観光協会・DMO・地域事業者と観光商品をつくるには|第9話

観光協会・DMO・地域事業者と観光商品をつくるには|第9話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
「小さな旅行会社は何を売る?|大手と競わない旅行商品のつくり方」
として、
地域。
テーマ。
法人・団体。
インバウンド。
など、小さな旅行会社だからこそ持てる強みを考えました。

今回は、その旅行商品を、
地域の事業者と一緒につくる場合
を考えます。
観光商品は、一社ですべてを用意する必要はありません。
宿泊施設。
飲食店。
交通事業者。
体験事業者。
観光協会。
DMO。
自治体。
などが連携することで、一つの地域を魅力的な旅行商品として見せることもできます。
しかし、
「みんなで地域を盛り上げよう」
だけでは、実際の販売は始まりません。
👉 地域連携を観光ビジネスにするには、「誰が何をするのか」を具体的に決める必要があります。

地域にはすでに「商品になる素材」がある

地域には、
宿泊。
食。
歴史。
文化。
自然。
交通。
体験。
人。
など、さまざまな観光資源があります。
問題は、
それぞれが別々に存在していることです。
たとえば、
泊まる場所はある。
食べる場所もある。
面白い体験もある。
でも、
旅行者から見ると、
どう組み合わせて利用すればよいのか分からない
ということがあります。
そこで、
「宿泊+食」
「まち歩き+体験」
「交通+観光施設」
といった形でつなぐことで、
「地域にあるもの」が「旅行商品」に近づいていきます。
👉 地域連携の役割は、新しいものを全部つくることではなく、すでにある魅力をつなぐことでもあります。

観光協会やDMOは何をするのか

地域の商品づくりでは、
観光協会やDMO(Destination Marketing / Management Organization)
が関わることがあります。

地域の事業者を集める。
観光資源を発掘する。
商品づくりを支援する。
情報を発信する。
旅行者のデータを集める。
など、地域全体をつなぐ役割が期待されます。
しかし、
ここで注意したいのが、
「商品を企画すること」と「旅行商品を販売すること」は同じではない
という点です。
地域の魅力を集め、
モデルコースを作ることと、
実際に旅行者と契約し、宿泊や交通を手配して販売することは別の問題です。
👉 観光協会やDMOが関わる場合も、「誰が最終的に販売するのか」を明確にすることが重要です。

最初に決めたいのは「誰が企画するか」

地域連携では、
最初に企画主体を決めます。
観光協会なのか。
旅行会社なのか。
宿泊事業者なのか。
地域商社なのか。
複数事業者による共同企画なのか。
ここが曖昧だと、
話し合いは進んでも、
商品が完成しないことがあります。

企画する人が全体をつなぐ

誰を呼びたいのか。
何を体験してもらうのか。
どの事業者を組み合わせるのか。
いくらの商品にするのか。
どのように販売するのか。
まで全体を整理する人が必要です。
👉 地域連携では、「参加者を集める」だけでなく、「全体を設計する役割」を決めることが大切です。

「誰が売るのか」を決める

次に重要なのが、
販売主体
です。
地域の商品が完成しても、
旅行者がどこで予約し、
誰と契約し、
誰へ代金を支払うのか
が決まっていなければ販売できません。
たとえば、
旅行会社が販売する。
宿泊施設が自社サービスとして販売する。
体験事業者が体験部分だけ販売する。
など、いくつかの方法があります。
ここで、
宿泊。
交通。
他社サービスの手配。
などが含まれると、旅行業法との関係も確認する必要があります。
👉 「誰が販売するか」を決めることは、旅行業登録の要否を考えるうえでも重要です。

契約とお金の流れを整理する

地域連携で特に曖昧になりやすいのが、
お金の流れ
です。
旅行者は誰に支払うのか。
販売者は各事業者へいくら支払うのか。
手数料は誰が受け取るのか。
キャンセルが出たら誰が返金するのか。
といったことを決めます。
「みんなで売上を分ける」だけでは足りない
実際の事業では、
販売価格。
仕入価格。
手数料。
支払時期。
キャンセル料。
などを決める必要があります。
また、
事故やトラブルが起きたときに、
誰が旅行者へ対応するのか
も重要です。
👉 地域連携では、「商品内容」だけでなく、「契約・お金・責任」まで決めて初めて事業になります。

旅行会社が「つなぐ役割」を持つこともできる

旅行会社の役割は、
既製の商品を販売するだけではありません。
宿泊。
交通。
体験。
飲食。
地域資源。
をつなぎ、
旅行者が購入できる形に整えることもできます。
特に小さな旅行会社にとって、
👉地域の事業者と一緒に商品をつくることは、
大手とは違う強みになり得ます。
地域をよく知り、
事業者と直接話し、
細かな商品を作る。
こうした仕事は、
地域密着型の旅行会社と相性があります。
👉 旅行会社が「地域の商品を売る会社」ではなく、「地域の商品をつくる会社」になることもできます。

地域連携で失敗しやすいのは役割が曖昧なとき

地域連携では、
「みんなで協力する」
こと自体は難しくありません。
難しいのは、
実際に商品を動かす段階です。
たとえば、
誰が予約を管理するのか決まっていない。
料金が決まらない。
キャンセル対応が曖昧。
問い合わせ先が分からない。
販売する主体が決まっていない。
となると、
せっかく作った商品が販売まで進まないことがあります。
👉 地域連携では、「誰かがやるだろう」を残さないことが大切です。

