26.神奈川県の児童福祉事業者が日本版DBSで確認したい法人・事業所の役割分担

~本部任せ・現場任せにしないために~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「横浜市の放課後等デイサービス向け日本版DBS対応」
について考えました。
放課後等デイサービスでは、
学校や自宅への送迎。
個別支援。
外出活動。
着替えや排せつの介助。
保護者への引渡し。
など、職員と子どもがさまざまな場面で関わります。
そのため、職員名簿だけを見るのではなく、
誰が子どもと関わっているのか。
どの場面で一対一になるのか。
相談や報告を誰が受けるのか。
を、一日の支援の流れから確認することが大切です。
今回は、
「神奈川県の児童福祉事業者が日本版DBSで確認したい法人・事業所の役割分担」
について考えます。
複数の放課後等デイサービスや児童発達支援事業所を運営する法人では、
採用は法人本部。
職員配置は各事業所。
研修は法人全体。
相談受付は各事業所。
個人情報は本部で管理。
というように、仕事が分かれていることがあります。
このとき注意したいのが、
👉本部が手続を行うことと、事業所が子どもの安全を守ることを切り離さないこと
です。
日本版DBS対応の責任主体を最初に確認する
指定障害児通所支援事業は、こども性暴力防止法に基づく措置を実施する義務対象です。
複数の事業所を運営している場合でも、
誰が法人として手続を進めるのか。
どの事業所が対象になるのか。
どの従事者を確認するのか。
を整理する必要があります。
こども家庭庁は、義務対象事業者について、事業者情報をまとめて登録する仕組みや、手続に必要となるGビズIDの準備を案内しています。
法人本部には、事業所情報を集約し、手続を進める役割が生じます。
ただし、対象となる職員の実際の業務や、日々の支援状況を把握しているのは各事業所です。
👉本部だけでも、事業所だけでも対応は完結しません。
採用と対象者の把握は誰が行うのか
法人本部が行うこと
法人本部で一括採用をしている場合は、
求人票や募集要項の見直し。
応募者への説明。
犯罪事実確認の手続。
必要書類の管理。
採用判断に必要な情報の整理。
を、本部が中心となって行うことが考えられます。
採用窓口が法人本部にあるにもかかわらず、確認手続だけを各事業所へ任せると、事業所ごとに対応が異なる可能性があります。
法人として、基本的な採用手順を統一することが必要です。
各事業所が行うこと
一方、本部の職員名簿だけでは、
実際に子どもと接している人。
送迎に入っている人。
他事業所から応援に来る人。
委託やボランティアとして関わる人。
を十分に把握できないことがあります。
各事業所では、肩書や雇用形態だけでなく、
誰が。
どの業務で。
どの程度継続して。
子どもと関わっているのか。
を確認し、本部へ報告する必要があります。
👉本部は名簿を管理し、事業所は実際の業務を確認するという分担が基本になります。
職員配置は事業所だけで決めてよいのか
職員の採用は本部が行っていても、日々の配置は事業所の管理者が決めている場合があります。
例えば、
送迎を担当する。
個別支援を担当する。
着替えや排せつを介助する。
外出活動を引率する。
という判断です。
事業所の管理者は、子どもの障害特性や職員の経験を踏まえて配置を考えます。
一方で、犯罪事実確認に関する情報を、現場へどこまで伝えるかは慎重に判断しなければなりません。
確認結果を知る必要のない職員へ広く共有することは避ける必要があります。
そのため、
本部が配置上の判断を行うのか。
事業所の管理者へ何を伝えるのか。
事業所では具体的な勤務をどう調整するのか。
を、あらかじめ決めておきます。
確認結果の情報管理については、第28話で詳しく取り上げます。
相談を受ける事業所と判断する本部をつなぐ
子どもや保護者からの相談は、日頃関わっている事業所へ寄せられることが多いでしょう。
各事業所の役割
事業所では、
子どもの話を聞く。
安全を確保する。
いつ、どこで、何があったかを記録する。
管理者へ報告する。
保護者への連絡が必要か確認する。
