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03実務対応編 2026年7月14日

16.日本版DBSと社内規程整備

~事業所のルールとして継続運用するために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に、子ども関連事業者や障害福祉サービス事業者の運営を支援している、行政書士の田中穂積です。 前回は、日本版DBSの個人情報管理はどう変わるのかについてお伝えしました。しかし、個人情報管理ルールを作っただけでは、事業所全体の運用は完成しません。日本版DBSへの対応を一時的な作業で終わらせず、採用や人事異動、退職などの場面でも継続して運用するためには、社内規程やチェックリストへの落とし込みが必要です。 今回は、日本版DBS対応を事業所のルールとして定着させる方法を考えます。 日本版DBS対応は「担当者の記憶」に頼らない 日本版DBS対応には、さまざまな手続が関係します。・対象者の確認・職員への説明・同意の取得・必要な確認手続・個人情報の保管・採用時の確認・配置転換時の確認・退職後の情報管理これらを担当者個人の記憶や経験だけに任せてしまうと、担当者の交代や職員の入退職によって、確認漏れが起こりやすくなります。大切なのは、「誰が担当しても、同じ手順で対応できる状態」を作ることです。そのために必要になるのが、社内規程と運用チェックリストです。 規程に盛り込みたい主な項目 日本版DBSに関する規程には、少なくとも次の内容を整理しておきます。 1.対象となる職員や業務正職員だけでなく、パート、アルバイト、派遣職員、業務委託者、ボランティアなどを含め、誰を確認対象として管理するのかを明確にします。「雇用形態」だけではなく、実際に子どもと接する業務に従事するかという視点で整理することが重要です。2.担当者と責任者誰が対象者を確認し、誰が手続を行い、誰が最終確認をするのかを決めます。小規模な事業所でも、情報を取り扱う人を必要以上に増やさないことが大切です。3.確認する時期採用時だけでなく、配置転換、業務内容の変更、一定期間経過後など、どの時点で確認するのかを整理します。4.職員への説明と同意何のために確認するのか、どのような情報を取得するのか、誰が管理するのかを説明したうえで、必要な同意取得へ進みます。説明をせずに同意書だけを渡す運用は避ける必要があります。5.情報の保管と廃棄閲覧できる人、保管場所、保存期間、持ち出しの禁止、退職後の取扱い、廃棄方法などを定……

旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由|第7話

~生活支援と職場づくりが定着率を左右する~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」についてお話ししました。外国人スタッフを採用した後、本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。 今回のテーマは、「旅館・ホテルで外国人スタッフが定着しない理由」です。外国人スタッフを採用しても、すぐに辞めてしまう。仕事はまじめにしているのに、 どこか不安そうに見える。日本人スタッフとの関係がうまくいかない。生活面の悩みを誰にも相談できていない。こうした状態が続くと、本人も宿側も疲れてしまいます。今回は、外国人スタッフが長く働ける宿と、定着しにくい宿の違いについて、生活支援、職場づくり、相談体制、将来の在留資格や永住への視点も含めて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 外国人スタッフが辞める理由は「仕事」だけではない 外国人スタッフが定着しないと聞くと、宿側はまず仕事の問題を考えます。仕事が合わなかったのか。接客が難しかったのか。日本語が足りなかったのか。勤務時間が合わなかったのか。もちろん、仕事の内容や勤務条件は大切です。しかし、外国人スタッフが辞める理由は、仕事だけとは限りません。住む場所に困っている。病院の行き方が分からない。役所の手続きが不安。日本語でうまく相談できない。職場では笑顔でも、生活面で孤立している。家族のことや将来の在留資格に不安がある。このような悩みを抱えていることがあります。宿側から見ると、「仕事は問題なくできている」ように見えても、本人の中では不安が積み重なっている場合があります。定着を考えるときは、仕事だけでなく、生活と将来の不安も見ることが大切です。 定着しにくい宿の共通点 外国人スタッフが定着しにくい宿には、いくつかの共通点があります。 一つ目は、相談できる人が決まっていないことです。仕事で困ったとき、誰に聞けばよいのか。生活で困ったとき、どこまで相談してよいのか。在留資格や……

