補助金と融資は併用できる?宿泊事業の資金計画で注意したいこと|第6話

補助金と融資は併用できる?宿泊事業の資金計画で注意したいこと|第6話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
宿・古民家再生で融資を受ける前に確認したいこと
として、
自己資金。
設備資金。
運転資金。
売上予測。
返済計画。
などを整理しました。
事業に必要な金額が見えてくると、次に考えたいのが、
補助金と融資をどう組み合わせるか
です。
たとえば、
「改修費1,000万円のうち、500万円の補助金が採択された」
とします。
すると、
「自分で準備するのは残り500万円」
と思いたくなるかもしれません。
しかし、実際のお金の流れはそれほど単純ではありません。
👉 補助金が500万円あることと、工事代金を支払うときに500万円が手元にあることは別です。
今回は、補助金・自己資金・融資を、実際のお金が動く順番から整理します。

補助金と融資は併用できる?

まず、
「補助金を利用すると融資は受けられないの?」
という疑問があります。
補助金と金融機関からの融資は、資金調達の性質が異なるため、事業全体の資金計画の中で組み合わせることは考えられます。
たとえば、
自己資金 300万円
融資 700万円
補助金 500万円
といったように、それぞれを組み合わせて事業資金を考えることがあります。
ただし、
補助金の利用条件。
金融機関の融資審査。
資金使途。
補助対象経費。
などはそれぞれ別に確認する必要があります。
また、複数の補助金を同じ経費に重複して使うことには制限がある場合があります。
👉 「補助金+融資なら自動的に使える」と考えず、それぞれの制度・金融機関の条件を確認することが前提です。

一番大切なのは「いつお金が必要か」

補助金と融資を一緒に考えるとき、
金額だけを並べると分かりにくくなります。
そこで、
時間軸で考えてみます。

補助金は原則として後払い

一般的な補助金では、
申請

採択

交付申請・交付決定

契約・発注・事業実施

支払い

実績報告

補助金額の確定

補助金入金
という流れになります。
中小企業庁も、補助金は補助事業終了後の実績報告・確認を経て支払われる
「後払い(精算払い)」が原則と案内しています。
つまり、
工事代金などを支払うときには、まだ補助金が入金されていない
ことがあります。
ここが資金計画で非常に重要なポイントです。

1,000万円の工事で500万円補助される場合

具体的に考えてみましょう。
古民家宿の改修工事が、
1,000万円
かかるとします。
そのうち、
500万円
が補助される予定だとしても、
工事業者への支払い時点で、
「補助金500万円+自己資金500万円」
が使えるとは限りません。
補助金が後払いなら、一時的には、
1,000万円を支払うための資金
を準備する必要があります。
そこで、
自己資金。
金融機関からの融資。
必要に応じたつなぎ資金。
などを検討します。
👉 補助率を見るだけでなく、「支払日にいくら必要なのか」を考えることが重要です。

「つなぎ資金」という考え方

補助金が入金されるまでの間、一時的に必要となる資金を、
つなぎ資金
と呼ぶことがあります。

なぜつなぎ資金が必要になるのか

たとえば、
工事代金を9月に支払う。
実績報告を10月に行う。
その後、検査・補助額の確定を経て補助金が入る。
という場合、
工事代金を支払ってから補助金が入るまでに時間差があります。
この期間を、
自己資金だけで乗り切れるのか。
融資が必要なのか。
金融機関に事前に相談するのか。
を考えます。
大切なのは、
補助金が採択されてから初めて資金相談をするのではなく、事業計画を作る段階から入金時期を確認すること
です。

融資実行のタイミングも確認する

補助金だけでなく、
融資がいつ実行されるのか
も重要です。
融資を申し込めば、その日にお金が振り込まれるわけではありません。
金融機関では、
事業計画。
資金使途。
見積書。
自己資金。
返済可能性。
などを確認したうえで審査が行われます。
そのため、
「工事代金は来月支払いなのに、これから融資を申し込む」
では、スケジュールが合わない可能性があります。
👉 補助金申請・融資申込・工事契約・支払日を、一つのスケジュール表に入れておくことが大切です。

補助されないお金も忘れない

補助率が2分の1だから、
「総事業費の半分が補助される」
とは限りません。
ここにはいくつか注意点があります。

補助対象外経費

たとえば、
物件取得費。
一部の備品。
補助事業と直接関係しない工事。
対象期間外の支出。
など、制度によって補助対象にならない経費があります。
つまり、
総事業費と補助対象経費は同じとは限りません。

