宿泊施設で朝食や軽食を出したい|旅館業の許可だけで大丈夫?|第10話

宿泊施設で朝食や軽食を出したい|旅館業の許可だけで大丈夫?|第10話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。

前回は、
キッチンカーは観光ビジネスになる?
というテーマから、
何を売るのか。
どこで売るのか。
どんな営業許可が必要なのか。
を、車を購入する前に整理することが大切だとお話ししました。
今回は、その逆です。
外からキッチンカーを呼ぶのではなく、
宿泊施設の側が、自分たちで朝食や軽食を提供したい
というケースです。
たとえば、
「素泊まりだけだったけれど、朝食も出したい」
「宿泊者にコーヒーや軽食を提供したい」
「古民家宿の一角でカフェもやってみたい」
「宿泊者だけでなく、近所の人にも食事を出したい」
そんなときに出てくるのが、
「旅館業の許可があるなら、そのまま食事も出せるの?」
という疑問です。
今回の結論を先にお伝えします。
👉 旅館業の営業許可と、食品を調理・提供するための手続は別に考える必要があります。
大切なのは、
誰に、何を、どこまで提供するのか
を最初に整理することです。

1.「宿泊」と「飲食」は別の営業として考える

旅館業は、
施設を設けて、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業です。
横浜市でも、旅館業を始める場合には旅館業法に基づく営業許可が必要とされています。横浜市
一方で、
料理を作る。
飲み物を提供する。
食品を販売する。
といった行為は、食品衛生法上の確認が必要になります。横浜市では、
営業内容に応じて食品営業許可や営業届の手続が設けられています。横浜市
つまり、
👉 「泊める許可」と「食べてもらうための手続」は同じではありません。
ここを分けて考えることが最初のポイントです。

2.まず「何を出したいのか」を決める

「朝食を出したい」
と言っても、内容はさまざまです。
たとえば、
コーヒーだけ
市販のパンや飲料
簡単なモーニング
その場で調理する朝食
夕食まで提供する
では、必要な設備や確認内容も変わります。
ですから、
厨房を作ったり設備を購入したりする前に、
どんな食品を、どんな方法で提供したいのか
を決めておくことが大切です。
👉 設備を先に作らず、まずメニューと調理方法を整理する。
これはキッチンカーと同じ考え方です。

3.宿泊者だけに出すのか、外部客にも売るのか

もう一つ重要なのが、
誰に提供するのか
です。
宿泊者だけに朝食を提供する。
宿泊者以外にもランチを販売する。
地域の人が利用できるカフェにする。
テイクアウトも始める。
こうして営業範囲を広げると、
事業の形も変わっていきます。
特に、
「宿泊者向けのサービス」
から、
「一般のお客様にも利用してもらう飲食店」
へ広げる場合には、営業時間、客席、動線、厨房設備なども含めて早めに確認した方がよいでしょう。
👉 「誰に売るのか」が変わると、必要な準備も変わります。

4.改修する前に保健所へ相談する

宿泊施設で飲食を始めるときに避けたいのが、
厨房を作った後で、
「この設備では足りません」
となることです。
横浜市では、食品営業の許可や届出について、施設所在地の区福祉保健センター生活衛生課で
手続・相談を受け付けています。
一方、旅館業についても、計画の早い段階で区福祉保健センター生活衛生課へ相談するよう案内されています。
宿泊と飲食の両方が関係するなら、
👉 改修前に「宿泊施設でこういう飲食を始めたい」と具体的に相談する。
これが一番確実です。

5.古民家宿では特に「後から追加」に注意する

古民家や空き家を宿泊施設として活用している場合、
「せっかくだから朝食も」
「カフェも併設したい」
「地域の人にも来てもらいたい」
と、事業を広げたくなることがあります。
これはとても自然な流れです。
ただし、
古い建物は、
厨房を作る場所。
給排水
換気
動線
消防
建築上の用途
など、後から変更しにくい部分もあります。
ですから、
宿泊を始めた後に飲食を追加するより、
最初から、
宿泊+飲食+物販+体験
まで将来像を考えておくと、無駄な改修を減らせます。
👉 古民家活用では、「今やること」だけでなく「将来やりたいこと」まで先に伝える。
これが重要です。

