宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと|第5話

宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと|第5話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
補助金申請の事業計画書で何を見られるのか
として、
現在の課題。
顧客像。
市場・地域需要。
投資内容。
期待する効果。
売上見込み。
実施体制。
事業の継続性。
などを整理しました。
事業計画を具体的にすると、次に見えてくるのが、
「この事業を始めるために、実際にいくら必要なのか」
という資金の問題です。
特に宿泊施設や古民家再生では、
物件。
改修。
消防設備。
厨房。
家具・備品。
広告。
そして開業後の運転資金。
まで考えると、まとまった資金が必要になることがあります。
そこで今回は、
👉 「いくら借りられるか」から考えるのではなく、
「いくら必要で、その借入を無理なく返していけるか」
という視点から、融資を受ける前に確認したいことを整理します。

融資を考える前に「必要資金」を出す

融資相談をするとき担当者に
「いくらまで借りられますか?」
と聞きたくなるかもしれません。
しかし、その前に整理したいのが、
👉事業にいくら必要なのか
です。
日本政策金融公庫も、創業時の資金計画について、まず何にどれくらいお金が必要なのかを項目ごとに積み上げ、
そのうえで自己資金や借入などの調達方法を検討する考え方を示しています。
たとえば古民家宿なら、
・物件取得費
・敷金、保証金
・建物改修費
・消防設備
・給排水設備
・厨房設備
・家具、寝具、備品
・予約システム
・ホームページ、広告費
・許認可に必要な費用
・開業後の運転資金
などがあります。
まずは、
👉「借りられる金額」ではなく「必要な金額」
を積み上げていきます。

設備資金と運転資金を分けて考える

必要資金を整理するときは、
設備資金

運転資金
を分けると分かりやすくなります。

設備資金

たとえば、
・建物の改修
・厨房設備
・空調設備
・消防設備
・家具、備品
・業務用機器
など、事業を始めるための設備への投資です。

運転資金

一方、
・家賃
・人件費
・水道光熱費
・仕入れ
・広告費
・システム利用料
・借入返済までの資金
など、事業を動かし続けるために必要なお金が運転資金です。

日本政策金融公庫の創業向け融資でも、設備資金と運転資金はそれぞれ資金使途として位置付けられています。
宿泊事業では、
建物を完成させるお金だけを用意すればよいわけではありません。
開業後、お客様が安定して来るまでの期間も考える必要があります。

古民家再生では「追加工事」も考えておく

古民家や築年数の経過した建物では、
工事を始めてから、
「想定していなかった補修が必要だった」
ということも考えられます。
たとえば、
構造部分。
給排水。
電気設備。
屋根。
床下。
消防設備。
などです。
そのため、
見積額ぴったりの資金計画では余裕がありません。
もちろん必要以上に大きな借入をする必要はありませんが、
どこまで追加費用を想定しておくか
も考えておきたいところです。
また、旅館業許可や消防・建築関係の確認によって、当初想定していなかった工事が必要になることもあります。
だからこそ、
👉 資金計画と許認可の確認を別々に進めないこと
が重要です。

自己資金は「いくらあるか」だけではない

創業融資を考えるとき、
自己資金も重要な要素です。
ただし、
「自己資金が何%あれば必ず融資を受けられる」
という単純な話ではありません。
重要なのは、
事業のためにどの程度準備してきたのか。
必要資金に対してどの程度自分で負担できるのか。
借入後も資金的な余裕が残るのか。
といった全体のバランスです。
自己資金をすべて初期投資に使い切ってしまうと、
開業後の資金繰りが苦しくなることもあります。
そのため、
👉「自己資金をいくら投入するか」と「手元にいくら残すか」
の両方を考えます。

売上予測は「満室になったら」では考えてはいけない

融資を受ければ、当然ながら返済が始まります。
そこで重要になるのが、
売上予測
です。
宿泊事業であれば、
客室数。
宿泊単価。
稼働率。
営業日数。
などから売上を考えます。
たとえば、
「1泊2万円の客室が5室ある」
というだけではありません。
実際には、
年間を通じて何%程度稼働するのか
繁忙期と閑散期はどう違うのか。
OTAへの手数料はいくらか。
人件費や光熱費はいくらか。
などを考える必要があります。
日本政策金融公庫でも、創業計画書に加え、より詳細に検討する場合の「月別収支計画書」が用意されています。
👉 売上予測は、理想の売上ではなく、返済を続けられる現実的な売上から考えることが重要です。

