口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし|第11話

口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし|第11話

~「また利用したい」を次の予約につなげるために~

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
OTA依存は危険?旅館・ホテルの利益率低下を防ぐ方法
について考えました。
OTAは、
宿と新しいお客様をつなぐ大切な販売経路です。
しかし、
OTAを通じて多くのお客様に泊まってもらっても、
毎回新しいお客様を集め続けなければならない状態だけでは、
安定した経営にはつながりません。
口コミには、
「接客が丁寧だった」
「食事がおいしかった」
「また利用したい」
と書かれている。
評価も悪くない。
それでも、
実際には再訪はされていない。
今回は、
👉口コミ評価は良いのに、なぜ次の予約につながらないのか
について考えます。

「満足した」と「もう一度選ぶ」は同じではありません

お客様が満足して帰ったからといって、
必ず再訪してくれるとは限りません。
旅行からしばらくたてば、
宿の名前や予約方法を忘れてしまうことがあります。
ほかにも魅力的な宿は、
次々と目に入ってきます。
つまり、
「良い宿だった」
という記憶だけでは、
次の予約につながらないことがあります。
もう一度選んでもらうには、
・宿のことを思い出すきっかけ
・再び訪れる理由
・迷わず予約できる方法
が必要です。

口コミは「結果」であって、再訪の仕組みではありません

良い口コミが増えることは、
新しいお客様に宿を知ってもらううえで大切です。
しかし、
口コミを書いてもらっただけで、
そのお客様との関係が続くわけではありません。
口コミへの返信も、
「ご宿泊ありがとうございました」
「またのお越しをお待ちしております」
だけで終わっていないでしょうか。
例えば、
「秋には周辺の紅葉が見頃になります」
「次回は連泊で、別の地域も巡っていただけます」
「春には今回とは違う食材を使った料理をご用意します」
と伝えれば、
お客様に次の季節を想像してもらえます。
大切なのは、
単に「また来てください」と伝えることではありません。
👉次に訪れる理由を具体的に示すこと
です。

同じ宿へ再訪する理由を用意する

一度泊まった宿へ、
もう一度泊まる理由は何でしょうか。
宿が気に入った。
スタッフに会いたい。
季節の料理をもう一度味わいたい。
前回行けなかった場所を訪れたい。
家族や友人にも体験してもらいたい。
理由は人によって異なります。
そこで、宿側も、
・季節ごとに料理や景色が変わる
・連泊すると地域を深く楽しめる
・家族旅行と一人旅で違う過ごし方ができる
・前回とは別の体験プランがある
・地域の祭りやイベントに合わせて宿泊できる
といった、
再訪のきっかけを用意する必要があります。
観光庁も、旅行者の「旅マエ・旅ナカ・旅アト」のデータを活用したマーケティングや、再来訪を促す取組を観光DXの重要な要素として位置づけています。

チェックアウトで関係を終わらせない

宿泊中に丁寧な接客をしていても、
チェックアウトした後に接点がなくなれば、
宿のことは少しずつ忘れられてしまいます。
例えば、
・チェックアウト時に次の季節の魅力を伝える
・宿の公式サイトやSNSを案内する
・再訪時に分かりやすい予約方法を伝える
・希望者へ季節の案内を届ける
・前回とは違う過ごし方を提案する
といった方法があります。
ただし、
案内を増やせばよいというわけではありません。
頻繁な営業メールや、
本人が希望していない案内は、
かえって宿への印象を悪くすることがあります。
お客様との関係は、
追いかけることではなく、
👉必要なときに思い出してもらえる状態をつくること
が大切です。

お客様の情報を「集めるだけ」にしない

宿泊者名簿や予約記録には、
多くの情報が残ります。
しかし、
情報を保管しているだけでは、
再訪にはつながりません。
まずは複雑な顧客管理を始めるのではなく、
・新規のお客様か
・再訪したお客様か
・どの地域から来たか
・何を目的に宿泊したか
・何月に利用したか
・どの販売経路から予約したか
といった項目を、
無理のない範囲で整理します。
👉観光庁も、宿泊施設の顧客・予約データを分析し、サービスの高付加価値化や再来訪につなげる考え方を示しています。
大規模なシステムを導入しなくても、
「夏に家族で来たお客様が、冬にも訪れる可能性はないか」
「一泊だけだったお客様へ、次回は連泊を提案できないか」
と考えるだけで、
次の企画が見えてきます。

個人情報の利用には注意が必要です

過去に宿泊したお客様へ、
メールや案内を送る場合には、
個人情報の取扱いに注意しなければなりません。
予約や宿泊手続のために取得した情報を、
当然に営業案内へ使えるとは限りません。
利用目的を明確にし、
その範囲を超えて利用する場合には、
本人の同意が必要になることがあります.
個人情報保護委員会も、当初の利用目的を超えて個人情報を利用する場合は、
原則として本人の同意が必要になると案内しています。
案内を送る場合は、
・どのような情報を届けるのか
・何のために連絡先を利用するのか
・配信を停止する方法があるか
・情報を誰が管理するのか
を整理しておく必要があります。
再訪を増やすことよりも、
👉お客様との信頼を守ることが優先です。

