旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

~業務内容と在留資格のズレを防ぐために~

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か
人手不足の現実についてお話ししました。
人手不足が深刻になる中で、
外国人スタッフの採用を検討する宿は増えています。
しかし、
外国人雇用は、
単に人手を補う方法ではありません。
業務内容、
在留資格、
教育体制、
生活面の支援、
現場でのコミュニケーションなど、
事前に整理しておくべきことが多くあります。
今回は、
さらに一歩進んで、
在留資格
について考えてみたいと思います。

宿泊業で外国人を雇うとき、
よくある誤解があります。
「日本に住んでいる外国人なら働ける」
「アルバイトなら問題ない」
「フロントも清掃も配膳も、必要に応じて任せればよい」
「人手不足だから、とにかく来てもらえれば助かる」
しかし、
外国人が日本で働く場合には、
在留資格と業務内容の関係を確認する必要があります。
在留資格によって、
できる仕事と注意すべき仕事が変わるからです。
旅館・ホテルの現場では、
フロント、
予約管理、
通訳、
企画・広報、
接客、
清掃、
レストランサービス、
送迎、
夜間対応など、
さまざまな業務があります。
そのすべてを、
同じように考えることはできません。

今回は、
旅館業で外国人を雇う前に知っておきたい在留資格の基礎知識について、
行政書士としての視点から分かりやすく整理していきます。

在留資格とは何か

まず、
在留資格とは何でしょうか。
簡単に言えば、
外国人が日本に滞在し、
どのような活動をすることができるのかを示す資格です。
観光で来ている人。
留学している人。
会社で働いている人。
日本人と結婚している人。
永住している人。

それぞれ、
日本でできる活動の範囲が異なります。
宿泊業で外国人を雇う場合には、
その人が持っている在留資格で、その業務を行えるのか
を確認する必要があります。
ここを確認しないまま採用してしまうと、
本人にも宿側にも大きなリスクがあります。
外国人雇用では、
「人柄が良い」
「日本語が話せる」
「すぐ働けると言っている」
だけで判断してはいけません。
まず確認すべきなのは、
👉在留カードと在留資格
です。

宿泊業で関係しやすい在留資格

旅館・ホテルで外国人を雇用する場合、
関係しやすい在留資格はいくつかあります。
代表的なものとしては、
・技術・人文知識・国際業務
・特定技能
・技能実習
・留学
・家族滞在
・永住者
・日本人の配偶者等
・定住者
などがあります。
ただし、
ここで大切なのは、
在留資格の名前だけで判断しないこと
です。
同じ外国人スタッフでも、
どの在留資格なのかによって、
任せられる業務や注意点が変わります。
例えば、
永住者や日本人の配偶者等など、
身分に基づく在留資格の場合は、
就労活動に制限がないことが一般的です。
一方で、
技術・人文知識・国際業務や特定技能のような就労系の在留資格では、
業務内容との関係を確認する必要があります。

留学や家族滞在の場合は、
資格外活動許可の有無や勤務時間にも注意が必要です。
つまり、
外国人を雇うときは、
在留資格の種類
在留期限
就労できる範囲
任せる業務内容
をセットで確認することが大切です。

技術・人文知識・国際業務とは

宿泊業でよく関係する在留資格の一つが、
技術・人文知識・国際業務
です。
略して、
技人国
と呼ばれることもあります。

旅館・ホテルでは、
例えば、
フロントでの外国語対応、
予約管理、
海外のお客様への案内、
通訳・翻訳、
企画・広報、
マーケティング、
海外向け情報発信、
などの業務で関係することがあります。
ただし、
技術・人文知識・国際業務は、
👉単純作業を広く行うための在留資格ではありません。
ここが非常に重要です。
例えば、
フロント業務や通訳業務として採用したはずなのに、
実際には清掃やベッドメイキングばかりを任せている。
企画・広報として採用したはずなのに、
現場では配膳や洗い場が中心になっている。
このような場合、
👉在留資格と業務内容のズレが問題になる可能性があります。
もちろん、
宿泊業の現場では、
一時的に他の業務を手伝う場面もあります。
しかし、
主な業務が何なのか、
採用時の説明と実際の業務が合っているのか、
ここを丁寧に確認する必要があります。

