27.日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール

~ひな型を置くだけで終わらせないために~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「神奈川県の児童福祉事業者が日本版DBSで確認したい法人・事業所の役割分担」
について考えました。
複数の事業所を運営する法人では、
採用や確認手続は法人本部。
日々の職員配置は各事業所。
相談の受付は現場。
法人としての判断は本部。
というように、仕事が分かれていることがあります。
大切なのは、
誰が最初に動くのか。
誰へ報告するのか。
誰が最終的に判断するのか。
を明確にすることです。
今回は、
「日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール」
について考えます。
日本版DBSへの対応では、犯罪事実確認の手続だけでなく、
採用。
配置。
相談・報告。
安全確保。
情報管理。
研修。
を、法人のルールとして整える必要があります。
ただし、
👉ひな型を保存しただけでは、現場で動ける仕組みにはなりません。
なぜ社内規程が必要なのか
担当者が制度を理解していても、
担当者が休んでいる。
管理者が異動した。
新しい職員が入った。
夜間や休日に相談があった。
という場合に、同じ対応ができるとは限りません。
口頭の説明や担当者の経験だけに頼ると、事業所によって対応が変わることがあります。
社内規程や運用ルールには、
誰が担当するのか。
どのような順番で対応するのか。
どこまで記録するのか。
誰へ報告するのか。
を残します。
規程の目的は書類を増やすことではありません。
👉担当者が変わっても、子どもの安全を守る対応を続けられるようにすることです。
最初に既存の規程を確認する
日本版DBSのために、すべての規程を新しく作り直す必要があるとは限りません。
まず、法人に現在ある書類を確認します。
例えば、
・就業規則
・採用に関する規程
・服務規律
・個人情報保護規程
・安全管理に関する規程
・事故、苦情対応の手順
・虐待防止に関する指針
・相談、通報の手順
・職員研修計画
などです。
そのうえで、
日本版DBSへの対応がどこに書かれているか。
現在の規程同士に矛盾がないか。
規程と現場の運用が一致しているか。
を確認します。
新しい規程を一冊追加するだけではなく、既存の仕組みとの関係を整理することが大切です。
採用時のルールを整える
こども家庭庁は、施行前の準備に活用できるものとして、
募集要項・求人票。
誓約書・内定通知書。
就業規則。
の参考例を公開しています。
・応募者へ何を説明するか
採用時には、
犯罪事実確認が必要となる業務であること。
確認手続へ協力を求めること。
取得した情報を限定して取り扱うこと。
などを、適切な時期に説明します。
応募後に突然説明するのではなく、募集から採用までのどの段階で伝えるかを決めておきます。
・誰が採用判断をするか
確認手続を担当する人と、採用を決定する人が同じとは限りません。
そのため、
確認結果を誰が受け取るのか。
採用担当者へ何を伝えるのか。
採用を誰が最終決定するのか。
を決めます。
確認結果を知る必要のない職員へ、詳細を広く共有しないことも重要です。
配置や業務変更の手順を決める
日本版DBSへの対応は、採用時だけの問題ではありません。
すでに働いている職員についても、
送迎。
個別支援。
着替えや排せつの介助。
宿泊を伴う行事。
子どもと一対一になる業務。
などの配置を検討する場面があります。
その場合、
誰が配置上の判断をするのか。
事業所の管理者へ何を伝えるのか。
本人へどのように説明するのか。
一時的な安全確保が必要な場合にどう対応するのか。
を決めておきます。
確認結果の内容を現場へそのまま伝えるのではなく、必要な配置判断だけを適切に共有する仕組みが必要です。
相談・報告の流れを具体的にする
「何かあれば管理者へ報告する」
という一文だけでは、現場で迷うことがあります。
・最初に誰が受けるのか
子どもや保護者から相談があった場合は、
誰が話を聞くのか。
子どもの安全をどう確保するのか。
どのような内容を記録するのか。
を決めます。
相談を受けた職員が、事実かどうかを一人で判断したり、相手とされる職員へすぐに問いただしたりすることは避けなければなりません。
・どこへ報告するのか
次に、
事業所管理者。
