02旅館業開業、経営支援 3rd page

口コミは良いのに再訪されない宿の見落とし|第11話

~「また利用したい」を次の予約につなげるために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「OTA依存は危険?旅館・ホテルの利益率低下を防ぐ方法」について考えました。OTAは、宿と新しいお客様をつなぐ大切な販売経路です。しかし、OTAを通じて多くのお客様に泊まってもらっても、毎回新しいお客様を集め続けなければならない状態だけでは、安定した経営にはつながりません。口コミには、「接客が丁寧だった」「食事がおいしかった」「また利用したい」と書かれている。評価も悪くない。それでも、実際には再訪はされていない。今回は、👉口コミ評価は良いのに、なぜ次の予約につながらないのかについて考えます。 「満足した」と「もう一度選ぶ」は同じではありません お客様が満足して帰ったからといって、必ず再訪してくれるとは限りません。旅行からしばらくたてば、宿の名前や予約方法を忘れてしまうことがあります。ほかにも魅力的な宿は、次々と目に入ってきます。つまり、「良い宿だった」という記憶だけでは、次の予約につながらないことがあります。もう一度選んでもらうには、・宿のことを思い出すきっかけ・再び訪れる理由・迷わず予約できる方法が必要です。 口コミは「結果」であって、再訪の仕組みではありません 良い口コミが増えることは、新しいお客様に宿を知ってもらううえで大切です。しかし、口コミを書いてもらっただけで、そのお客様との関係が続くわけではありません。口コミへの返信も、「ご宿泊ありがとうございました」「またのお越しをお待ちしております」だけで終わっていないでしょうか。例えば、「秋には周辺の紅葉が見頃になります」「次回は連泊で、別の地域も巡っていただけます」「春には今回とは違う食材を使った料理をご用意します」と伝えれば、お客様に次の季節を想像してもらえます。大切なのは、単に「また来てください」と伝えることではありません。👉次に訪れる理由を具体的に示すことです。 同じ宿へ再訪する理由を用意する 一度泊まった宿へ、もう一度泊まる理由は何でしょうか。宿が気に入った。スタッフに会いたい。季節の料理をもう一度味わいたい。前回行けなかった場所を訪れたい。家族や友人にも体験してもらいたい。理由は人によって……

OTA依存は危険?旅館・ホテルの利益率低下を防ぐ方法|第10話

~予約件数ではなく、宿に残る利益で販売経路を考える~こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 ここ数回は、外国人スタッフの雇用や在留資格、定着、更新、永住についてお話ししてきました。宿を長く続けるためには、人材だけでなく、収益構造を整えることも大切です。予約は入っている。客室も埋まっている。現場も忙しい。それでも、「思ったほど利益が残らない」ということがあります。その原因の一つが、OTAへの依存です。今回は、OTAを使うか使わないかではなく、👉OTAと自社予約をどう使い分け、宿に利益を残すかについて考えます。 OTAは必要な販売経路です OTAとは、宿泊施設を検索・比較し、そのまま予約できるオンライン予約サイトです。OTAには、・多くの旅行者へ宿を知ってもらえる・開業直後でも予約を獲得しやすい・海外や遠方の旅行者へ販売できる・空室を販売しやすいという大きな利点があります。 なお、宿泊施設の販売方法を考えるうえでは、OTAだけでなく、旅行会社との契約や旅行業登録の仕組みを理解しておくことも大切です。旅行業登録の種類や区分については、以前の記事でも整理しています。▶ 旅行業登録の種類と区分の選び方 特に、新しく開業した宿。知名度の低い宿。外国人旅行者を受け入れたい宿。こうした施設にとって、OTAは重要な集客手段です。問題はOTAを使うことではありません。👉予約の大部分をOTAに頼り、自社で販売方法を選べなくなることです。 予約が増えても、利益が増えるとは限りませんOTA経由の予約には、手数料や販売費用がかかります。さらに、・割引プラン・会員向け価格・ポイント負担・キャンペーン参加・広告掲載などによって、宿に残る金額が少なくなることがあります。同じ1泊2万円の予約でも、自社サイト。電話。国内OTA。海外OTA。旅行会社。どこから予約が入ったかによって、最終的に宿へ残る金額は異なります。そのため、予約件数や売上だけでなく、👉販売経路ごとの手取り額を確認することが大切です。 OTA依存は予約比率だけでは判断できません OTA予約が多くても、閑散期の空室を効率よく販売できている。海外から新しいお客様を呼び込めている。OTAで知ったお客……