という初動が必要です。
相談を受けた職員が、一人で事実確認や対応方針まで判断するのは避けます。
法人本部の役割
法人本部では、
報告を受ける責任者を決める。
調査や対応の方針を判断する。
他事業所への影響を確認する。
必要に応じて専門家や関係機関へ相談する。
再発防止策を法人全体へ反映する。
という役割を担います。
大切なのは、
事業所が本部へ報告したので終わり。
本部が対応しているので事業所は知らなくてよい。
としないことです。
子どもの日常的な安全確保は事業所が担い、組織としての判断と支援は本部が担います。
職員研修は法人共通と事業所別に分ける
こども家庭庁は、事業者や従事者が制度と必要な対応を理解するための研修教材を公開しています。
研修は、法人全体で共通して行う部分と、各事業所で行う部分に分けると整理しやすくなります。
法人全体で確認すること
法人研修では、
日本版DBS制度の概要。
職員に求められる行動。
相談・報告の基本的な流れ。
個人情報を扱う際の注意。
不適切な行為が疑われた場合の対応。
などを共有します。
各事業所で確認すること
事業所では、
送迎中に一対一になった場合。
個別支援室を使用する場合。
着替えや排せつを介助する場合。
外出活動中に問題が起きた場合。
子どもから相談を受けた場合。
など、現場で起こり得る場面を使って確認します。
法人共通の制度研修だけでは、実際の支援場面へ落とし込めないことがあります。
反対に、事業所ごとの研修だけでは、法人全体の対応が統一されません。
👉法人共通のルールと、事業所ごとの実践研修の両方が必要です。
役割分担を口頭だけで終わらせない
本部と事業所の役割について、
いつもの担当者なら分かっている。
何かあれば本部へ連絡する。
現場の判断に任せている。
という状態では、担当者の不在や異動によって対応が止まる可能性があります。
少なくとも、
対象者を把握する人。
犯罪事実確認の手続をする人。
確認結果を管理する人。
配置を判断する人。
相談を受ける人。
本部へ報告する人。
最終的な対応を決める人。
を明確にしておきます。
役割は、一人に集中させる必要はありません。
重要なのは、誰がどこまで担当し、次に誰へつなぐのかが分かることです。
具体的な社内規程や運用ルールの整備については、次回の第27話で詳しく取り上げます。
今日の実務ワンポイント
紙の中央に線を引き、
左側に「法人本部」。
右側に「各事業所」。
と書いてみましょう。
その下に、
対象職員の把握。
犯罪事実確認。
採用判断。
職員配置。
研修。
相談受付。
事実確認。
保護者対応。
個人情報管理。
再発防止。
を書き、それぞれ誰が担当しているかを振り分けます。
両方に関係する業務には、
誰が最初に動くのか。
誰へ報告するのか。
誰が最終判断するのか。
を加えます。
👉担当者名だけでなく、報告と判断の流れまで書くことがポイントです。
まとめ
複数の放課後等デイサービスや児童発達支援事業所を運営する法人では、
日本版DBS対応を本部だけ、または事業所だけで進めることはできません。
法人本部は、
手続を統一する。
必要な情報を管理する。
法人として判断する。
全体の研修や再発防止を進める。
という役割を担います。
各事業所は、
実際に子どもと関わる人を把握する。
日々の配置と支援状況を確認する。
子どもや保護者からの相談を受ける。
子どもの安全を確保する。
本部へ必要な報告を行う。
という役割を担います。
特に大切なのは、
👉本部と事業所の間で、情報と責任が途切れない仕組みをつくること
です。
本部任せにも、現場任せにもしない。
法人と事業所が、それぞれの立場から子どもの安全を守る。
それが、日本版DBS対応の土台になります。
今日のチェックポイント
□ 日本版DBS対応を統括する責任者を決めている
□ 各事業所の対象者を把握する担当者を決めている
□ 本部へ報告する対象者情報を統一している
□ 採用と犯罪事実確認の手順を統一している
□ 職員配置を判断する人を決めている
□ 相談を受けた後の報告先を決めている
□ 法人共通研修と事業所別研修を分けている
□ 確認結果を管理する担当者を限定している
