29.日本版DBS対応を採用・配置・研修へどうつなげるか

29.日本版DBS対応を採用・配置・研修へどうつなげるか

~犯罪事実確認だけに頼らない安全管理のために~

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
日本版DBSで扱う個人情報をどう守るか
について考えました。
犯罪事実確認の結果は、
誰が見るのか。
どこに保存するのか。
誰へ伝えるのか。
いつ廃棄するのか。
を決め、必要最小限の人だけで扱うことが大切です。

今回は、
日本版DBS対応を採用・配置・研修へどうつなげるか
について考えます。
日本版DBSというと、
犯罪事実確認をする。
確認結果に問題がなければ採用する。
という部分に目が向きやすいかもしれません。
しかし、こども性暴力防止法は、犯罪事実確認だけでなく、
児童対象性暴力等を防止するための研修など、複数の安全確保措置を事業者に求めています。
制度は2026年12月25日に施行されます。
👉大切なのは、確認結果を「安全の証明」にせず、採用・配置・研修を含めた日常の安全管理につなげることです。

採用では「確認する前」から準備する

新しく職員を採用するとき、犯罪事実確認だけを採用手続へ追加すればよいわけではありません。
こども家庭庁は、施行前から準備することが望ましいものとして、
👉募集要項・求人票、誓約書・内定通知書、就業規則などの参考例を公開しています。

面接でも子どもとの関わり方を見る

採用時には、
なぜ子どもと関わる仕事を希望するのか。
支援中に判断に迷ったら誰へ相談するか。
子どもと一対一になった場合にどう対応するか。
職員同士で注意し合うことをどう考えるか。
といった点も確認します。
過去の経歴だけではなく、
支援に対する考え方。
組織のルールを守れるか。
相談や報告をためらわないか。
を見ることも大切です。

犯罪事実確認の時期にも注意する

犯罪事実確認は、誰にでも自由に行えるものではありません。
こども家庭庁のQ&Aでは、新たに採用する人について、対象業務に従事することが決まる前に
犯罪事実確認を行うことはできないとされています。犯罪歴に関する情報は機微性が高いためです。
そのため、
求人。
選考。
内定。
犯罪事実確認。
従事開始。
の順番をあらかじめ採用フローとして整理しておく必要があります。

配置は「この人なら大丈夫」だけで決めない

採用後は、職員をどの業務へ配置するかを考えます。
例えば、
送迎。
個別支援。
着替えや排せつの介助。
宿泊行事。
相談対応。
外出活動。
など、子どもと職員の距離が近くなる業務があります。
ここで大切なのは、
経験が長いから任せる。
ベテランだから大丈夫。
人手が足りないから一人で担当してもらう。
という判断だけにしないことです。

一対一になりやすい場面を把握する

配置を考えるときは、
どの時間帯に。
どの場所で。
誰と誰が。
一対一になる可能性があるのか。
を確認します。
一対一になることをすべて禁止する必要はありません。
支援上必要な場合もあります。
その場合は、
他の職員から見える場所にする。
開始と終了を記録する。
必要に応じて複数職員で対応する。
後から内容を確認できるようにする。
といった方法を組み合わせます。
👉配置は「人を見る」だけでなく、「場面を見る」ことが重要です。

犯罪事実確認が終わる前の配置には注意する

原則として、新規従事者の犯罪事実確認は、対象業務への従事開始までに行う必要があります。
ただし、急な欠員など一定のやむを得ない事情がある場合には、「いとま特例」により、
例外的に従事開始後に確認できる場合があります。
その場合でも、犯罪事実確認が終わるまでは、こども家庭庁のQ&Aで例示されているように、
子どもと一対一にさせないなどの対応が必要です。
つまり、
人手が足りないからとりあえず配置する。
確認は後で行う。
という運用を通常の方法にしてはいけません。
採用予定と確認に必要な期間を見込み、早めに準備することが基本です。

