旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か?人手不足の現実|第4話

旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か?人手不足の現実|第4話

~採用前に考えたい業務整理と受け入れ体制~

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊についてお話ししました。
宿泊業界では、
人手不足が大きな課題になっています。
しかし、
人が足りないこと以上に、
業務の流れが整理されていないこと。
担当者が曖昧なこと。
引き継ぎが弱いこと。
現場の仕組みが整っていないこと。
こうした問題が、
宿の運営を苦しくしている場合があります。
今回のテーマは、
外国人雇用
です。

人手不足が深刻になる中で、
外国人スタッフの採用を検討する旅館・ホテルも増えています。
フロントで外国語対応ができる人材がほしい。
清掃やレストランサービスを支えてほしい。
インバウンド対応を強化したい。
若い人材を確保したい。
こうした理由から、
外国人雇用に関心を持つ宿は少なくありません。
しかし私は、
外国人雇用を
「人手不足を一気に解決する魔法の方法」
のように考えるのは危険だと思っています。
外国人スタッフを採用する前に、
宿側が整理しておくべきことがあります。
業務内容。
在留資格。
教育体制。
生活面の支援。
現場でのコミュニケーション。
相談できる体制。
こうした準備がないまま採用してしまうと、
外国人スタッフも宿側も、
お互いに苦しくなってしまいます。

今回は、
外国人雇用を検討する前に整理しておきたい宿側の準備について、
旅行業37年の経験と特に行政書士としての視点から考えていきます。

外国人雇用は人手不足の「救世主」なのか

人手不足に悩む宿にとって、
外国人スタッフの採用は大きな可能性があります。
特に、
インバウンド需要が高まる中で、
外国語対応ができるスタッフ。
異文化理解のあるスタッフ。
海外のお客様と自然にコミュニケーションを取れるスタッフ。
こうした人材は、
宿の魅力を高める力になります。また、
日本で働きたいと考える外国人の中には、
真面目で意欲が高く、
長く宿泊業に関わりたいと考えている方もいます。
その意味で、
外国人雇用は、
宿にとって大きなチャンスです。

しかし、
外国人スタッフを採用すれば、
すぐに人手不足が解決するわけではありません。
むしろ、
受け入れ体制が整っていない宿では、
思った業務を任せられない。
在留資格との関係で業務内容に問題が出る。
教育に時間がかかる。
現場で意思疎通がうまくいかない。
生活面の不安が仕事に影響する。
スタッフが定着しない。
といった問題が起こることがあります。
外国人雇用は、
採用することがゴールではありません。
採用した後に、
👉安心して働き続けてもらえる体制を作ることが重要です。

まず確認したいのは「どの業務を任せたいのか」

外国人雇用を検討するときに、
最初に整理したいのは、
どの業務を任せたいのか
です。
人手が足りないから外国人を採用したい。
この気持ちはよく分かります。
しかし、
「人が足りない」
だけでは、
採用計画になりません。
フロント業務なのか。
予約管理なのか。
清掃なのか。
レストランサービスなのか。
通訳や翻訳なのか。
SNSや海外向け広報なのか。
送迎なのか。
夜間対応なのか。

まずは、
任せたい業務を具体的に書き出す必要があります。
なぜなら、
外国人が日本で働く場合、
👉在留資格と業務内容が関係するからです。
どの在留資格で働くのかによって、
従事できる業務の範囲が変わることがあります。
宿側が、
「何でもお願いしたい」
と考えていても、
👉在留資格上できる業務とできない業務があります。
だからこそ、
外国人雇用の第一歩は、
人を探すことではなく、
業務を整理すること
なのです。

