28.日本版DBSで扱う個人情報をどう守るか

~確認結果を「知る必要がある人」だけで扱うために~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール」
について考えました。
日本版DBSへの対応では、
採用。
配置。
相談・報告。
情報管理。
研修。
を、担当者の記憶だけに頼らず、法人のルールとして整えることが大切です。
今回は、その中でも特に重要な、
個人情報の管理
について考えます。
犯罪事実確認の結果は、非常に慎重な取扱いが必要な情報です。
確認できる制度があるからといって、
管理者なら誰でも見てよい。
人事担当者同士で自由に共有してよい。
念のためコピーを保存しておけばよい。
というものではありません。
👉大切なのは、「誰が知る必要があるのか」を最初に絞ることです。
日本版DBSでは情報管理そのものが義務です
こども性暴力防止法では、対象事業者に対して、犯罪事実確認だけでなく、確認に関する情報を適正に管理するための措置も求めています。
こども家庭庁のQ&Aでは、
・管理責任者を置く
・情報管理規程を策定する
・その規程を守る
ことなどが必要とされています。
つまり、
「確認した後、どう管理するか」
までが日本版DBS対応です。
まず「誰が見るのか」を決める
確認結果を扱う人は、多ければ安心というものではありません。
こども家庭庁は、犯罪事実確認記録等の取扱者を必要最小限にすることを求めています。
例えば、
法人代表者。
人事責任者。
日本版DBSの管理責任者。
配置判断を行う責任者。
など、業務上必要な人に限定します。
事業所管理者へどこまで伝えるか
事業所の管理者が職員配置を行う場合でも、確認結果そのものを共有しなければならないとは限りません。
例えば、
「この職員はこの業務に配置しない」
という配置上必要な情報だけを伝えれば足りる場合もあります。
詳細を知る必要のない人へ、犯罪事実の内容まで共有しないことが重要です。
👉「知りたい人」ではなく、「業務上知る必要がある人」で考えます。
記録を増やしすぎない
情報管理というと、
念のため印刷して保存する。
人事ファイルへコピーする。
Excelへ転記する。
という対応を考えがちです。
しかし、こども家庭庁は、犯罪事実確認書の内容について、記録・保存を極力避けることを基本としています。
例えば、
「黒」
「白」
「該当あり」
「該当なし」
と別の書類や電子ファイルへ転記した場合でも、犯罪事実確認記録に該当することがあります。
そのため、
本当に別の記録を作る必要があるのか。
保存するなら、なぜ必要なのか。
誰がアクセスできるのか。
を確認します。
👉情報を守る一番の方法は、必要のない情報を増やさないことでもあります。
紙で保管する場合
紙で犯罪事実確認記録等を扱う場合は、
鍵のかかる場所に保管する。
一般の職員ファイルと分ける。
机の上へ放置しない。
コピーを必要以上に作らない。
持ち出しを制限する。
といった対応が必要です。
担当者の机の引き出しに入っているだけでは、担当者不在時に他の人が見る可能性があります。
「事務所内にあるから安全」ではなく、
👉権限のない人が物理的に触れられない状態
をつくります。
こども家庭庁も、権限を持たない人が物理的にアクセスできないようにする措置を求めています。
電子データで扱う場合
電子データの場合も、
共有フォルダに入れる。
全管理者がアクセスできる。
担当者の個人PCへ保存する。
USBメモリへコピーする。
という運用は避ける必要があります。
確認したいのは、
誰のIDでアクセスするのか。
フォルダの閲覧権限は誰にあるのか。
パスワードは適切に管理されているか。
端末を離れるときに画面ロックされるか。
外部媒体へコピーできる状態になっていないか。
という点です。
こども家庭庁は、情報システムへの不正アクセスを防ぐ技術的な情報管理措置も求めています。
また、USBメモリなど紛失リスクの高い外部媒体への保存を避けることも示されています。
本部と事業所の間でどう共有するか
複数事業所を運営している法人では、
確認手続は本部。
職員配置は事業所。
というケースがあります。
この場合、
メールに確認結果を添付する。
チャットへ記載する。
事業所共有フォルダへ置く。
という方法を取る前に、
そもそも事業所へその情報を送る必要があるのか
