補助金申請の事業計画書で何を見られるのか|第4話

補助金申請の事業計画書で何を見られるのか|第4話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
宿泊施設・旅館で使える補助金とは|改修・省力化など目的別に整理
として、
建物・客室の改修。
省力化。
DX。
インバウンド対応。
バリアフリー。
地域資源活用。
観光コンテンツ。
など、制度名ではなく、
👉「何のためにお金を使いたいのか」
から補助制度を探す考え方をお伝えしました。
では、使いたい補助制度が見つかったら、次に何が必要になるのでしょうか。
その一つが、
事業計画書
です。
「設備が古いので交換したい」
「古民家を改修したい」
だけでは、その投資が本当に必要なのかは十分に伝わりません。

今回のポイントは、
👉 「何を買うか」ではなく、「なぜ必要で、その投資によって事業がどう変わるのか」を説明すること
です。

事業計画書は「欲しいものを書く書類」ではない

補助金を検討すると、
「この設備が補助対象になるか」
に意識が向きがちです。
もちろん、対象経費かどうかは重要です。
しかし事業計画では、その前に、
なぜ、その投資が必要なのか
を説明する必要があります。
たとえば、
「客室の設備が古いので改修する」
だけではなく、
現在どのような課題があるのか。
どのようなお客様を想定しているのか。
改修によって何が改善するのか。
売上や業務効率にどうつながるのか。
まで一つの流れとして考えます。
補助金の審査項目は制度ごとに異なりますが、現在の中小企業向け補助制度でも、経営状況や経営方針、補助事業の有効性などを含めて事業計画を総合的に審査する仕組みが採られています。

まず「今、何に困っているのか」を整理する

事業計画の出発点は、
現在の課題
です。
たとえば旅館であれば、
・予約業務に時間がかかっている
・人手不足でフロント業務の負担が大きい
・外国人旅行者への案内が十分ではない
・客室設備が古く、利用者のニーズに合っていない
・地域に観光資源はあるが宿泊につながっていない
などが考えられます。
大切なのは、
「設備が古い」
で終わらせないことです。
その結果、
誰が困っているのか。
事業にどのような影響が出ているのか。
まで考えてみます。

「誰に来てもらいたいか」が見えているか

次に考えたいのが、
顧客像
です。
宿泊事業であれば、
国内の個人旅行者。
家族旅行。
シニア層。
外国人旅行者。
ワーケーション利用者。
地域体験を目的とする旅行者。
など、想定するお客様によって必要な投資は変わります。
たとえば、
外国人旅行者を増やしたいのであれば、
多言語案内や予約環境の整備。
シニア層にも利用しやすくしたいのであれば、
段差や水回りなどの改善。
地域体験を目的とする旅行者を呼びたいのであれば、
宿泊だけでなく地域の観光資源との連携。
というように、
顧客と投資内容がつながっていること
が重要です。
旅行業界で37年間仕事をしてきた経験からも、
「誰に来てもらいたいのか」
が曖昧なままでは、設備投資も商品づくりも方向が定まりにくいと感じます。

地域や市場の需要も確認する

事業者自身が、
「これは良いと思う」
だけではなく、
実際に需要があるか
も考える必要があります。
たとえば、
周辺にどのような宿泊施設があるのか。
観光客はどこから来ているのか。
繁忙期・閑散期はいつなのか。
地域にどのような観光資源があるのか。
外国人旅行者が増えているのか。
などです。
難しい市場調査をする必要はありません。
まずは、
自治体や観光協会の統計。
自社の予約データ。
お客様の声。
OTAの口コミ。
周辺施設の状況。
など、身近な情報から整理できます。

投資内容と課題がつながっているか

ここが事業計画の中心です。
たとえば、
課題:チェックイン業務に時間がかかる
のであれば、
投資:セルフチェックイン設備を導入する
そして、
効果:フロント業務を減らし、接客や館内業務に人員を振り向ける
という流れになります。
古民家宿なら、
課題:水回りが古く、宿泊客が利用しにくい
投資:客室・水回りを改修する
効果:宿泊環境を改善し、想定する顧客層を受け入れやすくする
という考え方です。
👉 課題と関係のない設備を並べても、説得力のある事業計画にはなりません。