在留資格と業務内容のズレに注意する

外国人スタッフを雇用する際に、
特に注意したいのが、
在留資格と実際の業務内容のズレ
です。
例えば、
専門的な業務を前提とする在留資格で採用したにもかかわらず、
実際には単純作業ばかりを任せてしまう。
フロントや通訳業務として採用したはずが、
現場では清掃や配膳ばかりになっている。
このような状態は、
👉在留資格との関係で問題になる可能性があります。
出入国在留管理庁(入管)は、
ホテル・旅館等で外国人が就労する場合の在留資格について、
業務内容との関係を整理した資料を公表しています。
つまり、
宿泊業で外国人を雇用する場合には、
「どんな人を採るか」
だけでなく、
👉「どの在留資格で、どの業務を任せるか」
を確認する必要があります。
特に宿泊分野では、
特定技能という在留資格が関係することがあります。
一方で、
フロント、通訳、企画、広報、予約管理など、
専門性を伴う業務では、
別の在留資格が関係する場合もあります。
ここは自己判断で進めるのではなく、
採用前に確認することが大切です。

特定技能を考える場合に宿側が見るべきこと

宿泊分野で外国人雇用を検討する場合、
在留資格「特定技能」を考えることがあります。
特定技能は、
人材確保が困難な産業分野で、
一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れる制度です。
宿泊分野も、
その対象分野の一つです。
ただし、
特定技能で外国人を受け入れる場合、
宿側にも確認すべきことがあります。
例えば、
宿所が旅館・ホテル営業の許可を受けているか。
宿泊分野特定技能協議会への加入が必要になるか。
外国人本人の支援体制をどう整えるか。
登録支援機関を利用するのか。
生活面の相談対応をどうするのか。
日本語での業務指示をどう行うのか。
こうした点です。
特定技能は、
単に人を採用する制度ではありません。
受け入れる側にも、
継続的な支援や適正な雇用管理が求められます。
宿泊業の現場では、
忙しさの中で、
「とにかく来てくれれば助かる」
と考えてしまうことがあります。
しかし、
特定技能外国人を受け入れる場合には、
採用後の支援体制まで含めて考える必要があります。

宿側の教育体制が整っているか

外国人スタッフを採用する場合、
教育体制も重要です。
日本語がどの程度できるのか。
宿泊業の経験があるのか。
日本の接客習慣に慣れているのか。
お客様対応をどこまで任せるのか。
緊急時の対応を理解しているのか。
こうした点は、
採用後に丁寧に確認する必要があります。
特に旅館・ホテルでは、
お客様との接点が多くあります。
挨拶。
案内。
チェックイン。
食事会場での対応。
館内説明。
クレーム対応。
忘れ物対応。
緊急時対応。
これらをいきなり任せるのは、
外国人スタッフにとっても負担になります。
日本人スタッフであっても、
宿ごとのルールや接客方針を覚えるには時間がかかります。
外国人スタッフであれば、
言葉や文化の違いもあります。
そのため、
👉教育体制を整えることが大切です。
例えば、
業務マニュアルを作る。
写真付きの手順書を用意する。
よく使う接客フレーズをまとめる。
困ったときの相談先を決める。
最初は担当業務を限定する。
段階的に任せる業務を増やす。
こうした準備が必要です。

生活面の支援も定着に関わる

外国人雇用では、
仕事だけでなく生活面の支援も重要です。
特に地方や観光地の宿では、
住居、
交通、
買い物、
病院、
銀行口座、
携帯電話、
地域での生活ルールなど、
仕事以外の部分で困ることがあります。
生活が安定しなければ、
仕事にも影響します。
外国人スタッフが安心して働くためには、
困ったときに相談できる人がいること。
生活上のルールを説明してくれること。
地域で孤立しないこと。
緊急時に連絡できる体制があること。
こうした支援が大切です。

特定技能の場合には、
支援計画や登録支援機関との関係も出てきます。
しかし、
制度上の支援だけでなく、
宿としての受け入れ姿勢も重要です。
外国人スタッフを単なる労働力として見るのではなく、
👉一緒に宿を支える仲間として迎えること。
これが定着につながります。

現場スタッフとのコミュニケーションをどう作るか

外国人スタッフを採用するとき、
本人だけでなく、
既存スタッフとの関係も大切です。
現場では、
日本語の理解度が違う。
仕事の進め方が違う。
文化や習慣の違いがある。
説明したつもりでも伝わっていない。
遠慮して質問できない。
こうしたことが起こる可能性があります。
そのため、
受け入れる側のスタッフにも、
事前に説明しておくことが大切です。
外国人スタッフにどの業務を任せるのか。
誰が教育担当になるのか。
困ったときは誰に相談するのか。
言葉が通じにくいときはどうするのか。
文化の違いをどう理解するのか。
こうしたことを共有しておくと、
現場での混乱を減らせます。

