
~予約件数ではなく、宿に残る利益で販売経路を考える~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
ここ数回は、
外国人スタッフの雇用や在留資格、定着、更新、永住についてお話ししてきました。
宿を長く続けるためには、
人材だけでなく、収益構造を整えることも大切です。
予約は入っている。
客室も埋まっている。
現場も忙しい。
それでも、
「思ったほど利益が残らない」
ということがあります。
その原因の一つが、
OTAへの依存です。
今回は、
OTAを使うか使わないかではなく、
👉OTAと自社予約をどう使い分け、宿に利益を残すか
について考えます。
- 1. OTAは必要な販売経路です
- 2. OTA依存は予約比率だけでは判断できません
- 3. まずは予約経路別の手取り額を確認する
- 4. OTAを減らすのではなく、役割を決める
- 5. 繁忙日まで安売りしない
- 6. 自社サイトが使いにくくないか確認する
- 7. 一度泊まったお客様との関係を育てる
- 8. 宿独自の体験をつくる
- 9. サイトコントローラーは道具です
- 10. 毎月確認したい5つの数字
- 11. 今日の実務ワンポイント
- 12. まとめ
- 13. 今日のチェックポイント
- 14. 行政書士田中穂積の視点
- 15. Q&A|OTA依存と旅館・ホテルの収益
- 16. 次回予告
- 17. \ 旅館・ホテルの開業後の運営を見直したい方へ /
- 18. クイズ!OTA依存と宿に残る利益
OTAは必要な販売経路です
OTAとは、
宿泊施設を検索・比較し、そのまま予約できるオンライン予約サイトです。
OTAには、
・多くの旅行者へ宿を知ってもらえる
・開業直後でも予約を獲得しやすい
・海外や遠方の旅行者へ販売できる
・空室を販売しやすい
という大きな利点があります。
なお、宿泊施設の販売方法を考えるうえでは、OTAだけでなく、
旅行会社との契約や旅行業登録の仕組みを理解しておくことも大切です。
旅行業登録の種類や区分については、以前の記事でも整理しています。
▶ 旅行業登録の種類と区分の選び方
特に、
新しく開業した宿。
知名度の低い宿。
外国人旅行者を受け入れたい宿。
こうした施設にとって、
OTAは重要な集客手段です。
問題はOTAを使うことではありません。
👉予約の大部分をOTAに頼り、自社で販売方法を選べなくなること
です。
予約が増えても、利益が増えるとは限りません
OTA経由の予約には、
手数料や販売費用がかかります。
さらに、
・割引プラン
・会員向け価格
・ポイント負担
・キャンペーン参加
・広告掲載
などによって、
宿に残る金額が少なくなることがあります。
同じ1泊2万円の予約でも、
自社サイト。
電話。
国内OTA。
海外OTA。
旅行会社。
どこから予約が入ったかによって、
最終的に宿へ残る金額は異なります。
そのため、
予約件数や売上だけでなく、
👉販売経路ごとの手取り額
を確認することが大切です。
OTA依存は予約比率だけでは判断できません
OTA予約が多くても、
閑散期の空室を効率よく販売できている。
海外から新しいお客様を呼び込めている。
OTAで知ったお客様が次回は直接予約している。
このような場合は、
OTAが有効に機能しています。
一方で、
・繁忙日まで大幅な割引をしている
・直接予約を選ぶ理由が見えにくい
・複数サイトの空室数を手作業で更新している
・一度宿泊したお客様が次回予約につながっていない
という状態なら、
販売方法を見直す必要があります。
見るべきなのは、
・販売経路別の売上
・手数料や広告費
・キャンセル率
・平均宿泊単価
・直接予約とリピーターの割合
です。
まずは予約経路別の手取り額を確認する
難しい経営分析をする必要はありません。
月ごとに、
・予約件数
・宿泊売上
・販売手数料
・割引やポイント負担
・キャンセル件数
・宿に残った金額
・新規客かリピーターか
を一覧にします。
例えば、
OTAからの売上が100万円。
自社予約の売上が50万円。
という数字だけを見ると、
OTAの方が重要に見えます。
しかし、
手数料や割引負担を差し引くと、
一件当たりで残る利益は違う可能性があります。
さらに、
直接予約のお客様が連泊し、
食事や館内サービスを利用すれば、