□ 担当者が不在の場合の代行者を決めている
□ 役割分担を文書で確認できるようにしている
すべてにチェックが付かなくても構いません。
まずは、
誰が対象者を把握するのか。
誰が確認手続を行うのか。
相談を誰へ報告するのか。
の三つから決めてみましょう。
行政書士田中穂積の視点
日本版DBS対応では、犯罪事実確認の手続に注目が集まりがちです。
しかし、複数事業所を運営する法人で本当に難しいのは、
本部が何を知っているのか。
事業所が何を知っているのか。
誰が判断するのか。
が一致していないことです。
本部は制度や手続を把握していても、現場で誰が子どもと関わっているかを十分に知らないことがあります。
事業所は子どもと職員の状況を把握していても、法人として必要な手続や情報管理のルールを知らないことがあります。
行政書士としてお手伝いしたいのは、単に担当者名を決めることではありません。
法人本部と事業所の業務を整理する。
報告経路を明確にする。
採用・配置・相談対応をつなげる。
必要な規程や記録様式を整える。
ことです。
本部が現場を支え、現場から本部へ必要な情報が届く。
その仕組みを整えることが、子どもの安全と職員の安心につながると考えています。
Q&A|法人本部と事業所の役割分担
Q1.犯罪事実確認は各事業所で行う必要がありますか。
A 法人の採用体制や事業所の運営方法によって役割分担は異なります。
法人本部で一括して手続を行う場合でも、各事業所は実際に子どもと関わる人や業務を把握し、
本部へ正確に報告する必要があります。
Q2.確認結果を事業所の管理者全員へ共有してよいですか。
A 確認結果は慎重な管理が必要な情報です。
業務上知る必要がある人を限定し、配置上必要な判断をどのように事業所へ伝えるかを決めておく必要があります。
Q3.小規模法人でも役割分担を文書にする必要がありますか。
A 少人数の法人でも、担当者の不在、異動、退職は起こります。
簡単な一覧表や対応フローでも構いませんので、誰が受け付け、誰へ報告し、誰が判断するかを確認できるようにしておくことが大切です。
次回予告
次回は、
「日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール」
について考えてみたいと思います。
法人と事業所の役割を決めても、
担当者の記憶だけに頼っている。
事業所によって手順が違う。
相談があった場合の報告方法が決まっていない。
確認結果を誰が見られるのか分からない。
という状態では、安定した運用はできません。
日本版DBSへの対応では、
採用時の確認手順。
職員配置の判断。
相談・報告の流れ。
情報の保管。
職員への研修。
定期的な見直し。
を、法人のルールとして整える必要があります。
次回は、
👉就業規則や個人情報保護規程などを、どのような視点で見直せばよいのか
について、行政書士としての視点から整理します。
\ 日本版DBSの施行準備を進めたい事業者の皆さまへ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、認定こども園など、子どもと関わる事業者の日本版DBS対応についてご相談を承っています。
例えば、
・対象となる事業・職員・業務の整理
・法人本部と事業所の役割分担
・採用手順や募集書類の見直し
・就業規則や社内規程の整備
・相談・報告体制の整理
・保護者向け説明資料の作成
・個人情報の取扱ルールの整備
など、法人や事業所の状況に応じて支援内容を整理します。
また、子どもと関わる事業者の皆さまへ、
「日本版DBS対応チェックリスト」
を無料で進呈しております。
対象事業、対象職員、採用、配置、研修、相談体制、個人情報管理、社内規程など、
施行前に確認したい項目を整理できるチェックリストです。
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クイズ!法人本部と事業所の日本版DBS役割分担
前回 25.横浜市の放課後等デイサービス向け日本版DBS対応
次回 27.日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。