体験料と食事代をセットで売りたい|まとめて料金を取っても大丈夫?|第5話

体験料と食事代をセットで売りたい|まとめて料金を取っても大丈夫?|第5話


こんにちは。
横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です

前回は、
「イベント参加者のホテルもまとめて手配したい」
というケースから、
イベントの主催と宿泊の手配は分けて考えること。
そして、
誰が予約し、誰と契約し、誰がお金を受け取るのかを整理することが大切だとお話ししました。
今回は、こんな観光商品を考えてみます。
「午前中はまち歩き」
「そのあと地元のお店でランチ」
これを別々に申し込んでもらうのではなく、
「まち歩き+ランチ 5,000円」
として一つの商品にしたい。
あるいは、
「ものづくり体験+地元料理」
「農業体験+ランチ」
「文化体験+カフェ」
なども考えられます。
地域の事業者同士が連携できて、お客様にも分かりやすい。
観光商品としては、とても自然な発想です。
でも、ここで気になるのが、
「体験料と食事代をまとめて受け取っても大丈夫?」
ということです。

今回も答えを先にお伝えします。
👉 体験と食事をセットにして販売しただけで、直ちに旅行業になるわけではありません。
ただし、
誰が体験を提供し、誰が食事を提供し、誰がお客様から代金を受け取り、トラブル時に誰が対応するのか
は、最初に整理しておきたいところです。

1.「体験+食事」だけなら、まず旅行業とは分けて考える

たとえば、
自分が行うまち歩き。
地域の飲食店が提供するランチ。
この二つを組み合わせたとします。
旅行業法では、
運送・宿泊以外のサービスだけを手配したり提供したりする場合は、旅行業に該当しない例として整理されています。
つまり、
体験
食事
観劇
入場
などだけを組み合わせたからといって、
それだけで旅行業になるわけではありません。
ここは、
「セット販売=旅行業」
と早合点しなくても大丈夫です。
ただし、
ホテルも付ける。
バスも手配する。
鉄道も含める。
となれば話は変わります。
👉 何をセットにしたのかを、一つずつ分けて考えます。

2.では「5,000円まとめて受け取る」のは大丈夫?

ここが今回の本題です。
たとえば、
あなたがまち歩きを提供し、
提携する飲食店がランチを提供する。
お客様からは、
「まち歩き+ランチ 5,000円」
として、あなたが一括して受け取る。
この形自体を見て、
「まとめて受け取ったから旅行業」
とはなりません。
むしろ実務で考えたいのは、
👉その5,000円が何の代金なのか
です。
お客様から見ると、
あなたから5,000円の商品を買ったように見えるのか。
それとも、
体験部分はあなた。
食事部分は飲食店。
あなたは食事代を預かっているだけなのか。
ここを曖昧にしないことが重要です。
👉 金額をまとめるなら、責任まで曖昧にまとめない。
これが今回のポイントです。

3.「食事は店の責任です」だけでは済まないこともある

たとえば、
お客様があなたのホームページから、
「横浜まち歩き&ランチプラン」
を申し込み、
あなたへ5,000円を支払ったとします。
ところが当日、
飲食店が臨時休業していた。
予約が入っていなかった。
提供予定だったメニューが出せなかった。
そんなことが起きたら、
お客様は誰へ連絡するでしょうか。
おそらく、
商品を申し込んだ窓口
へ連絡するでしょう。
そこで、
「食事のことは店に聞いてください」
と言われても、
お客様からすると納得しにくいかもしれません。
(法律の問題だけではなく)
商品として誰が責任を持って見せているのか
が重要になります。
だから、
体験と食事を一つの商品にするなら、
予約
変更
キャンセル
中止
返金
などの対応方法も決めておきます。