横浜の古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認|第5話

~改修してから気付く前に、図面を持って事前相談する~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話古民家カフェを開業するときに必要となる、飲食店営業許可についてお話ししました。古民家の落ち着いた雰囲気。昔ながらの梁や柱。庭を眺めながら過ごせる客席。地域の食材を使った料理やお菓子。こうした魅力を生かして、古い住宅をカフェとして活用したいと考える方も増えています。しかし、古民家カフェの開業は、「古い住宅に厨房設備を入れれば営業できる」というものではありません。飲食店として営業するためには、保健所の施設基準を満たす必要があります。また、住宅として使われてきた建物へ不特定多数のお客様を迎え、厨房で火や電気を使うことになれば、消防上の確認も必要になります。 今回のテーマは、「古民家カフェ開業で見落としやすい保健所と消防の確認」です。改修工事を始めてから大きな変更が必要にならないよう、開業前に確認しておきたい実務を整理していきます。 飲食店営業許可だけを申請すればよいわけではありません 古民家カフェを開業する場合、まず思い浮かぶのが飲食店営業許可です。もちろん、飲食物を調理してお客様へ提供するのであれば、原則として飲食店営業許可の検討が必要です。しかし、申請書を提出すれば、そのまま許可されるわけではありません。営業施設が、食品衛生法や条例に基づく施設基準へ適合している必要があります。横浜市では、営業許可までの流れを、1.事前相談2.営業許可申請3.施設検査4.営業許可証の交付・営業開始と案内しています。特に重要なのが、最初の事前相談です。横浜市は、施設工事の着工前に店舗の平面図を用意し、営業施設を管轄する区の福祉保健センター生活衛生課へ相談するよう案内しています。取扱食品や調理量などによっても、必要な営業許可や設備の判断が変わります。👉工事が終わってから保健所に相談するのでは遅いことがあります。まず図面の段階で相談する。これが、古民家カフェ開業の重要な第一歩です。 住宅用の台所をそのまま使えるとは限りません 古民家には、昔ながらの台所が残っていることがあります。立派な流し台がある。水道も通っている。家庭で長年料理をしてきた。その……

外国人スタッフが永住を考え始めたとき宿が知っておきたいこと|第9話

~長く働く人材を地域の力にするために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「外国人スタッフの在留資格更新で宿が気を付けたいこと」についてお話ししました。外国人スタッフが長く働くためには、在留期限を確認し、更新時期を把握し、雇用契約や勤務実態を整理しておくことが大切です。在留資格の更新は、外国人本人だけの問題ではありません。宿側にとっても、大切な人材に安心して働き続けてもらうための重要な実務です。 今回のテーマは、「外国人スタッフが永住を考え始めたとき宿が知っておきたいこと」です。外国人スタッフが長く働いてくれるようになると、本人の将来のことも少しずつ見えてきます。日本で長く暮らしたい。家族を呼びたい。転職せずに同じ地域で働き続けたい。将来的には永住を考えたい。そのような思いを持つ外国人スタッフもいます。永住は本人の問題ではあります。しかし、安定した雇用、収入、納税、社会保険、勤務実態、生活の安定など、日々の働き方とも関係してきます。 今回は、外国人スタッフが永住を考え始めたとき、宿側が知っておきたい視点について旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 永住は突然出てくる話ではない 外国人スタッフから、「将来、永住を考えています」と相談されると、宿側は少し驚くかもしれません。しかし、本人にとっては突然の話ではないことが多いです。日本で働き始めた。職場に慣れてきた。地域にも少しずつ馴染んできた。仕事を続けたいと思うようになった。家族との将来を考えるようになった。このような積み重ねの先に、永住という希望が出てくることがあります。つまり、👉永住は単なる入管手続きではありません。その人が日本でどのように働き、どのように暮らし、どの地域に根付いていくのかという話でもあります。 旅館・ホテルにとっても、外国人スタッフが長く働きたいと思ってくれることは、大きな意味があります。業務に慣れている。お客様対応ができる。地域のことを理解している。後輩スタッフを教えられる。海外のお客様との橋渡しができる。このような人材は、宿にとって大切な財産です。 宿側が永住を保証することは決してできない ここで大切なのは、宿側が永住許可を保証できるわけではないという……

