障害福祉事業所の人員基準で開業が止まる理由|第7話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
ここまで、
放課後等デイサービス。
児童発達支援。
就労継続支援B型。
共同生活援助(グループホーム)。
という4つのサービスを個別に見てきました。
今回からは、サービスの種類を超えて共通する、
開業実務
を見ていきます。
最初に取り上げるのは、
人員基準
です。
障害福祉サービスの開業では、
「必要な人数は採用できた」
と思っていても、
いざ指定申請の準備を始めると、
「この方は配置できません」
「常勤換算が足りません」
「この兼務では基準を満たしません」
「実務経験や研修の確認が必要です」
となることがあります。
👉 人員基準は、「何人いるか」だけではなく、「誰を・どの職種に・どの勤務形態で配置するか」で決まります。
今回は、開業前に押さえておきたい人員基準の基本を整理します。
人員基準は「人数合わせ」ではない
放デイ。
児発。
B型。
グループホーム。
それぞれのサービスには、必要な職種と配置基準があります。
たとえば、
管理者。
児童発達支援管理責任者。
サービス管理責任者。
児童指導員。
保育士。
職業指導員。
生活支援員。
世話人。
などです。
しかし、
「全部で5人いるから大丈夫」
とは判断できません。
・職種ごとに確認する
人員基準では、
どの職種として配置するのか。
その職種の要件を満たしているのか。
常勤なのか非常勤なのか。
専従なのか兼務なのか。
勤務時間は何時間なのか。
まで確認します。
👉 採用人数ではなく、「配置表として基準を満たしているか」を見ることが重要です。
「資格を持っている」だけでは判断できない
採用時によくあるのが、
「資格があるから配置できますよね?」
という考え方です。
しかし、職種によっては、
資格だけではなく、
実務経験。
研修修了。
これまで従事した業務。
勤務期間。
などを確認する必要があります。
・サビ管・児発管は特に早めに確認する
サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者は、事業所の支援を組み立てる中心的な職種です。
そのため、
「以前サビ管をしていた」
「研修を受けたことがある」
という情報だけで判断するのではなく、
現在の配置要件を満たしているか
を資料で確認する必要があります。
採用が決まってから要件を確認し、
配置できないと分かれば、
開業予定そのものがずれる可能性があります。
👉 重要職種ほど、採用契約の前から要件確認を進めることが大切です。
「常勤」と「常勤換算」は別の話
人員基準で混乱しやすい言葉の一つが、
常勤換算
です。
「常勤の職員が何人いるか」
と、
「常勤換算で何人になるか」
は同じではありません。
常勤換算は勤務時間で考える
常勤換算では、
事業所で定める常勤職員の勤務時間を基準として、複数の職員の勤務時間を合計して人数に換算します。
つまり、
非常勤職員がいるからといって、
必ず「1人」と数えられるわけではありません。
逆に複数の非常勤職員の勤務時間を合わせて、
一定の常勤換算数になることもあります。
国の基準解釈でも、従業者の員数について常勤換算による算定が用いられています。(厚生労働省)
👉 人員計画では、「採用人数」と「勤務時間」の両方を見る必要があります。
兼務できるかは職種と事業によって違う
開業時には、
「管理者とサビ管を同じ人ができないか」
「別の職種も兼務してもらえないか」
と考えることがあります。
人件費を考えれば当然の発想です。
しかし、
兼務できるかどうかは、一律ではありません。
「兼務できる」と「両方の人数に数えられる」は別
ここは特に注意したいところです。
一定の条件で職務を兼ねられる場合でも、
その勤務時間を両方の職種の常勤換算へそのまま算入できるとは限りません。
国の解釈通知でも、サービス管理責任者が他職種を兼務できる場合について、兼務先の常勤換算への算入に制限があるケースが示されています。(厚生労働省)
つまり、
「一人二役だから二人分」
とは考えられません。
👉 兼務は、職務として可能かだけでなく、人員基準上どう数えるのかまで確認することが大切です。
採用時期も開業スケジュールに影響する
人員基準を満たす職員が見つかっても、
「いつから働けるか」
も重要です。
たとえば、
現在の勤務先を退職するのが2か月後。
必要な研修がまだ終了していない。
勤務開始日が指定予定日より後になる。
となれば、予定していた開業日に人員基準を満たせない可能性があります。
・内定だけで安心しない
開業計画では、
誰を採用するのか。
だけでなく、
いつ今の職場を退職できるのか。
いつ入職するのか。
必要書類をいつそろえられるのか。
まで確認します。
👉 「人が見つかった日」ではなく、「必要な状態で配置できる日」から開業日を考えることが重要です。
退職や欠員は開業後にも起こる
人員基準は、
指定を受けるときだけ満たせばよいものではありません。
開業後も継続して満たす必要があります。
たとえば、
サビ管が退職した。
児発管が休職した。
職員の勤務時間が減った。
急な退職が重なった。
ということも考えられます。
一人に依存しすぎない
特に重要職種を一人だけに依存すると、
その人が退職したときに、
事業運営へ大きな影響が出る可能性があります。
そのため開業時から、
採用ルート。
資格者候補。
職員育成。
研修計画。
なども考えておきたいところです。
👉 人員基準は「開業の条件」ではなく、「事業を続けるための条件」でもあります。
人員配置表を早い段階で作る
人員基準を確認するときは、
頭の中だけで考えない方が分かりやすくなります。
おすすめなのが、
人員配置表
です。
・最低限書きたい項目
職員名。
職種。
資格・実務経験。
常勤・非常勤。
勤務曜日。
勤務時間。
専従・兼務。
勤務開始予定日。
を書き出します。
すると、
「この時間帯だけ足りない」
