30.日本版DBS対応を子どもの安全を守る組織づくりへ

30.日本版DBS対応を子どもの安全を守る組織づくりへ

~制度への対応で終わらせないために~

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

これまで29回にわたり、日本版DBSについて考えてきました。
日本版DBSとは何か。
どの事業者が対象になるのか。
犯罪事実確認。
法人と事業所の役割分担。
社内規程。
個人情報管理。
採用・配置・研修。
制度の全体像から、現場で必要になる実務まで一つずつ整理してきました。
そして、こども性暴力防止法の施行が近づいています。
義務対象となる事業者の皆さま。
準備はどこまで進んでいるでしょうか。
認定こども園、指定障害児通所支援事業は、この法律の義務対象です。
放課後等デイサービスや児童発達支援などを運営する事業者にとって、
日本版DBSへの対応は「できれば取り組むもの」ではありません。
👉法律に基づいて対応しなければならない事項です。

こども家庭庁でも、義務対象事業者について、施行に向けた事業者情報の登録やシステム利用の準備を進めています。
今回はシリーズ最終話として、
日本版DBSへの対応を、子どもの安全を守る組織づくりへどうつなげるか
を考えてみたいと思います。

「犯罪事実確認をすれば終わり」ではありません

日本版DBSという名称から、
「職員の犯罪歴を確認する制度」
という印象を持つ方も多いかもしれません。
しかし、制度が求めているのは犯罪事実確認だけではありません。
対象事業者には、子どもと接する従事者への研修など、児童対象性暴力等を防止するための措置が求められています。
こども家庭庁も従事者向けの標準的な研修教材を公開しています。
つまり、
犯罪事実確認をした。
規程を作った。
研修を一度行った。
というだけでは、本当の意味での安全管理にはつながりません。
大切なのは、
👉制度で求められている対応を、日常の運営に組み込むこと
です。

まず「自分の事業所は大丈夫か」を確認する

施行前に一度、事業所の現状を確認してみましょう。
例えば、
対象となる職員を把握しているか。
犯罪事実確認を誰が担当するか決まっているか。
採用時の流れを見直しているか。
確認結果を誰が扱うか決まっているか。
情報管理規程を整えているか。
職員研修をどのように行うか決まっているか。
相談・報告窓口を職員が知っているか。
子どもと一対一になりやすい場面を把握しているか。
こうしたことを一つずつ確認します。
すべてを一度に完璧にする必要はありません。
しかし、
誰がやるのか分からない。
まだ何も決めていない。
という状態のまま施行を迎えることは避けたいところです。
こども家庭庁は、施行準備や法に基づく措置に活用できる各種ひな型・参考例を公開しています。
まずは、現在できていることと、これから整えることを分けてみましょう。

子どもの安全は「担当者一人」では守れない

日本版DBS担当者を一人決めれば安心、というものでもありません。
実際の事業所では、
法人代表者。
管理者。
採用担当者。
児童発達支援管理責任者。
現場の職員。
送迎担当者。
など、多くの人が子どもの支援に関わります。
安全管理も同じです。
採用担当者だけが制度を知っていても足りません。
管理者だけが相談窓口を知っていても足りません。
現場の職員が、
「この対応でよいのだろうか」
「少し気になることがある」
と思ったとき、ためらわず相談できることが大切です。
👉安全を守る仕組みは、一人の担当者ではなく組織全体でつくるものです。

「気になる」を言える職場にする

制度や規程が整っていても、現場で声が上がらなければ十分に機能しません。
例えば、
送迎中の対応が少し気になった。
個別支援の方法について確認したい。
子どもから気になる話を聞いた。
同僚の対応について判断に迷った。
こうした小さな違和感を、
「大したことではないから」
と流さないことが重要です。
相談した職員が責められない。
管理者が話を聞く。
必要に応じて記録する。
法人内で情報を共有する。
この積み重ねが、安全な事業所づくりにつながります。
日本版DBSへの対応をきっかけに、
相談しやすい職場になっているか
も見直してみてはいかがでしょうか。

子どもを守ることと職員を守ることは両立します

安全対策を強化すると、
「職員を疑う制度になるのではないか」
と感じることもあるかもしれません。
しかし、明確なルールがあることは職員を守ることにもつながります。
例えば、
一対一になる場合のルール。
身体介助の方法。
相談を受けた場合の報告方法。
写真や端末の取扱い。
職員間の情報共有。
が明確であれば、
「自分で判断しなければならない」
という負担を減らせます。
問題が起きてから、
「どうして報告しなかったのか」
と職員個人へ責任を求めるのではなく、
👉迷ったときに相談できる仕組みを先に作っておく。
これも組織としての安全管理です。

日本版DBS対応を一度きりにしない

施行前に規程を作った。
研修をした。
担当者を決めた。
それで完成ではありません。
職員は入れ替わります。
人事異動もあります。
事業所が増えることもあります。
支援方法も変わります。
そのたびに、
対象者。
配置。
研修。
情報管理。
相談体制。
を確認する必要があります。
新しい職員が入ったとき。
配置が変わったとき。
研修内容を見直すとき。
制度改正があったとき。
定期的に確認する仕組みをつくっておくことが重要です。
👉日本版DBS対応は「施行日に間に合わせる作業」ではなく、その後も続く事業所運営の一部です。

今日の実務ワンポイント

施行準備として、まず次の5項目だけ確認してみてください。
①対象者
誰について犯罪事実確認が必要か。
②担当者
誰が手続と情報管理を担当するか。
③規程
必要な社内規程・運用ルールが整っているか。
④研修
誰に、いつ、どのような研修を行うか。
⑤相談
現場で気になることがあったとき、誰へ報告するか。
この5つのうち、
「まだ決まっていない」
ものがあれば、そこから準備を始めます。