横浜の古民家カフェ開業で最初に確認したいこと|第4話

~古民家を地域の小さな観光拠点にするために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第4話です。 前回は、「古民家を宿にするには何が必要か」についてお話ししました。古民家を宿として活用するには、旅館業許可、建築基準法、消防法、衛生管理、近隣との関係など、確認すべきことがたくさんあります。しかし、古民家の活用方法は宿だけではありません。地域の人が集まるカフェ。観光客が立ち寄る休憩場所。地元の食材を味わえる小さな飲食店。週末だけ開く古民家カフェ。イベントや展示と組み合わせた交流スペース。こうした使い方も、古民家や空き家の大切な活用方法です。 これまで宿を中心にお話ししてきましたので、今回は少しサプライズかもしれません。でも私は、古民家カフェも立派な観光まちづくりの入口になると考えています。宿泊しなくても、その地域を訪れる理由になる。地域の人と観光客が出会う場所になる。地元の食材や文化を伝える場所になる。空き家だった建物に、もう一度人の流れを生み出す場所になる。古民家カフェには、宿とはまた違った魅力があります。 ただし、カフェとして営業するためには、雰囲気や想いだけでは始められません。飲食店営業許可。厨房設備。食品衛生責任者。建物の用途。消防への確認。近隣環境。駐車場や騒音。こうした点を、開業前に確認しておく必要があります。 今回は、古民家カフェを始める前にまず確認したいことについて、旅行業37年の経験と行政書士としての視点から考えていきます。 古民家カフェは地域の入口になる 古民家カフェというと、まず思い浮かぶのは、落ち着いた空間、木のぬくもり、畳の部屋、庭を眺める席、地元野菜を使ったランチ、手作りのスイーツ、ゆっくり流れる時間。そんなイメージではないでしょうか。 確かに、古民家カフェには、普通の店舗にはない魅力があります。しかし私が注目したいのは、古民家カフェが単なる飲食店にとどまらないことです。観光客にとっては、その地域を歩くきっかけになります。地域の人にとっては、日常の中で集まれる場所になります。移住を考えている人にとっては、地域の空気を知る入口になります。空き家所有者にとっては、……

03実務対応編 2026年7月11日

15.日本版DBSの個人情報管理はどう変わるのか

~職員情報を安全に扱うための管理ルールを作る~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、日本版DBS対応における同意取得フローについてお話ししました。日本版DBS対応では、同意書をただ回収すればよいわけではありません。何に同意するのか。どのような目的で使うのか。個人情報はどう扱われるのか。同意しない場合にどう対応するのか。誰が説明し、誰が回収し、どこに保管するのか。こうした流れを整理しておくことが大切です。今回のテーマは、「個人情報管理」です。 同意取得を進めると、次に重要になるのが、回収した書類や確認結果をどのように管理するかという問題です。日本版DBS対応では、職員に関する慎重な情報を扱う可能性があります。誰が管理するのか。どこに保管するのか。誰が閲覧できるのか。どのくらい保存するのか。退職後はどう扱うのか。こうした点を曖昧にしたまま進めると、職員の不安や事業所内のトラブルにつながる可能性があります。特に、放課後等デイサービスや児童発達支援事業所など、子どもと日常的に関わる現場では、もともと利用児童や保護者に関する大切な個人情報を多く扱っています。そこに、日本版DBS対応として職員側の慎重な情報管理も加わります。 今回は、子どもと関わる事業所で気を付けたい個人情報管理の実務について、実際に「個人情報管理ルール」を作るイメージで整理していきます。 日本版DBS対応では職員情報の管理が重要になる 放課後等デイサービスや児童発達支援事業所では、日常的に多くの個人情報を扱っています。利用児童の氏名。障害特性。支援計画。保護者情報。送迎先。緊急連絡先。支援記録。相談記録。こうした情報は、すでに事業所として慎重に扱うべき情報です。 一方で、日本版DBS対応では、職員側の情報管理も重要になります。対象者一覧表。職員説明資料。同意書。同意取得管理表。確認結果に関する情報。問い合わせ記録。未提出者や保留者に関するメモ。これらは、通常の職員名簿よりも慎重に扱うべき情報です。 なぜなら、日本版DBS対応は、👉職員のプライバシーや名誉にも関わる可能性があるからです。子どもの安全を守るための制度であると同時に、職員の情報を適切に守る仕組みも必要になります。ここを丁寧に整えることが……