研修は「動画を見て終わり」にしない

こども性暴力防止法では、事業者が従事者に研修を受講させる義務が定められています。
こども家庭庁は、従事者向けの動画、演習資料、確認テストなどを公開しています。
研修で大切なのは、
制度を知ること。
禁止事項を覚えること。
だけではありません。
実際の現場で、
これは報告した方がよいのか。
この対応は適切なのか。
子どもから相談されたらどうするのか。
同僚の行動が気になったらどうするのか。
を考えられるようにすることです。

事業所の実例を使う

例えば放課後等デイサービスなら、
送迎車内で最後に子どもと二人になった。
個別支援室で相談を受けた。
着替えの介助が必要になった。
子どもから特定の職員について話を聞いた。
保護者から気になる連絡があった。
という場面を研修で扱います。
認定こども園であれば、
午睡。
着替え。
トイレ。
園外活動。
写真撮影。
など、実際の業務に合わせて考えます。
こども家庭庁の研修手引きでも、座学だけでなく演習を含む研修が想定されています。
また、必要な内容を満たせば、既存研修を活用し、不足する部分を補う方法も示されています。

職員同士で「気になる」と言える職場にする

安全管理では、
ルールを増やす。
監視を強くする。
だけでは十分ではありません。
職員が、
少し気になった。
この対応でよかっただろうか。
他の職員の行動が心配だ。
と感じたときに、相談できることが重要です。
小さな疑問の段階で報告できれば、問題が大きくなる前に確認できます。
一方で、
こんなことを言ったら人間関係が悪くなる。
自分の考えすぎかもしれない。
管理者が忙しそうだから言えない。
という職場では、問題が表面化しにくくなります。
👉研修の目的は、職員を疑うことではなく、迷ったときに組織へ相談できる共通認識をつくることです。

管理者だけが研修を受けても足りない

日本版DBSの担当者や管理者だけが制度を理解していても、実際に子どもと接する職員が知らなければ
安全管理にはつながりません。
対象となる職員には、
制度の目的。
してはいけないこと。
支援上注意する場面。
相談・報告先。
子どもから相談を受けた場合の対応。
個人情報の取扱い。
などを伝えます。
また、
新人職員。
パート職員。
異動してきた職員。
長期間休職していた職員。
にも、必要な研修が行われる仕組みを整えます。
誰が受講したのかを記録しておくことも重要です。

採用・配置・研修を別々にしない

採用担当者。
事業所管理者。
研修担当者。
日本版DBS担当者。
がそれぞれ別の場合、情報が分断されることがあります。
例えば、
採用担当者は対象者を把握しているが、事業所へ伝わっていない。
管理者が配置を変えたが、本部が把握していない。
研修未受講者が現場に入っている。
という状態です。
そこで、
採用した。
確認した。
配置した。
研修した。
という一連の流れをつなげて管理します。
個々の詳しい犯罪事実情報を共有するという意味ではありません。
必要な手続が完了しているか。
必要な研修を受けているか。
配置上の注意事項が反映されているか。
を法人として確認できるようにします。

今日の実務ワンポイント

一人の新規職員が入職する場面を想定して、
採用応募。
面接。
内定。
犯罪事実確認。
配置決定。
初任者研修。
現場への配属。
という順番を書き出してみましょう。
その横に、
誰が担当するか。
どの書類を確認するか。
次の担当者へ何を伝えるか。
を書きます。
途中で、
誰が確認するのか分からない。
どこから現場へ引き継ぐのか分からない。
という部分があれば、そこが運用上の空白です。
👉採用から現場配属までを一本の流れで見ることがポイントです。

まとめ

日本版DBSへの対応は、犯罪事実確認を行って終わりではありません。
採用時に制度と業務を説明する。
必要な時期に犯罪事実確認を行う。
子どもとの関わり方を踏まえて配置する。
職員へ研修を行う。
現場で迷ったときに相談できるようにする。
管理者が日常的に確認する。
という仕組みが必要です。
特に大切なのは、
👉犯罪事実確認の結果だけで「安全な人」「危険な人」と判断しないこと
です。
安全を守るのは、一回の確認ではありません。
採用。
配置。
研修。
相談。
日常的な見守り。
を組み合わせ、組織として継続することです。