宿全体への貢献も大きくなります。
👉売上額ではなく、実際に残る利益を見る
ことが重要です。
OTAを減らすのではなく、役割を決める
OTA依存対策というと、
OTA予約を減らそうと考えがちです。
しかし、
急に販売を止めれば、
宿の露出や予約が減る可能性があります。
大切なのは、
👉どのOTAを何のために使うか
を決めることです。
例えば、
・新規のお客様に知ってもらう
・海外旅行者へ販売する
・閑散期の空室を埋める
・特定の客層へ販売する
・周辺の価格を確認する
といった役割があります。
すべてのOTAへ、
同じ客室、同じ料金、同じプランを出し続ける必要はありません。
繁忙日まで安売りしない
週末。
連休。
祭りやイベントの日。
桜や紅葉の時期。
こうした需要の高い日に、
大幅な割引を続けると、
利益を取り逃すことがあります。
閑散日はOTAの集客力を利用する。
繁忙日は割引を抑える。
自社予約向けの在庫も残す。
このように、
日程ごとに販売方法を変えることが大切です。
直接予約は、最安値だけでは育ちません
直接予約を増やす方法は、
料金を安くすることだけではありません。
例えば、
・チェックイン時間を相談できる
・部屋や食事の希望を伝えやすい
・地域情報を事前に案内してもらえる
・連泊時の過ごし方を提案してもらえる
・記念日対応を相談できる
・次回利用できる特典がある
といったことも、
直接予約の価値になります。
OTAは比較のしやすさが強みです。
自社予約は、
宿と直接つながれることが強みです。
自社サイトが使いにくくないか確認する
直接予約が増えない原因は、
自社サイトにあるかもしれません。
・予約ボタンが見つからない
・空室状況が分からない
・スマートフォンで見にくい
・プランの違いが分からない
・料金やキャンセル条件が分かりにくい
・電話でしか予約できない
このような状態では、
お客様は途中でOTAへ戻ってしまいます。
直接予約を増やしたい場合は、
👉スマートフォンで迷わず予約できるか
を確認してみましょう。
一度泊まったお客様との関係を育てる
OTAで予約したお客様も、
次回は直接予約してくれる可能性があります。
宿泊中の接客。
地域の案内。
チェックアウト時の声かけ。
宿泊後のお礼。
次の季節の案内。
こうした積み重ねが、
再訪につながります。
ただし、
メール配信などを行う場合は、
本人の同意や個人情報の適切な管理が必要です。
直接予約を増やすことよりも、
お客様との信頼を守ることが優先されます。
宿独自の体験をつくる
OTAでは、
料金、立地、設備、口コミが比較されます。
比較できる条件だけで競争すると、
価格競争に巻き込まれやすくなります。
そこで大切なのが、
・地域の食材を使った朝食
・まち歩き
・農業や漁業体験
・古民家での文化体験
・周辺飲食店との連携
・連泊者向けの過ごし方提案
など、
その宿でしかできない体験です。
宿泊業は、
部屋を販売するだけでなく、
地域の魅力を旅行者へ伝える仕事でもあります。
サイトコントローラーは道具です
複数のOTAと自社予約を管理するため、
サイトコントローラーを利用する宿もあります。
在庫や料金を一元管理できれば、
二重予約を防ぎ、作業時間を減らせます。
しかし、
導入しただけで利益が増えるわけではありません。
・どのサイトへ何室出すか
・どの日に料金を変えるか
・どのプランをどこで販売するか
・キャンセル条件をどうするか
という運用ルールが必要です。
システムは、
販売戦略を実行するための道具です。
毎月確認したい5つの数字
開業後は、
次の5つを確認してみましょう。
1.予約経路別の売上
どこから、いくら売上があったか。
2.予約経路別の販売費用
手数料、広告費、ポイント負担など。
3.直接予約比率
件数だけでなく、売上金額でも確認します。
4.リピーター比率
一度宿泊したお客様が再訪しているか。
5.キャンセル率
販売経路やプランによって違いがないか。
同じ方法で毎月確認すれば、
何を見直すべきかが分かりやすくなります。
今日の実務ワンポイント
OTA依存を見直すときは、
「OTA予約を何件減らすか」
から考えないことです。
まず確認するのは、
👉どの予約経路から、いくら利益が残っているか
です。
OTAは新しいお客様との出会いに使う。
自社予約は、