外国人雇用で失敗する宿の共通点|第6話

~採用後の教育・生活支援・現場定着の落とし穴~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識についてお話ししました。外国人スタッフを雇用するときは、「人手が足りないから採用する」だけでは不十分です。その人の在留資格で、その宿で、その業務を行えるのか。ここを確認する必要があります。宿泊業では、フロント、予約管理、通訳、清掃、レストランサービス、接客、企画・広報など、さまざまな業務があります。しかし、外国人スタッフにどの業務を任せられるかは、👉在留資格や雇用内容との関係で確認が必要です。今回のテーマは、「外国人雇用で失敗する宿の共通点」です。 外国人スタッフを採用した後、👉本当に大切になるのは定着です。採用したのに長く続かない。現場とのコミュニケーションがうまくいかない。教育担当者が決まっていない。生活面の相談先がない。在留資格や更新時期の管理が曖昧になっている。こうした状態では、せっかく採用しても、本人にも宿側にも負担がかかってしまいます。この数話では、旅館・ホテルの経営者だけでなく、日本で働く外国人スタッフの方にも読んでいただけるように、できるだけ分かりやすくお話ししていきます。 日本で働き続けたい外国人の方にとっても、在留資格、雇用契約、職場での役割、更新時期、将来の永住などは、とても大切なテーマです。宿側と外国人スタッフ本人が、お互いに安心して働ける関係を作ること。それが、外国人雇用を成功させる第一歩です。 外国人雇用は「採用して終わり」ではない 外国人スタッフを採用できると、宿側はほっとするかもしれません。人手不足が少し楽になる。外国語対応ができる。インバウンドのお客様にも対応しやすくなる。若い人材が増える。現場に新しい風が入る。こうした期待はとても自然です。しかし、外国人雇用は、採用して終わりではありません。むしろ、👉採用した後から本当の実務が始まります。業務をどう教えるのか。誰が教育担当になるのか。困ったときに誰へ相談するのか。在留資格の更新時期をどう管理するのか。雇用契約の内容と実際の業務が合っているのか。生活面で困っていることはないか。現場の日本人スタッフとの関係はうまくいっているか。こ……

03実務対応編 2026年7月9日

14.日本版DBS導入で同意取得フローを作る

~同意書を渡す前に整理したい説明・個人情報・保留対応~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。 前回は、日本版DBS導入で職員説明資料を作ることについてお話ししました。日本版DBS対応では、いきなり同意書を渡すのではなく、まず職員に制度の目的や事業所としての方針を説明することが大切です。なぜこの制度が必要なのか。子どもの安全を守るために何を確認するのか。個人情報はどのように扱われるのか。事業所としてどのような方針で対応するのか。こうした点を職員に分かりやすく伝えることで、不安や誤解を減らすことができます。 今回のテーマは、「同意取得」です。日本版DBS対応では、職員説明資料を作った後、次に大切になるのが同意取得の進め方です。同意書は、ただ署名をもらえばよいものではありません。何に同意するのか。どのような目的で使うのか。個人情報はどう扱われるのか。同意しない場合にどう対応するのか。いつ、誰が、どのように説明して、どの書類を保管するのか。こうした流れを整理しておく必要があります。特に、放課後等デイサービスや児童発達支援事業所など、子どもと日常的に関わる障害児支援の現場では、職員体制も多様です。正社員。パート職員。送迎担当者。児童発達支援管理責任者。外部プログラムの講師。法人本部の担当者。複数事業所を兼務する職員。こうした関係者がいる中で、誰に、いつ、どのように説明し、同意を取得するのか。ここを曖昧にしてしまうと、現場で混乱が起こります。 今回は、日本版DBS対応における同意取得の流れと、事業所で気を付けたい実務ポイントについて、実際に👉「同意取得フロー」を作るイメージで整理していきます。 同意取得は「書類をもらう作業」ではない 同意取得というと、どうしても「同意書に署名してもらうこと」をイメージしがちです。しかし実務では、同意書を回収することだけが目的ではありません。同意取得で大切なのは、職員が内容を理解したうえで、必要な手続きに協力できる状態を作ることです。何のための同意なのか。何を確認するための同意なのか。どの情報が扱われるのか。誰が管理するのか。不明点がある場合は誰に相談できるのか。ここが分からないまま署名を求めると、職員は不安を感じます。特に、日本版DBSでは慎重な情報が関……