を考えます。
前回の記事で整理したように、
本部が確認結果を管理する。
事業所へは必要な配置判断だけを伝える。
という方法も考えられます。
情報を送る場合も、
送信先。
ファイルの形式。
閲覧権限。
保存期間。
削除方法。
まで決めておきます。
取扱いの記録も残す
情報そのものを保存しない場合でも、
誰が確認したのか。
いつ確認したのか。
誰へ伝えたのか。
いつ廃棄したのか。
といった取扱状況を確認できるようにすることが重要です。
こども家庭庁は、犯罪事実確認記録等について、作成・保管・伝達・廃棄などの状況を記録するための「取扱記録」のひな型も公開しています。
これは、
「情報の内容をたくさん残す」
ためのものではありません。
👉誰が、いつ、どのように扱ったかを後から確認できるようにするための記録
です。
不要になった情報は残し続けない
個人情報は、
残しておいた方が安心。
以前の記録だから念のため保管しておく。
と考えがちです。
しかし、必要がなくなった情報を持ち続けること自体が、漏えいリスクになります。
こども家庭庁は、不要となった情報について、速やかに復元できない形で消去することを求めています。
紙であれば、
シュレッダー。
溶解処理。
など、内容を読み取れない方法で廃棄します。
電子データであれば、
ごみ箱へ移すだけ。
ファイル名を変えるだけ。
ではなく、復元できない形で消去する必要があります。
いつまで保存するか。
誰が廃棄を判断するか。
どの方法で消去するか。
を情報管理規程に合わせて決めます。
漏えいした場合の連絡先も決めておく
どれだけ注意していても、
誤送信。
書類の紛失。
端末の盗難。
誤った共有設定。
などが起こる可能性はあります。
そのため、
情報漏えいに気づいた人。
最初に報告する相手。
管理責任者。
法人代表者。
外部専門家。
必要な行政報告。
をあらかじめ整理しておきます。
こども家庭庁のQ&Aでは、重大な漏えい等が発生した場合、こども家庭庁への報告が必要となる場合があり、速報は事態を知った後「直ちに」行うこととされています。
事故が起きてから連絡先を探すのではなく、事前に報告ルートを決めておくことが大切です。
事業者の規模に合った管理方法を選ぶ
情報管理の方法は、すべての法人で同じとは限りません。
こども家庭庁は、
・責任者1人だけがシステム上で確認し、別途記録しない場合
・複数人がシステム上で確認する場合
・システム外にも記録・保存する場合
に応じて、3種類の情報管理規程ひな型を公開しています。
小規模な法人であれば、
確認する人を1人に限定する。
システム外へ情報を残さない。
という方法によって、情報管理をシンプルにできる場合もあります。
一方、複数事業所を運営する法人では、複数人で取り扱う必要があるかもしれません。
大切なのは、
👉自法人で本当に必要な情報の流れに合わせて管理方法を決めること
です。
今日の実務ワンポイント
次の4つを書き出してみましょう。
1.見る人
犯罪事実確認の結果を見る必要がある人は誰か。
2.置く場所
紙・電子データをどこで管理するか。
3.伝える相手
誰へ、何を伝える必要があるか。
4.消す時期
いつ、誰が、どのように廃棄するか。
この4つが曖昧であれば、情報管理規程と実際の運用を見直す必要があります。
👉まずは「この情報を本当にこの人が見る必要があるか」から確認してみましょう。
まとめ
日本版DBSでは、犯罪事実確認を行うことだけでなく、その情報を適正に管理することが求められます。
確認したいのは、
誰が見るのか。
どこへ保存するのか。
誰へ伝えるのか。
いつ廃棄するのか。
漏えいした場合に誰へ報告するのか。
という点です。
特に大切なのは、
👉必要のない人に見せず、必要のない記録を作らず、必要がなくなった情報を残さないこと
です。
情報管理を複雑にするのではなく、情報そのものを必要最小限にする。
それが、犯罪事実確認に関する情報と職員のプライバシーを守る基本になります。
今日のチェックポイント
□ 情報管理責任者を決めている
□ 確認結果を見る人を必要最小限にしている
□ 紙の保管場所を限定している
□ 電子データの閲覧権限を設定している
□ USBなどへの保存ルールを決めている
□ 本部と事業所の情報共有方法を決めている
□ 不要なコピーや転記を作らないようにしている
