横浜の障害福祉事業は物件契約前が重要|第2話

横浜の障害福祉事業は物件契約前が重要|第2話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
横浜で障害福祉サービスを開業するには
として、
指定申請。
人員配置。
物件・設備。
運営準備。
を一つの計画として進めることが大切だとお伝えしました。
では、実際に開業準備を始めるとき、
「まず物件を探そう」
と考える方も多いのではないでしょうか。
もちろん、物件探しは重要です。
しかし障害福祉サービスでは、
良い物件が見つかったことと、その物件で事業を始められることは別です。
契約してから、
「必要な設備基準を満たせない」
「想定外の工事が必要になった」
「予定していたサービスでは使いにくい」
と分かれば、開業時期や資金計画にも影響します。

そこで今回は、
👉 障害福祉サービスの物件は「契約してから確認する」のではなく、「確認してから契約する」
という考え方を横浜市を例にとり整理します。

「広くてきれい」だけでは決められない

障害福祉サービスの物件を探していると、
駅から近い。
家賃が予算内。
室内がきれい。
広さも十分ありそう。
といった条件に目が向きます。
もちろん、どれも大切です。
しかし、指定を受ける事業所として考えると、それだけでは判断できません。
サービスごとに、
・必要な部屋やスペース
・設備
・利用者が安全に過ごせる環境
・運営上必要な配置
などを確認する必要があります。
つまり、
不動産として良い物件と、障害福祉事業所として使いやすい物件は同じとは限らない
ということです。

まず「何の事業に使う物件か」を明確にする

物件を見る前に確認したいのが、
どの障害福祉サービスを始めるのか
です。
放課後等デイサービス。
児童発達支援。
就労継続支援B型。
共同生活援助(グループホーム)。
では、必要となる空間や設備の考え方が異なります。
たとえば、
子どもが活動する場所なのか。
軽作業を行う場所なのか。
利用者が生活する住宅なのか。
によって、物件に求める条件は変わります。
したがって、
「良い物件を見つけて、そこで何ができるか考える」
よりも、
👉 「このサービスを始めるために、どんな物件が必要か」を先に整理する
方が安全です。

間取りは「面積」だけでなく使い方を見る

物件情報に、
「80㎡」
「100㎡」
と書いてあると、
十分な広さがあるように感じるかもしれません。
しかし、重要なのは総面積だけではありません。
たとえば、
柱や壁の位置。
廊下。
収納。
トイレ。
事務スペース。
相談できる場所。
利用者が実際に活動する場所。
などを考える必要があります。
同じ100㎡でも、
実際に利用者が活動できる部分がどのくらいあるのか。
必要な部屋を確保できるのか。
職員が支援しやすい動線になっているのか。
によって使いやすさは大きく変わります。
👉 「何㎡あるか」だけでなく、「その面積をどう使えるか」まで確認することが大切です。

建物の「用途」も確認する

次に確認したいのが、
その建物を予定している障害福祉サービスに使用できるか
という点です。
建物には、
これまで何に使われていたのか。
どのような用途として扱われているのか。
予定している使い方で建築上の問題がないか。
など、確認すべき事項があります。
「以前は事務所だったから大丈夫」
「前にも福祉関係の事業所だったらしい」
という情報だけで判断するのは危険です。
以前と今回では、
サービスの種類。
利用人数。
建物の使い方。
必要な設備。
が異なることがあります。
そのため、
「以前どう使われていたか」ではなく、「今回の事業で使えるか」
を確認します。

消防設備は「あとで考える」では遅いことがある

障害福祉サービスでは、
消防設備や避難経路などの確認も重要です。
建物の規模。
構造。
階数。
利用方法。
利用者の状況。
などによって、必要な対応が変わることがあります。
たとえば、
火災報知設備。
誘導灯。
消火設備。
避難経路。
などです。
契約後に、
「消防設備の工事に思った以上の費用がかかる」
と分かれば、開業資金にも影響します。
場合によっては、
予定していた開業時期そのものを見直すことになるかもしれません。
だからこそ、
👉 物件の家賃だけでなく、開業できる状態にするまでにいくらかかるか
まで考えて判断することが大切です。

横浜では行政への事前相談を早めに意識する

横浜市で障害福祉サービスを始める場合、サービスによって事前相談や指定申請までの手続が設けられています。
そのため、
物件契約 → 行政へ相談
と決めつけない方がよいでしょう。
特に候補物件が見つかった段階では、
必要な設備を確保できるか。
指定基準との関係はどうか。
事前に確認すべき事項はないか。
を整理します。
そのうえで、
必要に応じて横浜市や消防署、建築関係の窓口などへ確認していきます。
👉 候補物件 → 基準確認・必要な事前相談 → 契約判断
という順番を意識すると、契約後の想定外を減らしやすくなります。

