02旅館業開業、経営支援 3rd page

旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由|第7話

~生活支援と職場づくりが定着率を左右する~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」についてお話ししました。外国人スタッフを採用した後、本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。 今回のテーマは、「旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由」です。外国人スタッフを採用しても、すぐに辞めてしまう。仕事はまじめにしているのに、 どこか不安そうに見える。日本人スタッフとの関係がうまくいかない。生活面の悩みを誰にも相談できていない。こうした状態が続くと、本人も宿側も疲れてしまいます。今回は、外国人スタッフが長く働ける宿と、定着しにくい宿の違いについて、生活支援、職場づくり、相談体制、将来の在留資格や永住への視点も含めて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 外国人スタッフが辞める理由は「仕事」だけではない 外国人スタッフが定着しないと聞くと、宿側はまず仕事の問題を考えます。仕事が合わなかったのか。接客が難しかったのか。日本語が足りなかったのか。勤務時間が合わなかったのか。もちろん、仕事の内容や勤務条件は大切です。しかし、外国人スタッフが辞める理由は、仕事だけとは限りません。住む場所に困っている。病院の行き方が分からない。役所の手続きが不安。日本語でうまく相談できない。職場では笑顔でも、生活面で孤立している。家族のことや将来の在留資格に不安がある。このような悩みを抱えていることがあります。宿側から見ると、「仕事は問題なくできている」ように見えても、本人の中では不安が積み重なっている場合があります。定着を考えるときは、仕事だけでなく、生活と将来の不安も見ることが大切です。 定着しにくい宿の共通点 外国人スタッフが定着しにくい宿には、いくつかの共通点があります。 一つ目は、相談できる人が決まっていないことです。仕事で困ったとき、誰に聞けばよいのか。生活で困ったとき、どこまで相談してよいのか。在留資格や……

横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話

~古民家を地域の小さな観光拠点にするために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第4話です。 前回は、「古民家を宿にするには何が必要か」についてお話ししました。古民家を宿として活用するには、旅館業許可、建築基準法、消防法、衛生管理、近隣との関係など、確認すべきことがたくさんあります。しかし、古民家の活用方法は宿だけではありません。地域の人が集まるカフェ。観光客が立ち寄る休憩場所。地元の食材を味わえる小さな飲食店。週末だけ開く古民家カフェ。イベントや展示と組み合わせた交流スペース。こうした使い方も、古民家や空き家の大切な活用方法です。 これまで宿を中心にお話ししてきましたので、今回は少しサプライズかもしれません。でも私は、古民家カフェも立派な観光まちづくりの入口になると考えています。宿泊しなくても、その地域を訪れる理由になる。地域の人と観光客が出会う場所になる。地元の食材や文化を伝える場所になる。空き家だった建物に、もう一度人の流れを生み出す場所になる。古民家カフェには、宿とはまた違った魅力があります。 ただし、カフェとして営業するためには、雰囲気や想いだけでは始められません。飲食店営業許可。厨房設備。食品衛生責任者。建物の用途。消防への確認。近隣環境。駐車場や騒音。こうした点を、開業前に確認しておく必要があります。 今回は、古民家カフェを始める前にまず確認したいことについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 古民家カフェは地域の入口になる 古民家カフェというと、まず思い浮かぶのは、落ち着いた空間、木のぬくもり、畳の部屋、庭を眺める席、地元野菜を使ったランチ、手作りのスイーツ、ゆっくり流れる時間。そんなイメージではないでしょうか。 確かに、古民家カフェには、普通の店舗にはない魅力があります。しかし私が注目したいのは、古民家カフェが単なる飲食店にとどまらないことです。観光客にとっては、その地域を歩くきっかけになります。地域の人にとっては、日常の中で集まれる場所になります。移住を考えている人にとっては、地域の空気を知る入口になります。空き家所有者にとっては、……

