ホテルのフロントで地域体験を予約してあげたい|どこまでならできる?|第3話

ホテルのフロントで地域体験を予約してあげたい|どこまでならできる?|第3話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
「地域のお店を紹介して、予約につながったら手数料をもらいたい」
というケースから、
「紹介」という名前ではなく、
誰が予約を受けるのか。
誰が契約するのか。
誰がお金を受け取るのか。
を見ることが大切だとお話ししました。

では今回は、もう少し日常的な場面でみてみます。
ホテルのフロントで宿泊客から、
「明日、近くで何か体験できませんか?」
と聞かれました。
スタッフが、
「この陶芸体験が楽しくておすすめですよ」
と案内する。
ここまでは自然なおもてなしです。
では、
「予約もしてもらえますか?」
と言われて、代わりに予約したら?
さらに、
体験料もホテルで受け取ったら?
キャンセルになったとき、ホテルが返金まで対応したら?
ここで、
「どこまでならホテルのサービスとしてやっていいの?」
という疑問が出てきます。
今回の答えを先にお伝えします。
👉 地域体験の予約を手伝っただけで、直ちに旅行業になるわけではありません。
ただし、
予約・代金・契約・キャンセル対応までホテルが抱え込むと「ホテルは何をしているのか」を整理する必要が出てきます。
今回は、その境目を考えてみましょう。

1.「おすすめですよ」と案内するだけなら?

まず一番シンプルなケースです。
宿泊客に、
「近くにこんな体験があります」
と案内する。
パンフレットを渡す。
体験事業者のホームページを紹介する。
QRコードを案内する。
そして旅行者自身が体験事業者へ申し込み、直接支払う。
この場合、ホテルは基本的に、
地域情報を案内する役割
です。
地域のお店や体験を紹介すること自体は、宿泊客の満足度を高める大切なサービスでもあります。
👉 これは「紹介するだけ」であることを確認しましょう。

2.「代わりに予約しておきます」で何が変わる?

次は、
宿泊客から頼まれて、
ホテルスタッフが体験施設へ電話をするケースです。
「明日の10時に2名、空いていますか?」
「では予約をお願いします」
ここまで進むと、単なる情報提供よりホテルの関与は深くなります。
ただし、
陶芸。
料理体験。
文化体験。
観劇。
施設入場。
など、運送・宿泊以外のサービスだけを単独で手配することは、旅行業に該当しない例として観光庁から示されています。
ですから、
「体験を予約した=すぐ旅行業」
ではありません。
ここは必要以上に怖がる必要はありません。

3.でも「誰との契約なのか」ははっきりさせたい

旅行業に当たるかどうかとは別に、
実務ではもう一つ大切なことがあります。
それは、
宿泊客は誰と体験の契約をしているのか
です。
たとえば、
ホテルは予約連絡を手伝うだけ。
体験料金は現地払い。
キャンセルも旅行者と体験事業者が直接やり取りする。
なら、役割は比較的分かりやすいでしょう。
一方で、
ホテルで体験料を受け取る。
ホテル名で予約確認書を出す。
変更やキャンセルもすべてホテルが受ける。
となれば、
お客様から見ると、
「この体験はホテルから買ったのでは?」
と感じる可能性があります。
👉 法律上できるかだけでなく、お客様から見て誰が販売者なのか分かる仕組みにすることが重要です。

4.「宿泊+地域体験」にするときは考え方が少し違う

では、
「宿泊した方には陶芸体験も付いています」
「1泊+地域体験で○○円です」
という商品にしたらどうでしょう。
ここで重要なのが、
ホテル自身が提供する宿泊と、
地域の体験サービスとの組み合わせです。
観光庁の旅行業法施行要領では、宿泊事業者が自ら宿泊サービスを提供し、
それに運送・宿泊以外のサービスの手配を付加して販売するケースについて、旅行業に該当しない例が示されています。
たとえば、
自館宿泊+地域体験
という形には、検討できる余地があります。
ただし、
別のホテルを手配する。
鉄道やバスを手配する。
送迎を他の運送事業者へ手配する。
などを加わえていくと話は変わります。
👉 「体験を付ける」のと、「旅行全体を手配する」のは同じではありません。

5.注意したいのは「ついでに交通も予約してあげる」

宿泊客から、
「体験場所までタクシーも予約してほしい」
「明日の観光バスも取ってほしい」
と言われることがあります。
ここは、体験予約だけのケースと分けて考えましょう。
旅行業法では、
運送や宿泊の代理・媒介・取次
が基本的な旅行業務として位置付けられています。
ですから、
「地域体験の予約だから大丈夫だった」
という考えのまま、
交通。
別の宿泊施設。
まで同じように手配するのは危険です。
👉 サービスをいくつも追加すれば同じ扱いだと思わないほうが安全です。
これはフロント業務でも重要です。

6.ホテル側で代金をまとめるなら、役割を整理する

地域連携を進めていくと、
「お客様が現地で毎回支払うのは面倒だから、ホテルでまとめて決済できないか」
という話も出てきます。
利用者にとっては便利です。
実際、観光庁も地域全体で宿泊・体験などをシームレスに予約・決済できる仕組みの整備を
観光DXの方向性として掲げています。国土交通省
ただし、
便利になるほど、
誰が販売するのか。
誰が代金を預かるのか。
キャンセル料は誰が決めるのか。
返金は誰がするのか。
体験が実施されなかったら誰が対応するのか。
を決めておく必要があります。
👉 「予約できる仕組み」だけでなく、「トラブルになったときの仕組み」まで作る。
ここまで考えて初めて、地域連携のサービスになります。

