インバウンド向け観光事業を始める前に整えたいこと|第10話

インバウンド向け観光事業を始める前に整えたいこと|第10話

こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、「観光協会・DMO・地域事業者と観光商品をつくるには」として、地域の商品を実際に販売できる形にするための役割分担を見てきました。

今回は、
「外国人旅行者を受け入れたいけれど、何から準備すればよいのか分からない」
という事業者向けに、インバウンド受入れの基本を整理します。
インバウンド対策というと、
ホームページの外国語化や外国語対応スタッフを思い浮かべるかもしれません。
しかし実際には、
予約。
決済。
案内。
食事。
交通。
緊急時対応。
など、旅行者が利用を終えるまでの流れ全体を見る必要があります。
👉 インバウンド対応は、「外国語対応」ではなく、「外国人旅行者が迷わず利用できる仕組みづくり」です。

まず「誰に来てほしいか」を決める

「外国人観光客を増やしたい」だけでは対象が広すぎます。
国・地域。
年齢。
旅行目的。
予算。
興味。
によって、求めるものは異なります。
日本文化を体験したい人。
地域の日常を楽しみたい人。
食を目的に訪れる人。
家族旅行。
個人旅行。
では、必要なサービスも変わります。
👉 最初に「外国人」ではなく、「どんな旅行者に来てほしいか」を具体的にしましょう。

外国語対応より「予約できるか」を確認する

ホームページを英語にしても、
それだけで予約につながるとは限りません。
旅行者が知りたいのは、
何ができるのか。
いくらなのか。
どこにあるのか。
どう予約するのか。
どう支払うのか。
です。

旅行者目線で見る

自社サイトを、
初めて日本へ来る旅行者になったつもりで確認します。
場所は分かるか。
料金は分かるか。
予約方法は分かるか。
問い合わせ先は分かるか。
👉 「読めるか」ではなく、「自分だけで予約できるか」で確認しましょう。

予約・決済・アクセスを一つで考える

予約できても、
支払えない。
現地まで行けない。
では利用につながりません。

決済

事前決済。
現地決済。
クレジットカード。
など、支払方法を整理します。

アクセス

最寄駅。
バス。
徒歩ルート。
所要時間。
目印。
も明確にします。
特に地域型観光では、
「最後の移動」が分かりにくい
ことがあります。
👉 「予約→決済→現地到着」までを一つの流れとして考えましょう。

食事・緊急時対応を決める

食事

外国人旅行者の受入れでは、
アレルギー。
宗教上の理由。
食習慣。
ベジタリアン・ヴィーガン。
などへの対応を求められることがあります。
すべてに対応する必要はありません。
重要なのは、
何に対応でき、何には対応できないのかを事前に伝えること
です。

緊急時

けが。
病気。
忘れ物。
交通トラブル。
予約の行き違い。
などが起こることもあります。
緊急連絡先。
対応時間。
スタッフ間の連絡方法。
を整理しておきましょう。
👉 「起きない前提」ではなく、「起きたときに誰が何をするか」を決めておくことが大切です。

外国人スタッフを雇う場合は在留資格を確認する

インバウンド対応のため、
外国語を話せる外国人スタッフを採用したい
というケースもあります。
この場合、
外国人旅行者を受け入れることと、
外国人を雇用することは別に考えます。
在留資格によって、
就労できるか。
どのような仕事ができるか。
確認が必要になる場合があります。
👉 担当してもらう仕事と在留資格の関係を確認しましょう。

宿泊・交通・体験をまとめて売る場合は旅行業も確認する

インバウンド向けに、
宿泊。
交通。
体験。
ガイド。
などを組み合わせて販売する場合があります。
このときは、
誰が販売するのか。
誰が契約するのか。
誰が宿泊・交通を手配するのか。
誰が代金を受け取るのか。
を整理します。
内容によっては、旅行業法との関係を確認する必要があります。
👉 外国人向けかどうかではなく、「誰が何を販売・手配するのか」で考えることが基本です。

最初から完璧を目指さなくてもよい

多言語サイト。
外国語スタッフ。
専用システム。
を一度に整える必要はありません。
まずは、
一つの商品。
一つの言語。
一つの販売方法。
から始める方法もあります。
利用者の反応を見ながら、
案内。
予約。
決済。
商品内容。
を改善していけばよいのです。
👉 「外国人旅行者すべて」に対応するのではなく、自社が対応できる範囲から始めましょう。