外国人雇用で失敗する宿の共通点|第6話

~採用後の教育・生活支援・現場定着の落とし穴~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識についてお話ししました。外国人スタッフを雇用するときは、「人手が足りないから採用する」だけでは不十分です。その人の在留資格で、その宿で、その業務を行えるのか。ここを確認する必要があります。宿泊業では、フロント、予約管理、通訳、清掃、レストランサービス、接客、企画・広報など、さまざまな業務があります。しかし、外国人スタッフにどの業務を任せられるかは、👉在留資格や雇用内容との関係で確認が必要です。今回のテーマは、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」です。 外国人スタッフを採用した後、👉本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。この数話では、旅館・ホテルの経営者だけでなく、日本で働く外国人スタッフの方にも読んでいただけるように、できるだけ分かりやすくお話ししていきます。 日本で働き続けたい外国人の方にとっても、在留資格、雇用契約、職場での役割、更新時期、将来の永住などは、とても大切なテーマです。宿側と外国人スタッフ本人が、お互いに安心して働ける関係を作ること。それが、外国人雇用を成功させる第一歩です。 外国人雇用は「採用して終わり」ではない 外国人スタッフを採用できると、宿側はほっとするかもしれません。人手不足が少し楽になる。外国語対応ができる。インバウンドのお客様にも対応しやすくなる。若い人材が増える。現場に新しい風が入る。こうした期待はとても自然です。しかし、外国人雇用は、採用して終わりではありません。むしろ、👉採用した後から本当の実務が始まります。業務をどう教えるのか。誰が教育担当になるのか。困ったときに誰へ相談するのか。在留資格の更新時期をどう管理するのか。雇用契約の内容と実際の業務が合っているのか。生活面で困っていることはないか。現場の日本人スタッフとの関係はうまくいっているか。こ……

旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

~業務内容と在留資格のズレを防ぐために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か人手不足の現実についてお話ししました。人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する宿は増えています。しかし、外国人雇用は、単に人手を補う方法ではありません。業務内容、在留資格、教育体制、生活面の支援、現場でのコミュニケーションなど、事前に整理しておくべきことが多くあります。今回は、さらに一歩進んで、「在留資格」について考えてみたいと思います。 宿泊業で外国人を雇うとき、よくある誤解があります。「日本に住んでいる外国人なら働ける」「アルバイトなら問題ない」「フロントも清掃も配膳も、必要に応じて任せればよい」「人手不足だから、とにかく来てもらえれば助かる」しかし、外国人が日本で働く場合には、在留資格と業務内容の関係を確認する必要があります。在留資格によって、できる仕事と注意すべき仕事が変わるからです。旅館・ホテルの現場では、フロント、予約管理、通訳、企画・広報、接客、清掃、レストランサービス、送迎、夜間対応など、さまざまな業務があります。そのすべてを、同じように考えることはできません。 今回は、旅館業で外国人を雇う前に知っておきたい在留資格の基礎知識について、行政書士としての視点から分かりやすく整理していきます。 在留資格とは何か まず、在留資格とは何でしょうか。簡単に言えば、外国人が日本に滞在し、どのような活動をすることができるのかを示す資格です。観光で来ている人。留学している人。会社で働いている人。日本人と結婚している人。永住している人。 それぞれ、日本でできる活動の範囲が異なります。宿泊業で外国人を雇う場合には、その人が持っている在留資格で、その業務を行えるのかを確認する必要があります。ここを確認しないまま採用してしまうと、本人にも宿側にも大きなリスクがあります。外国人雇用では、「人柄が良い」「日本語が話せる」「すぐ働けると言っている」だけで判断してはいけません。まず確認すべきなのは、👉在留カードと在留資格です。 宿泊業で関係しやすい在留資格 旅館・ホテルで外国人を雇用する場合、関係しやすい在留資格はいくつかあります。代表的なものと……

旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か?人手不足の現実|第4話

~採用前に考えたい業務整理と受け入れ体制~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊についてお話ししました。宿泊業界では、人手不足が大きな課題になっています。しかし、人が足りないこと以上に、業務の流れが整理されていないこと。担当者が曖昧なこと。引き継ぎが弱いこと。現場の仕組みが整っていないこと。こうした問題が、宿の運営を苦しくしている場合があります。今回のテーマは、「外国人雇用」です。 人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する旅館・ホテルも増えています。フロントで外国語対応ができる人材がほしい。清掃やレストランサービスを支えてほしい。インバウンド対応を強化したい。若い人材を確保したい。こうした理由から、外国人雇用に関心を持つ宿は少なくありません。しかし私は、外国人雇用を「人手不足を一気に解決する魔法の方法」のように考えるのは危険だと思っています。外国人スタッフを採用する前に、宿側が整理しておくべきことがあります。業務内容。在留資格。教育体制。生活面の支援。現場でのコミュニケーション。相談できる体制。こうした準備がないまま採用してしまうと、外国人スタッフも宿側も、お互いに苦しくなってしまいます。 今回は、外国人雇用を検討する前に整理しておきたい宿側の準備について、旅行業37年の経験と特に行政書士としての視点から考えていきます。 外国人雇用は人手不足の「救世主」なのか 人手不足に悩む宿にとって、外国人スタッフの採用は大きな可能性があります。特に、インバウンド需要が高まる中で、外国語対応ができるスタッフ。異文化理解のあるスタッフ。海外のお客様と自然にコミュニケーションを取れるスタッフ。こうした人材は、宿の魅力を高める力になります。また、日本で働きたいと考える外国人の中には、真面目で意欲が高く、長く宿泊業に関わりたいと考えている方もいます。その意味で、外国人雇用は、宿にとって大きなチャンスです。 しかし、外国人スタッフを採用すれば、すぐに人手不足が解決するわけではありません。むしろ、受け入れ体制が整っていない宿では、思った業務を任せられない。在留資格との関係で業務内容に問題が出る。教育に時間がかかる。現場で意思疎通がうまくいかない。生活面……

横浜の古民家を宿にするには何が必要か|第3話

~魅力を活かす前に確認したい許認可の第一歩~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第3話です。前回は、「なぜ今、古民家宿が選ばれるのか」についてお話ししました。新しいホテルにはない温かさ。地域の暮らしを感じられる空間。古い梁や柱、庭、畳、縁側、土間。そうした古民家ならではの魅力は、旅の目的そのものになることがあります。 しかし、古民家を宿にしたいと思ったとき、魅力だけで話を進めることはできません。「この建物を宿にしたい」「空き家を活かして地域に人を呼びたい」「古民家を壊さず、観光資源として使いたい」そう思ったときに、最初に確認すべきことがあります。それが、宿として使える建物なのかという視点です。 今回は、古民家を宿にするための第一歩として、確認しておきたい許認可や実務のポイントについてお話しします。 古民家の魅力と宿にする難しさ 古民家には、新築の建物にはない魅力があります。長い時間をかけて残ってきた建物には、その地域の暮らしや歴史が刻まれています。柱の傷。床のきしみ。古い建具。庭の木々。その一つひとつが、訪れる人にとっては特別な体験になります。都会のホテルでは味わえない時間。地域の空気を感じる滞在。それが、古民家宿の大きな魅力です。 しかし一方で、古民家を宿にするには難しさもあります。古い建物だからこそ、現在の法律や基準にそのまま合うとは限りません。建物の構造。避難経路。消防設備。水回り。衛生管理。近隣環境。用途地域。こうした点を確認しないまま進めてしまうと、後から大きな壁にぶつかることがあります。古民家を活かすためには、まず現実を知ることが大切です。 まず確認したいのは「宿として使う」ということ 古民家を活用するといっても、使い方によって必要な手続きは変わります。例えば、自分たちだけで使う別荘。地域の交流スペース。古民家カフェ。体験施設。民泊。簡易宿所。旅館・ホテル。同じ古民家でも、使い方が変われば、確認すべき許認可も変わります。特に注意したいのは、👉「人を泊めるかどうか」です。 お客様を宿泊させる場合、単に空いている部屋を貸すだけでは済みません。宿泊事業として行……

旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊の実態|第3話

~人が足りない宿ではなく、仕組みが回らない宿になっていないか~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、旅館・ホテルの口コミ評価が下がる宿の共通点についてお話ししました。口コミは、単なるお客様の感想ではありません。清掃、案内、接客、設備、予約対応など、宿の運営体制が表に出る場所でもあります。 今回のテーマは、「オペレーション崩壊」です。宿泊業界では、👉人手不足が年々深刻になっています。求人を出しても応募がない。採用しても定着しない。繁忙期になると現場が回らない。こうした悩みを抱えている宿は少なくありません。しかし実務では、人が足りないことそのものよりも、業務の流れが整理されていないことが宿の運営を苦しくしているケースがあります。清掃。チェックイン。予約管理。問い合わせ対応。スタッフ間の引き継ぎ。緊急時の対応。こうした流れが崩れると、お客様の不満は口コミに表れ、スタッフの負担も大きくなります。そして結果として、「人が足りない」という問題に見えてしまうのです。 今回は、人手不足の前に確認したい宿のオペレーションについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から、実務的に整理してみたいと思います。 人手不足の前に確認したいこと 宿の運営が苦しくなったとき、最初に出てくる言葉は、「人が足りない」です。もちろん、本当に人手が足りない場合もあります。しかし、現場をよく見ると、人が足りないのではなく、👉業務の流れが整理されていないというケースもあります。例えば、清掃の終了時間が毎日ずれる。チェックイン前に部屋の最終確認が終わっていない。予約変更の情報が現場に伝わっていない。お客様からの問い合わせに誰が返信するか決まっていない。スタッフごとに案内内容が違う。忘れ物対応のルールがない。 こうした状態では、スタッフが何人いても現場は混乱します。人を増やせば解決するように見えて、実は仕組みを整えなければ、新しいスタッフも同じ混乱に巻き込まれてしまいます。人手不足対策の前に、まず確認したいのは、今の業務がどのような流れで動いているかです。 オペレーション崩壊とは何か オペレーション崩壊とは、宿の業務が一つひとつは存在しているのに、全体としてうまくつながって……

旅館・ホテルの口コミ評価が下がる宿の共通点とは|第2話

~お客様の不満は、開業後の運営体制に表れる~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業許可取得後に本当に始まる宿経営についてお話ししました。旅館業は、許可を取得すれば終わりではありません。お客様を迎え始めてから、本当の宿経営が始まります。今回のテーマは、「口コミ評価」です。ただし今回は、「良い口コミを増やしましょう」「悪い口コミには丁寧に返信しましょう」という話で終わらせるつもりはありません。それだけでは、実際の宿の改善にはつながりにくいからです。今回お伝えしたいのは、口コミを、宿の運営改善に使う方法です。 旅館・ホテルの口コミ評価が下がるとき、そこには必ず理由があります。清掃が悪い。接客が悪い。設備が古い。このように一言で片付けてしまうこともできます。しかし実務では、もう少し細かく見る必要があります。お客様は、何に不満を感じたのか。それは、一度だけのミスなのか。何度も繰り返されている問題なのか。現場の誰が対応すべき問題なのか。すぐ直せるのか。時間や費用がかかるのか。ここまで分けて考えないと、口コミは改善に使えません。 そこで今回は、口コミを単なる評価として読むのではなく、👉「口コミ分解シート」を作るイメージで、宿の運営改善につなげる方法を考えてみたいと思います。 口コミは点数よりも「中身」を見る 予約サイトやGoogleマップの口コミを見ると、つい点数に目が行きます。4.5なのか。4.0なのか。3点台に落ちていないか。もちろん点数は大切です。しかし、宿の改善で本当に見るべきなのは、点数そのものではありません。大切なのは、👉何について不満が書かれているのかです。例えば、同じ3点の口コミでも、内容はまったく違います。「部屋は良かったが、チェックイン案内が分かりにくかった」という口コミと、「清掃が不十分で、もう泊まりたくない」という口コミでは、改善すべき内容が違います。また、「スタッフの対応が冷たかった」という口コミと、「駐車場の場所が分からなかった」という口コミでも、対応すべき担当者や改善策は変わります。口コミを読むときは、良い悪いで一喜一憂するのではなく、👉どの業務に関する指摘なのかを分けて見ることが大切です。 まず口コミを5つに分類……

