令和9年度障害福祉報酬改定で何が変わる?|第9話

~今から確認したい6つの論点~
こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
「障害福祉サービスの報酬請求で確認したいこと」
として、
請求が通ることと、正しく請求できていることは同じではない。
という視点から、
支援。
記録。
実績。
加算。
請求。
をつなげて確認する大切さをお伝えしました。
今回は、その「報酬」そのものに大きく関係する、
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定
について考えます。
令和9年4月の改定まで、約半年。
事業所の皆さまの中にも、
「今回は何が変わるのだろう」
「今の加算は残るのか」
「人員基準も変わるのか」
「今から何を準備すればいいのか」
と気になり始めている方も多いのではないでしょうか。
ただし、最初に大切なことを確認しておきます。
👉 現時点では、令和9年度改定の具体的な内容はまだ決まっていません。
厚生労働省では、関係団体へのヒアリングを経て、現在まさにサービスごとの報酬や基準について
検討を進めている段階です。
令和8年9~10月に各サービス、11月に横断的な論点を検討し、12月に基本的な考え方を整理、
令和9年2月に改定案を取りまとめる予定です。厚生労働省
だからこそ今は、
「何が決まったか」を追うことではなく、「どの方向が議論されているのか」を知っておくこと
が重要です。
厚労省が示した6つの大きな視点
令和9年度改定に向け、厚生労働省は大きく6つの視点を示しています。
難しい制度用語に見えますが、
事業所側から見ると、
「自分たちの運営のどこが見られそうなのか」
という話でもあります。
順番に見てみましょう。
1.制度をこの先も続けられるか
一つ目は、
制度の持続可能性
です。
障害福祉サービス等の総費用額は増加を続けており、令和5年度から令和6年度にかけては12.1%増加したとされています。
厚労省は、この費用の伸びも踏まえ、制度を持続可能なものにするための対応を令和9年度改定の論点に挙げています。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
ここで注目したいのは、
「報酬が上がるか、下がるか」だけではありません。
どのサービスが必要とされているのか。
どのような支援を評価するのか。
報酬をどこへ重点的に配分するのか。
という議論につながる可能性があります。
現時点で個別の報酬単価を予測することはできません。
ただ、
👉 現在算定している基本報酬や加算が、なぜ評価されているのか
を改めて確認しておくことには意味があります。
2.人材をどう確保するか
二つ目は、
人材確保・育成・専門性の向上、業務負担の軽減
です。
障害福祉の現場では、
求人を出しても人が集まらない。
サビ管・児発管を確保できない。
職員が定着しない。
といった悩みを抱える事業所も少なくありません。
厚労省も、人材確保・育成、専門性向上、業務負担の軽減・効率化を改定の主要な視点として掲げています。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
ここはかなり身近です。
職員配置。
処遇改善。
研修。
業務の効率化。
ICT活用。
職員の定着。
などは、今後の議論とつながる可能性があります。
特に、
「人を配置しているか」だけでなく、「人を確保し、育て、支援の質につなげているか」
という視点は持っておきたいところです。
3.物価高・賃上げにどう対応するか
三つ目は、
事業所の経営状況、賃上げ、物価上昇への対応
です。
令和8年度には臨時の報酬改定が行われ、障害福祉分野の職員の処遇改善、生産性向上や協働化を後押しする措置が講じられました。
その上で令和9年度改定では、経営情報データベースや経営実態調査などをもとに、
物価や賃金の上昇が事業者経営へ与えている影響を把握し、検討していくこととされています。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
ここでは、
人件費がどれくらい上がっているか。
光熱費や物価上昇がどの程度経営へ影響しているか。
処遇改善をどう行っているか。
といった、
事業所の実際の経営状況
が重要になります。
今の段階から、
「改定でいくら上がるだろう」
と予想するより、
👉 自事業所の人件費・収支・処遇改善の現状を把握しておく
方が実務的です。
4.地域に必要なサービスをどう残すか
四つ目は、
地域で必要なサービス提供体制を確保すること
です。
利用者が必要なサービスを受けられるよう、
サービスが多すぎる地域。
不足している地域。
利用者ニーズとのミスマッチ。
なども含めて検討していくことが示されています。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
ここで一度考えてみたいのが、
「自分たちの事業所は、地域でどんな役割を担っているのか」
ということです。
利用者層。
支援内容。
地域のニーズ。
他の事業所との違い。
を整理しておく。
これは改定対応だけではなく、今後事業所を続けていく上でも重要です。
5.「サービスの質」をどう見るか
五つ目は、今回かなり注目したい論点です。
厚労省は、
より質の高いサービスを提供するための課題や評価方法
を視点として示しています。
特に、多様な主体の参入によって、
サービス・支援内容や質にばらつきが見られることへの対応
も論点に挙げています。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
ここは、
個別支援計画。
支援記録。
研修。
職員配置。
支援内容。
利用者への説明。
など、これまでこのシリーズで扱ってきた実務とつながります。
つまり、
👉 「必要な書類がある」だけではなく、「実際にどんな支援をしているのか」
が、ますます重要になる可能性があります。
具体的な評価方法はまだ決まっていません。
だからこそ今は、
新しい書類を増やすより、
現在の支援と記録がきちんと一致しているか
を確認することから始めればよいと思います。
6.重度化・高齢化などへどう対応するか
六つ目は、
地域生活の支援。
障害の重度化。
利用者の高齢化。
他制度との連携。
などへの対応です。
結局、うちの事業所に何が関係しそう?
例えば、
利用者の状態が以前と変わってきた。
支援ニーズが複雑になっている。
医療や他の福祉サービスとの連携が増えている。
という事業所では、
決して遠い話ではありません。
今後どのような支援が評価されるかは、これからの議論を待つ必要があります。
ただし、
現在の利用者像と、事業所が提供している支援が合っているか
は今から確認できます。
では、今すぐ何をすればいい?
