イベント参加者のホテルもまとめて手配したい|主催者がやっても大丈夫?|第4話

こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。
前回は、
ホテルのフロントで地域体験を予約してあげたい
というケースから、
案内するだけなのか。
予約まで受けるのか。
代金まで預かるのか。
という、宿泊施設と地域サービスの関わり方を考えました。
今回は立場を変えて、
イベントを主催する側
から考えてみます。
たとえば、
横浜でスポーツ大会を開催する。
展示会を開く。
学会や研修会を開催する。
音楽イベントを企画する。
全国から参加者が集まるので、
「せっかくだから近くのホテルもまとめて予約してあげよう」
と思った。
参加者にとっては、とても便利です。
でも、ここで出てくるのが、
「イベント主催者がホテルまで手配しても大丈夫?」
という疑問です。
今回の結論を先にお伝えします。
👉 イベント主催者だから自由に宿泊を手配できる、というわけではありません。
ポイントは、イベントの案内をしているのか、参加者のために他社の宿泊を手配しているのか
です。
- 1. 1.ホテルを「紹介する」のと「予約する」のは違います
- 2. 2.ホテルを参加者のために手配すると、旅行業法の確認が必要になる
- 3. 3.「宿泊代は実費だから大丈夫」とは限りません
- 4. 4.「参加費+宿泊費をまとめて○万円」は特に整理しておきたい
- 5. 5.「ホテルを押さえておくだけ」なら大丈夫?
- 6. 6.一番シンプルなのは「参加者とホテルが直接契約する」形
- 7. 7.便利にしたいなら「旅行会社に任せる」という方法もある
- 8. 8.まず「イベント」と「宿泊」の契約を分けて書いてみる
- 9. 今日の実務ワンポイント
- 10. まとめ
- 11. 今日のチェックポイント
- 12. 行政書士田中穂積の視点
- 13. Q&A|イベント参加者のホテルを手配したい
- 14. 次回予告
- 15. \ イベントと観光を組み合わせたい方へ /
- 16. クイズ!イベント参加者のホテル手配はどこまでできる?
1.ホテルを「紹介する」のと「予約する」のは違います
まずは、シンプルなケースです。
イベントの案内ページに、
「会場周辺にはこのようなホテルがあります」
と掲載する。
各ホテルのホームページへリンクする。
参加者自身が、
ホテルを選び。
ホテルへ申し込み。
ホテルへ料金を支払う。
この形なら、
主催者の役割は基本的に、
宿泊情報の案内
です。
では、
「宿泊をご希望の方はこちらからお申し込みください」
と主催者が希望を集め、
ホテルへまとめて予約する場合はどうでしょう。
ここでは、
主催者が参加者とホテルの間に入ることになります。
👉 「ホテルを教える」のと、「参加者の代わりにホテルを取る」のは同じではありません。
まずここを分けて考えます。
2.ホテルを参加者のために手配すると、旅行業法の確認が必要になる
旅行業法では、
他人が提供する宿泊サービスについて、
代理
媒介
取次
などを行うことが、基本的な旅行業務に含まれています。
つまり、
イベント主催者だから。
スポーツ団体だから。
会社だから。
NPOだから。
という肩書きだけで判断するものではありません。
見るべきなのは、
実際に何をしているか
です。
参加者から宿泊希望を受ける。
主催者がホテルへ予約する。
部屋を割り当てる。
宿泊代を集める。
キャンセルを受け付ける。
このように関与が増えていけば、
単なる会場案内とは役割が変わってきます。
👉 「イベントの付随サービスだから大丈夫」と決めつけない。
ここが今回、一番重要なところです。
3.「宿泊代は実費だから大丈夫」とは限りません
ここもよくある考え方です。
「ホテル代はそのまま参加者から集めるだけ」
「宿泊では利益を取っていない」
「イベント参加費で利益が出るだけ」
だから旅行業ではない。
そう単純には判断できません。
旅行業法上の「報酬」は、
宿泊代に利益を上乗せした(「下駄をはく」)場合だけではありません。
観光庁の旅行業法施行要領では、
旅行者から直接手配料金を取らなくても、
旅行サービスの手配と経済的収入との間に相当の関係があれば、報酬と認められる場合があるとされています。
ですから、
「宿泊で利益を取っていないから大丈夫」
ではなく、
イベント参加費。
宿泊代。
ホテルからの手数料。
その他の収入。
が、どのような関係になっているのかを確認します。
4.「参加費+宿泊費をまとめて○万円」は特に整理しておきたい
たとえば、
大会参加費+ホテル1泊 20,000円
研修参加費+宿泊 35,000円
という形で募集したらどうでしょう。
参加者から見ると、
イベントと宿泊が一つの商品に見えます。
この場合、
イベント主催者は、
イベントだけを販売しているのか。
宿泊も含めて提供しているのか。
ホテルとの契約は誰がしているのか。
参加者は誰と宿泊契約をしているのか。
を整理する必要があります。
観光庁の施行要領でも、旅行以外のサービスと運送・宿泊の対価を包括して徴収し、
不可分一体として宿泊等を手配する場合には、「報酬」の判断対象となる例が示されています。
👉 イベント代とホテル代を一つにすれば簡単、とは限りません。
むしろ、まとめる前に確認したいところです。
5.「ホテルを押さえておくだけ」なら大丈夫?