まとめ

日本版DBSへの対応は、事業者にとって新しい負担に感じられるかもしれません。
しかし、この制度の目的は、
書類を増やすことでも、
犯罪事実確認をすること自体でもありません。
子どもへの性暴力を防ぎ、子どもが安心して過ごせる環境をつくること
です。
そのためには、
犯罪事実確認。
採用。
配置。
研修。
情報管理。
相談・報告。
を一つの仕組みとしてつなげる必要があります。
シリーズ最後に改めてお伝えしたいことは、
👉日本版DBSへの対応は義務だから行う。それと同時に、その対応を子どもの安全を守る組織づくりへつなげていく。
ということです。
制度への対応と、安全な事業所づくり
この二つを別々に考えないことが大切だと思います。

今日のチェックポイント

□ 自分の事業が義務対象か確認している
□ 対象となる職員を把握している
□ 犯罪事実確認の担当者を決めている
□ 採用・配置の流れを整理している
□ 情報管理規程を整えている
□ 確認結果を見る人を限定している
□ 職員研修の方法を決めている
□ 相談・報告先を職員へ伝えている
□ 子どもと一対一になりやすい場面を把握している
□ 定期的に運用を見直す方法を決めている
すべてにチェックが付かなくても構いません。
ただ、
「まだ何も決めていない」
という場合には、そろそろ準備を具体化する必要があります。

行政書士田中穂積の視点

30話にわたって日本版DBSを取り上げてきました。
制度を調べれば調べるほど感じるのは、
日本版DBSは単なる「犯罪歴確認制度」ではない
ということです。
法律。
行政手続。
社内規程。
採用。
人員配置。
研修。
情報管理。
現場での相談。
すべてがつながっています。
そして、それを実際に運用するのは事業者の皆さんです。
行政書士としてできることは、
制度を説明するだけではありません。
事業所の運営を確認し、
どこに準備が必要なのか整理する。
必要な規程や書類を整える。
法人と事業所の役割を整理する。
行政手続につなげる。
そうした実務を一つずつ形にしていくことだと考えています。
制度への対応を、
「やらなければならない仕事」
だけで終わらせるのではなく、
子どもにも、保護者にも、そこで働く職員にも安心できる事業所をつくる機会
にしていただければと思います。

Q&A|シリーズ最終回

Q1.義務対象事業者は、日本版DBSへの対応を必ず行う必要がありますか。
A はい。
指定障害児通所支援事業などは義務対象とされており、法に基づく措置への対応が必要です。
放課後等デイサービスについても、こども家庭庁のQ&Aで指定障害児通所支援事業は義務対象であることが明示されています。
Q2.施行前にまず何から確認すればよいですか。
A 最初に、対象事業、対象職員、担当者、情報管理、研修、相談・報告体制の現状を確認することをおすすめします。
こども家庭庁では、施行準備に使える各種ひな型や参考例のほか、義務対象事業者向けの事業者情報一括登録に関する案内も公開しています。
Q3.規程や犯罪事実確認の準備ができれば対応は終わりですか。
A いいえ。
研修や日常の相談・報告、採用・配置、情報管理なども含め、継続して運用していくことが重要です。
日本版DBSを事業所の日常的な安全管理へ組み込んでいくことが大切です。

日本版DBSシリーズをお読みいただきありがとうございました

第1話からここまで、日本版DBSについて30回にわたり考えてきました。
長いシリーズとなりましたが、お読みいただいた皆さまにとって、
制度を知る。
自分の事業との関係を確認する。
必要な準備を考える。
そのきっかけになっていれば幸いです。
日本版DBSシリーズは今回で終了します。
しかし、
子どもを守る事業所づくりは、ここからも続きます。
そして次回からは、少し視野を広げます。

次回から新シリーズ
横浜で始める障害福祉サービスの開業・運営実務
をスタートします。
放課後等デイサービス。
児童発達支援。
就労継続支援B型。
障害者グループホーム。
こうした障害福祉サービス事業を始めるとき、
何から準備すればよいのか。
物件を契約する前に何を確認するのか。
人員はいつから確保するのか。
行政への相談はいつするのか。
指定申請後は何が必要なのか。
新シリーズでは、
👉横浜での開業・指定申請を一つの具体例として取り上げながら、他の地域で障害福祉サービス事業を始める方にも参考になる実務のポイント
を、開業準備から運営まで順番に整理していきます。
地域によって指定申請の手続や行政との事前相談などに違いはありますが、
物件、人員、指定基準、開業準備、指定後の運営を順番に考える
という基本的な視点は共通しています。
新シリーズ第1話は、
横浜で障害福祉サービスを開業するには
です。
👉日本版DBSでは、「子どもを守るための制度」について考えてきました。
次のシリーズでは少し視野を広げ、
その制度を実際に運用する障害福祉事業所そのものを、どうつくり、どう続けていくか
を考えていきます。

\ 日本版DBSの施行準備を確認したい事業者の皆さまへ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
放課後等デイサービス、児童発達支援など、子どもと関わる事業者の日本版DBS対応についてご相談を承っています。
例えば、
・対象事業・対象職員の整理
・法人と事業所の役割分担
・社内規程・情報管理規程の整備
・採用・配置の運用整理
・研修・相談・報告体制の整理
・施行前の対応状況確認
など、事業所の状況に応じて必要な準備を整理します。
また、
日本版DBS対応チェックリスト
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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。