法人本部の責任者。
法人代表者。
外部の専門家や関係機関。
のどこへ、どの順番で報告するのかを定めます。
緊急時と通常時では、報告の順番が異なることもあります。
こども家庭庁は、児童対象性暴力等への対処に関する規程のひな型も公開しています。法人ごとの組織体制や事業内容に合わせて具体化する必要があります。
「判断する人」と「記録する人」を決める
相談や問題が発生した際には、
子どもの安全を確保する。
事実を確認する。
職員配置を変更する。
保護者へ説明する。
関係機関へ相談する。
再発防止策を決める。
という複数の対応が必要になることがあります。
これを一人の担当者だけに任せると、負担が集中します。
そこで、
相談を受ける人。
記録する人。
安全確保を判断する人。
法人としての対応を決める人。
保護者へ説明する人。
を分けておくことも考えられます。
小規模法人で一人が複数の役割を担う場合でも、役割ごとに何をするのかを明確にします。
研修と記録を規程につなげる
規程を整えても、職員が内容を知らなければ機能しません。
そのため、
採用時の研修。
定期研修。
管理者向け研修。
事業所ごとの事例研修。
をどのように実施するかを決めます。
こども家庭庁は、研修教材に加えて、研修実施計画書や受講記録の様式も公表しています。
研修後は、
誰が受講したか。
欠席者へどう伝えたか。
理解を確認したか。
ルールを見直す必要がなかったか。
を記録します。
👉規程を作る、研修する、現場で使う、見直すという流れをつなげることが重要です。
ひな型をそのまま使わない
こども家庭庁が公開している参考例やひな型は、準備を進めるうえで有用です。
一方で、法人によって、
事業所数。
採用体制。
管理者の権限。
夜間・休日の運営。
相談窓口。
情報を管理する場所。
が異なります。
ひな型に担当者名を入れただけでは、実際の運営と合わないことがあります。
例えば、
規程では本部へ報告すると書いてあるが、休日の連絡先がない。
管理者が相談を受けることになっているが、管理者本人が関係する場合の代替窓口がない。
法人本部で保管すると書いてあるが、事業所からの送付方法が決まっていない。
という状態です。
規程を作成するときは、
実際にその順番で動けるか。
担当者が不在でも対応できるか。
職員が読んで理解できるか。
まで確認します。
就業規則との関係は専門家と確認する
日本版DBS対応では、就業規則の見直しが必要になる場合があります。
例えば、
犯罪事実確認への協力。
採用時の申告。
配置や業務の変更。
服務規律。
懲戒や内定取消し。
などです。
ただし、就業規則の作成・変更や労働法上の判断は、社会保険労務士の専門領域と関係します。
行政書士が法人全体の運用や行政手続、対処規程、説明資料などを整理し、就業規則については社会保険労務士と連携する。
必要に応じて弁護士などへ相談する。というように、
👉内容に応じた専門家の関与が大切です。
今日の実務ワンポイント
現在ある規程や手順書を机に並べ、次の言葉がどこに書かれているか確認してみましょう。
採用。
犯罪事実確認。
職員配置。
子どもの安全確保。
相談。
本部への報告。
保護者への説明。
個人情報。
研修。
見直し。
どこにも書かれていない項目だけでなく、複数の規程に異なる内容が書かれている項目にも注意します。
👉新しい規程を作る前に、現在のルールの空白と重複を見つけることが第一歩です。
まとめ
日本版DBS対応で社内規程を整える目的は、書類をそろえることではありません。
採用時に何を説明するのか。
誰が確認手続を行うのか。
配置を誰が判断するのか。
相談を誰が受けるのか。
問題が生じたときに誰へ報告するのか。
誰が最終的な対応を決めるのか。
を明確にすることです。
特に大切なのは、
👉規程に書かれた内容と、実際の現場の動きを一致させること
です。
ひな型を参考にしながら、法人の規模、事業所数、職員体制、支援内容に合わせて整える。
職員へ説明し、研修で確認する。
運用して問題があれば見直す。
その積み重ねが、子どもの安全を守る組織づくりにつながります。
今日のチェックポイント
□ 現在の社内規程を一覧にしている
□ 採用時に応募者へ説明する内容を決めている
□ 犯罪事実確認を担当する人を決めている
□ 採用や配置を判断する人を決めている
□ 子どもや保護者からの相談手順がある
□ 緊急時の安全確保と報告先を決めている
□ 管理者が関係する場合の代替窓口がある
□ 研修の実施と受講記録を残している