旅館業で外国人を雇う前に知りたい在留資格の基礎知識|第5話

~業務内容と在留資格のズレを防ぐために~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か人手不足の現実についてお話ししました。人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する宿は増えています。しかし、外国人雇用は、単に人手を補う方法ではありません。業務内容、在留資格、教育体制、生活面の支援、現場でのコミュニケーションなど、事前に整理しておくべきことが多くあります。今回は、さらに一歩進んで、「在留資格」について考えてみたいと思います。 宿泊業で外国人を雇うとき、よくある誤解があります。「日本に住んでいる外国人なら働ける」「アルバイトなら問題ない」「フロントも清掃も配膳も、必要に応じて任せればよい」「人手不足だから、とにかく来てもらえれば助かる」しかし、外国人が日本で働く場合には、在留資格と業務内容の関係を確認する必要があります。在留資格によって、できる仕事と注意すべき仕事が変わるからです。旅館・ホテルの現場では、フロント、予約管理、通訳、企画・広報、接客、清掃、レストランサービス、送迎、夜間対応など、さまざまな業務があります。そのすべてを、同じように考えることはできません。 今回は、旅館業で外国人を雇う前に知っておきたい在留資格の基礎知識について、行政書士としての視点から分かりやすく整理していきます。 在留資格とは何か まず、在留資格とは何でしょうか。簡単に言えば、外国人が日本に滞在し、どのような活動をすることができるのかを示す資格です。観光で来ている人。留学している人。会社で働いている人。日本人と結婚している人。永住している人。 それぞれ、日本でできる活動の範囲が異なります。宿泊業で外国人を雇う場合には、その人が持っている在留資格で、その業務を行えるのかを確認する必要があります。ここを確認しないまま採用してしまうと、本人にも宿側にも大きなリスクがあります。外国人雇用では、「人柄が良い」「日本語が話せる」「すぐ働けると言っている」だけで判断してはいけません。まず確認すべきなのは、👉在留カードと在留資格です。 宿泊業で関係しやすい在留資格 旅館・ホテルで外国人を雇用する場合、関係しやすい在留資格はいくつかあります。代表的なものと……

03実務対応編 2026年7月7日

13.日本版DBS導入で職員説明資料を作る

~いきなり同意書を渡す前に、職員へ伝えるべきこと~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、日本版DBS導入で対象者一覧表を作ることについてお話ししました。日本版DBS対応では、まず誰が子どもと関わっているのかを整理することが大切です。正社員。パート。アルバイト。外部講師。委託スタッフ。ボランティア。雇用形態だけで判断するのではなく、👉「子どもとどのように関わっているか」という視点で整理することが必要です。 今回は、その次の実務として、「職員説明資料を作る」ことについて考えてみたいと思います。日本版DBS対応では、職員への説明を後回しにしてしまうと、現場に不安や誤解が広がる可能性があります。いきなり同意書を渡す。制度名だけを伝える。「法律で決まったのでお願いします」とだけ説明する。これでは、職員は戸惑ってしまうかもしれません。なぜこの制度が必要なのか。何を確認する制度なのか。自分は対象になるのか。個人情報はどのように扱われるのか。同意しない場合はどうなるのか。事業所としてどのような方針で対応するのか。こうした点を、職員に分かりやすく説明する資料を準備しておくことが大切です。 特に、放課後等デイサービスや児童発達支援事業所など、子どもと日常的に関わる障害児支援の現場では、職員への説明は単なる事務手続きではありません。子どもの安全を守るための体制づくりであり、職員が安心して働くための説明でもあります。 今回は、実際に事業所で使える「職員説明資料」を作るイメージで、実務の視点から整理していきます。 なぜ職員説明資料が必要なのか 日本版DBS対応では、制度そのものに注目が集まりがちです。しかし実務では、制度をどう現場に伝えるかがとても重要です。特に職員にとっては、「自分の過去を調べられるのですか」「個人情報は誰が見るのですか」「同意しないと働けなくなるのですか」「何か疑われているのでしょうか」といった不安が出る可能性があります。この不安を放置したまま進めると、👉制度対応が職員との信頼関係を損なう原因になってしまいます。 日本版DBSは、職員を疑うための制度ではありません。子どもを守るために、👉事業者として必要な安全管理体制を整えるための制度で……