外国人雇用は、
本人だけの問題ではありません。
👉宿全体のチームづくりの問題です。

雇う前に作りたい外国人雇用準備リスト

外国人雇用を検討する前に、
宿側で準備リストを作ることをおすすめします。

【外国人雇用準備リスト】

・任せたい業務を書き出したか
・業務内容と在留資格の関係を確認したか
・雇用契約の内容を整理したか
・教育担当者を決めたか
・業務マニュアルを用意したか
・生活面の相談先を決めたか
・既存スタッフへ説明したか
・緊急時の連絡体制を決めたか
・登録支援機関を利用するか検討したか
・採用後の面談やフォロー方法を決めたか

このリストを見ると分かるように、
外国人雇用は採用活動だけではありません。
受け入れ前の準備。
採用後の教育。
生活面の支援。
現場での定着。
ここまで含めて考える必要があります。

今日の実務ワンポイント

外国人雇用を考えるときは、
まず求人票を作る前に、
任せたい業務を書き出すこと
から始めてください。
フロントなのか。
清掃なのか。
レストランサービスなのか。
通訳なのか。
予約管理なのか。
その業務は、
どの在留資格で可能なのか。
どこまで任せられるのか。
ここを整理せずに採用を進めると、
後から在留資格とのズレが問題になる可能性があります。
外国人雇用は、
人手不足対策であると同時に、
👉コンプライアンス対応でもあります。

まとめ

外国人スタッフの採用は、
旅館・ホテルにとって大きな可能性があります。
インバウンド対応。
人材確保。
多文化対応。
宿の魅力向上。
こうした面で、
外国人雇用は宿の力になることがあります。
しかし、
外国人雇用は、
単に人手を補う方法ではありません。
業務内容。
在留資格。
教育体制。
生活面の支援。
現場でのコミュニケーション。
これらを整理して初めて、
外国人スタッフが安心して働ける環境になります。
人手不足だから採用する。
それだけでは不十分です。
宿側が受け入れる準備を整えること。
それが、
外国人雇用を成功させる第一歩です。
落とし穴を知ることは、
長く続く宿づくりへの第一歩です。

今日のチェックポイント

□ 外国人スタッフに任せたい業務を書き出した
□ 業務内容と在留資格の関係を確認する必要があると把握した
□ 教育担当者や相談先を決める必要があると確認した
□ 生活面の支援や緊急時対応について考え始めた
□ 外国人雇用を「採用」ではなく「受け入れ体制づくり」として考えた

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間、
多くの宿泊施設と旅行者を見てきました。
近年、
外国人観光客の存在は、
宿泊業にとってますます大きくなっています。
その中で、
外国人スタッフが宿の現場で活躍することは、
とても自然な流れだと思います。
外国語で案内できること。
異文化を理解できること。
海外のお客様の不安に寄り添えること。
これは、
宿にとって大きな強みになります。
しかし、
外国人スタッフを雇用するには、
制度面の確認が欠かせません。
どの在留資格で働くのか。
どの業務を任せるのか。
受け入れ側にどのような準備が必要なのか。
ここを曖昧にしたまま進めると、
本人にも宿にも負担がかかります。
行政書士として私がお手伝いできるのは、
👉単に在留資格の手続きを見ることだけではありません。
「宿の業務内容を整理し、
適切な在留資格との関係を確認し、
安心して雇用を進められる体制づくりを支援すること」です。
外国人雇用は、
宿の未来を広げる可能性があります。
だからこそ、
正しく、
丁寧に、
準備して進めること
が大切だと考えています。

Q&A|旅館・ホテルの外国人雇用でよくある疑問

Q1. 外国人スタッフにはどんな業務でも任せられますか?
A いいえ。外国人が日本で働く場合、在留資格と業務内容の関係を確認する必要があります。任せたい業務がその在留資格で可能かどうかを事前に確認することが大切です。

