宿泊料金はどう決める?安売りを防ぐ価格設定|第12話

~周辺相場だけに合わせず、宿に必要な利益を残すために~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし」
について考えました。
口コミ評価が高く、
再訪してくれるお客様が増えても、
宿泊料金そのものが適切でなければ、
十分な利益は残りません。
予約は入っている。
客室も埋まっている。
それでも、
👉「忙しいのに利益が残らない」
という宿があります。
今回は、
👉宿泊料金は何を基準に決めればよいのか
について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えます。
周辺の宿より安ければよいのでしょうか
宿泊料金を決めるとき、
周辺施設の料金を調べることは大切です。
同じ地域。
同じくらいの客室数。
食事や設備の違い。
口コミ評価。
こうした比較は、
料金を考える参考になります。
しかし、
「周辺の宿が1万円だから、うちも1万円」
と決めるだけでは十分ではありません。
宿ごとに、
・家賃や借入金
・人件費
・光熱費
・清掃費
・食材費
・設備の維持費
・OTAなどの販売費用
が異なるからです。
周辺相場に合わせた結果、
予約は入っても利益が残らないことがあります。
👉相場は参考にしても、料金の根拠にはしすぎない
ことが大切です。
一室を販売するための費用を確認する
料金を決める前に、
一室を販売すると、いくら費用がかかるのかを確認します。
例えば、
・客室清掃
・シーツやタオルの洗濯
・アメニティー
・水道光熱費
・食事の材料
・人件費
・決済や販売の手数料
などです。
さらに、
家賃。
固定資産税。
保険料。
システム利用料。
設備の修繕や保守費。
借入金の返済。
といった費用は、
客室が空いていても発生します。
そのため、
「一室を準備する費用」
だけでなく、
「宿を維持するための費用」
も料金に反映する必要があります。
満室でも利益が残らないことがあります
安い料金を設定すれば、
予約は入りやすくなるかもしれません。
しかし、
宿泊者が増えれば、
清掃。
食事。
アメニティー。
スタッフの勤務時間。
設備の使用。
も増えます。
その結果、
売上は増えても、
利益がほとんど増えていないことがあります。
注意したいのは、
👉満室にすること自体が目的になること
です。
何室売れたかだけでなく、
一室販売した結果、
👉最終的にいくら残ったのか。
を確認する必要があります。
一人利用と二人利用の違いを考える
同じ客室でも、
一人で利用する場合と二人で利用する場合があります。
二人利用では、
・食事
・タオル
・アメニティー
・寝具
・水道光熱費
などが増えます。
一方で、
客室清掃や建物の固定費が、
すべて二倍になるわけではありません。
そのため、
一室料金を基本にするのか。
一人当たりの料金にするのか。
人数が増えた場合の追加料金をどうするのか。
を整理する必要があります。
宿の形態に合った料金体系になっているか、
見直してみましょう。
食事付きプランは原価だけでは判断できません
食事付きプランは、
宿の魅力を伝えやすい商品です。
地域の食材。
季節の料理。
宿ならではの朝食。
こうした食事は、
再訪のきっかけにもなります。
一方で、食事には、
・仕入れ
・仕込み
・調理
・配膳
・片付け
・衛生管理
・廃棄
の費用と時間がかかります。
食材価格が上がっているのに、
料金を以前のままにしていると、
食事を提供するほど利益が減ることもあります。
食材費だけでなく、
調理や配膳にかかる時間まで含めて確認することが大切です。
OTAの販売費用も忘れない
OTA経由の予約では、
宿泊料金から販売手数料などが差し引かれます。
そのため、料金を決めるときは、
「いくらで販売するか」
だけでなく、
👉販売費用を差し引いて、いくら宿に残るか
を確認します。
ただし、
OTAには新しいお客様へ宿を知ってもらう役割もあります。
手数料だけを理由に避けるのではなく、