今日の実務ワンポイント

地域で観光商品を作る場合は、
まず次の5つを書き出してみてください。
①誰が企画するのか
②誰がサービスを提供するのか
③誰が販売するのか
④誰が旅行者と契約するのか
⑤誰が代金を受け取るのか
この5つが決まると、
旅行業登録が必要なのか。
どの事業者と契約が必要なのか。
お金をどう流すのか。
が見えやすくなります。
👉 「地域で一緒にやる」を、「誰が何をする」に変えてみましょう。

まとめ

観光協会。
DMO。
宿泊施設。
飲食店。
交通事業者。
体験事業者。
旅行会社。
それぞれが持つ強みをつなぐことで、
地域ならではの観光商品を作ることができます。
しかし、
「連携すること」
そのものが目的ではありません。
誰が企画するのか。
誰が販売するのか。
誰が契約するのか。
誰がお金を受け取るのか。
まで決めて、
初めて旅行者が購入できる商品になります。
👉 地域連携を観光ビジネスに変える鍵は、「一緒にやること」ではなく、「役割を決めて実際に売れる仕組みにすること」です。

今日のチェックポイント

□商品づくりの中心となる事業者を決めている
□参加する事業者の役割を整理している
□誰が旅行商品を販売するか決めている
□旅行者が誰と契約するか整理している
□誰が代金を受け取るか決めている
□各事業者への支払方法を考えている
□キャンセル時の対応を決めている
□問い合わせ・トラブル時の窓口を決めている
□旅行業登録が必要か確認している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「企画・販売・契約・代金」
の4つを誰が担当するのか整理してみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて感じるのは、
地域には魅力があっても、それがそのまま旅行商品になるわけではない
ということです。
宿。
飲食店。
交通。
体験。
それぞれが魅力的でも、
旅行者が自分ですべてを探し、予約しなければならない状態では、
一つの商品にはなっていません。
そこを、
誰に。
何を。
どう組み合わせて。
どのように販売するのか。
まで整理することで、
地域の魅力を旅行商品に変えることができます。
一方、行政書士として見ると、
旅行業登録。
契約関係。
販売主体。
各事業者の許認可。
なども確認する必要があります。
👉 観光の企画と法務を別々に考えず、「実際に販売できるところまで」仕組みを整える。
これが、地域連携を観光ビジネスへ変えるために重要だと考えています。

Q&A|地域連携と観光商品づくり

Q1.観光協会やDMOが旅行商品を作れば、そのまま販売できますか?
企画することと、旅行商品として販売することは別に考える必要があります。
商品内容や契約・手配の方法によっては、旅行業法上の確認が必要になります。
誰が旅行者と契約し、誰が販売・手配するのかを整理しましょう。
Q2.旅行会社は地域連携でどんな役割を持てますか?
宿泊・交通・体験などを組み合わせ、旅行者が購入できる形に商品化する役割を持つことができます。
また、
予約。
販売。
手配。
旅行者対応。
などを担うことで、地域事業者と旅行者をつなぐ役割も期待できます。
Q3.地域事業者との連携では契約書も必要ですか?
取引内容によりますが、
料金。
役割。
支払条件。
キャンセル。
責任分担。
などを明確にしておくことは重要です。
口頭だけで進めず、誰が何を担当するのかを文書で整理しておくことが、トラブル防止にもつながります。

次回予告

地域で観光商品を作ると、
次に考えたいのが、
海外からの旅行者をどう受け入れるか
です。
インバウンドというと、
ホームページを外国語にする。
英語を話せるスタッフを置く。
といった対応を思い浮かべるかもしれません。
しかし実際には、
予約。
決済。
案内。
食事。
緊急時対応。
文化・習慣の違い。
外国人スタッフを雇用する場合の在留資格。
など、受入れ全体を考える必要があります。
次回は、
「インバウンド向け観光事業を始める前に整えたいこと|第10話」
として、
外国人旅行者を受け入れるための実務を整理します。
👉 次回は、「外国語対応」だけではない、インバウンド観光事業の受入れ体制について考えます。

\ 地域の観光商品づくり・旅行業を考えている方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、旅行業・宿泊業・地域体験などの観光ビジネスについて、事業内容の整理から必要な許認可まで一体で支援しています。
例えば、
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・旅行業登録申請
・地域観光商品の事業スキーム整理
・観光協会・地域事業者との役割整理
・旅行商品の販売方法の整理
・宿泊・体験・交通を組み合わせる場合の許認可確認
・行政への事前相談
・開業までのスケジュール整理
など、計画段階に応じて必要な準備を整理します。
地域観光では、
宿泊・交通・体験・飲食・旅行業・地域連携
が互いにつながっています。
そのため、
「誰と組むか」
だけではなく、
誰が企画し、誰が販売し、誰が契約し、誰がお金を受け取るのか
から一緒に整理します。
👉 地域の魅力を、「紹介する観光資源」から「実際に購入できる観光商品」へ変えるところから整理してみませんか。

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前回 小さな旅行会社は何を売る?|大手と競わない旅行商品のつくり方|第8話
次回 インバウンド向け観光事業を始める前に整えたいこと|第10話
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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。