今日の実務ワンポイント

まず次の6つを確認してみてください。
①どんな外国人旅行者に来てほしいか
②サービス内容・料金が分かるか
③予約から決済まで迷わず進めるか
④施設までの行き方が分かるか
⑤食事・緊急時の対応を決めているか
⑥外国人スタッフを雇う場合は在留資格を確認しているか
👉 自社の商品を外国人旅行者が「探す→予約する→来る→利用する」ことができるか確認してみましょう。

まとめ

インバウンド向け観光事業では、
外国語対応だけを考えても十分ではありません。
誰に来てほしいのか。
どう予約するのか。
どう支払うのか。
どう来てもらうのか。
食事や緊急時にどう対応するのか。
まで整理する必要があります。
さらに、
旅行商品として販売する場合や、
外国人スタッフを雇用する場合には、
必要な制度も確認します。
👉 インバウンド対応とは、「外国語に翻訳すること」ではなく、「外国人旅行者が安心して利用できる流れをつくること」です。

今日のチェックポイント

□ターゲットとする外国人旅行者を考えている
□サービス内容・料金を外国語でも確認できる
□予約方法が分かりやすい
□決済方法を整理している
□アクセス案内を分かりやすくしている
□食事対応の範囲を決めている
□緊急時の対応方法を決めている
□外国人スタッフの在留資格を確認している
□旅行商品の販売方法と旅行業との関係を確認している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「外国人旅行者が、自社の商品を見つけてから利用を終えるまで、どこで困るか」
を一つずつ確認してみましょう。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて感じるのは、
旅行者が困るのは、
ちょっとした「分からない」が残っているとき
であることです。
どこで予約するのか分からない。
駅からどう行くのか分からない。
食事内容が分からない。
問い合わせ先が分からない。
こうした小さな不安が、利用をためらう理由になります。
特にインバウンドでは、
日本人なら何となく分かることが、
海外からの旅行者には伝わらないことがあります。
一方、行政書士として見ると、
旅行業。
宿泊業。
外国人雇用。
その他の許認可。
など、事業内容によって法的な確認も必要になります。
👉 「外国人旅行者に選ばれる仕組み」と「適正に運営できる仕組み」を一緒に整えることが重要です。

Q&A|インバウンド観光事業を始める前に

Q1.英語のホームページを作ればインバウンド対応になりますか?
第一歩にはなりますが、それだけでは十分とは限りません。
サービス内容、料金、場所、予約方法、決済方法まで理解できることが重要です。
Q2.外国語を話せるスタッフがいないと難しいですか?
必ずしもそうとは限りません。
案内表示、翻訳ツール、予約システム、事前案内などを組み合わせて対応できる場合もあります。
Q3.外国人向けに宿泊と体験をセット販売する場合、旅行業登録は必要ですか?
外国人向けかどうかだけでは決まりません。
誰が契約し、宿泊・交通などをどのように販売・手配するのかによって確認します。
👉 商品を作る段階で、「誰が販売・契約・手配するのか」を整理しておくことが大切です。

次回予告

次に考えたいのが、
「この観光ビジネスでは、どこで利益が生まれるのか」
という問題です。
旅行代金。
手数料。
体験料。
宿泊料。
など、
観光ビジネスにはいくつものお金の流れがあります。
次回は、
「観光ビジネスの収益はどこで生まれる?|手数料・旅行代金・体験料を整理|第11話」
として、
誰から代金を受け取り、
誰へ支払い、
どこが自社の収益になるのか
を整理します。
👉 次回は、「売れる観光商品」から「続けられる観光ビジネス」へ進みます。

\ インバウンド・観光ビジネスを形にしたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、旅行業・宿泊業・地域体験・インバウンドなどの観光ビジネスについて、事業内容の整理から必要な許認可まで一体で支援しています。
例えば、
・インバウンド向け観光事業の整理
・旅行業登録が必要かどうかの確認
・旅行業登録申請
・宿泊・体験・交通を組み合わせる場合の整理
・外国人スタッフを雇用する場合の手続確認
・行政への事前相談
など、計画段階に応じて必要な準備を整理します。
👉 「外国人旅行者を受け入れたいが、何から始めればよいか分からない」という段階から、観光ビジネスを形にしてみませんか。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。