「導入したら何が変わるか」を数字で考える

事業計画では、
「便利になります」
「売上が増えます」
だけではなく、できる範囲で具体化します。
たとえば、
・予約処理にかかる時間を減らす
・スタッフの作業時間を削減する
・客室単価を見直す
・稼働率を高める
・新しい顧客層を獲得する
・体験商品の販売件数を増やす
などです。
もちろん、将来の数字を正確に予測することはできません。
大切なのは、
その数字をどう考えたのか説明できること
です。
「何となく20%増えると思う」
ではなく、
現在の実績。
客室数。
稼働率。
販売価格。
見込客。
などから積み上げて考えます。

地域にどんな効果があるか

観光事業では、
自社だけでなく、
地域との関係
も重要になる場合があります。
たとえば、
古民家宿を開業することで、
地域の飲食店を利用してもらう。
地元の商品を販売する。
体験事業者と連携する。
地域内の滞在時間を長くする。
新しい雇用を生む。
といった波及が考えられます。
観光庁の支援事業でも、地域資源を活用した観光コンテンツの造成や販路開拓など、地域への誘客や観光消費につなげる取組が支援されています。
ただし、
「地域活性化に貢献します」
という言葉だけでは十分ではありません。
誰と、何を行い、地域にどのような動きが生まれるのか
まで考えると、事業計画が具体的になります。

実施できる計画になっているか

良いアイデアでも、
実行できなければ事業計画として成立しません。
そこで、
・誰が担当するのか
・いつ実施するのか
・工事や設備導入にどのくらいかかるのか
・必要な許認可はあるか
・必要な資金を準備できるか
なども整理します。
宿泊施設や古民家活用では、
旅館業許可。
消防。
建築。
飲食店営業許可。
などが関係することがあります。
補助事業のスケジュールだけを作るのではなく、
実際の開業スケジュールと矛盾していないか
を確認することが重要です。

補助金が終わったあとも続く事業か

事業計画で忘れたくないのが、
補助事業終了後
です。
補助金を使って設備を導入しても、
その後の維持費が高すぎる。
利用者が増えない。
人員を確保できない。
設備を使いこなせない。
となれば、事業は続きません。
そこで、
導入後の売上。
維持費。
人件費。
運営体制。
設備更新。
なども考えておきます。
👉 補助金を使う期間だけではなく、その後も事業を続けられるか。
ここまで含めて事業計画です。

今日の実務ワンポイント

事業計画を書き始める前に、
紙に4つだけ書いてみてください。
① 今の課題
② 行う投資
③ 投資によって変わること
④ その後、事業をどう続けるか
たとえば、
課題
予約業務に時間がかかる

投資
予約管理システムを導入する

効果
予約処理を効率化し、接客に使える時間を増やす

継続
業務負担を抑えながら宿泊客の受入れを増やす
この4つが自然につながっていれば、事業計画の骨格が見えてきます。

まとめ

補助金の事業計画書では、
たくさんの専門用語を書くことが大切なのではありません。
まず、
今どんな課題があるのか。
誰を顧客とするのか。
なぜその投資が必要なのか。
投資によって何が変わるのか。
どのように実施するのか。
そして、
その後も事業を続けられるのか。
を整理します。
👉 「設備を買いたい」という話を、「事業をどう良くするのか」という計画に変えることが大切です。
補助金の事業計画を考えることは、
自分の事業そのものを見直す機会でもあります。