「その地域・時期で新規開設できるか」も確認する

設備基準を満たす物件が見つかったとしても、
それだけで必ず新規指定へ進めるとは限りません。
障害福祉サービスでは、
自治体の障害福祉計画。
地域のサービス整備状況。
事業ごとの募集や指定方針。
などが関係する場合があります。
特にサービスによっては、
新規開設について自治体独自の募集や手続が設けられていることがあります。
そのため物件契約前には、
・現在、新規開設を進められるサービスなのか
・自治体独自の募集や事前相談があるのか
・希望する地域でどのような整備方針になっているのか
といった点も確認しておきたいところです。
いわゆる「総量規制」などが関係する場合もありますが、サービスや自治体によって取扱いは異なります。
👉 「指定基準を満たす物件か」だけでなく、「その場所・時期で新規開設を進められるか」まで確認することが重要です。

複数の事業所を考えるなら「移動時間」も確認する

将来的に、
就労継続支援B型とグループホーム。
児童発達支援と放課後等デイサービス。
など、複数の障害福祉サービスを運営することを考えている場合には、
それぞれの物件の位置関係
も確認しておきたいところです。
たとえば、
日中はB型事業所を運営し、
夜間や休日はグループホームで支援する。
といった事業展開を考える場合、
単に家賃や物件条件だけで場所を選んでしまうと、
・職員の移動
・管理者やサービス管理責任者等の動き
・事業所間の情報共有
・緊急時の対応
・利用者支援
・日常の管理業務
に負担が生じることがあります。
B型とグループホームの間に全国一律で「何km以内」といった単純な距離基準があるわけではありません。
しかし、
実際に職員が無理なく移動でき、一体的・安定的な支援ができるか
という運営上の視点は重要です。
共同生活援助でも、複数の共同生活住居を一つの事業所として運営する場合には、主たる事務所との位置関係や一体的なサービス提供が可能かという考え方があります。
👉 今後複数事業を展開する可能性があるなら、「今借りる物件」だけでなく、将来の事業所間の距離や移動時間まで考えておくと安心です。

不動産会社には「障害福祉事業所として使う」と伝える

物件を探すときには、
貸主や不動産会社にも、
障害福祉サービス事業所として使用する予定
であることを明確に伝えておきましょう。
単に、
「事務所として借ります」
として進めてしまうと、
実際の利用方法について貸主側との認識が食い違う可能性があります。
また、
改修工事。
看板。
消防設備工事。
間仕切り変更。
などを予定する場合には、貸主の承諾が必要になることもあります。
契約条件については不動産会社等とも確認し、
予定している事業内容と賃貸借契約の内容が合っているか
を確認しておくことが大切です。

契約から開業までの家賃も考える

物件を契約すると、まだ事業を開始していなくても家賃が発生します。
一方で、
行政への相談。
消防・建築関係の確認。
改修工事。
指定申請。
書類の補正。
備品の準備。
などには時間がかかります。
そのため、
「良い物件があったから、とりあえず押さえる」
という判断をするときには、
実際の開業まで何か月分の家賃が発生するのか
も考えておく必要があります。
家賃だけでなく、
人件費。
改修費。
設備費。
保証金。
なども重なれば、開業前からまとまった支出になります。
物件選びは、
指定申請だけでなく、
開業資金・資金繰りの問題でもある
ということです。

今日の実務ワンポイント

候補物件が見つかったら、
契約前に次の5つを書き出してみてください。
① この物件で始めるサービス
② 必要な部屋・設備
③ 建築・消防・指定基準で確認すること
④ その地域・時期で新規開設を進められるか
⑤ 契約後、開業までに必要な工事・費用・期間
将来、複数事業の運営を考えている場合には、
「他の事業所との移動時間」
も加えてみましょう。
分からない項目は、「未確認」のままで構いません。
大切なのは、
何が分かっていて、何が確認できていないのかを見えるようにすること
です。
👉 契約を急ぐ前に、「確認できていないこと」を整理するところから始めましょう。

まとめ

障害福祉サービスの物件探しでは、
立地。
家賃。
広さ。
だけで判断することはできません。
予定しているサービスに合うか。
必要な設備を配置できるか。
建築上の確認は必要か。
消防設備はどうなるか。
指定基準を満たせるか。
その地域・時期で新規開設を進められるか。
改修費はいくらかかるか。
開業までどのくらい時間がかかるか。
複数事業なら無理のない位置関係か。
まで確認していきます。
👉 障害福祉サービスの物件選びで大切なのは、「良い物件を見つけること」より先に、「その物件で事業を始められるかを確認すること」です。
契約後に問題を解決するより、
契約前に確認できることを一つずつ整理する。
それが、安心して開業準備を進めるための大切な一歩です。