4.「紹介する」と「自分の商品として売る」は分けて考える

たとえば、
ケースA
まち歩き終了後に、
「この辺なら、このお店がおすすめですよ」
と紹介する。
食事はお客様自身が予約して支払う。
これは、
地域のお店の紹介です。
一方、
ケースB
「まち歩き+ランチ 5,000円」
として自分が募集し、
予約も代金もまとめて受ける。
こちらは、
自分の商品としてどこまで組み立てているのか
を考える必要があります。
どちらが良い・悪いという話ではありません。
👉 自分は「紹介者」なのか、「商品を組み立てて販売する人」なのか。
そこを決めることが大切です。

5.飲食店との約束も、口頭だけにしない

地域のお店との連携は、
最初は、
「面白そうですね」
「ぜひやりましょう」
から始まることも多いと思います。
ただ、実際に販売するなら、
もう一歩具体化しておきましょう。
たとえば、
1人あたりの食事代はいくらか。
予約はいつまでに伝えるか。
人数変更はいつまで可能か。
キャンセルの場合はどうするか。
定休日や臨時休業の場合はどうするか。
アレルギー等の確認は誰が行うか。
精算はいつ行うか。
こうした内容です。
契約書を難しくする必要はありません。
大切なのは、
👉 お客様を受け入れ始める前に、事業者同士の認識を合わせること。
です。

6.自分で料理を提供するなら、別の確認が必要になる

もう一つ、ここは分けて考えましょう。
地域の飲食店へお客様を案内するケースと、
自分自身が食事を調理・提供するケースは同じではありません。
横浜市では、飲食店のように食品を調理・提供したり、食品を製造・販売したりする場合、
営業内容によって食品衛生法に基づく許可や届出が必要になります。
横浜市も、営業形態や扱う食品によって必要な手続が異なるため、事前相談を案内しています。横浜市公式サイト
たとえば、
「体験の最後に、自分たちで料理も出そう」
となったら、
旅行業法だけを見ればよいわけではありません。
👉 サービスを増やしたら、そのサービスを担当する制度も確認する。
観光ビジネスでは、この考え方が大切です。

7.さらに「宿泊」や「交通」を付けたくなったら

商品が人気になると、
次の発想が出てきます。
「せっかくだからホテルも付けよう」
「駅からバスも付けよう」
「体験+食事+宿泊で売ろう」
ここまで来ると、
今回の「体験+食事」とは別の段階です。
旅行業法上、運送・宿泊について代理・媒介・取次等を行うことは基本的旅行業務に位置付けられています。国土交通省
ですから、
体験+食事で問題なかったから、そのまま宿泊や交通も追加できる
とは考えない方がよいでしょう。
👉 新しいサービスを一つ足すときは、法的な位置付けも一度確認する。
これも観光商品を育てるうえで重要です。

今日の実務ワンポイント

体験と食事をセットで販売したいと思ったら、次の5つを整理してみてください。
①体験を提供するのは誰?
②食事を提供するのは誰?
③お客様から代金を受け取るのは誰?
④キャンセル・返金を担当するのは誰?
⑤宿泊や交通は含まれていない?
👉 「一つの商品にする」前に、「誰が何を担当するか」を分けてみる。
これが今回の実務ワンポイントです。

まとめ

「体験料と食事代をまとめて受け取っても大丈夫?」
今回の答えは、
👉 体験と食事だけを組み合わせたことによって、直ちに旅行業になるわけではありません。
ただし、
一つの商品として売るなら、
誰が販売するのか。
誰が体験を提供するのか。
誰が食事を提供するのか。
誰が代金を受け取るのか。
中止や返金は誰が対応するのか。
を明確にしておきましょう。
さらに、
自分で料理を提供するなら食品衛生上の確認。
宿泊や交通を加えるなら旅行業法上の確認。
が必要になる場合があります。
👉 「セットにできるか」だけではなく、「どういう役割分担なら安心して売れるか」を考える。
それが、地域の商品を長く育てていくための第一歩です。