「この職員の兼務を確認する必要がある」
「サビ管の勤務開始が遅い」
といった問題が見えやすくなります。
👉 人員基準は、申請直前ではなく、採用を始める段階から表にして確認することが大切です。
今日の実務ワンポイント
これから障害福祉事業所を開業する方は、
採用予定者について、
①どの職種で配置するのか
②その職種の要件を満たしているか
③常勤・非常勤のどちらか
④何曜日・何時間勤務するのか
⑤他の職種と兼務するのか
の5つを書き出してみてください。
「資格を持っているから大丈夫」
「人数がそろったから大丈夫」
で止めないことがポイントです。
👉 採用予定者を、実際の人員配置表に落とし込んでみましょう。
まとめ
障害福祉サービスの人員基準では、
人数。
資格。
実務経験。
研修。
常勤・非常勤。
勤務時間。
兼務。
採用時期。
などを一緒に確認します。
そのため、
「必要な人数を採用した」
だけでは、開業できるとは限りません。
👉 大切なのは、「誰を採用したか」ではなく、「誰を・どの職種に・どの勤務形態で配置できるか」です。
そして人員基準は、
指定申請時だけではなく、
開業後も継続して守る必要があります。
人員の確認は、
申請書を作る直前ではなく、
採用計画の段階から始める
ことが大切です。
今日のチェックポイント
□必要な職種を確認している
□採用予定者の資格を確認している
□実務経験・研修要件を確認している
□常勤・非常勤を整理している
□勤務時間を確認している
□常勤換算が必要な職種を確認している
□兼務できるか確認している
□勤務開始日を確認している
□人員配置表を作っている
□退職・欠員が出た場合の対応も考えている
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「職種・要件・勤務時間・兼務」
の4つから確認してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
障害福祉サービスの開業相談では、
物件と同じくらい早い段階で確認したいのが、
人員です。
物件は条件が合わなければ別の物件を探すことができます。
しかし、
児発管
サビ管
その他の必要職種。
は、すぐに適任者が見つかるとは限りません。
さらに、
「採用できた」
と思っていても、
実務経験
研修
勤務時間
兼務
などを確認すると、予定していた配置ができないこともあります。
だからこそ、
行政書士として指定申請を支援するときには、
完成した申請書を見る前に、
人員配置が本当に成立しているかを確認すること
が重要だと考えています。
細かな常勤換算や兼務の判断は、サービスや職種、具体的な勤務体制によって変わります。
このシリーズではまず、
人員基準は「人数合わせではない」
という核心を押さえ、
個別の配置計算や実務上の判断については、今後の実務編でさらに詳しく取り上げていきたいと思います。
Q&A|障害福祉事業所の人員基準
Q1.必要人数を採用できれば人員基準は満たせますか?
人数だけでは判断できません。
職種
資格・実務経験
勤務時間
常勤・非常勤
兼務
などを確認する必要があります。
採用予定者を実際の人員配置表に当てはめて確認しましょう。
Q2.管理者やサビ管は他の仕事を兼務できますか?
一定の場合に兼務できることはあります。
ただし、サービスの種類や職種、利用者数、勤務体制などによって条件が異なります。
また、兼務できても、それぞれの職種の常勤換算に同じ勤務時間を使えるとは限りません。(厚生労働省)
具体的な配置計画で確認することが重要です。
Q3.人員基準はいつ確認すればよいですか?
採用を始める段階から確認することをおすすめします。
申請直前になって、
「この人を予定していた職種に配置できない」
と分かると、開業時期そのものを見直すことになりかねません。
求人を出す前から、必要な職種と要件を整理しておく
ことが大切です。
次回予告
人員配置を整理できたら、
次に必要になるのが、
指定後に実際に事業所を動かすためのルールづくり
です。
次回は、
「指定後に必要な運営規程・加算・体制届・減算とは|第8話」
として、
・運営規程
・重要事項説明書
・各種マニュアル
・加算
・体制届
・届出のタイミング
・指定申請時と開業後の違い
などを整理します。
👉 次回は、「指定を取れば準備は終わり」ではなく、指定後にどのような書類・届出・運営体制が必要になるのかを見ていきます。
\ 障害福祉サービスの開業準備を進めたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援、就労継続支援B型、共同生活援助(グループホーム)など、障害福祉サービス事業所の開業・運営についてご相談を承っています。
例えば、
・開業までのスケジュール整理
・指定申請に必要な要件の確認
・人員配置の確認
・資格・実務経験・研修要件の確認
・候補物件・設備基準の整理
・行政への事前相談に向けた準備
・指定申請書類の作成・提出支援
・運営規程や各種書類の整備
・開業後の変更届・体制届・加算届
など、事業所の状況に応じて必要な支援を整理します。
障害福祉サービスの開業では、
物件、人員、設備、指定申請、運営準備
がそれぞれ別々ではなく、互いに関係しています。
そのため当事務所では、
「申請書を作ること」だけを目的にするのではなく、
開業までに何を、どの順番で確認すればよいのか
から一緒に整理しています。
👉 採用を進める前に、予定している人員配置で本当に指定基準を満たせるのか、一度整理してみませんか。
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クイズ!障害福祉事業所の人員基準で開業が止まる理由
前回 横浜で障害者グループホームを開設するには|第6話
次回 指定後に必要な運営規程・加算・体制届・減算とは|第8話
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。