特定技能とは

次に、
宿泊業で重要になるのが、
特定技能
です。

特定技能は、
人材確保が難しい分野で、
一定の技能や日本語能力を持つ外国人を受け入れる制度です。
宿泊分野も、
特定技能の対象分野の一つです。
宿泊分野の特定技能では、
旅館やホテルでの宿泊サービスに関する業務が想定されています。
例えば、
フロント業務。
企画・広報業務。
接客業務。
レストランサービス業務。
こうした業務が関係します。
ただし、
特定技能で外国人を受け入れる場合には、
宿側にも確認すべきことがあります。
旅館・ホテル営業の許可を受けているか。
宿泊分野特定技能協議会への加入が必要か。
支援計画をどう作るか。
登録支援機関を利用するのか。
生活面の支援をどう行うのか。
こうした点を整理する必要があります。

特定技能は、
人手不足だから誰でもすぐ雇える制度ではありません。
👉受け入れる側の体制も問われる制度です。

留学生や家族滞在のアルバイトで注意すること

旅館・ホテルでは、
留学生や家族滞在の方がアルバイトとして働くケースもあります。
この場合に確認したいのが、
資格外活動許可
です。
留学や家族滞在は、
本来の在留目的が就労ではありません。
そのため、
アルバイトをするには、
資格外活動許可を受けているかを確認する必要があります。
また、
勤務時間にも注意が必要です。
「短時間だから大丈夫」
「本人が働けると言っている」
という判断だけでは危険です。
採用前に、
在留カードの裏面なども含めて確認し、
👉資格外活動許可の有無を確認することが大切です。
留学生の場合は、
学業が本来の目的です。
働きすぎによって、
本人の在留に影響が出る可能性もあります。
宿側としても、
勤務時間の管理をしっかり行う必要があります。

永住者・定住者・日本人の配偶者等の場合

外国人スタッフの中には、
永住者。
定住者。
日本人の配偶者等。
永住者の配偶者等。
といった在留資格の方もいます。
これらは、
身分や地位に基づく在留資格と呼ばれることがあります。
一般的に、
就労活動に制限がないため、
旅館・ホテルのさまざまな業務に従事しやすい在留資格です。
ただし、
就労制限がないからといって、
確認が不要になるわけではありません。
在留カードの確認。
在留期限の確認。
本人確認。
雇用契約の整理。
労務管理。
こうした基本的な確認は必要です。

また、
外国人スタッフが将来的に永住を考えている場合には、
安定した就労状況や納税・社会保険など、
日々の生活と就労の積み重ねが大切になることがあります。
宿側としても、
適正な雇用管理を行うことは、
本人の将来にも関わる大切な支援になります。

在留資格と業務内容のズレを防ぐには

外国人雇用で最も注意したいのは、
在留資格と業務内容のズレ
です。
このズレを防ぐためには、
採用前に次のような確認をしておくことが大切です。

【在留資格確認リスト】

・在留カードを確認したか
・在留資格を確認したか
・在留期限を確認したか
・就労制限の有無を確認したか
・資格外活動許可の有無を確認したか
・任せたい業務を書き出したか
・主な業務と補助的な業務を分けたか
・雇用契約書の業務内容と実際の業務が合っているか
・勤務開始後に業務内容が変わった場合の確認方法を決めたか

このリストを見ると分かるように、
外国人雇用では、
採用時だけでなく、
採用後の運用も大切です。
最初はフロント業務として採用したけれど、
現場の都合で清掃中心になってしまった。
予約管理担当として採用したけれど、
実際には配膳や洗い場ばかりになっている。
こうしたことが起きないように、
👉業務内容を定期的に見直すことが必要です。