今日のチェックポイント

□体験の提供者が明確になっている
□食事の提供者が明確になっている
□販売窓口を決めている
□代金を誰が受け取るか決めている
□飲食店との精算方法を決めている
□変更・キャンセル時の対応を決めている
□自分で食品を提供する場合の手続を確認している
□宿泊・交通を追加する場合は別途確認することを理解している
すべてにチェックが付かなくても問題ありません。
まずは、
「お客様から見て、この商品を誰から買っていることになるのか」
を一度考えてみましょう。
そこから必要な整理が見えてきます。

行政書士田中穂積の視点

旅行業界で37年間仕事をしてきて、
観光商品の魅力は、
必ずしも有名な観光地だけで生まれるものではないと感じています。
街を歩く。
地域の人と話す。
その土地のものを食べる。
小さな体験をする。
そうしたものをうまく組み合わせることで、
「ここへ来る理由」
を作ることができます。
だから、
地域の体験と飲食店をつなぐことは、
これからの観光ビジネスにとって大切な取り組みだと思います。
ただし、
商品を一つにまとめるほど、
お客様から見れば、
「誰がこの商品に責任を持っているのか」
も一つに見えやすくなります。
行政書士として考えるのは、
「法律に引っかからないようにバラバラにしてください」
という話ではなく、
👉 地域の事業者が安心して一緒に売れる仕組みを先に作る。
そのお手伝いをすることが重要だと考えています。

Q&A|体験と食事をセットで売りたい

Q1.まち歩きとランチをセットで販売すると旅行業になりますか?

体験や飲食など、運送・宿泊以外のサービスだけを手配・提供する場合は、旅行業に該当しない例として観光庁から示されています。国土交通省
ただし、ホテルや交通を組み合わせる場合には、別途旅行業法上の確認が必要です。

Q2.食事代も自分がまとめて受け取って大丈夫ですか?

一括で代金を受け取ることだけで旅行業になるわけではありません。
ただし、
誰が食事を販売・提供しているのか。
飲食店へいくら支払うのか。
キャンセル・返金は誰が対応するのか。
などは明確にしておくことをおすすめします。

Q3.体験の参加者に、自分で料理を作って提供したいのですが?

その場合は、旅行業法とは別に食品衛生上の確認が必要です。
横浜市では、食品を調理・提供する営業について、内容に応じて許可または届出が必要になるため、営業施設を所管する区の福祉保健センター生活衛生課への事前相談を案内しています。横浜市公式サイト

次回予告

体験と食事を一つの商品にするところまで考えました。
では、
地域全体へ広げたらどうでしょう。
観光施設
飲食店
体験施設
お土産店
場合によっては交通
これらをつないで、
「このパス一つで地域を回れます」
という仕組みを作りたい。
観光客には便利ですし、
一つの施設だけで終わらず、
地域を回遊してもらうきっかけにもなります。
でも、
「この周遊パス、誰の名前で売ればいいの?」
という問題が出てきます。
次回は、
観光施設を何か所か回れる周遊パスをつくりたい|誰が販売すればいい?|第6話
として、
👉 複数の地域事業者を一つの商品につなぐとき、誰が企画し、誰が売り、誰がお金を受け取るのか
を整理します。

\ 地域の体験やお店を観光商品にしたい方へ /

行政書士田中穂積事務所
― 横浜の行政書士のアトリエ ― では、
・地域体験と飲食店を組み合わせたい
・複数の事業者で一つの商品をつくりたい
・料金をまとめて受け取る仕組みを考えている
・自分たちのサービスが旅行業に当たるか分からない
・販売前に事業者同士の役割を整理したい
といった企画段階からご相談いただけます。
旅行業界37年の経験と行政書士としての法務・許認可の視点から、
「できる・できない」だけではなく、「どういう仕組みなら実現できるか」
を一緒に整理します。

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この記事を書いた人 Wrote this article

田中穂積

田中穂積

横浜市泉区・中田駅を拠点に活動する行政書士。旅行業・宿泊業を中心とした観光ビジネスや障害福祉サービスの許認可・開業支援などを行っています。旅行業界37年の経験を生かし、現場と法務の両面から実務情報を発信しています。