今日のチェックポイント

候補物件が見つかったら、次の項目を確認してみましょう。
□始める障害福祉サービスが決まっている
□必要な部屋・スペースを確認している
□総面積だけでなく実際の使い方を確認している
□建物の用途や建築上の確認をしている
□消防設備や避難経路を確認している
□改修工事の必要性を確認している
□横浜市への事前相談が必要か確認している
□その地域・時期で新規開設を進められるか確認している
□貸主・不動産会社に事業内容を伝えている
□契約から開業までの家賃・資金を考えている
複数事業を予定している場合には、
事業所間を無理なく移動できるか
も確認しておきましょう。
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「この物件で本当に予定しているサービスを始められるのか」
を確認するところから始めてみましょう。

行政書士田中穂積の視点

障害福祉サービスの開業では、
物件契約は大きな分岐点
だと考えています。
契約すると、
家賃。
保証金。
改修費。
設備費。
など、実際のお金が動き始めます。
しかし、指定申請を考えると、
物件だけでなく、
人員。
設備。
消防・建築。
自治体の指定・整備方針。
開業時期。
などもつながっています。
さらに複数の障害福祉サービスを運営するのであれば、
事業所間の距離。
職員の移動。
管理体制。
緊急時の対応。
まで考える必要があります。
行政書士として大切だと考えているのは、
契約後に申請書を作るだけではなく、契約前の段階から「この物件で指定・開業まで進められるか」を整理すること
です。
もちろん、
建築は建築の専門家。
消防は消防署等。
賃貸借契約は不動産の専門家。
それぞれの確認が必要になる場面があります。
だからこそ、
指定申請全体を見ながら、
「これは横浜市に確認する」
「これは消防署に確認する」
「これは建築の専門家に確認する」
と整理していくことにも意味があります。
まだ候補物件だからこそ、選択肢を残したまま確認できることがあります。

Q&A|横浜で障害福祉サービスの物件を探すとき

Q1.物件を契約してから横浜市に相談してもよいですか?
相談すること自体はできます。
ただし、契約後に設備基準などの問題が分かった場合、
追加工事。
間取り変更。
開業時期の延期。
場合によっては物件そのものの再検討。
が必要になる可能性があります。
できるだけ候補物件の段階から、必要な確認や事前相談を始めることをおすすめします。

Q2.以前も福祉施設だった物件なら、そのまま使えますか?
以前福祉関係の事業で使用されていたとしても、
今回予定しているサービスの指定基準を満たすとは限りません。
サービスの種類。
定員。
間取り。
設備。
現在の建物状況。
などを改めて確認する必要があります。
「以前使えていたから今回も大丈夫」とは考えず、
現在の計画に合わせて確認することが大切です。

Q3.B型とグループホームを両方運営する場合、近くにないといけませんか?
B型事業所とグループホームの間について、
全国一律に「何km以内」と決められているわけではありません。
ただし、実際の運営では、
職員の移動。
利用者支援。
情報共有。
緊急時の対応。
管理体制。
などを考える必要があります。
複数事業を一体的に運営する計画であれば、
👉 制度上の基準だけでなく、「実際に無理なく支援できる距離か」という実務面からも物件を考えることが大切です。

次回予告

物件選びの基本が整理できたら、
次はサービスごとの開業準備を具体的に見ていきます。
最初に取り上げるのは、
放課後等デイサービスです。
次回は、
横浜で放課後等デイサービスを開業するには|第3話
として、
・指定までの流れ
・人員配置
・児童発達支援管理責任者
・物件・設備
・横浜市への事前相談
・開業準備
などを整理します。
放課後等デイサービスは、
物件。
人員。
指定申請。
運営体制。
を並行して準備していく必要があります。
👉 次回は、「横浜で放デイを始めたい」と考えたとき、何から準備すればよいのかを具体的に見ていきます。

\ 障害福祉サービスの開業準備を進めたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、就労継続支援B型、共同生活援助(グループホーム)など、障害福祉サービス事業所の開業・運営についてご相談を承っています。
例えば、
・開業までのスケジュール整理
・指定申請に必要な要件の確認
・人員配置の確認
・候補物件・設備基準の整理
・行政への事前相談に向けた準備
・指定申請書類の作成・提出支援
・運営規程や各種書類の整備
・開業後の変更届・体制届・加算届
など、事業所の状況に応じて必要な支援を整理します。
障害福祉サービスの開業では、
物件、人員、設備、指定申請、運営準備
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「申請書を作ること」だけを目的にするのではなく、
開業までに何を、どの順番で確認すればよいのか
から一緒に整理しています。
また、障害福祉サービス事業者の皆さまには、日本版DBSをはじめ、開業後に関係する制度や運営体制の整備についても必要に応じてご案内しています。
👉 物件を契約する前に、まずその物件で予定している事業ができるかを整理するところから始めてみませんか。

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読み込み中…

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。