今日のチェックポイント

□ 採用から現場配属までの流れを整理している
□ 犯罪事実確認を行う時期を採用フローに入れている
□ 子どもと一対一になりやすい業務を把握している
□ 配置を判断する責任者を決めている
□ 新任職員への研修を行っている
□ 定期的な研修計画を立てている
□ 研修で現場の具体的な事例を扱っている
□ 研修受講記録を残している
□ 職員が気になることを相談できる窓口がある
□ 採用・配置・研修の情報が分断されていない
すべてにチェックが付かなくても構いません。
まずは、
採用から配置まで。
配置から研修まで。
研修から日常の報告まで。
が一つの流れになっているか確認してみましょう。

行政書士田中穂積の視点

日本版DBSは、子どもと関わる事業者にとって大きな制度変更です。
だからこそ、
犯罪事実確認を正しく行うこと。
情報を適切に管理すること。
は当然重要です。
しかし、それだけを制度対応の中心にすると、
確認結果に問題がなければ安心。
研修動画を見たから対応完了。
という考え方になりかねません。
実際の現場では、
子どもと職員がどこで関わるのか。
誰が一対一になるのか。
誰が相談を受けるのか。
気になることがあったとき誰へ報告するのか。
という日常の運用の方が重要です。
行政書士としてお手伝いしたいのは、単に確認手続や書類を整えることだけではありません。
採用から配置までの流れを整理する。
本部と事業所の役割を確認する。
研修や相談体制を運用に落とし込む。
必要な規程や記録様式を整える。
ことです。
制度に現場を合わせるのではなく、現場の支援を確認しながら制度を無理なく組み込む。
その結果として、子どもにも職員にも安心できる環境をつくることが大切だと考えています。

Q&A|採用・配置・研修と日本版DBS

Q1.犯罪事実確認は採用面接の段階でできますか。
A できません。
こども家庭庁のQ&Aでは、対象業務に従事することが決定する前に犯罪事実確認を行うことはできないとされています。
採用・内定・確認・従事開始の流れを事前に整理しておく必要があります。

Q2.犯罪事実確認が終わっていれば、一人で子どもを担当させても問題ありませんか。
A 犯罪事実確認が終わっていることだけで、すべての配置が適切になるわけではありません。
子どもの特性、支援内容、場所、時間帯などを踏まえ、一対一になる場面の記録や他の職員による確認など、
日常の安全管理を組み合わせます。

Q3.こども家庭庁の研修動画を見せれば研修は終わりですか。
A こども家庭庁は標準的な研修教材を公開していますが、特定の教材だけを使わなければならないという制度ではありません。
必要な研修事項を満たしながら、事業所の実際の支援場面を使った演習などを組み合わせることが効果的です。

次回予告

次回はいよいよ、日本版DBSシリーズの最終話です。
日本版DBS対応を子どもの安全を守る組織づくりへ
について考えてみたいと思います。
これまで、
日本版DBSとは何か。
どの事業者が対象になるのか。
犯罪事実確認。
法人と事業所の役割分担。
社内規程。
個人情報管理。
採用・配置・研修。
について考えてきました。
制度が施行されるから手続をする。
確認を受ける。
規程を作る。
研修をする。
それだけでは、子どもの安全を守る仕組みとして十分とはいえません。
最終話では、
👉日本版DBS対応を「制度への対応」で終わらせず、子どもが安心して利用でき、
職員も迷ったときに相談できる組織づくりへどうつなげるか
について、シリーズ全体を振り返りながら整理します。

\ 日本版DBSの施行準備を進めたい事業者の皆さまへ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、認定こども園など、子どもと関わる事業者の日本版DBS対応について
ご相談を承っています。
例えば、
・対象となる事業・職員・業務の整理
・法人本部と事業所の役割分担
・採用から配置までの運用整理
・社内規程・運用ルールの整備
・情報管理規程の整備
・研修計画や相談・報告体制の整理
・保護者向け説明資料の作成
・施行前の対応状況確認
など、法人や事業所の状況に応じて支援内容を整理します。
また、子どもと関わる事業者の皆さまへ、
日本版DBS対応チェックリスト
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次回 30.日本版DBS対応を子どもの安全を守る組織づくりへ

この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。