リピーターや宿独自の体験を育てるために使う。
それぞれの役割を決めることで、
OTAを活用しながら、
依存しすぎない販売体制をつくることができます。
まとめ
OTAは、
旅館やホテルにとって重要な販売経路です。
問題は、
OTAを使うことではありません。
どのOTAを使うのか。
何のために使うのか。
どのくらい利益が残っているのか。
次回の直接予約へどうつなげるのか。
こうした販売経路全体を考えることが重要です。
OTAは集客の入口。
自社サイトは、
宿との関係を育てる場所。
予約が入っていることだけに安心せず、
👉忙しさに見合う利益が宿に残っているか
を確認する。
それが、
開業後の宿を長く続けるために必要な視点です。
今日のチェックポイント
□ OTAごとの売上を確認している
□ 手数料や割引を差し引いた金額を把握している
□ 繁忙日と閑散日で販売方法を変えている
□ 自社サイトをスマートフォンから確認した
□ 直接予約ならではの価値を用意している
□ リピーターと直接予約の割合を確認している
まずは、
一か月分の予約経路と手取り額を整理してみましょう。
行政書士田中穂積の視点
私は旅行業に37年間携わり、
旅行会社側から多くの旅館やホテルを見てきました。
旅行会社やOTAは、
宿と旅行者をつなぐ大切な存在です。
一方で、
販売経路を一つに頼りすぎれば、
条件変更や市場の変化によって、
経営が大きく影響を受けます。
大切なのは、
OTAに売ってもらう宿になるのか。
OTAを使って、自ら販売する宿になるのか。
という違いです。
自分の宿に合うお客様は誰か。
どの時期に来てほしいのか。
何を体験してほしいのか。
もう一度来てもらうために何ができるのか。
そこまで考えて販売経路を選ぶことが、
宿の利益と地域の価値を守ることにつながります。
旅館業許可を取得するだけでなく、
開業後の運営課題を一緒に整理することも、
👉行政書士としての私の役割だと考えています。
Q&A|OTA依存と旅館・ホテルの収益
Q1.OTA経由の予約は少ないほどよいのでしょうか。
A 多いことだけで問題とはいえません。
新規客や海外客との接点として有効な場合もあります。手数料と宿に残る金額を確認し、目的を持って利用することが大切です。
Q2.直接予約を増やすには、自社サイトを最安値にする必要がありますか。
A 値引きだけが直接予約の魅力ではありません。
事前相談、地域情報、記念日対応、連泊提案、次回特典など、宿と直接つながる価値を用意する方法もあります。
Q3.小規模な旅館でも分析は必要ですか。
A 小規模な宿ほど、一件の予約が利益へ与える影響は大きくなります。
まずは、予約経路、売上、販売費用、キャンセル、直接予約、リピーターを月ごとに整理してみましょう。
次回予告
次回は、
「口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし」
について考えてみたいと思います。
口コミでは、
「接客が丁寧だった」
「食事がおいしかった」
「また利用したい」
と評価されている。
それでも、
実際には再訪や次の予約につながっていない。
そのような宿も少なくありません。
満足してもらうことと、
もう一度選んでもらうことは、
同じではありません。
宿泊後に、
宿のことを思い出してもらうきっかけがあるか。
季節が変わったときに、
もう一度訪れる理由を伝えられているか。
次回予約の方法が、
お客様にとって分かりやすくなっているか。
一度宿泊したお客様との関係が、
チェックアウトで途切れていないか。
次回は、
口コミ評価は高いのに再訪につながらない宿が見落としやすい点と、
「満足した」で終わらせず、次の予約につなげるための考え方について、
旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。
\ 旅館・ホテルの開業後の運営を見直したい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
旅館業許可やホテル開業支援だけでなく、
開業後の運営や法令対応についてもご相談を承っています。
また、
旅館・ホテル事業者の皆さまへ、
「旅館・ホテル運営チェックリスト」
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