旅館業許可取得後に本当に始まる宿経営|第1話

~開業はゴールではなく、本当のスタート~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 旅館業許可を取得し、いよいよ宿がオープン。長い準備期間を乗り越え、この日を迎えられたことに、まずは心からお祝いを申し上げます。しかし私は、旅行業界で37年間、そして現在は行政書士として多くの宿づくりに関わる中で、一つ強く感じていることがあります。本当の宿経営は、許可を取得してから始まる。ということです。 前シリーズでは、旅館業許可の取得方法、事業計画、建築基準法、消防法、資金計画、運営準備など、「開業まで」に必要なことをお話ししてきました。しかし実際には、開業後に初めて直面する悩みや課題の方が、はるかに多いのです。そこで今回から新シリーズ「旅館業 開業後の落とし穴」をスタートします。このシリーズでは、・人手不足・口コミ管理・OTAへの依存・外国人雇用・消防・保健所対応・近隣トラブル・法令改正・事業承継など、開業後に本当に起こる問題を、旅行業37年の現場経験と、行政書士としての法務視点の両面から、実務ベースで考えていきます。 私は旅行会社で長く、「旅を売る仕事」に携わってきました。 そして現在は、行政書士として「宿を創る仕事」に関わっています。 その二つの経験から言えることがあります。宿は、開業しただけでは続きません。地域から愛され、旅行者に選ばれ、時代の変化に対応しながら、少しずつ育てていくことで、初めて地域に根付く観光事業になります。 私は、旅館業とは単なる許可ビジネスではなく、「地域に人を呼び、地域を活性化する観光事業」だと位置づけています。 だからこそ、開業後の課題にも、真正面から向き合うことが大切です。 このシリーズでは、単なる制度解説ではありません。実際に現場で起こること。その背景にある法律や制度。そして、行政書士としてどのように伴走できるのか。そんな視点を大切にしながら、全13話(予定)でお届けしていきます。 旅館業をこれから始める方にも、すでに宿を運営している方にも、きっと役立つ内容になると思います。ぜひ最後まで、お付き合いいただければ幸いです。 行政書士田中穂積の視点 旅行業界で37年間、多くの宿を見てきました。繁盛する宿もあれば、残念ながら姿を消してしまった宿……

なぜ今、横浜では古民家宿が選ばれるのか|第2話

~旅行者が求める価値の変化と地域資源としての可能性~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回の記事では、「空き家を壊す前に考えたい、地域資源としての古民家」についてお話ししました。 空き家は、放置すれば負の遺産として地域の問題・課題になることがあります。しかし一方で、地域資源として活かせる可能性も秘めています。今回は、「なぜ今、古民家宿が選ばれるのか」について考えてみたいと思います。 私は旅行業界で37年間、数多くの旅館やホテルと関わってきました。その中で強く感じているのは、旅行者が宿に求める価値が、昔と今では少しずつ変わってきているということです。日曜日の今日は少し肩の力を抜いて、古民家や空き家の活用について考えてみましょう。☕ 「泊まる」から「体験する」へ かつて宿選びでは、駅や繁華街から近く賑やか。設備が新しい。部屋が広い。そんなことが大きな評価基準でした。もちろん、今でも大切な要素です。しかし最近では、「その土地でしか味わえない時間」を求める旅行者が増えているように感じます。図にするとこんなイメージです。【これまで】立地↓設備↓料金↓宿泊 【これから】地域らしさ↓体験↓思い出↓再訪(リピート) 宿泊そのものではなく、その土地で何を感じられるか。それが旅の価値になりつつあるのです。 古民家宿だからこそ生まれる体験 古民家宿には、最新ホテルにはない魅力があります。木の香り。梁の存在感。縁側から眺める庭。地域で受け継がれてきた建物だからこそ、その場所でしか味わえない空気があります。旅行者が求めているのは、豪華さだけではありません。「ここでしか過ごせない時間」なのだと思います。 地域を知ることが旅の魅力になる 旅行業時代、私は全国各地の旅館やホテルを訪れてきました。人気のある宿には共通点があります。👉地域を大切にしていることです。・近くの商店を紹介する・地元の食材を提供する・地域のお祭りを案内する宿だけではなく、宿を拠点に地域全体を楽しんでもらおうという姿勢があります。 宿は、地域への入口でもあるのです。古民家は地域の資源になる前回の記事でもお話ししましたが、私は空き家を単なる問題として見るのではなく、地域の資源とし……