ここまで読むと、
「結局、何か対応しなければいけないの?」
と思われるかもしれません。
現時点で、
改定内容を予想して運営規程を変える。
加算を変更する。
人員配置を変える。
必要はありません。
まだ決まっていないからです。
今やるなら、まずこの5つです。
□ 現在算定している基本報酬・加算を確認する
□ 現在の人員配置を確認する
□ 処遇改善の状況を確認する
□ 支援内容と記録が一致しているか確認する
□ 最近の収支・人件費を把握する
👉 「改定に合わせて何かを変える」のではなく、「今の事業所の状態を把握する」。
これが半年を切った今の準備だと思います。
今日の実務ワンポイント
改定情報を見るときは、
「この加算がなくなる?」
「報酬は下がる?」
という個別の情報だけを追わないことです。
まず、
国が何を課題として見ているのか
を確認してください。
その大きな方向が分かれば、
個別の改定内容が出てきたときに、
「なぜこの変更が入ったのか」
が理解しやすくなります。
まとめ
令和9年度障害福祉報酬改定は、
まだ内容が決まった段階ではありません。
しかし、
制度の持続可能性。
人材確保。
経営・賃上げ・物価。
地域のサービス提供体制。
サービスの質。
重度化・高齢化等への対応。
という、大きな検討の方向はすでに示されています。
大切なのは、
ニュースを見て一喜一憂することではありません。
👉 「この論点は、うちの事業所のどこに関係するのか?」
と置き換えて考えることです。
改定内容が具体化してから慌てるのではなく、
まず現在の運営を把握する。
そこから準備を始めてみましょう。
行政書士田中穂積の視点
今回の報酬改定で私が特に注目しているのは、
人員・記録・加算・支援の質が、それぞれ別の問題ではなくなっていること
です。
これまでこのシリーズでも、
変更届。
加算。
減算。
個別支援計画。
研修。
人員変更。
報酬請求。
を取り上げてきました。
令和9年度改定の議論を見ると、
こうした日々の運営実務が、
人材確保。
経営。
サービスの質。
制度の持続可能性。
という大きな政策課題につながっていることが分かります。
行政書士として大切なのは、
まだ決まっていない制度を予測して不安をあおることではありません。
決まったときにすぐ対応できるよう、現在の運営を整理しておくこと。
ここから改定の内容が具体化していく過程を、引き続き確認していきたいと思います。
Q&A|令和9年度障害福祉報酬改定
Q1.令和9年度の報酬や加算はもう決まっていますか。
いいえ。
厚生労働省では、8月27日に主な論点案を示した後、9月からサービスごとの具体的な議論に入っています。
9月24日には訪問系サービス、9月28日には就労系サービスについて検討が行われました。
9月28日の第64回検討チームでは、就労継続支援を含む就労系サービスについて、
一般就労への移行・定着、在宅支援、施設外就労、支給決定やガイドラインの厳格化、就労継続支援B型の会計区分、情報公表、就労選択支援の対象者などが論点として示されました。
ただし、これらは現時点では検討段階であり、令和9年度改定の具体的な報酬単価や基準が決定したわけではありません。
Q2.今から人員や加算を変更した方がよいですか。
改定を予想して変更する段階ではありません。
まず、
現在の人員配置。
算定中の加算。
届出。
記録。
収支。
などを整理し、自事業所の現在地を確認しておくことをおすすめします。
Q3.いつ頃から具体的な内容が見えてきますか。
厚労省が示している予定では、9~10月に各サービス、11月に横断的な報酬等について検討し、12月に基本的な考え方を整理、令和9年2月に改定案を取りまとめる予定です。
そのため、今後数か月で議論は徐々に具体化していくと考えられますが、個別の内容については正式な資料を確認する必要があります。
次回予告
次回は、
「なぜ障害福祉報酬は見直される?|急増する事業所と『支援の質』の問題|第10話」
について考えます。
今回の第9話では、
制度の持続可能性。
人材確保。
経営・賃上げ・物価。
地域のサービス提供体制。
サービスの質。
重度化・高齢化への対応。
という、令和9年度障害福祉報酬改定に向けた大きな論点を見てきました。
では、
なぜ今、こうした論点が並んでいるのでしょうか。
単に、
「3年に一度の改定だから」
というだけではありません。
障害福祉サービスの利用者数や事業所数が増える中で、
公費の伸び。
新規参入。
人材不足。
支援の質。
制度の持続可能性。
など、これまで以上に重い課題が表面化しています。
次回は、
👉 「報酬が上がるか、下がるか」だけでは見えない、今回の改定の背景
に踏み込みます。
そして、
「うちは不正をしていないから関係ない」
で本当に済むのか。
「指定を受け、基準を満たしている」だけで十分なのか。
事業所側の視点から考えてみます。
\ 障害福祉サービスの運営実務を整理したい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、放課後等デイサービス、児童発達支援、
就労継続支援B型、共同生活援助(グループホーム)などの指定後の運営についてもご相談を承っています。
例えば、
・人員変更に伴う手続確認
・変更届の作成・提出支援
・体制届・加算届の整理
・運営規程の変更
・現在の届出内容の整理
・行政への事前相談
など、事業所の状況に応じて必要な手続を整理します。
障害福祉サービスでは、
人員・計画・記録・届出・報酬
が互いにつながっています。
そのため、
書類を一つずつ作るだけではなく、
現在の運営と届出・記録が一致しているか
という視点が大切です。
👉 「職員が辞めるけれど、何から確認すればいいのだろう」
という段階から、必要な確認を整理してみませんか。
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この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。