集客効果と宿に残る金額の両方のバランスを見て判断しましょう。
繁忙期と閑散期で料金を見直す
宿泊需要は、
一年を通して同じではありません。
週末。
連休。
夏休み。
年末年始。
地域の祭りやイベント。
桜や紅葉の時期。
需要が高い日まで、
常に同じ割引料金で販売すると、
本来得られた利益を逃すことがあります。
一方で、
予約が入りにくい時期には、
連泊プランや平日向けプランなどの工夫が必要です。
大切なのは、
・需要が高い日
・通常の日
・需要が低い日
を分けて、
料金とプランを考えることです。
値下げの前に宿泊する理由をつくる
予約が少ないと、
まず料金を下げたくなります。
しかし、
値下げを続けると、
さらに安い宿と比較される。
通常料金では売れにくくなる。
宿の価値まで低く見られる。
ということがあります。
値下げの前に、
・地域体験を組み合わせる
・連泊で楽しめる過ごし方を提案する
・季節の料理を打ち出す
・平日の静かな滞在を伝える
・一人旅や長期滞在向けのプランを作る
といった工夫を考えます。
👉その料金で泊まる理由を伝える
ことが、安売りを防ぐポイントです。
割引には目的と期限を決める
早期予約割引。
直前割引。
連泊割引。
会員向け料金。
期間限定プラン。
割引には、
それぞれ目的があります。
例えば、
早期予約割引は、
早めに予約を確保するため。
直前割引は、
売れ残った空室を販売するため。
連泊割引は、
滞在を長くしてもらうためです。
割引を行うときは、
・何のために行うのか
・どの日程を対象にするのか
・いくらまで下げても利益が残るのか
・いつ終了するのか
を決めておきましょう。
常に割引している状態では、
通常料金の意味が薄れてしまいます。
キャンセル条件も料金の一部です
宿泊料金を考えるとき、
キャンセル条件も重要です。
宿泊直前にキャンセルされると、
その客室を再販売できないことがあります。
特に、
客室数の少ない宿。
食事を事前に仕入れる宿。
団体や貸切予約を受ける宿。
では、一件のキャンセルでも影響が大きくなります。
一方で、
厳しすぎる条件は、
予約をためらう原因になります。
キャンセル料が発生する時期。
悪天候や交通機関の運休時の対応。
日程変更の取扱い。
無断キャンセルへの対応。
こうした条件を整理し、
予約時に分かりやすく伝えることが必要です。
料金を変えた後の結果を確認する
宿泊料金を変更しても、
なぜその料金にしたのか。
予約がどのように動いたのか。
利益が増えたのか。
を確認しなければ、
次の判断に生かせません。
例えば、
・日付と曜日
・販売した料金
・予約経路
・予約が入った時期
・最終的な稼働率
・周辺イベント
・キャンセル数
を簡単に記録します。
料金を上げても予約が入った。
値下げしなくても満室になった。
連泊プランの反応がよかった。
こうした結果を積み重ねることで、
自分の宿に合う料金が見えてきます。
今日の実務ワンポイント
料金を見直すときは、
まず周辺の宿の価格ではなく、
👉一室販売したとき、宿にいくら残るか
を確認しましょう。
現在最も多く売れているプランについて、
宿泊料金。
食事やアメニティー。
清掃や人件費。
OTAなどの販売費用。
を一度書き出すだけでも、
料金を見直す基準になります。
まとめ
宿泊料金は、
周辺相場だけで決めるものではありません。
一室を準備する費用。
宿を維持する費用。
食事や人件費。
販売手数料。
繁忙期と閑散期。
キャンセルのリスク。
こうした要素を踏まえて考える必要があります。
安くすれば、
予約が入りやすくなることはあります。
しかし、
客室が埋まっても利益が残らなければ、
宿を続けることはできません。
👉宿の価値と必要な利益の両方を守る。
それが、
安売りに頼らない価格設定です。
今日のチェックポイント
□ 一室を販売する費用を把握している
□ 固定費を含めて必要な売上を確認している
□ 販売手数料を差し引いた金額を見ている
□ 食事付きプランの費用を確認している
□ 繁忙期と閑散期で料金を見直している
□ 割引の目的と終了時期を決めている