追加工事

古民家や既存の宿泊施設では、
工事を始めてから、
給排水。
電気設備。
消防設備。
建物の構造。
などについて追加工事が必要になることがあります。
その追加分が必ず補助対象になるとは限りません。
そのため、
見積額ぴったりではなく、
ある程度の予備費を含めた資金計画
も検討しておきたいところです。

消費税の扱いにも注意する

補助金では、
消費税の扱い
も確認が必要です。
制度によっては、補助対象経費から消費税等仕入控除税額を除いて申請したり、
後から仕入控除税額が確定した場合に返還等の手続が必要になったりすることがあります。
観光関係の補助事業でも、課税事業者について消費税等仕入控除税額を補助対象から減額する取扱いなどが
定められている例があります。
そのため、
「工事費1,100万円だから、その金額に補助率を掛ければよい」
と単純に考えない方が安全です。
消費税の税務判断については、必要に応じて税理士等の専門家へ確認します。

資金計画は「金額表」ではなく「時系列表」にする

ここまでを整理すると、
補助金と融資を組み合わせるときに必要なのは、
単なる、
資金総額の表
だけではありません。
おすすめしたいのは、
月ごとの資金繰り表
です。
たとえば、
6月
自己資金を準備
7月
融資申込
8月
交付決定・工事契約
9月
融資実行
10月
工事代金支払い
11月
実績報告
その後
補助金入金
というように、
いつ、いくら出ていき、いつ、いくら入ってくるのか
を並べます。
※これは考え方を示す例です。実際の日程は補助制度や金融機関によって異なります。
こうすると、
「10月に資金が足りない」
という問題を開業前に見つけることができます。

許認可・工事・資金も同じ時間軸で見る

宿泊施設や古民家再生の場合には、
さらに、
旅館業許可。
消防法。
建築法。
飲食店営業許可。
などが関係することがあります。
たとえば、
補助金の交付決定を待って工事をする。
工事が終わらないと許認可手続が進まない。
許可が予定より遅れる。
しかし、融資の返済や家賃は始まっている。
ということも考えられます。
だからこそ、
👉 補助金・融資・許認可・工事・開業日を別々に考えない
ことが重要です。

今日の実務ワンポイント

補助金を使う予定がある方は、
紙に一本の横線を書いてみてください。
そこに、
「交付決定→契約・発注→工事→支払い→実績報告→補助金入金」
を並べます。
そして、その下に、
・融資申込
・融資実行
・自己資金
を縦に書き込みます。
最後に、
「この時点で手元にいくらあるか」
を確認します。
👉 補助金の資金計画は、「いくらもらえるか」より「いつお金が足りなくなるか」を
先に確認することが大切です。

まとめ

補助金と融資は、
事業全体の資金計画の中で組み合わせて考えることができます。
しかし、
補助金が採択された。
融資を申し込む予定がある。
というだけでは、資金計画は完成しません。
補助金はいつ入るのか。
工事代金はいつ払うのか。
融資はいつ実行されるのか。
自己資金はいくら必要か。
補助対象外経費はいくらあるのか。
追加工事に備えられるか。
を確認します。
👉 大切なのは、「最終的に資金が足りるか」だけではなく、「途中で資金が足りなくならないか」です。
補助金・融資・自己資金を、
金額と時間の両方から考える
ことが、無理のない資金計画につながります。

今日のチェックポイント

□補助金の入金時期を確認している
□補助金が後払いであることを資金計画に入れている
□工事・設備代金の支払時期を確認している
□融資申込から実行までの期間を考えている
□入金までの自己資金・つなぎ資金を考えている
□補助対象外経費を整理している
□消費税の取扱いを確認している
□追加工事に備えた予備費を考えている
□許認可と工事のスケジュールを確認している
□月ごとの資金繰りを確認している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「支払日」と「補助金の入金日」を同じ表に書く
ところから始めてみましょう。

