観光事業で送迎サービスを始める前に確認したいこと|第4話

観光事業で送迎サービスを始める前に確認したいこと|第4話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、「地域体験・着地型観光を商品にするには」として、
地域の観光資源を実際に予約・販売できる商品へ変える流れを見てきました。
地域体験を商品にすると、次に考えたいのが、旅行者をどう移動させるかです。
ホテルから体験場所まで送る。駅から宿まで迎えに行く。複数の観光スポットを車で巡る。
旅行者にとって便利なサービスですが、「無料なら大丈夫」「宿泊料金に含めれば問題ない」と単純には判断できない場合があります。
👉 送迎を観光サービスに組み込むときは、「誰を・どこへ・何の対価で運ぶのか」を整理することが大切です。

今回は、観光事業で送迎を始める前に確認したい基本を見ていきます。

送迎には道路運送法が関係する

自動車で人を運ぶ事業には、道路運送法が関係します。
タクシーやバスのように、人を有償で運ぶことを事業として行う場合には、原則として許可などが必要です。
一方、ホテルや旅館などが利用者へのサービスとして無料送迎を行うケースもあります。
ここで重要なのは、単に「お客様を車に乗せるか」ではなく、運送の対価を受け取っているかという点です。

宿泊施設の無料送迎はどう考える?

ホテルや旅館が宿泊者を駅や空港などへ送迎するケースがあります。
国土交通省は、宿泊施設の利用者を対象として、送迎に対する反対給付がなく、
宿泊サービスに付随して行われる一定の送迎について、道路運送法上の許可・登録を要しない場合を示しています。
現在のガイドラインでは、一定の条件のもとで近隣の観光スポットへの送迎や、送迎途中の立寄りなども例示されています。
ただし、「送迎無料」と表示すればよいわけではありません。
送迎利用者だけ料金が高い。送迎付きプランとして実質的に料金を上乗せしている。
こうした場合には、送迎への対価が含まれていないかを確認する必要があります。
👉 名称ではなく、実際のお金の流れを見ることがポイントです。

体験事業者が送迎する場合は?

地域体験でも、
「駅から体験場所まで迎えに行きたい」
ということがあります。
ここでも考え方の基本は同じです。
たとえば、
体験料5,000円+送迎料1,000円
であれば、送迎への対価があることは明確です。
一方、
「体験料金に全部含めています」
とすれば必ず問題がなくなるわけでもありません。
送迎の有無で料金が変わるのか。送迎部分に実質的な対価があるのか。サービス全体の実態から確認します。
👉 「別料金にしなければ大丈夫」と考えないことが大切です。

観光スポットを車で巡る場合はさらに注意

駅から宿まで送るだけでなく、
観光地を何か所も巡る。観光案内をしながら移動する。複数の体験場所を車で回る。
こうなると、単なる施設への送迎よりも、観光のための運送サービスという性格が強くなります。
宿泊サービスに付随する無料送迎と、有料ツアーとして車で観光地を巡ることは同じではありません。
👉 「送迎」なのか、「移動そのものを商品として提供しているのか」を区別して考えましょう。

自社の車なら自由に有償送迎できる?

会社や施設が所有する車だからといって、自由にお客様を有償で運べるわけではありません。
「自社の車だから」
「社員が運転するから」
という理由だけでは判断できません。
大切なのは、誰の車かではなく、人を運ぶことによって対価を得ているかです。
送迎を事業の一部として組み込む場合には、道路運送法上どのような取扱いになるのかを事前に確認する必要があります。

旅行業との関係も確認する

観光商品の移動では、道路運送法だけでなく、旅行業法との関係も出てきます。
たとえば、
宿泊+体験+貸切バス
を一つの商品として販売する場合です。
旅行業法では、報酬を得て運送や宿泊について一定の契約・手配などを事業として行う場合、
旅行業登録が必要になることがあります。観光庁も、旅行業を「報酬を得て一定の旅行業務を事業として行うもの」と整理しています。
ここでは、
誰が運ぶのか

誰が交通を手配するのか
を分けて考えることがポイントです。
👉 観光商品の「移動」は、道路運送法と旅行業法の両方から見る必要がある場合があります。

自社送迎だけが答えではない

送迎があると旅行者には便利ですが、必ず自社で運ばなければならないわけではありません。
タクシー。貸切バス。地域の交通事業者。
こうした事業者と連携する方法もあります。
交通を専門事業者に任せれば、観光事業者は体験や商品企画、地域連携など自社の強みに集中できます。
👉 「自分たちで運ぶ」だけでなく、「交通事業者と組む」ことも観光商品づくりの選択肢です。

今日の実務ワンポイント

送迎を始めたいと思ったら、まず次の5つを書き出してみてください。
①誰を運ぶのか
②どこからどこまで運ぶのか
③料金を取るのか
④誰が運ぶのか
⑤誰が販売・手配するのか
この5つを整理すると、道路運送法や旅行業法のどこを確認すべきかが見えやすくなります。
👉 車を準備する前に、「運送の仕組み」を整理することから始めましょう。