今日のチェックポイント

次の項目を確認してみましょう。
• □現在の課題を具体的に説明できる
• □想定する顧客が見えている
• □地域や市場の需要を確認している
• □投資内容と課題がつながっている
• □その投資が必要な理由を説明できる
• □投資後の効果を具体的に考えている
• □売上や業務改善の根拠を考えている
• □地域への波及効果を整理している
• □実施体制とスケジュールを確認している
• □補助事業終了後の継続性を考えている
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
今の課題 → 投資 → 効果 → 継続
の4つを一本につないでみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて感じるのは、
設備や施設が新しいことだけで、お客様に選ばれるわけではないということです。
誰に来てもらいたいのか。
どのような滞在をしてもらいたいのか。
地域に何があるのか。
自分たちは何を提供できるのか。
それがあって初めて、
「では、何に投資するのか」
が見えてきます。
行政書士として事業計画を整理するときには、さらに、
許認可。
物件。
改修。
資金。
開業時期。
なども確認します。
補助金申請だけを切り離して考えるのではなく、
実際に実行できる事業計画になっているか
を見ることが大切だと考えています。
事業計画書を書くために事業を考えるのではありません。
事業を整理した結果として、事業計画書ができてくる。
その順番が自然です。

Q&A|補助金申請の事業計画書

Q1.事業計画書は文章が上手でないと採択されませんか?
文章のうまさだけで決まるものではありません。
重要なのは、
現状の課題。
投資の必要性。
期待する効果。
実施方法。
などが具体的につながっていることです。
制度ごとに審査項目は異なるため、最新の公募要領で評価項目を確認したうえで、それに沿って整理する必要があります。現在の補助制度でも、公募要領に計画審査の項目が明示されるものがあります。

Q2.売上予測は正確な数字でなければいけませんか?
将来の売上を完全に予測することはできません。
ただし、
「なぜその数字になると考えたのか」
を説明できることが大切です。
現在の売上、客室数、稼働率、単価、想定客数など、できるだけ根拠のある数字から考えてみましょう。

Q3.補助金ごとに事業計画書は同じ内容でよいですか?
基本となる事業の考え方は共通していても、制度ごとに目的や審査項目は異なります。
そのため、一度作った事業計画をそのまま使い回すのではなく、
その補助制度が何を支援しようとしているのか
を公募要領で確認することが必要です。

次回予告

事業計画を作ると、
「必要な投資額は分かった。でも、そのお金をどう準備するのか」
という次の課題が見えてきます。
特に宿泊施設や古民家再生では、
物件取得。
改修。
消防設備。
厨房。
家具・備品。
広告。
そして開業後の運転資金。
まで考えると、まとまった資金が必要になることがあります。
次回は、
宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと|第5話
として、
・自己資金
・設備資金
・運転資金
・創業融資
・返済期間
・据置期間
・売上予測
・開業までの資金繰り
などを整理します。
👉 次回は、「いくら借りられるか」ではなく、「いくら必要で、無理なく返せるのか」という視点から融資を考えます。

\ 観光・宿泊・古民家再生の資金計画を整理したい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可や宿泊施設の開業支援だけでなく、
観光事業や古民家・空き家活用について、事業計画・資金計画・必要な許認可を一体で整理する支援を行っています。
例えば、
・これから始める事業内容の整理(旅行業、宿泊業、飲食業、民泊)
・利用を検討する補助制度の確認
・補助金申請に向けた事業計画の整理
・開業までに必要となる許認可の確認
・旅館業許可
・飲食店営業許可
・保健所、消防署などへの事前相談
・申請や開業準備に必要な書類の整理
など、現在の計画段階に応じて必要な手続を整理します。
観光・宿泊、飲食・古民家活用では、
物件、改修、資金、許認可、開業時期
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「使える補助金があるか」だけを見るのではなく、
ご相談内容や事業計画を確認したうえで、開業までに何を、どの順番で進める必要があるのかを整理しています。
補助金は採択を保証するものではなく、融資についても金融機関による審査・判断があります。
また、制度によって行政書士が対応できる支援範囲は異なります。
税務、融資判断、建築設計、労務など他の専門分野が関係する場合には、必要に応じて各専門家との連携も検討しながら進めます。
👉 補助金申請のためだけではなく、実際に続けられる事業計画を整理するところ
から始めてみませんか。

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クイズ!補助金申請の事業計画書で何を見られるのか

読み込み中…

前回 宿泊施設・旅館で使える補助金とは|改修・省力化など目的別に整理|第3話
次回 宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと|第5話

この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。