行政書士田中穂積の視点

補助金申請と融資申込を別々に考えると、
それぞれの書類は整っていても、
事業全体の資金の流れがつながっていない
ことがあります。
たとえば、
補助金の事業計画には工事費が書いてある。
融資の事業計画にも工事費が書いてある。
しかし、
実際にいつ工事代金を支払い、
そのとき手元にいくらあるのか。
までは整理されていない。
これでは、実際に事業を始める段階で困る可能性があります。
行政書士として資金調達支援を考えるときには、
補助金申請。
融資申込。
事業計画。
旅館業許可。
消防・建築。
開業スケジュール。
をできるだけ一つの計画として見ることが重要だと考えています。
特に許認可が必要な宿泊・飲食事業では、
「資金を調達できる計画」と「実際に許可を取得して開業できる計画」が一致していること
が大切です。
融資を実行するかどうかを判断するのは金融機関です。
補助金についても採択や交付を保証することはできません。
だからこそ、
申請を通すためだけの計画ではなく、実際にお金が回る事業計画をつくる。
そこに、行政書士が事業計画・補助金・融資申込・許認可を一体で整理する意味があると考えています。

Q&A|補助金と融資の併用

Q1.補助金が採択されたら、その金額を融資から減らせばよいですか?
必ずしもそうとは限りません。
補助金は後払いになることが多いため、補助金が入るまでの支払資金を準備する必要があります。
最終的な自己負担額だけでなく、
補助金入金までに必要となる資金
を確認しましょう。

Q2.補助金が入るまでの資金を金融機関から借りることはできますか?
金融機関により、補助金入金までの資金を含めた相談ができる場合があります。
ただし、融資の可否、金額、資金使途、実行時期などは金融機関の審査によります。
補助金の採択後ではなく、できるだけ早い段階で事業計画・資金計画を準備して相談することが大切です。

Q3.補助金と融資の資金計画は誰に相談すればよいですか?
補助金制度、融資、税務、許認可など、それぞれ専門分野が異なります。
行政書士は、
事業計画書の作成、補助金申請、融資申込手続、許認可
などを整理する立場から、事業全体の準備を支援することができます。
一方、融資判断は金融機関、税務判断は税理士など、それぞれの専門家による確認が必要です。

次回予告

ここまでは、
これから宿泊施設や古民家事業を始める場合を想定し
補助金。
事業計画。
融資。
資金調達。
を考えてきました。
しかし、資金の問題は開業時だけではありません。
宿を続けていけば、
設備の老朽化。
大規模修繕。
売上減少。
光熱費や人件費の上昇。
災害。
そして事業承継。
など、新たな資金需要が生まれます。
次回は、
宿を続けるための資金繰り|設備更新・売上減少・事業承継に備える|第7話
として、
既存の旅館・ホテル事業者にも関係する、
・設備更新
・大規模修繕
・繁忙期・閑散期
・売上減少
・固定費上昇
・借換え
・返済条件の見直し
・事業承継
・資金繰り表
などを整理します。
👉 次回は、「開業するためのお金」から、「宿を続けるためのお金」へ視点を移して考えます。

\ 観光・宿泊・古民家再生の資金計画・融資申込を整理したい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可や宿泊施設の開業支援だけでなく、
観光事業や古民家・空き家活用について、事業計画・資金計画・融資申込・必要な許認可を一体で整理する    支援を行っています。
例えば、
・これから始める事業内容の整理(旅行業、宿泊業、飲食業、民泊)
・開業に必要な資金の整理
・設備資金・運転資金の整理
・創業計画・事業計画の作成支援
・融資申込に必要な書類の整理
・利用を検討する補助制度の確認
・補助金申請に向けた事業計画の整理
・補助金・融資・自己資金のスケジュール整理
・開業までに必要となる許認可の確認
・旅館業許可
・飲食店営業許可
・保健所、消防署などへの事前相談
など、現在の計画段階に応じて必要な支援を整理します。
観光・宿泊、飲食・古民家活用では、
物件、改修、資金調達、許認可、開業時期
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「補助金がいくら受けられるか」
「いくら借りられるか」
だけを見るのではなく、
いつ資金が必要なのか。
その資金をどう準備するのか。
必要な許認可を取得できるのか。
開業後も無理なく資金が回るのか。
まで含めて事業全体を整理します。
行政書士は、事業計画書の作成や融資申込手続、許認可申請などの支援を行うことができます。
ただし、補助金の採択・交付や融資実行を保証するものではなく、融資の可否や条件を決定するのは金融機関です。
また、税務、金融機関による融資判断、建築設計、労務など他の専門分野が関係する場合には、
必要に応じて各専門家との連携も検討しながら進めます。
👉 補助金・融資・自己資金を別々に考えず、開業までのお金の流れを一度整理するところから始めてみませんか。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。