予約方法が分かりにくくなっていないか

「また泊まりたい」
と思ってもらえても、
予約方法が分かりにくければ、
次の予約にはつながりません。
例えば、
・宿の名前を検索しても公式サイトが見つけにくい
・スマートフォンで予約ボタンが分からない
・以前利用したプランが見つからない
・電話受付時間が分からない
・問い合わせへの返信に時間がかかる
といったことがあります。
前回OTAで予約したお客様が、
次回もOTAを利用すること自体が悪いわけではありません。
大切なのは、
お客様が予約したいと思ったときに、
迷わず宿へたどり着けることです。
公式サイト。
OTA。
電話。
いずれの方法でも、
宿の情報や予約条件が分かりやすく整理されていることが重要です。

再訪率を確認していますか

口コミの点数は確認していても、
再訪したお客様の数を把握していない宿もあります。
まずは月ごとに、
・宿泊者数
・新規客数
・再訪客数
・再訪客の予約経路
・前回の宿泊時期
・再訪のきっかけ
を確認してみましょう。
完璧な数字でなくても構いません。
お客様との会話の中で、
「前回の料理がよかった」
「別の季節にも来てみたかった」
「家族を連れてきたかった」
といった声があれば、
それも大切な情報です。
口コミだけでなく、
再訪した理由を知ることで、
宿が今後伸ばすべき魅力が見えてきます。

今日の実務ワンポイント

再訪を増やすために、
最初から大がかりな会員制度を作る必要はありません。
まずは、
👉チェックアウト時に、次に訪れる理由を一つ伝える
ことから始めてみましょう。
「秋には紅葉が楽しめます」
「次回は二泊すると、周辺をゆっくり回れます」
「冬には地元の食材を使った鍋料理をご用意します」
こうした短い一言が、
宿を思い出すきっかけになります。

まとめ

口コミ評価が高いことと、
再訪されることは同じではありません。
良い口コミは、
新しいお客様を呼ぶ力になります。
一方、再訪には、
・宿を思い出すきっかけ
・もう一度訪れる理由
・分かりやすい予約方法
・宿泊後の適切な接点
が必要です。
大切なのは、
何度も営業案内を送ることではありません。
お客様が、
「次はあの季節に行ってみよう」
「今度は家族を連れて行こう」
と思える理由をつくることです。
👉「また利用したい」という言葉を、次の行動につなげる。
それが、
口コミ評価を宿の安定した経営へつなげるために必要な視点です。

今日のチェックポイント

□ 再訪したお客様の数を確認している
□ 次の季節に訪れる理由を伝えている
□ チェックアウト後の案内方法を整理している
□ 予約方法がスマートフォンでも分かりやすい
□ 顧客情報の利用目的を確認している
□ 再訪した理由をスタッフ間で共有している
すべてにチェックが付かなくても、
すぐに新しいシステムを導入する必要はありません。
まずは、
直近の再訪客が、
「なぜもう一度この宿を選んだのか」
を確認するところから始めてみましょう。

行政書士田中穂積の視点

私は旅行業に37年間携わり、
旅行会社側から多くの旅館やホテルを見てきました。
一度目の旅行では、
料金や場所、口コミを比較して宿を選ぶお客様が多くいます。
しかし、
二度目に同じ宿を選ぶ理由は、
比較だけではありません。
スタッフの顔を思い出した。
食事をもう一度味わいたい。
別の季節の景色を見てみたい。
家族にも紹介したい。
そうした記憶やつながりが、
次の予約を生みます。
宿泊業は、
一晩泊まってもらうだけの仕事ではありません。
その地域との出会いをつくり、
また訪れたいと思ってもらう仕事でもあります。
旅館業許可を取得した後、
宿をどのように育て、
お客様との信頼をどのように守るのか。
旅行業の経験と行政書士としての視点から、
運営上の仕組みを一緒に整理することが、
👉行政書士としての私の役割だと考えています。

Q&A|口コミと再訪について

Q1.口コミ評価が高ければ、自然にリピーターも増えますか。
A 必ずしも増えるとは限りません。
満足しても、時間がたてば宿のことを忘れることがあります。再訪する季節や目的、分かりやすい予約方法を伝えることが大切です。

Q2.宿泊後にメールを送ればよいのでしょうか。
A 回数を増やせばよいわけではありません。
本人が希望していない営業案内は、宿への印象を悪くすることがあります。利用目的や同意、配信停止の方法を整理したうえで運用する必要があります。

Q3.小規模な宿でも顧客管理システムが必要ですか。
A 最初から大規模なシステムを導入する必要はありません。
まずは、新規客・再訪客、宿泊時期、予約経路、再訪理由を一覧にすることから始めるとよいでしょう。

次回予告

次回は、
宿泊料金はどう決める?安売りを防ぐ価格設定
について考えてみたいと思います。
口コミ評価が高く、
再訪してくれるお客様が増えても、
宿泊料金そのものが適切でなければ、
十分な利益は残りません。
周辺の宿より安くすれば、
予約は入りやすくなるかもしれません。
しかし、
原価や固定費。
OTAの販売手数料。
清掃や人件費。
一人利用と二人利用。
食事付きと素泊まり。
繁忙期と閑散期。
こうした違いを考えずに料金を決めると、
客室が埋まっているのに利益が残らないことがあります。
反対に、
単に料金を高くするだけでは、
お客様に選んでもらえません。
次回は、
周辺施設の価格だけに振り回されず、
宿の価値と必要な利益の両方を守るための宿泊料金の考え方
について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

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