□ キャンセル条件を分かりやすく表示している
□ 料金変更後の結果を記録している
すべてを一度に見直す必要はありません。
まずは、
現在最も売れている一つのプランから確認してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業に37年間携わり、
旅行会社側から多くの旅館やホテルを見てきました。
宿泊料金は、
単なる数字ではありません。
宿の立地。
建物。
料理。
スタッフ。
地域でできる体験。
お客様が過ごす時間。
こうした価値を、
どのように料金へ反映するのか。
一方で、
必要な費用を料金へ反映できなければ、
現場の努力だけでは宿を支えられません。
利益が残らなければ、
設備の修繕。
人材育成。
サービスの改善。
にも十分な費用を回せなくなります。
適切な宿泊料金を決めることは、
宿の利益だけでなく、
働く人。
お客様へのサービス。
地域に残る宿。
を守ることにもつながります。
旅館業許可を取得した後、
無理なく続けられる運営体制を一緒に考えることも、
👉行政書士としての私の役割だと考えています。
Q&A|宿泊料金の決め方について
Q1.周辺の宿より安くしないと予約は入りませんか。
A 必ずしも安くする必要はありません。
立地、料理、接客、設備、地域体験など、料金以外にも選ばれる理由があります。周辺相場は参考にしつつ、自分の宿に必要な費用と価値から料金を考えることが大切です。
Q2.繁忙期に料金を上げてもよいのでしょうか。
A 需要に応じて料金を変えること自体は不自然ではありません。
ただし、急激で分かりにくい変更や、料金・予約条件の説明不足は、お客様の不信感につながります。分かりやすい表示を心掛けましょう。
Q3.割引プランはやめた方がよいのでしょうか。
A 割引そのものが悪いわけではありません。
早期予約、直前の空室対策、連泊促進など、目的を決めて使うことが重要です。利益が残る下限と実施期間を決めず、常に割引を続ける状態は見直す必要があります。
次回予告
次回は、
「旅館業許可取得後も続く消防・保健所対応の実務」
について考えてみたいと思います。
旅館業許可を取得し、
営業を始めた後も、
消防や衛生に関する対応は続きます。
消防設備の点検や記録。
客室や共用部分を改修した場合の相談。
宿泊定員や営業内容を変更した場合の届出。
飲食の提供方法や設備を変えた場合の確認。
許可を取得した当時と、
現在の営業内容が違っていないかを見直す必要があります。
次回は、
開業前の許可取得手続ではなく、
営業開始後に見落としやすい消防・保健所対応について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
\ 旅館・ホテルの開業後の運営を見直したい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可やホテル開業支援だけでなく、
開業後の運営や法令対応についてもご相談を承っています。
また、
旅館・ホテル事業者の皆さまへ、
「旅館・ホテル運営チェックリスト」
を無料で進呈しております。
旅館業許可、変更届、外国人スタッフの在留資格、OTAと直接予約、宿泊料金、宿泊者名簿、消防・衛生・近隣対応など、開業後に確認しておきたい項目を整理できるチェックリストです。
👉現在できていることと、見直しが必要なことを確認するところから始めてみませんか。
チェックリスト(無料)のご請求は、
お問い合わせフォームより承っております。
▼ 関連ページはこちら
▶ 旅館業許可・ホテル開業支援
▶ 相談から正式依頼までの流れ
▶ お問い合わせフォーム
横浜市泉区・中田駅周辺の事業者はもちろん、
オンライン相談により全国の旅館・ホテル事業者にも対応しています。
クイズ!宿泊料金はどう決める?安売りを防ぐ価格設定
前回 口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし|第11話
次回 旅館業許可取得後も続く消防・保健所対応の実務|第13話