旅館・ホテルの外国人雇用は救世主か?人手不足の現実|第4話

~採用前に考えたい業務整理と受け入れ体制~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。前回は、旅館業の人手不足より怖いオペレーション崩壊についてお話ししました。宿泊業界では、人手不足が大きな課題になっています。しかし、人が足りないこと以上に、業務の流れが整理されていないこと。担当者が曖昧なこと。引き継ぎが弱いこと。現場の仕組みが整っていないこと。こうした問題が、宿の運営を苦しくしている場合があります。今回のテーマは、「外国人雇用」です。 人手不足が深刻になる中で、外国人スタッフの採用を検討する旅館・ホテルも増えています。フロントで外国語対応ができる人材がほしい。清掃やレストランサービスを支えてほしい。インバウンド対応を強化したい。若い人材を確保したい。こうした理由から、外国人雇用に関心を持つ宿は少なくありません。しかし私は、外国人雇用を「人手不足を一気に解決する魔法の方法」のように考えるのは危険だと思っています。外国人スタッフを採用する前に、宿側が整理しておくべきことがあります。業務内容。在留資格。教育体制。生活面の支援。現場でのコミュニケーション。相談できる体制。こうした準備がないまま採用してしまうと、外国人スタッフも宿側も、お互いに苦しくなってしまいます。 今回は、外国人雇用を検討する前に整理しておきたい宿側の準備について、旅行業37年の経験と特に行政書士としての視点から考えていきます。 外国人雇用は人手不足の「救世主」なのか 人手不足に悩む宿にとって、外国人スタッフの採用は大きな可能性があります。特に、インバウンド需要が高まる中で、外国語対応ができるスタッフ。異文化理解のあるスタッフ。海外のお客様と自然にコミュニケーションを取れるスタッフ。こうした人材は、宿の魅力を高める力になります。また、日本で働きたいと考える外国人の中には、真面目で意欲が高く、長く宿泊業に関わりたいと考えている方もいます。その意味で、外国人雇用は、宿にとって大きなチャンスです。 しかし、外国人スタッフを採用すれば、すぐに人手不足が解決するわけではありません。むしろ、受け入れ体制が整っていない宿では、思った業務を任せられない。在留資格との関係で業務内容に問題が出る。教育に時間がかかる。現場で意思疎通がうまくいかない。生活面……

横浜の古民家を宿にするには何が必要か|第3話

~魅力を活かす前に確認したい許認可の第一歩~ こんにちは。横浜市泉区・中田駅を拠点に活動している行政書士の田中穂積です。日曜日の朝に、少し肩の力を抜いて読んでいただきたい「古民家宿・空き家活用の実践ガイド」今回は第3話です。前回は、「なぜ今、古民家宿が選ばれるのか」についてお話ししました。新しいホテルにはない温かさ。地域の暮らしを感じられる空間。古い梁や柱、庭、畳、縁側、土間。そうした古民家ならではの魅力は、旅の目的そのものになることがあります。 しかし、古民家を宿にしたいと思ったとき、魅力だけで話を進めることはできません。「この建物を宿にしたい」「空き家を活かして地域に人を呼びたい」「古民家を壊さず、観光資源として使いたい」そう思ったときに、最初に確認すべきことがあります。それが、宿として使える建物なのかという視点です。 今回は、古民家を宿にするための第一歩として、確認しておきたい許認可や実務のポイントについてお話しします。 古民家の魅力と宿にする難しさ 古民家には、新築の建物にはない魅力があります。長い時間をかけて残ってきた建物には、その地域の暮らしや歴史が刻まれています。柱の傷。床のきしみ。古い建具。庭の木々。その一つひとつが、訪れる人にとっては特別な体験になります。都会のホテルでは味わえない時間。地域の空気を感じる滞在。それが、古民家宿の大きな魅力です。 しかし一方で、古民家を宿にするには難しさもあります。古い建物だからこそ、現在の法律や基準にそのまま合うとは限りません。建物の構造。避難経路。消防設備。水回り。衛生管理。近隣環境。用途地域。こうした点を確認しないまま進めてしまうと、後から大きな壁にぶつかることがあります。古民家を活かすためには、まず現実を知ることが大切です。 まず確認したいのは「宿として使う」ということ 古民家を活用するといっても、使い方によって必要な手続きは変わります。例えば、自分たちだけで使う別荘。地域の交流スペース。古民家カフェ。体験施設。民泊。簡易宿所。旅館・ホテル。同じ古民家でも、使い方が変われば、確認すべき許認可も変わります。特に注意したいのは、👉「人を泊めるかどうか」です。 お客様を宿泊させる場合、単に空いている部屋を貸すだけでは済みません。宿泊事業として行……