採用前に作りたい業務内容メモ

旅館・ホテルで外国人を採用する前に、
私は
業務内容メモ
を作ることをおすすめします。
難しい書類である必要はありません。
次のような項目を整理しておきます。

【業務内容メモの項目例】

・採用予定者の氏名
・在留資格
・在留期限
・任せたい主な業務
・補助的にお願いする業務
・勤務場所
・勤務時間
・必要な日本語能力
・必要な経験やスキル
・教育担当者
・相談窓口
・在留資格との確認事項

例えば、
主な業務:フロントでの外国語対応、チェックイン・チェックアウト、海外客への館内案内
補助的な業務:繁忙時の簡単な案内補助、予約確認
確認事項:清掃や配膳をどこまで任せられるか確認が必要
このように書き出しておくと、
採用前に確認すべき点が見えてきます。
また、
行政書士などの専門家に相談する際にも、
話が整理しやすくなります。

転職者を採用するときの注意点

すでに日本で働いている外国人を採用する場合もあります。
この場合、
「すでに日本で働いているから大丈夫」
と考えてしまいがちです。
しかし、
転職前の業務と、
転職後に任せる業務が同じとは限りません。
前職では在留資格に合っていた業務でも、
新しい宿での業務内容が異なれば、
確認が必要になることがあります。
特に、
技術・人文知識・国際業務などの就労系在留資格では、
新しい勤務先での業務内容が在留資格に合っているかを確認することが大切です。

必要に応じて、
👉就労資格証明書の交付申請を検討する場面もあります。
転職者だからこそ、
在留カードだけでなく、
前職の業務。
今回任せる業務。
雇用契約の内容。
在留期限。
これらを整理しておくことが重要です。

永住を見据えた外国人スタッフ支援

外国人スタッフの中には、
将来的に日本で長く暮らしたい、
永住を目指したいと考える方もいます。
宿にとっても、
長く働いてくれる人材は大切です。
外国人スタッフが日本で安定して働き、
生活を整え、
地域に根付いていくことは、
宿にとっても地域にとっても大きな力になります。
ただし、
👉永住は簡単な手続きではありません。
一定期間の在留歴、
安定した生活、
素行、
納税や社会保険など、
さまざまな点が確認されます。
宿側が直接すべてを管理するものではありませんが、
適正な雇用契約、
賃金支払い、
社会保険手続き、
勤務実態の整理などは、
本人の将来にも関わります。
外国人スタッフを一時的な人手として見るのではなく、
👉将来の宿を支える人材として育てる。
その視点が、
これからの宿泊業には大切だと思います。

今日の実務ワンポイント

外国人を雇う前に、
まず確認したいのは、
在留資格の名前だけではありません。
大切なのは、
その在留資格で、
その宿で、
その業務を行えるのか
ということです。
在留カードを確認する。
在留期限を確認する。
就労制限の有無を確認する。
任せたい業務を書き出す。
主な業務と補助的な業務を分ける。
この作業を行うだけで、
在留資格と業務内容のズレを防ぎやすくなります。
外国人雇用は、
採用活動であると同時に、
入管法務とコンプライアンスの実務でもあります。

まとめ

旅館業で外国人を雇う場合、
まず知っておきたいのが在留資格です。
在留資格は、
外国人が日本でどのような活動を行えるかを示す大切なものです。
宿泊業では、
技術・人文知識・国際業務。
特定技能。
留学。
家族滞在。
永住者。
定住者。
日本人の配偶者等。
など、
さまざまな在留資格が関係します。
しかし、
大切なのは名称を覚えることではありません。
その人の在留資格で、
その業務を任せてよいのか。
採用時の業務内容と、
実際の現場業務にズレがないか。
採用後も適正な雇用管理ができるか。
ここを確認することです。