外国人スタッフの在留資格更新で宿が気を付けたいこと|第8話

~更新時期・勤務実態・雇用管理をあいまいにしない~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由」についてお話ししました。外国人スタッフが長く働くためには、仕事だけでなく、生活面の安心、職場での相談体制、日本人スタッフとの関係づくり、そして在留資格への不安を減らすことが大切です。外国人スタッフにとって、在留資格は日本で働き続けるための土台です。宿側から見ると、まじめに働いてくれているスタッフであっても、在留期限や更新時期の管理が曖昧になっていると、思わぬところで困ることがあります。 今回のテーマは、「外国人スタッフの在留資格更新で宿が気を付けたいこと」です。外国人スタッフが長く働くためには、在留資格の更新時期をきちんと確認しておくことが大切です。在留期限はいつまでなのか。更新準備はいつから始めるのか。雇用契約や勤務実態は整理できているのか。採用時と実際の業務内容にズレはないのか。また、転職者を採用した場合、何を確認すべきなのか。今回は、外国人スタッフの在留資格更新で宿側が気を付けたい実務について旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 在留資格更新は本人だけの問題ではない 在留資格の更新は、基本的には外国人本人に関わる手続きです。しかし、宿側がまったく関係ないわけではありません。なぜなら、就労系の在留資格では、どこで働いているのか、どのような業務をしているのか、雇用契約はどうなっているのか、勤務実態はどうか、という点が関係してくるからです。宿側が、「更新は本人がやるものだから分からない」「在留カードは採用時に見たから大丈夫」「期限は本人が管理しているはず」と考えていると、更新時期になって慌てることがあります。外国人スタッフ本人も、制度を十分に理解しているとは限りません。日本語での案内が難しい。書類の準備に不安がある。何を会社に頼めばよいか分からない。更新時期が近づいて初めて焦る。こうしたことは珍しくありません。 在留資格更新は、本人だけに任せきりにするのではなく、宿側も必要な範囲で確認することが大切です。 まず在留期限を一覧で管理する 最初に行うべきことは、在留期限の管理です。外国人スタッフを雇用している場合、少……

旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由|第7話

~生活支援と職場づくりが定着率を左右する~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」についてお話ししました。外国人スタッフを採用した後、本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。 今回のテーマは、「旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由」です。外国人スタッフを採用しても、すぐに辞めてしまう。仕事はまじめにしているのに、 どこか不安そうに見える。日本人スタッフとの関係がうまくいかない。生活面の悩みを誰にも相談できていない。こうした状態が続くと、本人も宿側も疲れてしまいます。今回は、外国人スタッフが長く働ける宿と、定着しにくい宿の違いについて、生活支援、職場づくり、相談体制、将来の在留資格や永住への視点も含めて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 外国人スタッフが辞める理由は「仕事」だけではない 外国人スタッフが定着しないと聞くと、宿側はまず仕事の問題を考えます。仕事が合わなかったのか。接客が難しかったのか。日本語が足りなかったのか。勤務時間が合わなかったのか。もちろん、仕事の内容や勤務条件は大切です。しかし、外国人スタッフが辞める理由は、仕事だけとは限りません。住む場所に困っている。病院の行き方が分からない。役所の手続きが不安。日本語でうまく相談できない。職場では笑顔でも、生活面で孤立している。家族のことや将来の在留資格に不安がある。このような悩みを抱えていることがあります。宿側から見ると、「仕事は問題なくできている」ように見えても、本人の中では不安が積み重なっている場合があります。定着を考えるときは、仕事だけでなく、生活と将来の不安も見ることが大切です。 定着しにくい宿の共通点 外国人スタッフが定着しにくい宿には、いくつかの共通点があります。 一つ目は、相談できる人が決まっていないことです。仕事で困ったとき、誰に聞けばよいのか。生活で困ったとき、どこまで相談してよいのか。在留資格や……

