の3か月で面談するタイミングを決めた
□ 在留期限と更新時期を確認した
□ 日本人スタッフにも受け入れ方針を共有した
行政書士田中穂積の視点
旅行業界で37年間、
多くの宿泊施設と旅行者を見てきました。
これからの旅館・ホテルでは、
外国人のお客様を迎えるだけでなく、
外国人スタッフと一緒に宿を支える場面が増えていくと思います。
外国人スタッフは、
人手不足を補う存在であるだけではありません。
言葉や文化の橋渡しをしてくれる存在です。
海外のお客様に安心感を与えてくれる存在です。
地域と世界をつなぐ存在にもなります。
しかし、
その力を活かすには、
宿側の受け入れ体制が必要です。
教育。
相談体制。
生活面の支援。
在留期限の管理。
更新時期の確認。
将来の永住や定着への視点。
これらを少しずつ整えていくことで、
外国人スタッフも安心して働くことができます。
行政書士として私がお手伝いしたいのは、
書類を整えることだけではありません。
旅館業の現場を理解したうえで、
👉外国人スタッフ本人と宿側の双方が安心できる仕組みを整えることです。
旅館業許可。
宿泊業の開業支援。
外国人雇用。
在留資格。
更新。
永住。
これらは別々の話に見えて、
実はつながっています。
「長く働ける宿を作ることは、
長く続く観光事業を作ることにもつながります。」
その一歩を、
👉法務の面から伴走していきたいと考えています。
Q&A|外国人スタッフの定着について
Q1. 外国人スタッフがすぐ辞めてしまう原因は何ですか?
A 仕事そのものだけでなく、生活面の不安、相談相手の不在、日本語での説明不足、在留資格や更新への不安などが重なっている場合があります。まずは本人が何に困っているのかを早めに確認することが大切です。
Q2. 宿側は生活支援まで行う必要がありますか?
A すべてを宿側が代わりに行う必要はありません。ただし、相談先を示す、緊急時の連絡方法を共有する、病院や役所手続きで困ったときの窓口を案内するなど、安心して働ける環境づくりは重要です。
Q3. 在留資格の更新は本人に任せておけばよいですか?
A 本人が行う手続きであっても、宿側も在留期限や更新時期を把握しておくことをおすすめします。雇用契約や勤務実態が関係する場合もあるため、早めに確認しておくと安心です。
Q4. 日本人スタッフには何を伝えておくべきですか?
A 外国人スタッフの担当業務、教育担当者、相談先、説明方法、困ったときのフォロー体制を共有しておくことが大切です。本人だけでなく、受け入れる職場側の準備も定着に関わります。
Q5. 行政書士に相談できることは何ですか?
A 在留資格、就労資格、更新、転職、永住に関する相談のほか、旅館・ホテルで外国人スタッフを雇用する際の業務内容整理、在留期限管理、相談体制づくりなどについてご相談いただけます。
次回予告
次回は、
「外国人スタッフの在留資格更新で宿が気を付けたいこと」
について考えてみたいと思います。
外国人スタッフが長く働くためには、
在留資格の更新時期をきちんと確認しておくことが大切です。
在留期限はいつまでなのか。
更新準備はいつから始めるのか。
雇用契約や勤務実態は整理できているのか。
採用時と実際の業務内容にズレはないのか。
転職者を採用した場合、
何を確認すべきなのか。
次回は、
外国人スタッフの在留資格更新で宿側が気を付けたい実務について、
👉旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
\ 旅館・ホテルの開業や運営、外国人雇用でお困りの方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅館業を始めたいが、何から手を付ければよいか分からない
・この物件で旅館業営業ができるのか確認したい
・旅館業許可申請をサポートしてほしい
・開業後の運営やコンプライアンスについて相談したい
・外国人スタッフを雇用したいが、在留資格が分からない
・就労資格、更新、転職、永住について相談したい
といったお悩みに対し、横浜市泉区・中田駅を拠点に、旅行業界での37年の現場経験と、行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅館業は、許可を取得して終わる事業ではありません。
地域に人を呼び、地域を活性化する観光事業として、開業後も継続して育てていくことが大切です。
また、外国人スタッフが安心して働ける環境を整えることは、これからの宿泊業にとって重要な運営課題です。
在留資格の確認、就労資格の管理、更新手続きなどを適切に行うことは、事業者にとっても、働く外国人の方にとっても大切です。
当事務所では、旅館業許可、宿泊業の開業支援、開業後の運営相談に加え、在留資格・帰化・国際業務についてもご相談を承っております。
日本で働く外国人の方、外国人スタッフを雇用したい旅館・ホテル事業者の方は、早めにご相談ください。
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― 横浜の行政書士のアトリエ ―
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次回からも、「開業後だからこそ知っておきたい実務」を、旅行業界での37年の経験と行政書士の視点から一緒に考えていきます。
クイズ!外国人スタッフが定着する宿づくり
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