観光・宿泊事業者が補助金を探すときに確認したいこと|第1話

~補助金・融資・事業計画を一体で考える~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
これまでのブログでは、旅館業許可や宿泊施設の開業、古民家・空き家活用、事業承継などについて取り上げてきました。
今回からは、新しいシリーズ
「観光・宿泊・古民家再生の資金調達実務」
を始めます。
宿泊施設の開業や古民家再生を考えている方から、
「使える補助金はありませんか?」
という話を聞くことがあります。
もちろん、補助金を調べることは大切です。
しかし、最初に制度名を探し始めると、たくさんの情報に振り回されてしまうことがあります。
そこで第1話では、
👉 補助金を探す前に、まず何を整理しておけばよいのか
から考えてみます。
「使える補助金」から探し始めない
インターネットで、
「宿泊施設 補助金」
「観光事業 補助金」
「古民家再生 補助金」
などと検索すると、さまざまな制度が出てきます。
しかし、補助金にはそれぞれ目的や対象者、対象経費、募集時期などがあります。
そのため、
「補助金があるか」より先に「自分は何をしようとしているのか」
を整理することが大切です。
たとえば、同じ古民家を活用するとした場合の事業でも、
・古民家宿を開業する
・古民家カフェを始める
・既存の旅館を改修する
・インバウンド対応の設備を導入する
・地域の観光コンテンツをつくる
では、探すべき制度が変わります。
補助金の名前から事業を考えるのではなく、
事業の内容から使える制度を探す。
まず、この順番を意識してみましょう。
補助金を探す前に整理したい5つのこと
最低限、次の5つを整理しておくと、補助金を探しやすくなります。
1.何をしたいのか
宿泊施設の新規開業なのか。
既存施設の改修なのか。
古民家・空き家の活用なのか。
設備導入やDX、省力化なのか。
まず、事業の目的をできるだけ具体的にします。
2.どこで事業をするのか
補助制度には、国の制度だけでなく、都道府県や市区町村などが実施するものがあります。
そのため、
事業を行う場所
は重要な確認事項です。
3.誰が事業を行うのか
個人事業主なのか。
法人なのか。
これから創業するのか。
すでに事業を行っているのか。
申請者の状況によって対象となる制度が変わることがあります。
4.何にお金を使いたいのか
たとえば、
・建物改修
・客室設備
・厨房設備
・予約システム
・多言語対応
・広告・販路開拓
・観光コンテンツ造成
などです。
「500万円必要」というだけではなく、
何に、いくら必要なのか
まで分けて考えることがポイントです。
5.いつ実施したいのか
補助金には公募期間があります。
また、制度によっては交付決定前の契約・発注・支払いなどが補助対象にならない場合があります。
したがって、
「今年中に工事したい」
「来春に開業したい」
といったスケジュールも、補助金探しの重要な条件になります。
補助金情報はどこで探せばよい?
事業の内容が整理できたら、いよいよ制度を探します。
おすすめしたいのは、一つのサイトだけを見るのではなく、国から地域へ順番に確認することです。
観光庁
宿泊施設や観光地域づくり、観光コンテンツ、インバウンドなどに関する事業であれば、まず確認したいところです。
観光庁では年度ごとの観光関係予算や各種事業の公募情報が公開されています。
制度内容や募集時期は年度ごとに変わるため、最新情報を確認することが重要です。
国の各省庁
観光事業だからといって、観光庁だけを見ればよいとは限りません。
たとえば、
・中小企業支援
・省力化
・DX
・販路開拓
・地域活性化
・省エネルギー
など、事業目的によって関係する省庁が変わります。
中小企業庁でも、中小企業・小規模事業者を対象とした補助金の公募・採択情報が公開されています。
都道府県
次に、事業を行う都道府県のホームページを確認します。
観光振興だけでなく、
「中小企業支援」
「創業支援」
「地域振興」
「空き家活用」
など、別の部署で制度が用意されている場合もあります。
市区町村
市区町村独自の支援制度も確認します。
特に、
・創業
・空き店舗
・空き家活用
・商店街
・地域活性化
・設備投資
などは、地域によってさまざまな支援があります。
「観光」という言葉だけで検索しないこともポイントです。
観光協会・観光財団・DMOも確認する
観光分野では、行政機関以外にも情報源があります。
地域の、
・観光協会
・観光財団
・DMO(観光地域づくり法人)
などです。
補助金そのものを実施していなくても、地域で行われている観光支援事業や連携事業、
公募情報などを把握している場合があります。
古民家宿や体験型観光など、地域との連携が重要になる事業では特に確認しておきたい情報源です。
商工会・商工会議所、公的支援機関も活用する
観光事業であっても、事業者として見れば中小企業・小規模事業者です。
そのため、
・商工会
・商工会議所
・中小企業支援機関
・よろず支援拠点
なども情報収集先になります。
中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21では、補助金や融資などの支援情報を地域・目的などから検索できます。
複数の制度を横断して探す入口として便利です。
検索するときは「制度名」ではなく「目的」を入れる
補助金を探すときにおすすめしたいのが、
目的から検索すること
です。
たとえば、
「古民家 補助金」
だけではなく、
「古民家 改修 補助金」
「宿泊施設 省力化 補助金」
「観光 多言語化 支援」
「空き家 創業 補助金」
など、(これはAIなどでも検索するときの基本でもありますが)
何をしたいのかをキーワードを複数組み合わせて検索する
と探しやすくなります。
中小機構の補助金情報でも、「設備を導入したい」「販路を広げたい」など
目的から支援制度を探す考え方が示されています。
見つけた補助金が「使える補助金」とは限らない
ここはとても大切です。
検索して条件のよさそうな補助金を見つけても、
その制度が自分の事業に使えるとは限りません。
確認したいのは、
・申請できる事業者か
・対象地域に入っているか
・予定している事業が対象か
・予定している経費が補助対象か
・実施時期が合っているか