Q2. 宿泊業では特定技能で外国人を雇えますか?
A 宿泊分野は特定技能の対象分野に含まれています。ただし、受け入れ側にも条件や支援体制が求められるため、事前確認が必要です。

Q3. フロント業務と清掃業務を両方任せてもよいですか?
A 在留資格によって考え方が異なります。どの業務が主たる業務なのか、付随的な業務としてどこまで認められるのかなど、慎重に確認する必要があります。

Q4. 日本語が十分でない外国人を採用しても大丈夫ですか?
A 業務内容によります。接客や緊急時対応が必要な場合は、日本語でのコミュニケーション体制や教育体制を整えることが重要です。

Q5. 行政書士に相談できることは何ですか?
A 在留資格と業務内容の確認、外国人雇用に関する手続き、受け入れ体制の整理、必要書類の確認などについてご相談いただけます。

次回予告

次回は、
旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識
について考えてみたいと思います。
今回の記事では、
外国人雇用を検討する前に、
宿側が準備しておきたいことを整理しました。
次回はさらに一歩進んで、
在留資格とは何か。
宿泊業ではどのような在留資格が関係するのか。
業務内容と在留資格のズレにどのような注意が必要なのか。
こうした点について、
👉行政書士としての視点から分かりやすく解説していきます。

\ 旅館・ホテルの開業や運営でお困りの方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・旅館業を始めたいが何から手を付ければよいか分からない
・この物件で旅館業営業ができるのか知りたい
・保健所や消防署との協議に不安がある
・旅館業許可申請をサポートしてほしい
・開業後の運営やコンプライアンスについて相談したい
といったお悩みに対し、
ここ横浜市泉区(中田駅)より、
旅行業37年の現場経験と行政書士としての法務視点を踏まえてサポートしています。
旅館業は、許可を取得して終わる事業ではありません。
👉「地域に人を呼び、地域を活性化する観光事業」として育てていくことが何より大切です。
開業準備から旅館業許可申請、
そして開業後の運営・コンプライアンス、外国人雇用まで、
実務ベースで伴走いたします。

▼ お問い合わせはこちら
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ―

料金について
― 横浜の行政書士のアトリエ ―

相談から正式依頼までの流れ
― 横浜の行政書士のアトリエ ―

お問い合わせフォーム
横浜での旅館・ホテル開業、旅館業許可申請、開業後の運営や法務に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

📌旅行・宿泊・観光事業者の皆様へ

インバウンド需要の回復に伴い、ホテル・旅館・民泊、旅行業、ランドオペレーター、外食・サービス業などの現場では、
外国人材の活用がますます重要になっています。
一方で、外国人を雇用する際には、在留資格と実際の業務内容が適合しているか、雇用条件や職務内容をどのように整理するか、
更新・変更に向けてどのような資料を準備すべきかなど、慎重な確認が必要です。

行政書士田中穂積事務所では、旅行・宿泊・観光分野に関する実務理解を活かし、
外国人スタッフの雇用に関するご相談のほか、
・技術・人文知識・国際業務の要件確認
・特定技能の導入に向けた確認
・在留期間更新・在留資格変更に向けた書類作成支援
・職務内容説明書・理由書の作成支援
・雇用条件・業務内容の整理
・旅行業登録、旅館業許可、民泊届出等との連携相談
など、観光・宿泊ビジネスに関わる事業者様の外国人雇用と事業運営を、法務と実務の両面からサポートしております。

※現在は、本人申請を前提とした書類作成・準備支援を中心に対応しております。申請取次行政書士としての対応開始後は、より利便性の高い入管手続きサポートを予定しております。

▶ 詳しくはHPより「在留資格・帰化・国際業務サポート」もあわせてご覧ください。

次回からも、「開業後だからこそ知っておきたい実務」を、旅行業37年の経験と行政書士の視点から一緒に考えていきます。

クイズ!消防点検を軽視すると宿経営はどう危ない?

読み込み中…

クイズ!旅館・ホテルの外国人雇用と受け入れ体制

読み込み中...
前回 旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊の実態|第3話
次回 旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積