イベントでは、
「参加者が多いから、主催者側でホテルを50室押さえておこう」
ということもあります。
ここも、
部屋を押さえることだけ
では判断できません。
その後、
誰が参加者から申込みを受けるのか。
誰がホテルとの契約当事者になるのか。
誰が宿泊料金を受け取るのか。
キャンセル料を誰が請求するのか。
余った部屋のリスクを誰が負うのか。
を見る必要があります。
主催者名義で部屋を確保し、
参加者へ割り振り、
宿泊代も受け取るのであれば、
単なるホテル紹介とはまったく異なります。
👉 「部屋を確保した」より、その後の取引の流れを見る。
ここでも第2話から続いている考え方が使えます。
6.一番シンプルなのは「参加者とホテルが直接契約する」形
宿泊を便利に案内したい。
でも、
主催者自身が宿泊手配の主体になる必要はない。
そんな場合は、
参加者とホテルが直接やり取りする形も考えられます。
たとえば、
主催者が周辺ホテルを紹介する。
専用予約ページをホテル側に用意もらう、あるいはホテルHPのリンクを貼る。
参加者がそこから直接予約する。
宿泊代もホテルへ直接支払う。
変更・キャンセルもホテルと参加者の間で行う。
このようにすれば、
主催者の役割が、
イベント運営と宿泊情報の提供
に整理しやすくなります。
もちろん、
「直接予約にすれば必ず問題ない」
という意味ではありません。
👉 誰が宿泊契約を成立させているのかを明確にする。
そのための一つの考え方です。
7.便利にしたいなら「旅行会社に任せる」という方法もある
イベント規模が大きくなると、
参加者から、
「ホテルも一緒に申し込みたい」
「前泊・後泊もお願いしたい」
「交通も手配してほしい」
「家族の分も取ってほしい」
という要望が出てきます。
主催者がすべて対応しようとすると、
旅行業法だけではなく、
変更
取消し
返金
ホテルとの精算
参加者への案内
などの実務も増えていきます。
そんな場合には、
旅行会社と連携して宿泊手配部分を任せる
という方法がいいでしょう。
主催者はイベントを運営する。
旅行会社は宿泊や交通を扱う。
役割を分けるわけです。
👉 自分たちですべて抱えることが、必ずしも参加者にとって一番便利とは限りません。
8.まず「イベント」と「宿泊」の契約を分けて書いてみる
イベント主催者から相談を受けたとき、
私はまず、
誰が誰と契約しているかを分けて考えます。
イベント
参加者
↓
イベント主催者
宿泊
参加者
↓
誰?(宿泊者・イベント主催者・旅行会社)
↓
ホテル
この「誰?」に、
イベント主催者が入るのか。
旅行会社が入るのか。
ホテルと直接なのか。
を確認します。
そして、
誰がお金を受け取る?
誰が予約を確定する?
誰がキャンセルを受ける?
を書き足します。
👉 イベント名や募集ページから考えるのではなく、契約の矢印から考える。
これが一番整理しやすい方法です。
今日の実務ワンポイント
イベント参加者の宿泊を用意したいときは、次の5つを確認してみてください。
①ホテルは紹介だけ?主催者が予約する?
②参加者は誰と宿泊契約をする?
③宿泊代は誰が受け取る?
④ホテルから手数料や割戻しを受ける?
⑤イベント参加費と宿泊代をまとめていない?