まとめ

ホテルから駅まで送る。体験場所へ案内する。観光地を車で巡る。
送迎は、観光客にとって便利なサービスです。
しかし、
「無料なら大丈夫」
「料金に含めれば大丈夫」
「自社の車なら大丈夫」
とは一律には判断できません。
大切なのは、
誰を運ぶのか。どこまで運ぶのか。対価を受け取るのか。誰が運ぶのか。誰が販売・手配するのか。
という実際の仕組みです。
👉 観光事業の送迎では、「車を出せるか」ではなく、「どのような運送サービスになるのか」を確認することが重要です。
自社送迎だけにこだわらず、交通事業者との連携も含めて、安全で実現可能な方法を考えていきましょう。

今日のチェックポイント

□誰を送迎するのか決めている
□送迎する区間を整理している
□送迎への対価があるか確認している
□他の料金に送迎の対価が含まれていないか確認している
□自社車両を使う場合の道路運送法を確認している
□観光地を巡る場合の内容を整理している
□誰が運送するのか確認している
□旅行業法との関係を確認している
□交通事業者との連携も検討している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、「誰を・どこへ・いくらで・誰が運ぶか」から整理してみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて感じるのは、「移動」は観光商品を成立させる重要な要素だということです。
魅力的な宿や体験があっても、そこまで行きにくければ、旅行者には利用しづらくなります。
だから、
「駅から送迎したい」
「体験場所まで車で案内したい」
という発想は自然です。
一方、行政書士として見ると、そこには道路運送法や、商品によっては旅行業法の確認が必要になります。
重要なのは、「できない」で終わらせず、「どのような方法なら実現できるのか」を考えることです。
無料送迎として組み立てるのか。交通事業者と連携するのか。旅行商品として適切な仕組みを整えるのか。
観光のアイデアと法務をつなぎ、実際に動かせる形にすることが大切だと考えています。

Q&A|観光事業と送迎サービス

Q1.ホテルが宿泊者を駅まで無料で送るには許可が必要ですか?
送迎への反対給付がなく、宿泊サービスに付随する一定の無料送迎については、道路運送法上の許可・登録を要しない場合があります。
ただし、料金設定や送迎内容によって判断が変わるため、実際の仕組みを確認することが大切です。

Q2.体験料金に送迎代を含めれば問題ありませんか?
料金を一つにまとめただけで、必ず無償送迎になるわけではありません。
送迎の有無による料金差や、何の対価として料金を受け取っているのかなどから確認します。
「別料金にしなければ大丈夫」と考えないことが大切です。

Q3.自社送迎が難しい場合はどうすればよいですか?
タクシーや貸切バスなど、交通事業者と連携する方法があります。
また、宿泊・体験・交通を組み合わせて販売する場合には、旅行業法との関係も確認します。
自社で運ぶことだけにこだわらず、観光商品全体として移動方法を設計することが重要です。

次回予告

送迎について整理したら、次に考えたいのが、宿泊施設が新しいサービスを始める場合の許認可です。
ホテルや旅館が、
飲食を提供する。地域体験を始める。商品を販売する。旅行商品を扱う。
といった場合、旅館業の許可だけですべて対応できるとは限りません。
次回は、
「宿泊施設が飲食・体験・物販を始めるときの許認可|第5話」
として、宿泊施設が事業を広げるときに確認したいポイントを整理します。
👉 次回は、「宿の中で行うサービスだから大丈夫」と考えず、新しいサービスごとに必要な許認可を見ていきます。

\ 観光ビジネスを形にしたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ―
では、旅行業・宿泊業・地域体験などの観光ビジネスについて、事業内容と必要な許認可を一体で整理する支援を行っています。
例えば、
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・旅行商品の事業スキーム整理
・観光事業における送迎方法の整理
・旅行業への新規参入・独立開業支援
・旅行業登録申請
・宿泊事業・旅館業許可
・地域体験に伴う許認可の確認
・行政への事前相談
など、計画段階に応じて必要な支援を整理します。
観光ビジネスでは、旅行業・宿泊・体験・交通・販売・地域連携が互いに関係します。
そのため、誰が運ぶのか。誰が販売するのか。どこで対価が発生するのか。
どの制度が関係するのか。という事業全体から確認します。
道路運送法上の許可・登録など専門的な確認が必要な場合には、関係機関や専門家とも連携しながら進めます。
👉 「送迎も付けたい」と考えた段階から、観光商品全体の仕組みを整理してみませんか。

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クイズ!観光事業で送迎サービスを始める前に確認したいこと

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前回 地域体験・着地型観光を商品にするには|企画から販売までの実務|第3話
次回 宿泊施設が飲食・体験・物販を始めるときの許認可|第5話

この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。