□ 情報の取扱記録を残す方法を決めている
□ 廃棄・消去の方法を決めている
□ 漏えい時の報告ルートを決めている
すべてにチェックが付かなくても構いません。
まずは、
誰が見るのか。
どこへ置くのか。
いつ消すのか。
の三つから確認してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
日本版DBSへの対応では、
「どうやって確認するか」
に意識が向きやすいと思います。
しかし、確認した後の情報を多くの人が知る状態になれば、別の問題が生じます。
特に複数事業所を運営する法人では、
本部の担当者。
事業所管理者。
人事担当者。
法人代表者。
が関わるため、情報共有の範囲が広がりやすくなります。
だからこそ、
誰が確認するのか。
誰へ伝える必要があるのか。
何を記録として残すのか。
を最初に絞ることが大切です。
行政書士としてお手伝いしたいのは、単に情報管理規程のひな型を整えることではありません。
法人の組織図や事業所の運営方法を確認する。
実際の情報の流れを整理する。
取扱者と権限を決める。
取扱記録や廃棄まで含めて運用を整える。
ことです。
情報をたくさん持つことが適切な管理ではありません。
必要な情報を、必要な人だけが、必要な期間だけ扱う。
その仕組みをつくることが、日本版DBS対応における情報管理の基本だと考えています。
Q&A|日本版DBSと個人情報管理
Q1.確認結果を人事ファイルにコピーして保存してもよいですか。
A 犯罪事実確認書の内容については、記録・保存を極力避けることが基本とされています。
保存が必要な場合には、その必要性、閲覧者、保管方法、廃棄方法まで含めて管理する必要があります。
Q2.事業所の管理者には必ず確認結果を伝える必要がありますか。
A 必ず詳細を共有するという考え方ではありません。
業務上知る必要がある人を必要最小限にし、配置上必要な情報だけを伝える方法も含めて、法人の役割分担に応じて整理します。
Q3.小さな法人でも情報管理規程が必要ですか。
A 対象事業者には情報管理規程の策定が求められています。
こども家庭庁は、責任者1人だけが確認する場合など、運用方法に応じた複数のひな型を公開しています。
次回予告
次回は、
「日本版DBS対応を採用・配置・研修へどうつなげるか」
について考えてみたいと思います。
犯罪事実確認を行い、情報を適切に管理しても、
確認結果に問題がなければ安心。
ということではありません。
子どもの安全を守るためには、
採用時の面接。
職員配置。
送迎や個別支援の方法。
職員研修。
相談・報告。
管理者による日常的な確認。
を組み合わせる必要があります。
次回は、
👉日本版DBSを「確認制度」で終わらせず、日常の安全管理へどうつなげるか
について、行政書士としての視点から整理します。
\ 日本版DBSの施行準備を進めたい事業者の皆さまへ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、認定こども園など、子どもと関わる事業者の日本版DBS対応についてご相談を承っています。
例えば、
・対象となる事業・職員・業務の整理
・法人本部と事業所の役割分担
・社内規程・運用ルールの整備
・情報管理規程の整備
・取扱者・閲覧権限の整理
・相談・報告体制の整備
・保護者向け説明資料の作成
・施行前チェック
など、法人や事業所の状況に応じて支援内容を整理します。
また、子どもと関わる事業者の皆さまへ、
「日本版DBS対応チェックリスト」
を無料で進呈しております。
対象事業、対象職員、採用、配置、研修、相談体制、個人情報管理、社内規程など、施行前に確認したい項目を整理できるチェックリストです。
👉現在できていることと、これから整えることを確認するところから始めてみませんか。
チェックリスト(無料)のご請求は、お問い合わせフォームより承っております。
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クイズ!日本版DBSで扱う個人情報をどう守るか
前回 27.日本版DBS対応で整えておきたい社内規程と運用ルール
次回 29.日本版DBS対応を採用・配置・研修へどうつなげるか
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。