□ 担当者不在時の代行者を決めている
□ 規程を定期的に見直す時期を決めている
すべてにチェックが付かなくても構いません。
まずは、
相談を誰が受けるのか。
誰へ報告するのか。
誰が最終判断するのか。
の三つを、文書で確認できるようにしてみましょう。
行政書士田中穂積の視点
規程を整えるというと、難しい文章を増やすことだと思われるかもしれません。
しかし、現場で本当に必要なのは、
この場合は誰へ連絡するのか。
記録はどこへ残すのか。
自分だけで判断してよいのか。
が分かることです。
立派な規程があっても、職員が知らなければ役に立ちません。
反対に、現場で行われている適切な対応が文書になっていなければ、担当者が変わったときに失われてしまいます。
行政書士としてお手伝いしたいのは、
現在の規程と運用を確認する。
本部と事業所の役割を整理する。
相談・報告の流れを文書にする。
対処規程や説明資料を整える。
関係する専門家との連携を整理する。
ことです。
規程を作って終わりではなく、現場で使える仕組みにする。
それが、日本版DBS対応で重要だと考えています。
Q&A|社内規程と運用ルール
Q1.こども家庭庁のひな型をそのまま使ってもよいですか。
A ひな型は重要な参考資料ですが、法人の組織、事業所数、担当者、報告経路に合わせた調整が必要です。
実際の運用と合っているかを確認してから使用します。
Q2.新しい規程を一つ作れば対応できますか。
A 日本版DBSへの対応は、採用、就業規則、個人情報管理、相談対応、研修など複数の規程と関係します。
新しい規程を作るだけでなく、既存の規程との重複や矛盾も確認する必要があります。
Q3.小規模な事業所でも文書化が必要ですか。
A 少人数でも、担当者の休職、異動、退職は起こります。
短い対応フローや担当一覧でも構いませんので、誰が受け、誰へ報告し、誰が判断するのかを確認できるようにしておくことは重要です。
次回予告
次回は、
「日本版DBSで扱う個人情報をどう守るか」
について考えてみたいと思います。
犯罪事実確認の結果。
対象者に関する情報。
子どもや保護者から寄せられた相談。
事実確認の記録。
対応を検討した資料。
これらは、取扱いを誤れば本人や子どもへ大きな影響を与える情報です。
そのため、
誰が見ることができるのか。
紙や電子データをどこへ保管するのか。
本部と事業所の間でどうやり取りするのか。
メールやチャットで送ってよいのか。
いつ、どのように廃棄するのか。
を決めておく必要があります。
次回は、
👉確認できる制度ができても、組織内で自由に情報共有してよいわけではない
という点を中心に、行政書士としての視点から整理します。
\ 日本版DBSの施行準備を進めたい事業者の皆さまへ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、認定こども園など、子どもと関わる事業者の日本版DBS対応についてご相談を承っています。
例えば、
・対象となる事業・職員・業務の整理
・法人本部と事業所の役割分担
・採用や配置に関する運用の整理
・児童対象性暴力等への対処規程の整備
・相談・報告体制の整理
・保護者向け説明資料の作成
・個人情報の取扱ルールの整備
・関係する専門家との連携整理
など、法人や事業所の状況に応じて支援内容を整理します。
就業規則や労務に関する事項については、必要に応じて社会保険労務士などの専門家との連携をご案内します。
また、子どもと関わる事業者の皆さまへ、
「日本版DBS対応チェックリスト」
を無料で進呈しております。
対象事業、対象職員、採用、配置、研修、相談体制、個人情報管理、社内規程など、施行前に確認したい項目を整理できるチェックリストです。
👉現在できていることと、これから整えることを確認するところから始めてみませんか。
チェックリスト(無料)のご請求は、お問い合わせフォームより承っております。
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クイズ!日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール
前回 26.神奈川県の児童福祉事業者が日本版DBSで確認したい法人・事業所の役割分担
次回 28.日本版DBSで扱う個人情報をどう守るか
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。