👉 この5つを書き出してから募集ページを作る。
これが今回の実務ワンポイントです。
まとめ
「イベント参加者のホテルもまとめて手配したい。主催者がやっても大丈夫?」
今回の答えは、
👉 イベント主催者だから自由にできる、とは限りません。
ホテルの情報を案内して、
参加者自身がホテルと直接契約する。
これは比較的分かりやすい形です。
一方、
参加者の宿泊申込みを受ける。
主催者がホテルへ予約する。
宿泊代を集める。
イベント参加費と宿泊をセットにする。
となれば、
旅行業法上の確認が重要になります。
観光庁も、旅行業に該当するかは、対価の設定、募集の範囲、反復継続性などを踏まえて総合的に判断するとしています。
だから、
「一回だけだから」
「利益を取らないから」
「イベントの参加者だけだから」
と一つの理由だけで判断しないこと。
👉 誰が予約し、誰と契約し、誰がお金を受け取るのか。
まずそこから整理しましょう。
今日のチェックポイント
□宿泊は情報提供だけか、手配まで行うか決めている
□参加者が誰と宿泊契約をするか分かっている
□宿泊申込みを誰が受けるか決めている
□宿泊代を誰が受け取るか決めている
□ホテルから手数料等を受け取るか確認している
□参加費と宿泊代をまとめる場合の取引を整理している
□変更・取消しの窓口を決めている
□必要に応じて旅行会社への委託も検討している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
👉「イベント参加」と「ホテル予約」を二本の矢印に分ける。
そこから始めてみましょう。
行政書士田中穂積の視点
旅行業界で37年間仕事をしてきて、
イベントと旅行は、とても相性がよいものだと感じています。
スポーツ大会
展示会
ライブ
学会
企業研修
地域イベント
人が移動すれば、
宿泊
交通
食事
観光
も生まれます。
地域にとっては大きな観光需要です。
だから、
イベント主催者が宿泊まで便利にしてあげたい
という発想自体は、とても自然です。
ただし、
便利にしようとして主催者が予約・集金・変更・取消しまで抱え込むと、
いつの間にか、
イベント運営とは別の役割
を持つことになります。
そこで大切なのは、
「旅行業法があるから宿泊を案内しない」
ことではありません。
👉 主催者・ホテル・旅行会社が、それぞれ何を担当するかを先に決める。
そうすれば、
参加者には便利で、
主催者には無理がなく、
地域にも宿泊・観光消費が生まれる。
旅行業法を、
観光ビジネスを止めるためではなく、役割を整理するために確認する。
私はそのように考えています。
Q&A|イベント参加者のホテルを手配したい
Q1.近隣ホテルの一覧をイベントホームページに載せるだけでも旅行業になりますか?
ホテルの情報を掲載し、参加者自身がホテルへ直接申し込み、ホテルと宿泊契約を結ぶだけであれば、
主催者が宿泊の代理・媒介・取次を行う(旅行業)とは異なります。
大切なのは、主催者が予約成立にどこまで関与しているか
です。
Q2.宿泊代を実費だけ集めれば旅行業になりませんか?
「利益を上乗せしていない」という一点だけでは判断できません。
旅行業法上の「報酬」は、旅行者から直接受け取る手配料だけに限られず、
旅行サービスの手配と経済的収入との関係を含めて判断されます。国土交通省
イベント参加費など別の収入との関係も含めて、具体的な仕組みを確認する必要があります。
Q3.参加者の宿泊まで用意したい場合、どうすればいいですか?
主催者自身がどこまで関与する必要があるのかを、まず整理します。
参加者とホテルの直接予約で対応できるのか。
専用予約ページを用意するのか。
あるいは、
宿泊や交通までまとめて扱いたいので旅行会社へ依頼するのか。
👉 「ホテルを用意したい」からすぐ予約を始めず、販売・手配の形を先に決めることをおすすめします。
次回予告
イベントとホテルの関係を整理しました。
では次は、
さらに観光商品らしい組み合わせです。
たとえば、
「まち歩きのあと、地元のレストランでランチ」
「ものづくり体験+地域の食事」
「農業体験+地元料理」
体験と食事を一つにすると、
お客様には分かりやすく、
地域にもお金が落ちやすくなります。
そこで出てくるのが、
「体験料と食事代をまとめて受け取っても大丈夫?」
という疑問です。
次回は、
体験料と食事代をセットで売りたい|まとめて料金を取っても大丈夫?|第5話
として、
👉 自分のサービスと他社のサービスを組み合わせて販売するとき、何を整理すればよいのか
を考えます。
\ イベントと観光を組み合わせたい方へ /
行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・イベント参加者のホテルを用意したい
・大会や研修と宿泊を組み合わせたい
・参加費と宿泊費をまとめたい
・イベント主催者がどこまで予約してよいか分からない
・旅行会社へ任せる部分と自社で行う部分を整理したい
といった旅行業登録の企画段階からご相談いただけます。
旅行業界37年の経験と行政書士としての法務・許認可の視点から、
「旅行業をおこなうか」だけではなく、「誰が何を担当すれば実現できるのか」
を一緒に整理します。
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クイズ!イベント参加者のホテル手配はどこまでできる?
この記事を書いた人 Wrote this article
田中穂積
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。