「売上」と「返済できるお金」は違う

売上があるからといって、その金額をそのまま返済に回せるわけではありません。
売上から、
人件費。
家賃。
仕入れ。
水道光熱費。
広告費。
システム費。
その他の経費。
などを支払います。
そのうえで借入金を返済していきます。
宿泊施設の場合は季節変動もあります。
夏休みや紅葉シーズンは忙しくても、
閑散期には売上が落ちる。
そうした施設もあります。
年間で黒字でも、
ある月だけ見ると資金が不足することもあります。
そこで、
利益だけではなく、毎月のお金の動き
を見ることが必要になります。

返済期間と据置期間も「長ければよい」わけではない

融資では、
返済期間。
据置期間。
金利。
なども重要です。
据置期間とは、一般的には元金返済を一定期間据え置く期間を指します。
創業直後は売上が安定しないため、事業によっては資金繰りを考えるうえで重要な要素になります。
2026年現在、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、
設備資金・運転資金についてそれぞれ返済期間や据置期間が設定されています。
ただし条件は制度や申込者によって異なるため、利用時には必ず最新の公式情報を確認してください。
重要なのは、
「最長で何年借りられるか」
ではなく、
自分の事業に合った返済計画になっているか
です。

融資申込では「事業計画」と「数字」がつながっているか

第4話でお伝えした事業計画は、融資を考えるときにも重要です。
たとえば、
「外国人旅行者をターゲットに古民家宿を開業します」
という計画なら、
なぜその地域なのか。
どの程度の需要があるのか。
何室で営業するのか。
宿泊単価はいくらか。
年間どの程度の稼働を見込むのか。
どのように集客するのか。
が数字につながっていなければなりません。
つまり、
事業計画書と資金計画は別々の書類ではなく、一つの事業を違う角度から表したもの
と考えると分かりやすいでしょう。

行政書士による融資申込支援とは

ここは、今回ぜひ知っていただきたいところです。
行政書士というと、
「許認可の専門家」
というイメージが強いかもしれません。
しかし、日本行政書士会連合会では、企業支援業務として、
👉融資申込や補助金等の申請手続の支援
を行政書士の業務の一つとして案内しています。
また、事業計画書の作成や資金調達支援も、行政書士による中小企業支援の領域として示されています。
宿泊施設や古民家活用では、
事業計画。
資金計画。
旅館業許可。
消防・建築。
飲食店営業許可。
開業スケジュール。
が互いに関係します。
だからこそ行政書士は、
「融資申込書だけを作る」のではなく、
👉「この事業が実際に許認可を取得し、開業できる計画になっているか」を
確認しながら事業計画を整理するという支援ができます。
ただし、当たり前のことですが「融資を実行するかどうかを判断するのは金融機関」です。
行政書士が融資の承認を保証するものではありません。

今日の実務ワンポイント

融資を考える前に、
資金を次の3つに分けて書き出してみてください。
① 開業までに必要な設備資金
② 開業後に必要な運転資金
③ 想定外に備えて残しておきたい資金
そのうえで、
自己資金。
融資。
補助金。
その他の資金。
を当てはめます。
👉 「いくら借りたいか」ではなく、「何に、いつ、いくら必要なのか」から始めることが資金計画の第一歩です。

まとめ

宿泊施設や古民家再生では、
物件取得。
改修。
設備。
許認可。
広告。
開業後の運転資金。
など、さまざまな資金が必要になります。
融資を考えるときは、
「いくら借りられるか」
だけを見るのではありません。
必要資金はいくらか。
自己資金はいくら使うか。
設備資金と運転資金はいくらか。
売上はいくら見込めるか。
毎月いくら返済できるか。
開業後の手元資金は足りるか。
を一つずつ整理します。
👉 融資は「借りること」が目的ではなく、事業を始め、無理なく返済しながら続けるための資金調達です。