7.フロントスタッフが迷わないルールを決めておく

そして実務上は、ここがかなり重要です。
経営者は制度を理解していても、
実際に宿泊客から相談を受けるのはフロントスタッフです。
そこで、
どこまでは案内してよいのか。
どこから先は体験事業者へ直接連絡してもらうのか。
ホテルで予約を受ける体験は何か。
代金を預かるのか。
キャンセルの場合はどこへ連絡してもらうのか。
をあらかじめ決めておきます。
そうすれば、
スタッフごとに対応が変わることも防ぎやすくなります。
👉 「法律を知る」だけでなく、「現場で迷わないルールにする」ところまでが実務です。

今日の実務ワンポイント

ホテルで地域体験を紹介したいなら、まず次の5つを決めてみてください。
①案内だけ?予約まで?
②体験の契約相手は誰?
③体験料は誰が受け取る?
④変更・キャンセルは誰が対応する?
⑤交通や別の宿泊まで一緒に手配しない?
👉 フロントスタッフがこの5つに答えられる状態をつくる。
これが今回の実務ワンポイントです。

まとめ

「ホテルのフロントで地域体験を予約してあげても大丈夫?」
今回の答えは、
👉 体験など運送・宿泊以外のサービスだけを予約・手配したからといって、直ちに旅行業になるわけではありません。
しかし、
ホテルがどこまで関わるのかは整理しておきましょう。
案内だけなのか。
予約までなのか。
代金まで受け取るのか。
キャンセルも対応するのか。
さらに交通や他の宿泊まで手配するのか。
一つずつ役割が違います。
地域の体験を宿泊客に紹介することは、
旅行者にも、
体験事業者にも、
宿泊施設にも、
大きなメリットがあります。
だからこそ、
「やらない方が安全」ではなく、「どこまでやるかを決めて、安心して地域につなぐ」。
そんな仕組みにしていきたいところです。

今日のチェックポイント

□地域体験を誰が販売しているか分かっている
□ホテルは案内だけか予約まで行うか決めている
□代金を誰が受け取るか決めている
□キャンセル時の窓口を決めている
□スタッフの対応ルールを決めている
□体験と交通・他の宿泊手配を同じ扱いにしていない
□お客様から見て契約相手が分かるようにしている
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「フロントはどこまでやる?」
を一度決めてみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて、
ホテルや旅館のフロントが、
単なるチェックインの場所ではないことを何度も感じてきました。
「どこへ行けばいい?」
「何を食べればいい?」
「何か体験できる?」
旅行者にとっては、
宿の人から聞く地域情報そのものが旅の価値
になることがあります。
そして今は、
そこからさらに、
予約。
決済。
地域事業者との連携。
へ広げることもできます。
ただ、
便利にするほど、
宿泊施設の役割がどこまでなのか
を明確にする必要があります。
行政書士として大切だと思うのは、
「旅行業法が怖いから何もしない」
ことではありません。
👉 地域の魅力を旅行者へ届けながら、誰が何を担当するかをきちんと設計すること。
それが、宿を地域観光の入口にしていく方法だと考えています。

Q&A|ホテルで地域体験を予約してもいい?

Q1.宿泊客のために陶芸体験を電話予約しただけで旅行業になりますか?

運送・宿泊以外のサービスだけを単独で手配する場合は、旅行業に該当しない例として観光庁の施行要領で示されています。
ただし、交通や別の宿泊手配まで組み合わせる場合は、別途確認が必要です。

Q2.ホテルで体験料金を受け取ってもいいですか?

料金を受け取ることだけで直ちに旅行業かどうかが決まるわけではありません。
ただし、
誰が体験の販売者なのか。
ホテルは単なる代金受領なのか。
キャンセル・返金を誰が行うのか。
など、契約関係を明確にしておくことが重要です。

Q3.宿泊と地域体験をセットにして販売できますか?

宿泊事業者が自ら提供する宿泊に、運送・宿泊以外の地域サービスを付加して販売するケースについては、
旅行業に該当しない例が観光庁から示されています。
ただし、具体的な商品設計によって判断すべき点は変わるため、販売開始前に取引の流れを整理しておくことをおすすめします。

次回予告

ホテルと地域体験をつなぐケースを考えました。
では今度は、
イベントの主催者から、
「参加者のホテルもまとめて予約してあげたい」
という相談です。
横浜では、
学会。
展示会。
スポーツ大会。
ライブ。
地域イベント。
など、全国から参加者が集まる催しがあります。
参加者にとって、
イベントとホテルをまとめて案内してもらえれば便利です。
でも、
主催者がホテルまでまとめて手配していいのでしょうか?
次回は、
イベント参加者のホテルもまとめて手配したい|主催者がやっても大丈夫?|第4話
として、
👉 「イベントを主催しているだけなのに、ホテルを予約すると旅行業になる?」
という具体的なお悩みに答えます。

\ 宿泊施設と地域の体験をつなげたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・宿泊客に地域体験を紹介したい
・フロントで予約まで受けたい
・宿泊と地域体験を組み合わせたい
・地域事業者と連携した新しいサービスを考えている
・どこから旅行業の確認が必要か分からない
といった構想段階からご相談いただけます。
旅行業界37年の経験と行政書士としての法務・許認可の視点から、
「できる・できない」だけではなく、「誰が何を担当する仕組みにすればよいか」
を一緒に整理します。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。