横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話

~古民家を地域の小さな観光拠点にするために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第4話です。 前回は、「古民家を宿にするには何が必要か」についてお話ししました。古民家を宿として活用するには、旅館業許可、建築基準法、消防法、衛生管理、近隣との関係など、確認すべきことがたくさんあります。しかし、古民家の活用方法は宿だけではありません。地域の人が集まるカフェ。観光客が立ち寄る休憩場所。地元の食材を味わえる小さな飲食店。週末だけ開く古民家カフェ。イベントや展示と組み合わせた交流スペース。こうした使い方も、古民家や空き家の大切な活用方法です。 これまで宿を中心にお話ししてきましたので、今回は少しサプライズかもしれません。でも私は、古民家カフェも立派な観光まちづくりの入口になると考えています。宿泊しなくても、その地域を訪れる理由になる。地域の人と観光客が出会う場所になる。地元の食材や文化を伝える場所になる。空き家だった建物に、もう一度人の流れを生み出す場所になる。古民家カフェには、宿とはまた違った魅力があります。 ただし、カフェとして営業するためには、雰囲気や想いだけでは始められません。飲食店営業許可。厨房設備。食品衛生責任者。建物の用途。消防への確認。近隣環境。駐車場や騒音。こうした点を、開業前に確認しておく必要があります。 今回は、古民家カフェを始める前にまず確認したいことについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 古民家カフェは地域の入口になる 古民家カフェというと、まず思い浮かぶのは、落ち着いた空間、木のぬくもり、畳の部屋、庭を眺める席、地元野菜を使ったランチ、手作りのスイーツ、ゆっくり流れる時間。そんなイメージではないでしょうか。 確かに、古民家カフェには、普通の店舗にはない魅力があります。しかし私が注目したいのは、古民家カフェが単なる飲食店にとどまらないことです。観光客にとっては、その地域を歩くきっかけになります。地域の人にとっては、日常の中で集まれる場所になります。移住を考えている人にとっては、地域の空気を知る入口になります。空き家所有者にとっては、……

外国人雇用で失敗する宿の共通点|第6話

~採用後の教育・生活支援・現場定着の落とし穴~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識についてお話ししました。外国人スタッフを雇用するときは、「人手が足りないから採用する」だけでは不十分です。その人の在留資格で、その宿で、その業務を行えるのか。ここを確認する必要があります。宿泊業では、フロント、予約管理、通訳、清掃、レストランサービス、接客、企画・広報など、さまざまな業務があります。しかし、外国人スタッフにどの業務を任せられるかは、👉在留資格や雇用内容との関係で確認が必要です。今回のテーマは、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」です。 外国人スタッフを採用した後、👉本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。この数話では、旅館・ホテルの経営者だけでなく、日本で働く外国人スタッフの方にも読んでいただけるように、できるだけ分かりやすくお話ししていきます。 日本で働き続けたい外国人の方にとっても、在留資格、雇用契約、職場での役割、更新時期、将来の永住などは、とても大切なテーマです。宿側と外国人スタッフ本人が、お互いに安心して働ける関係を作ること。それが、外国人雇用を成功させる第一歩です。 外国人雇用は「採用して終わり」ではない 外国人スタッフを採用できると、宿側はほっとするかもしれません。人手不足が少し楽になる。外国語対応ができる。インバウンドのお客様にも対応しやすくなる。若い人材が増える。現場に新しい風が入る。こうした期待はとても自然です。しかし、外国人雇用は、採用して終わりではありません。むしろ、👉採用した後から本当の実務が始まります。業務をどう教えるのか。誰が教育担当になるのか。困ったときに誰へ相談するのか。在留資格の更新時期をどう管理するのか。雇用契約の内容と実際の業務が合っているのか。生活面で困っていることはないか。現場の日本人スタッフとの関係はうまくいっているか。こ……

旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

~業務内容と在留資格のズレを防ぐために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か人手不足の現実についてお話ししました。人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する宿は増えています。しかし、外国人雇用は、単に人手を補う方法ではありません。業務内容、在留資格、教育体制、生活面の支援、現場でのコミュニケーションなど、事前に整理しておくべきことが多くあります。今回は、さらに一歩進んで、「在留資格」について考えてみたいと思います。 宿泊業で外国人を雇うとき、よくある誤解があります。「日本に住んでいる外国人なら働ける」「アルバイトなら問題ない」「フロントも清掃も配膳も、必要に応じて任せればよい」「人手不足だから、とにかく来てもらえれば助かる」しかし、外国人が日本で働く場合には、在留資格と業務内容の関係を確認する必要があります。在留資格によって、できる仕事と注意すべき仕事が変わるからです。旅館・ホテルの現場では、フロント、予約管理、通訳、企画・広報、接客、清掃、レストランサービス、送迎、夜間対応など、さまざまな業務があります。そのすべてを、同じように考えることはできません。 今回は、旅館業で外国人を雇う前に知っておきたい在留資格の基礎知識について、行政書士としての視点から分かりやすく整理していきます。 在留資格とは何か まず、在留資格とは何でしょうか。簡単に言えば、外国人が日本に滞在し、どのような活動をすることができるのかを示す資格です。観光で来ている人。留学している人。会社で働いている人。日本人と結婚している人。永住している人。 それぞれ、日本でできる活動の範囲が異なります。宿泊業で外国人を雇う場合には、その人が持っている在留資格で、その業務を行えるのかを確認する必要があります。ここを確認しないまま採用してしまうと、本人にも宿側にも大きなリスクがあります。外国人雇用では、「人柄が良い」「日本語が話せる」「すぐ働けると言っている」だけで判断してはいけません。まず確認すべきなのは、👉在留カードと在留資格です。 宿泊業で関係しやすい在留資格 旅館・ホテルで外国人を雇用する場合、関係しやすい在留資格はいくつかあります。代表的なものと……

旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か?人手不足の現実|第4話

~採用前に考えたい業務整理と受け入れ体制~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊についてお話ししました。宿泊業界では、人手不足が大きな課題になっています。しかし、人が足りないこと以上に、業務の流れが整理されていないこと。担当者が曖昧なこと。引き継ぎが弱いこと。現場の仕組みが整っていないこと。こうした問題が、宿の運営を苦しくしている場合があります。今回のテーマは、「外国人雇用」です。 人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する旅館・ホテルも増えています。フロントで外国語対応ができる人材がほしい。清掃やレストランサービスを支えてほしい。インバウンド対応を強化したい。若い人材を確保したい。こうした理由から、外国人雇用に関心を持つ宿は少なくありません。しかし私は、外国人雇用を「人手不足を一気に解決する魔法の方法」のように考えるのは危険だと思っています。外国人スタッフを採用する前に、宿側が整理しておくべきことがあります。業務内容。在留資格。教育体制。生活面の支援。現場でのコミュニケーション。相談できる体制。こうした準備がないまま採用してしまうと、外国人スタッフも宿側も、お互いに苦しくなってしまいます。 今回は、外国人雇用を検討する前に整理しておきたい宿側の準備について、旅行業37年の経験と特に行政書士としての視点から考えていきます。 外国人雇用は人手不足の「救世主」なのか 人手不足に悩む宿にとって、外国人スタッフの採用は大きな可能性があります。特に、インバウンド需要が高まる中で、外国語対応ができるスタッフ。異文化理解のあるスタッフ。海外のお客様と自然にコミュニケーションを取れるスタッフ。こうした人材は、宿の魅力を高める力になります。また、日本で働きたいと考える外国人の中には、真面目で意欲が高く、長く宿泊業に関わりたいと考えている方もいます。その意味で、外国人雇用は、宿にとって大きなチャンスです。 しかし、外国人スタッフを採用すれば、すぐに人手不足が解決するわけではありません。むしろ、受け入れ体制が整っていない宿では、思った業務を任せられない。在留資格との関係で業務内容に問題が出る。教育に時間がかかる。現場で意思疎通がうまくいかない。生活面……