今日のチェックポイント

次の項目を確認してみましょう。
□• 開業までに必要な総額を把握している
□• 設備資金と運転資金を分けている
□• 改修工事の見積りを確認している
□• 追加工事の可能性を考えている
□• 自己資金をいくら使うか決めている
□• 開業後に残す資金を考えている
□• 客室数・単価・稼働率から売上を考えている
□• 毎月の経費を把握している
□• 借入返済後も資金が回るか確認している
□• 許認可と資金計画のスケジュールを合わせている
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
👉「設備資金・運転資金・手元に残す資金」
の3つに分けるところから始めてみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて感じるのは、
宿泊事業では、
「お客様が来るまでの時間」も資金計画に入れておく必要がある
ということです。
施設を完成させれば、翌日から予定どおりの稼働率になるとは限りません。
知ってもらう。
予約してもらう。
宿泊してもらう。
口コミが増える。
リピーターが生まれる。
そこには時間がかかります。
だからこそ、
開業までの資金だけではなく、
開業後に事業が軌道に乗るまでのお金
までを考えることが大切です。
そして行政書士として見ると、
さらに、
その物件で許可を取得できるのか。
どのような改修が必要なのか。
いつ開業できるのか。
という問題が加わります。
融資申込支援も、
単に数字を申込書に入れ整理する作業ではありません。
事業計画・資金計画・許認可を一つにつなぎ、「実際に開業できる計画」としてストーリーにする。
ここに、宿泊・観光分野で行政書士が融資申込を支援する意味があると考えています。

Q&A|宿・古民家再生の融資

Q1.自己資金が少なくても創業融資を申し込めますか?
融資制度ごとに利用要件や審査があります。
自己資金だけで融資の可否が決まるわけではありませんが、
事業計画。
必要資金。
経験。
返済可能性。
準備状況。
などを含めて金融機関が判断します。
利用を検討する際は、最新の融資条件を金融機関の公式情報で確認しましょう。

Q2.補助金が採択される予定なら、その分は借りなくてよいですか?
必ずしもそうとは限りません。
補助金は後払いとなるものも多いため、工事代金などを先に支払う資金が必要になる場合があります。
このため、
自己資金。
融資。
補助金。
の入出金時期を一つの表にして考えることが重要です。
この点は次回、第6話で詳しく整理します。

Q3.行政書士に融資の相談をすることもできますか?
行政書士は、事業計画書の作成や融資申込に関する手続の支援を行うことができます。
特に許認可が必要な事業では、
融資のための事業計画と、実際に許可を取得して開業するための計画を一緒に整理できる
ことが一つの特徴です。
ただし、融資審査や融資実行を決定するのは金融機関であり、融資の承認を保証するものではありません。

次回予告

融資の資金計画を整理すると、
次に重要になるのが、
補助金とのタイミング
です。
たとえば、
補助金500万円が採択されたとしても、
工事費を支払う時点ではまだ補助金が入金されていないことがあります。
では、
その間のお金をどう準備するのでしょうか。
次回は、
「補助金と融資は併用できる?宿泊事業の資金計画で注意したいこと|第6話」
として、
・補助金の入金時期
・自己資金
・融資実行
・つなぎ資金
・補助対象外経費
・消費税
・追加工事
・予備費
などを、実際のお金の流れに沿って整理します。
👉 次回は、「補助金があるから資金を準備しなくてよい」という誤解を、資金の時系列から整理します。

\ 観光・宿泊・古民家再生の資金計画・融資申込を整理したい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可や宿泊施設の開業支援だけでなく、
観光事業や古民家・空き家活用について、事業計画・資金計画・融資申込・必要な許認可を
一体で整理する支援を行っています。
例えば、
・これから始める事業内容の整理(旅行業、宿泊業、飲食業、民泊)
・開業に必要な資金の整理
・設備資金・運転資金の整理
・創業計画・事業計画の作成支援
・融資申込に必要な書類の整理
・利用を検討する補助制度の確認
・補助金申請に向けた事業計画の整理
・開業までに必要となる許認可の確認
・旅館業許可
・飲食店営業許可
・保健所、消防署などへの事前相談
など、現在の計画段階に応じて必要な支援を整理します。
観光・宿泊、飲食・古民家活用では、
物件、改修、資金調達、許認可、開業時期
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「いくら借りられるか」だけを見るのではなく、
事業にいくら必要なのか。
その資金をどう準備するのか。
必要な許認可を取得できるのか。
開業後も無理なく返済できるのか。
まで含めて事業全体を整理します。
行政書士は、事業計画書の作成や融資申込手続の支援を行うことができます。
ただし、融資の可否や融資条件を決定するのは金融機関であり、当事務所が融資実行を保証するものではありません。
また、税務、金融機関による融資判断、建築設計、労務など他の専門分野が関係する場合には、
必要に応じて各専門家との連携も検討しながら進めます。
👉 融資を申し込む前に、事業計画・資金計画・許認可を一度整理するところから始めてみませんか。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。