6.外部の飲食事業者と組む方法もある

必ずしも、
宿泊施設自身が厨房を持って飲食を提供する必要はありません。
たとえば、
地域の飲食店から朝食を届けてもらう。
キッチンカーに来てもらう。
近隣店舗の朝食券を宿泊プランに組み込む。
地域の事業者と連携して食体験を作る。
という方法もあります。
こうすれば、
宿泊施設だけで全部を抱え込まずに、
地域の飲食店と一緒に宿泊者の満足度を高める
こともできます。
ただし、
誰が料理を提供するのか。
誰が代金を受け取るのか。
キャンセル時はどうするのか。
などの役割分担は決めておきましょう。
👉 自分で飲食を始める以外にも、地域と連携する方法があります。

今日の実務ワンポイント

宿泊施設で朝食や軽食を始めたいと思ったら、次の5つを整理してください。
①何を提供する?
②どこで調理する?
③宿泊者だけに出す?
④一般客にも販売する?
⑤設備を作る前に保健所へ相談した?
👉 「朝食を出したい」ではなく、「誰に、何を、どう出すか」まで具体化する。
これが今回の実務ワンポイントです。

まとめ

「旅館業の許可があれば、そのまま朝食や軽食も出せる?」
今回の答えは、
👉 宿泊と飲食は別に確認する必要があります。
旅館業の許可。
食品営業の許可・届出。
設備。
調理方法。
提供する相手。
それぞれを整理してから始めることが大切です。
特に、
厨房や客席を作った後では、
修正に費用がかかることもあります。
ですから、
「食事もやりたい」と思った時点で、まず事業の形を整理して相談する。
これが一番の近道です。

今日のチェックポイント

□提供したいメニューを決めている
□調理方法を整理している
□宿泊者向けか一般客向けか決めている
□必要な食品営業の手続を確認している
□設備を作る前に相談している
□将来カフェや物販を行う可能性も考えている
□外部の飲食事業者との連携も検討している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「誰に、何を、どこで提供したいか」
を書き出してみてください。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて、
宿泊施設の印象は、
客室だけで決まるものではないと感じています。
朝食。
地域の食。
スタッフとの会話。
周辺のお店。
こうした体験も含めて、
旅行者はその地域を記憶します。
だから、
宿泊施設が飲食へサービスを広げることには大きな可能性があります。
ただし、
「お客様に喜んでもらいたい」
という思いだけで設備を作ってしまうと、
後から許認可や構造上の問題が出ることがあります。
👉 やりたいサービスを先に描き、それから必要な手続を確認する。
行政書士としても、
宿泊許可だけを見るのではなく、
その先にどんな観光ビジネスを作りたいのかまで一緒に整理することが大切だと考えています。

Q&A|宿泊施設で飲食を提供したい

Q1.旅館業の許可があれば朝食も提供できますか?

旅館業の許可と食品衛生法上の手続は別です。
提供内容によって食品営業許可や届出の確認が必要になるため、
事前に施設所在地の区福祉保健センター生活衛生課へ相談しましょう。

Q2.宿泊者だけに簡単な朝食を出す場合も確認が必要ですか?

提供する食品や調理方法によって扱いが変わるため、
「宿泊者だけだから大丈夫」
と自己判断せず、具体的な提供方法を伝えて確認することをおすすめします。

Q3.自分で厨房を作らず、地域のお店から食事を届けてもらう方法はありますか?

考えられます。
地域の飲食店やキッチンカーと連携することで、宿泊施設自身がすべてを運営しなくても食のサービスを提供できます。
ただし、販売主体、料金、受渡し、キャンセルなどの役割分担は整理しておきましょう。

次回予告

宿泊施設に、
飲食という新しいサービスを加える方法を考えました。
では、
もっと複数の事業を一つの場所で行ったらどうでしょう。
古民家を活用して、
宿泊
カフェ
地域商品の販売
ワークショップ
を一緒に始めたい。
そんな相談も考えられます。
でも、
「古民家一棟でいろいろやる場合、許可は一つでいいの?」
という疑問が出てきます。
次回は、
古民家でカフェや物販も始めたい|宿と一緒にやるとき何を確認する?|第11話
として、
👉 一つの建物で複数の観光ビジネスを行うとき、どこから整理すればよいのか
を考えます。

\ 宿泊施設のサービスを広げたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・宿泊施設で朝食や軽食を始めたい
・古民家宿にカフェを併設したい
・飲食や物販まで事業を広げたい
・地域の飲食店と連携したい
・どの許認可を先に確認すればよいか分からない
といった企画・改修前の段階からご相談いただけます。
旅行業界37年の経験と行政書士としての法務・許認可の視点から、
宿泊許可を取ることだけでなく、その場所をどのような観光ビジネスに育てるのか
まで一緒に整理します。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。