・申請期限に間に合うか
といった点です。
補助金情報を「見つけた」段階と、
自分の事業に「使える」と判断できる段階は別
と考えたほうがよいでしょう。
今日の実務ワンポイント
補助金サイトを見る前に、A4用紙1枚で構いませんので、次の内容を書き出してみてください。
事業場所
事業内容
事業者
予定している投資
おおよその金額
実施したい時期
これだけでも、補助金探しの精度はかなり変わります。
何十件もの制度を眺めるより、
自分の事業の条件を先に決める。
これが最初の一歩です。
まとめ
観光・宿泊事業や古民家再生では、さまざまな補助制度が候補になる可能性があります。
しかし、大切なのは制度をたくさん知ることではありません。
まず、
何をするのか。
どこでするのか。
誰がするのか。
何にお金を使うのか。
いつするのか。
を整理する。
そのうえで、
国。
都道府県。
市区町村。
観光関係団体。
商工会・商工会議所。
公的支援機関。
と情報を確認していきます。
👉 補助金は「見つけること」が目的ではなく、自分の事業に合う制度を見極めることが大切です。
今日のチェックポイント
次の項目を確認してみましょう。
□ どのような事業を行うか決まっている
□ 事業を行う場所が決まっている
□ 誰が事業主体になるか決まっている
□ 何にお金を使うか整理している
□ おおよその必要資金を把握している
□ 開業・改修などの予定時期が決まっている
□ 観光庁や国の制度を確認した
□ 都道府県・市区町村の制度を確認した
□ 地域の観光協会や商工会なども確認した
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
👉「何に、いつ、いくら使いたいのか」
から整理してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業界で37年間、旅行会社、宿泊施設、観光事業に関わってきました。
その経験から感じるのは、観光事業では一つの制度だけを見て計画するのが難しいということです。
宿を始めるのであれば、
物件。
改修。
資金。
旅館業許可。
消防・建築。
集客。
開業時期。
これらがつながっています。
行政書士として事業計画や許認可のご相談を受ける際にも、
「この補助金が使えるか」
だけを見るのではなく、
事業全体の中で、その補助金をどこに位置付けるのか
を整理することが大切だと考えています。
補助金を探している段階でも、
「まだ計画が固まっていないから相談するのは早い」
とは限りません。
むしろ、物件購入や工事発注など大きな判断をする前に、
必要な手続や資金計画を一度整理しておくことには意味があります。
Q&A|観光・宿泊事業者が補助金を探すときに確認したいこと
Q1.まだ物件が決まっていなくても補助金を探せますか?
探すこと自体はできます。
ただし、所在地によって利用できる自治体制度が変わるため、具体的な候補を絞る段階では事業場所が重要になります。
物件探しと並行して、国の制度や候補地域の支援制度を確認しておくとよいでしょう。
Q2.補助金検索サイトだけ見れば十分ですか?
検索サイトは制度を探す入口として便利ですが、
最終確認は実施機関が公表している最新の公募要領や公式情報で行うことが重要です。
募集期間や対象経費、申請要件などが変更される場合があるためです。
Q3.使えそうな補助金を見つけたら、すぐ工事を始めてもよいですか?
すぐに契約や発注を進めるのは注意が必要です。
制度によって、対象となる事業期間や経費の扱いが異なります。
まず公募要領を確認し、申請から審査、給付時期、事業実施までのスケジュールを整理してから進めましょう。
この点は、次回の記事で詳しく取り上げます。
次回予告
補助金を見つけると、
「これが使えるなら、古民家を買おう」
「採択されたら改修しよう」
と考えたくなるかもしれません。
しかし、
補助金を事業の出発点にしてしまうことには注意が必要です。
次回は、
「補助金ありきで宿・古民家再生を始めると失敗する理由|第2話」
として、
・採択されるとは限らない
・自己負担が必要
・補助金の入金時期
・契約や発注のタイミング
・補助対象外経費
・許認可との関係
などを整理します。
👉 次回は、「補助金があるから事業をする」という順番がなぜ危険なのかを考えます。
\ 観光・宿泊・古民家再生の資金計画を整理したい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可や宿泊施設の開業支援だけでなく、
観光事業や古民家・空き家活用について、
事業計画・資金計画・必要な許認可を一体で整理する支援を行っています。
例えば、
・これから始める事業内容の整理(旅行業、宿泊業、飲食業、民泊)
・利用を検討する補助制度の確認
・補助金申請に向けた事業計画の整理
・開業までに必要となる許認可の確認
・旅館業許可
・飲食店営業許可
・保健所、消防署などへの事前相談
・申請や開業準備に必要な書類の整理
など、現在の計画段階に応じて必要な手続を整理します。
観光・宿泊、飲食・古民家活用では、
物件、改修、資金、許認可、開業時期
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「使える補助金があるか」だけを見るのではなく、
ご相談内容や事業計画を確認したうえで、開業までに何を、どの順番で進める必要があるのかを整理しています。
補助金は採択を保証するものではなく、融資についても金融機関による審査・判断があります。
また、制度によって行政書士が対応できる支援範囲は異なります。
税務、融資判断、建築設計、労務など他の専門分野が関係する場合には、
必要に応じて各専門家との連携も検討しながら進めます。
👉 補助金を探す前に、まず自分の事業と必要な資金・手続を整理するところから始めてみませんか。
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クイズ!観光・宿泊事業者が補助金を探すときに確認したいこと
前回 旅館・ホテル経営を地域に残る資産へ変えるために|第19話
次回 補助金ありきで宿・古民家再生を始めると失敗する理由|第2話
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。