外国人雇用は、
宿にとって大きな可能性があります。
インバウンド対応。
人材確保。
多文化対応。
将来の地域人材づくり。
こうした面で、
宿の力になることがあります。
だからこそ、
正しく確認し、
👉安心して働ける環境を整えることが大切です。
落とし穴を知ることは、
長く続く宿づくりへの第一歩です。

今日のチェックポイント

□ 採用予定者の在留カードを確認する必要があると理解した
□ 在留資格と在留期限を確認する必要があると理解した
□ 任せたい業務を具体的に書き出した
□ 主な業務と補助的な業務を分けて考えた
□ 業務内容と在留資格のズレを専門家に確認する必要性を把握した

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間、
多くの宿泊施設や旅行者と関わってきました。
その中で、
外国人のお客様だけでなく、
外国人スタッフが宿を支える場面も増えてきたと感じています。
外国人スタッフは、
単なる人手不足対策ではありません。
海外のお客様との橋渡しになり、
宿の雰囲気を豊かにし、
地域と世界をつなぐ存在にもなります。
一方、行政書士としてお伝えすることは
外国人雇用には、
在留資格という大切な確認事項があります。
どの在留資格で働くのか。
どの業務を任せるのか。
宿側の受け入れ体制は整っているのか。
将来的に日本で長く働きたい、
永住を目指したいという希望がある場合に、
適正な雇用管理ができているのか。
こうした点は、
👉入管業務や国際業務に関わる行政書士の視点が活きる分野です。

私は、
旅館業許可を取得することだけでなく、
開業後の運営、
外国人雇用、
在留資格、
将来の定着支援まで含めて、
宿泊事業者を実務ベースで支えていきたいと考えています。
👉宿は、地域に人を呼ぶ場所です。
そしてこれからは、
地域と海外をつなぐ場所にもなっていきます。
その可能性を、
👉法務の面から支えることが、行政書士としての私の役割だと考えています。

Q&A|旅館業と外国人スタッフの在留資格

Q1. 在留カードを確認すれば、それだけで雇用して大丈夫ですか?
A いいえ。在留カードの確認は大切ですが、それだけでは不十分です。在留資格、在留期限、就労制限の有無、任せる業務内容との関係を確認する必要があります。

Q2. 技術・人文知識・国際業務の外国人に清掃業務を任せてもよいですか?
A 主な業務が何かによって慎重な確認が必要です。技術・人文知識・国際業務は単純作業を広く行うための在留資格ではありません。実際の業務内容との整合性を確認することが大切です。

Q3. 特定技能なら宿の業務を何でも任せられますか?
A 何でも自由に任せられるわけではありません。宿泊分野で想定される業務内容や受け入れ側の条件、支援体制を確認する必要があります。

Q4. 永住者なら在留資格の確認は不要ですか?
A 就労制限がない場合でも、在留カードや在留期限、本人確認などの基本確認は必要です。適正な雇用管理も重要です。

Q5. 外国人スタッフが将来、永住を希望している場合、宿側ができることはありますか?
A 適正な雇用契約、勤務実態の整理、賃金支払い、社会保険や税務面での適正な対応など、安定した就労環境を整えることが本人の将来にもつながります。具体的な永住申請については、専門家に相談することをおすすめします。

次回予告

次回は、
外国人雇用で失敗する宿の共通点|採用後の落とし穴
について考えてみたいと思います。
外国人スタッフを採用した後、
本当に大切になるのは定着です。
採用したのに長く続かない。
現場とのコミュニケーションがうまくいかない。
教育担当者が決まっていない。
生活面の相談先がない。
在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。
こうした状態では、
せっかく採用しても、
本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。
次回は、
外国人スタッフを採用した後に起こりやすい落とし穴と、
長く働いてもらうための実務対応について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。

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クイズ!旅館業と外国人スタッフの在留資格

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

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